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『夫以外の男性たち』
しおりを挟むまだ手に入れていないものが魅力的に映るのは、人間の性というものだろうか。
今、我が家では、私の夫ではない男性が二人、一緒に生活している。
代理出産のため越してきた、慶斗の後輩、神崎 譲。
そして、夫の双子の弟である、奏。
二人とも眩いばかりのイケメンで、目が離せない。
「繭さん、昨日書き上げた小説、読んで感想もらえませんか?」
小説家の譲は、ほとんどの時間を執筆作業に費やしている。
すっかり彼の小説のファンになった私は、この世に生まれたばかりの物語を、一番に読ませてもらえる幸福に酔いしれていた。
「もちろんです。出版前の小説を読ませてもらえるなんて、嬉しすぎます・・・!」
「じゃあ後で、俺の部屋に・・来てもらえますか?」
数十秒の間、譲が熱っぽい目で私を見つめたので、一気に心拍数が上がる。
「はい・・・じゃあ、ランチの後にでも、行きますね。」
譲はまだ正式な夫ではないので、距離の取り方が難しい。
彼は困ったような顔で笑うと、リビングを出て行った。
「おいおい、繭ちゃん。まずいんじゃねぇの?譲さんの部屋で、二人きりってのは。」
ダイニングテーブルでパソコンに向かっている夫の桜雅は、話の内容を聞いていたらしい。
「また慶斗さんにキスマークつけられまくるとか、マジで勘弁して欲しいわ。」
譲との仲に嫉妬した慶斗が、私の身体につけたたくさんのキスマークは、今もまだ残っている。
「二人きりは、まずいかな?・・まずいよね?じゃあ小説だけ受け取って、自分の部屋で読むことにするね。」
夫に恋の相談をしているようなシチュエーションに、気まずい空気が流れる。
「譲さんは、明らかに繭ちゃんのこと好きだよな。まぁ譲さんが夫になるのも時間の問題だから、俺は何も言うつもりないけど・・・やっぱ面白くはねぇよ?」
こっち来い、と桜雅に手招きされて、素直に従うと、彼は椅子に座ったまま私の両手を取った。
「ただでさえライバルが多くてストレス溜まってんのに、これ以上、俺を嫉妬させんの・・辞めてくれねぇ?」
下から見つめてくる彼の、少し怒ったような表情。
(桜雅君・・・怒ってる顔もカッコ良すぎる・・・♡男らしくてかっこいいなぁ・・♡)
最近ではすっかり見なくなったけれど、耀亮と喧嘩している時の彼は、荒々しくて魅力的だと、いつもこっそり思っていた。
「なぁ、これから俺の部屋に来いよ。たまには昼から繭を抱きたい。」
私のお尻を鷲掴みするように撫でる桜雅は、すっかり息が上がっている。
興奮している彼を見て、熱い夜を思い出し身体が熱くなった。
「桜雅・・・君・・・っ・・・」
「姉さん、ここにいたんですね。あ・・・すみません。」
タイミング悪く、リビングに奏が入室してきた。
夫の双子の弟である彼は、夫たちの前では私のことを「姉さん」と呼ぶ。
二人きりの時はタメ口で話す彼が、夫の前では綺麗な敬語に置き換わる。
別人のような奏の態度は新鮮で、未だに慣れない。
「お邪魔でしたね。すみません。」
「ううん、大丈夫。どうしたの?」
「洗濯機の使い方、教えて欲しくて・・・後で大丈夫です。」
桜雅が私の顔を見て、行ってこいと頷いた。
「部屋で待ってる。」と耳打ちした夫のかっこよさに、見惚れてしまう。
リビングを出た途端、奏が私の腰に手を回して囁いた。
「良い顔してるね。繭のそんなエッチな顔、初めて見たよ。」
二人きりになると、彼の態度は一変するのだ。
おっとりとした兄の蘭とは正反対の、強引な性格。
「奏君・・・、距離近すぎ・・・!」
非難の言葉をものともせずに、彼はニッと美しい笑みを浮かべると、私の額に優しく口付けた。
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