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第四十二話 王都からの攻撃

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皇帝ストロフガーダが真面目な顔でエリザベスに向き直ると、

「それで、あの娘は本当に自死したのだな?」

そう問いかける。

エリザベスは広角を上げて、自分の功績を嬉しそうに話すように、

「はい。海岸で発見されたドレスは間違いなくあの娘のものでした。しかし、本当なのですか?ストロフガーダ様?あの娘に本当にそんなことが……?それよりも直接手を下した方が簡単とは思いましたが……」

怪訝そうに問いかけるエリザベスに皇帝は、

「ふん、まあ確かにその恐れがあった、と言うだけではあるが、まあそれも終わったことなのだろう?ソフィアにも御苦労と伝えておけ。」

もう済んだ事と、ストロフガーダは話を終わらせる。

「はい。ストロフガーダ様。あ、でもあの娘もこも近くにおりますので、もしお時間があればお目通りを……。」

実の娘では無かったとはいえ、十年もの長い間共に工作活動を行った同僚の事を思うエリザベス。
行程は煩わしそうな表情をつくり、

「ああ、考えておこう。それよりもこの後の総仕上げを先に済まそうではないか。」

そう言うと、まだまだ王都まで距離があると言うのに、馬車を停めるように指示し、
簡易的な砦を魔法で造らせた。

「さあここからなら安全に且つ、戦況を逃すこと無く見ることが出来そうだ。ウォーロック、首尾は?」

そう横柄に問いかけると、ウォーロックは皇帝の前で片ひざをつき、

「はい、なにやら王都での動きが見えますが如何致しま………。」

そう言いかけたところに王都を覆っていた怪しげな霧が、帝国軍めがけて押し寄せるのがストロフガーダの視界に入る。

「なんだ?王都からの攻撃だと!!あり得ん!奴らは関所からずっと戦い通しで疲れているはず?ウォーロック!」

語気を荒げて、皇帝ストロフガーダはウォーロックを呼びつける。

「はい。確かに……そのように報告は受けております。」

頭を下げるウォーロックを睨み、皇帝は、

「早く次の攻撃に備えておけ!クソッ!何が起こっている?」

皇帝ストロフガーダは憤慨して腰を掛けている椅子の肘掛けを激しく叩く!

皇帝ストロフガーダは、侮っていたキースの軍が攻撃を仕掛けてきた……その事実を受け止められずにいた………

それは、いくら無能なギネリン王軍とは言え、国王率いる大軍と戦った後の、いち公爵家の戦力では、満身創痍の者も少なくなく、何より夜通しの戦いの後に、この四十万の大軍を見れば、普通は戦闘意欲も霧散すると思っていた。その為、戦闘を有利にしようと、こんなにも目立つ平野の真ん中を通っての行軍で、王都へと侵行したのに、それがヘトヘトになっているはずの者からの反撃……

王都からは催眠効果のある霧を吹き付けられ、3万とは言え兵が動けなくなり、行軍に遅れが出ている……

予定が狂うことを何より嫌うストロフガーダの怒りは頂点に達していた。

「ええい、動けなくなった兵なぞ平野の脇にでも放り出して置けばいい!!早く王都に攻めかかれ!」

皇帝の怒号が響く中、王都の城壁から何やらぞろぞろと出てきたもの達から何かが放たれ、今度はスライムモドキの津波が帝国軍兵士に襲いかかる!!

スライムモドキの被害は前線に構えていた歩兵10万を飲み込み、その後に続いていた兵達の進路を塞ぐ形になってしまう……
帝国軍は空を飛ぶことの出来る魔法使い部隊を、残して、身動きが取れなくなってしまった。

「そ、そんなバカな……なぜこんなことに……」

皇帝の眉間には、怒りの度合いを示すようにシワが深く刻まれていた。


    
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