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第六話 城下町を抜けて王宮へ
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ローラを乗せた馬車は、城下町の中を走る。
「久しぶりに訪れましたが、凄い賑わいですね。」
ローラが客車の窓から辺りを見回し、市場の活気溢れる様子に目をやる。
「ああ、そうだね。ここは昔から活気の満ちた都ではあったが、やはり、最近のこの賑わいは、アルフレッド殿下の功績が大きいだろう。」
「やっぱり、凄い方なんですね。」
「ああ、そうだなここまでの賑わいになった最大の要因はなんだと思う?」
「え?話の流れから、やはり、アルフレッド殿下が関係しているのでしょうけど……殿下が住む都だから、皆が安心してすめるからですか?」
「うん、半分当たりとしておこう。確かに殿下が居ることでの安心は計り知れない。ただ、それだけではないんだ、殿下がなされた魔物討伐は、知っているかい?」
「ええ、確か、数人の部隊で多くの魔物を殲滅したとか。」
「そうだ、それにより、どんなことが起きたと思う?」
「魔物の数が減り、国土が広がりました。」
「うん、それだけじゃないんだよ。魔物が減り、交通網が発達したんだ。安全に各地を行き来することが可能になったからね。今は隣国へも魔物の居た大地を通り抜けて行くことも容易くなったんだ。尚且つ、魔物が住んでいた場所からは、多くの資源が取れ、更に国が富む、そして、これら全ての良い流れを生んだのは…。」
「魔物の殲滅!……その一つの功績が巡り巡って、こんなに凄い効果を生んだのですね。」
「ああ、ただ、そのために殿下は婚約者を失うこととなる。」
「え?」
「作戦の計画と実行にかなりの時間を費やされていたからね。その間にエリザベス嬢は、魔が差してしまったのだろう。殿下がエリザベス嬢やハルト君にした仕打ちが酷いとか、巷では言われているようだが、殿下は国民の為に、そして、作戦が上手く行くように努力されていたときに起こった裏切り……その時の殿下の気持ちは計り知れないだろうね。」
「そうですね……」
馬車は街を進み、王宮の城門が見えてくる。
「お父様、私は殿下の事をよく知りません、でも、この国の為に働く方を私は支えたい!この気持ちは、愛や恋、からではない婚約、ではあるけれど、共に過ごしていれば、愛は生まれますよね。」
「ああ、私もそう思うよ。共に同じ時を過ごして、共に国の為を思う同士なら、その二人には愛が生まれるさ、きっと。何より、この話は殿下の側からの要望だ、少なくともローラ、君に興味があるはずだ。」
「そうですよね。」
ローラは城門をくぐり抜ける時に、手をぎゅっと握りしめる。
『さあ、ローラ、殿下との対面よ、何でもはじめが肝心なんだから、頑張るわよ。』
そう心に強く思う。
馬車は城門の内側を進む。
「久しぶりに訪れましたが、凄い賑わいですね。」
ローラが客車の窓から辺りを見回し、市場の活気溢れる様子に目をやる。
「ああ、そうだね。ここは昔から活気の満ちた都ではあったが、やはり、最近のこの賑わいは、アルフレッド殿下の功績が大きいだろう。」
「やっぱり、凄い方なんですね。」
「ああ、そうだなここまでの賑わいになった最大の要因はなんだと思う?」
「え?話の流れから、やはり、アルフレッド殿下が関係しているのでしょうけど……殿下が住む都だから、皆が安心してすめるからですか?」
「うん、半分当たりとしておこう。確かに殿下が居ることでの安心は計り知れない。ただ、それだけではないんだ、殿下がなされた魔物討伐は、知っているかい?」
「ええ、確か、数人の部隊で多くの魔物を殲滅したとか。」
「そうだ、それにより、どんなことが起きたと思う?」
「魔物の数が減り、国土が広がりました。」
「うん、それだけじゃないんだよ。魔物が減り、交通網が発達したんだ。安全に各地を行き来することが可能になったからね。今は隣国へも魔物の居た大地を通り抜けて行くことも容易くなったんだ。尚且つ、魔物が住んでいた場所からは、多くの資源が取れ、更に国が富む、そして、これら全ての良い流れを生んだのは…。」
「魔物の殲滅!……その一つの功績が巡り巡って、こんなに凄い効果を生んだのですね。」
「ああ、ただ、そのために殿下は婚約者を失うこととなる。」
「え?」
「作戦の計画と実行にかなりの時間を費やされていたからね。その間にエリザベス嬢は、魔が差してしまったのだろう。殿下がエリザベス嬢やハルト君にした仕打ちが酷いとか、巷では言われているようだが、殿下は国民の為に、そして、作戦が上手く行くように努力されていたときに起こった裏切り……その時の殿下の気持ちは計り知れないだろうね。」
「そうですね……」
馬車は街を進み、王宮の城門が見えてくる。
「お父様、私は殿下の事をよく知りません、でも、この国の為に働く方を私は支えたい!この気持ちは、愛や恋、からではない婚約、ではあるけれど、共に過ごしていれば、愛は生まれますよね。」
「ああ、私もそう思うよ。共に同じ時を過ごして、共に国の為を思う同士なら、その二人には愛が生まれるさ、きっと。何より、この話は殿下の側からの要望だ、少なくともローラ、君に興味があるはずだ。」
「そうですよね。」
ローラは城門をくぐり抜ける時に、手をぎゅっと握りしめる。
『さあ、ローラ、殿下との対面よ、何でもはじめが肝心なんだから、頑張るわよ。』
そう心に強く思う。
馬車は城門の内側を進む。
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