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第九話 き、木ですね。

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アドレー王子は、小さな木の生えた鉢植えを持って、マリアの部屋を訪れていた。

鉢植えを渡されたマリアは、『綺麗』という言葉を無理矢理に呑み込み、言葉を絞り出す。

「こ、この木は?」

「ん、ああ、これは、ある森の中にある大木の枝を切り取り、植木鉢に挿したもので、特別なものなんだよ。その枝は、切断面から根を生やし、植木鉢に根ついて、葉を繁らせる。この木を部屋に置いておくと、疲労感を和らげてくれるらしいんだ。」

マリアはドルイダスの目を通して、その眩いばかりの光を放つ植木鉢をみる。疲れが取れる?それはそうだろう、これだけマナが溢れ出ている木は見たことがない!

「あ、そ、そうなんですね。お気遣いありがとうございます。」

みすぼらしく、怪しいものを
手渡されたような演技をしたいのだが、端から見たらかなり不自然な挙動をマリアはする。その反応を見て、アドレー王子は、

「地味な見た目だが、結構効くんだぞ!」

と、マリアが価値が分かって無いと思ってくれたようだ。
確かに普通の人間には面白味もない地味な木にしか見えない……しかし、マリアの目には光輝くマナの塊に思えた。

「そうなんですね、確かにお話にある通り、切り落とした枝から根が生えるなんて凄い生命力ですものね。その木をそばに置いておけば、疲労も回復するのも頷けますね。」

なんとなくフォローしたような感じを演出しつつ、マリアは一つの恐ろしい仮定を思い付く……。

王子は私がドルイダスだと気付いている?だからこんなマナの溢れる物を渡して、私がボロを出したところを糾弾するために………。

いや、でも、言葉をそのままに受けとれば、疲労回復アイテムなんだろうから……普通にプレゼントと言うことも有り得る……どちらにせよ、注意はしておくべきね。

「そ、そうか…明日からは私の仕事を手伝って貰いたい。だから、それを窓辺に置いて、片付けたら、早めに寝て置くように。」

「え?今日王宮に戻られたばかりで明日から直ぐに仕事ですか?殿下、明日はお休みになられた方が良いのでは?」

「そんなときのためのその植木鉢だ!私の部屋にはそれが二つあるからな。では、また明日。おやすみ、マリア。」

「そ、そうなんですね。お気遣いありがとうございます。おやすみなさいませ、アドレー殿下。」

アドレー王子が部屋からでると、マリアはひとつの考えに至る。アドレー王子の部屋に二つあるということは、マナの力を利用する文化、(まぁ、こんな凄いものを見たのは、はじめてだが、)があること、即ち、ザスベエリ真教会はマナの力を異端としていても、マナを私のように視認出来ないため、知らず知らずに利用しているんだ……と。

  
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