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第三十八話 学園再開前。ヘンリー視点

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~~学園再開の一ヶ月前~~

ヘンリーは、グレースの寝室前で、緊張していた。

「ふぅ、こわくない、こわくない、恐れていたらいつまでも、切り出すことも、出来ないからな。今日こそ言ってやるんだ!」

ヘンリーは呼吸を整え、ドアをノックする。 

「誰よ!私は今忙しいの!」

部屋の中からグレースの怒鳴り声が響き、ヘンリーは身体をビクリッとさせる。

「す、すまない。へ、ヘンリーだ。入っても良いかいグレース?」

「勝手に入れば?」

「じゃあ、ちょっと失礼するよ。」

ドアを開けると、グレースがなにやら机に向かい、書き込んでいる。

「す、すまない、作業中だったんだね。」

ヘンリーは部屋に入り、ドアを閉める。

「うるさいわねぇ!早く用件を言って出ていって頂戴!」

グレースのあまりの迫力に圧倒されながら、ヘンリーは絞り出すように、

「あ、ああ、わかった。………」

グレースはヘンリーに向き直りもせずに、机に向かったままで、

「早く!全く、あ!もしかして、婚約破棄の話でもするって言うの?」

ヘンリーは、今まさに切り出そうとしていた、婚約破棄の言葉がグレースの口からでてきた事に驚きつつも尋ねる

「え?グレース、君もそう考えているのかい?」

「ふん、そんなに私と別れて欲しいなら、すぐにでも別れてあげますけど?」

「ほ、本当かい?………良かった。」

ヘンリーはグレースの思わぬ言葉に、つい、小声ではあるが、本音を漏らす。

「はぁ、良かったですって?」

ヘンリーの言葉を拾い、グレースがすごむ!

「い、いや、その。」

「それならば、貴方は私を守れなかったんだから、当然、慰謝料は貰うわよ!それに、私のお父様がこのクソ、公爵領に投資した分も回収させてもらうから、まぁ、そんなことは、わかっているでしょうけど?」

「そ、そんな……そんなことをされては、我が領地は全て……。」

「そうね、全て私の物になるの!だから、ヘンリー!お前は今すぐ私の屋敷から出ていきなさい!あ、お前のクソ親父とクソババアも全部だからね!」

「そ、それだけは……か、考え直してくれないか?グレース様。」

「あら?さっきは良かったなんて言っていたんじゃないの?」

「それはそうなんだが……。父上や母上にまで、そんな事になるなんて……。」

「全く!ヘンリー!お前はそんなだから、いつまでもたっても駄目なんだよ!」

「は、はい!すみません!」

「今の暮らしを維持したけりゃ、私の言う通りに、働きな!」

「わ、わかりました!」

ヘンリーは肩を落としてグレースの部屋をでた。




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