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六話 再会(一部加筆)

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マリアに近づく男からは、怒りに満ちた空気が漂っていた。

「マリア、聞いているんだ。答えなさい。先程の煙はなんだい?」

問い詰められるマリアはあたふたしながら、

「あ、あの……そ、それは…ほら、あのトゲトゲの草花があると通れなかったのよ………それでつい……。」

出会ってからあれ程強気でいた彼女がこんなにも恐れる人は……多分遅々なんだろうなとアメリアは思った。
そんな事は他所に、男の説教がはじまるのだろう………。

「つい、じゃないだろう!マリア!!」

怒鳴られ、小さくなるマリア。

「ご、ごめんなさい…。」

小さくなるマリアを見て、いたたまれなくなったアメリアは、

「あ、あの……マリアさんは悪くないんです。マリアさんは私の事を助けようとしてくれただけで……。ごめんなさい。私がいけないんです。」

アメリアはマリアと父親の間に入り、深く頭を下げ、許しを請う。
そんなアメリアに父親は十分ですよと、

「そんな、顔をあげて下さい。マリアが世話になりましたね…。すみませんがお名前は………ん?…………アメリア?君はアメリアか?」

その言葉にアメリアも男の顔を覗き込み、よく見て、記憶をめぐらせる。

「はい、私はアメリアです。あの何処かでお会い………生徒会長!」

アメリアが記憶をたどり、思い出した人物は、かつて魔法学校で供に生徒会活動をした先輩だった。

「そうだ、生徒会長をしていたキースだ……ってそれは六年も昔の話さ、ほら、私にはこの五歳になる娘、マリアもいるしね。」

キースは先程までの怒りが何処かへ消えた様に、マリアの頭を撫で、アメリアに自慢の娘を、紹介する。

「そうですか、エネロワ先輩のお子様……道理で魔法もお得意で………。」

かしこまるアメリアにキースは、

「はは、昔のようにキース先輩でいいんだぞ?」

そうキースが言うが、アメリアは、

「では、キース様で……。」

と答えるだけだった。

突然アメリアと再会を果たしはこのマリアの父親のキース=エネロワ公爵は、かつて魔法学校で一番の成績を誇り、王国で百年に一人の逸材と言わしめた男だった。そんなキースは、アメリアの四年先輩で、生徒達の憧れの的だった。
アメリアも入学と同時に、生徒会で働くキースに憧れ、生徒会活動を始めたのだったが、そんなキースの血を受け継ぐ子供ならと、納得するアメリア。

「まぁ、そうだな……でも、この事は内緒で頼むぞ。しかし、君がいたなら草木を除くことなど………って、そう言えば君は座学は得意で学年で一番だったが、魔法はあまり……だったものな。」

笑い出すキースにアメリアは、

「ひどいです。先輩!」

と、にこやかに言った。

「キース先輩がいらっしゃると言うことは、奥様のローラ先輩はどちらに?」

アメリアが昔を思い出し、キースに問いかけるが、

「ああ、ローラか……彼女は一昨年の伝染病騒動があったろう?」

途端にトーンを落として話し出すキース………

「え?あれは……聖女様が現れて静められたと……」

この数年間、屋敷の使用人の如く使われていたアメリアは伝え聞いた事をたどたどしく思い出す。

「そしてその聖女は?」

キースは目を伏せる。
アメリアは、目を見開き、驚愕の表情を浮かべながら……

「大規模な魔法を使いすぎて亡くなって………ローラ様?!」

キースは小さく笑いを浮かべ、

「いや、ローラは聖女ではないが、その側近として働いていたからな………。まぁ、自慢の妻だよ。」

妻を誇りに想う男の顔がそこにはあった。
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