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七話 自慢の妻
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「自慢の妻の話をしても良いかな?」
キースがアメリアに寂しそうな笑顔を浮かべながら問う。
「ええ、お願いいたします。あ、あの……マリアさんは……。」
アメリアがマリアに気を遣っていると、
「ああ、マリアはこの話を知っている。この娘は幼いながらも自分の母親の最後を理解する頭脳があるんだ、そして彼女から受け継いだ力もな……その分不憫な……まぁ、その話はおいておくか……マリア、母の話をするからね。」
キースは優しい眼差しでマリアを見ると、マリアは、強く応える。
「はい、お父様。」
「よし、……アメリアは私とローラと同じ時期に生徒会にいたね。」
「はい。もうあの頃にはご婚約しておられたと伺っております。」
「そうだ。そして、卒業してすぐに私達は結婚、その翌年にはこのマリアが産まれる。私達夫婦は、それは幸せな時を過ごしたんだ……。それが今から二年前、マリアが三歳の誕生日に、国中の人々が突然、四肢の先端から石と化し、倒れる奇病が流行った……。」
「そうですね。それは、それは、恐ろしい光景だったと伝え聞いています。」
キースは一つ頷き、
「そうか……。そこで、治癒魔法に秀でたローラが駆り出されたんだが、伝染病の出た街は混乱していてな………。そんなときに現れたのが聖女アバ。彼女は、平民ながらも、そのたぐいまれなる魔力と、センスで、人々を次々と癒していくのだが、どうしても補助するものが必要らしくてな、そこに手を上げたのがローラだった。」
アメリアが驚きの表情を浮かべ、
「ローラ様が………なかなか出来ないことです。」
キースは遠くを見る目で話を続ける。
「ああ、貴族の、しかも公爵婦人の地位のローラが平民の補助……しかし、聖女の力を十分に発揮して、人々を治すにはそれしかなかったんだ。そんなローラと聖女アバの力により伝染病は収まりつつあったのだが………。」
キースが、怒りの表情になり、言葉につまると、アメリアは、
「な、何かあったのですね?」
アメリアの答えに、アメリアは何も知らないのだと悟るキースは、
「その口ぶりだと……、アメリアはなにも知らないのか、君も何かあったんだな……。」
アメリアは、頭をさげて、
「すみません、その伝染病の頃にはもう、屋敷から外に出ていなかったもので……。」
キースはアメリアの服装と発言からなにかを察して、
「よし、では包み隠さず教えてやろう。ギネリン王が患者の隔離の目的で、ロヌポルル地区を封鎖して、全ての交通を遮断したのだ……。」
キースは両手から血が滴るほど、強く握りしめ、怒りにうち震えている。
アメリアは、キースの言葉に、
「な、何故そんなことを……。」
滴り落ちる血をそのままにキースは話を進める。
「聖女アバの治癒魔法には多くの魔力と、それを支える為に、魔力回復の薬を大量に消費していたからな………ギネリン王がそれを惜しんでの事だった。交通を封鎖と聞けば、まだ開かれたイメージだろうが、実際は、魔法によって巨大な壁を造り、中の民衆を全滅させると言う非人道的なものだった………。」
キースの顔は、怒りから哀しみに変わる。
「そんな………それでもローラ様なら…」
アメリアは、ローラの魔法ならその場から離れることも出来たと思い至るが、
「ああ、彼女なら逃げる事は出来ただろうが、それをしなかったんだ。大勢の民衆を助けるために聖女アバは自らの命と引き換えに大魔法を発動させる…その補助をかって出たんだ………。」
キースの頬につたう二つの筋をみて、アメリアは、ローラのその後を知る。
「そうですか……。ご立派な最後を………。」
ふとマリアの方をみるアメリア。
「そうよ!私のお母様は勇敢な人だったの……だから私もそんなお母様に負けない令嬢になるの……。」
強く正義感に満ちたその言葉に、その場にいた全ての大人が涙する。
キースがアメリアに寂しそうな笑顔を浮かべながら問う。
「ええ、お願いいたします。あ、あの……マリアさんは……。」
アメリアがマリアに気を遣っていると、
「ああ、マリアはこの話を知っている。この娘は幼いながらも自分の母親の最後を理解する頭脳があるんだ、そして彼女から受け継いだ力もな……その分不憫な……まぁ、その話はおいておくか……マリア、母の話をするからね。」
キースは優しい眼差しでマリアを見ると、マリアは、強く応える。
「はい、お父様。」
「よし、……アメリアは私とローラと同じ時期に生徒会にいたね。」
「はい。もうあの頃にはご婚約しておられたと伺っております。」
「そうだ。そして、卒業してすぐに私達は結婚、その翌年にはこのマリアが産まれる。私達夫婦は、それは幸せな時を過ごしたんだ……。それが今から二年前、マリアが三歳の誕生日に、国中の人々が突然、四肢の先端から石と化し、倒れる奇病が流行った……。」
「そうですね。それは、それは、恐ろしい光景だったと伝え聞いています。」
キースは一つ頷き、
「そうか……。そこで、治癒魔法に秀でたローラが駆り出されたんだが、伝染病の出た街は混乱していてな………。そんなときに現れたのが聖女アバ。彼女は、平民ながらも、そのたぐいまれなる魔力と、センスで、人々を次々と癒していくのだが、どうしても補助するものが必要らしくてな、そこに手を上げたのがローラだった。」
アメリアが驚きの表情を浮かべ、
「ローラ様が………なかなか出来ないことです。」
キースは遠くを見る目で話を続ける。
「ああ、貴族の、しかも公爵婦人の地位のローラが平民の補助……しかし、聖女の力を十分に発揮して、人々を治すにはそれしかなかったんだ。そんなローラと聖女アバの力により伝染病は収まりつつあったのだが………。」
キースが、怒りの表情になり、言葉につまると、アメリアは、
「な、何かあったのですね?」
アメリアの答えに、アメリアは何も知らないのだと悟るキースは、
「その口ぶりだと……、アメリアはなにも知らないのか、君も何かあったんだな……。」
アメリアは、頭をさげて、
「すみません、その伝染病の頃にはもう、屋敷から外に出ていなかったもので……。」
キースはアメリアの服装と発言からなにかを察して、
「よし、では包み隠さず教えてやろう。ギネリン王が患者の隔離の目的で、ロヌポルル地区を封鎖して、全ての交通を遮断したのだ……。」
キースは両手から血が滴るほど、強く握りしめ、怒りにうち震えている。
アメリアは、キースの言葉に、
「な、何故そんなことを……。」
滴り落ちる血をそのままにキースは話を進める。
「聖女アバの治癒魔法には多くの魔力と、それを支える為に、魔力回復の薬を大量に消費していたからな………ギネリン王がそれを惜しんでの事だった。交通を封鎖と聞けば、まだ開かれたイメージだろうが、実際は、魔法によって巨大な壁を造り、中の民衆を全滅させると言う非人道的なものだった………。」
キースの顔は、怒りから哀しみに変わる。
「そんな………それでもローラ様なら…」
アメリアは、ローラの魔法ならその場から離れることも出来たと思い至るが、
「ああ、彼女なら逃げる事は出来ただろうが、それをしなかったんだ。大勢の民衆を助けるために聖女アバは自らの命と引き換えに大魔法を発動させる…その補助をかって出たんだ………。」
キースの頬につたう二つの筋をみて、アメリアは、ローラのその後を知る。
「そうですか……。ご立派な最後を………。」
ふとマリアの方をみるアメリア。
「そうよ!私のお母様は勇敢な人だったの……だから私もそんなお母様に負けない令嬢になるの……。」
強く正義感に満ちたその言葉に、その場にいた全ての大人が涙する。
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