6 / 58
六話 再会(一部加筆)
しおりを挟む
マリアに近づく男からは、怒りに満ちた空気が漂っていた。
「マリア、聞いているんだ。答えなさい。先程の煙はなんだい?」
問い詰められるマリアはあたふたしながら、
「あ、あの……そ、それは…ほら、あのトゲトゲの草花があると通れなかったのよ………それでつい……。」
出会ってからあれ程強気でいた彼女がこんなにも恐れる人は……多分遅々なんだろうなとアメリアは思った。
そんな事は他所に、男の説教がはじまるのだろう………。
「つい、じゃないだろう!マリア!!」
怒鳴られ、小さくなるマリア。
「ご、ごめんなさい…。」
小さくなるマリアを見て、いたたまれなくなったアメリアは、
「あ、あの……マリアさんは悪くないんです。マリアさんは私の事を助けようとしてくれただけで……。ごめんなさい。私がいけないんです。」
アメリアはマリアと父親の間に入り、深く頭を下げ、許しを請う。
そんなアメリアに父親は十分ですよと、
「そんな、顔をあげて下さい。マリアが世話になりましたね…。すみませんがお名前は………ん?…………アメリア?君はアメリアか?」
その言葉にアメリアも男の顔を覗き込み、よく見て、記憶をめぐらせる。
「はい、私はアメリアです。あの何処かでお会い………生徒会長!」
アメリアが記憶をたどり、思い出した人物は、かつて魔法学校で供に生徒会活動をした先輩だった。
「そうだ、生徒会長をしていたキースだ……ってそれは六年も昔の話さ、ほら、私にはこの五歳になる娘、マリアもいるしね。」
キースは先程までの怒りが何処かへ消えた様に、マリアの頭を撫で、アメリアに自慢の娘を、紹介する。
「そうですか、エネロワ先輩のお子様……道理で魔法もお得意で………。」
かしこまるアメリアにキースは、
「はは、昔のようにキース先輩でいいんだぞ?」
そうキースが言うが、アメリアは、
「では、キース様で……。」
と答えるだけだった。
突然アメリアと再会を果たしはこのマリアの父親のキース=エネロワ公爵は、かつて魔法学校で一番の成績を誇り、王国で百年に一人の逸材と言わしめた男だった。そんなキースは、アメリアの四年先輩で、生徒達の憧れの的だった。
アメリアも入学と同時に、生徒会で働くキースに憧れ、生徒会活動を始めたのだったが、そんなキースの血を受け継ぐ子供ならと、納得するアメリア。
「まぁ、そうだな……でも、この事は内緒で頼むぞ。しかし、君がいたなら草木を除くことなど………って、そう言えば君は座学は得意で学年で一番だったが、魔法はあまり……だったものな。」
笑い出すキースにアメリアは、
「ひどいです。先輩!」
と、にこやかに言った。
「キース先輩がいらっしゃると言うことは、奥様のローラ先輩はどちらに?」
アメリアが昔を思い出し、キースに問いかけるが、
「ああ、ローラか……彼女は一昨年の伝染病騒動があったろう?」
途端にトーンを落として話し出すキース………
「え?あれは……聖女様が現れて静められたと……」
この数年間、屋敷の使用人の如く使われていたアメリアは伝え聞いた事をたどたどしく思い出す。
「そしてその聖女は?」
キースは目を伏せる。
アメリアは、目を見開き、驚愕の表情を浮かべながら……
「大規模な魔法を使いすぎて亡くなって………ローラ様?!」
キースは小さく笑いを浮かべ、
「いや、ローラは聖女ではないが、その側近として働いていたからな………。まぁ、自慢の妻だよ。」
妻を誇りに想う男の顔がそこにはあった。
「マリア、聞いているんだ。答えなさい。先程の煙はなんだい?」
問い詰められるマリアはあたふたしながら、
「あ、あの……そ、それは…ほら、あのトゲトゲの草花があると通れなかったのよ………それでつい……。」
出会ってからあれ程強気でいた彼女がこんなにも恐れる人は……多分遅々なんだろうなとアメリアは思った。
そんな事は他所に、男の説教がはじまるのだろう………。
「つい、じゃないだろう!マリア!!」
怒鳴られ、小さくなるマリア。
「ご、ごめんなさい…。」
小さくなるマリアを見て、いたたまれなくなったアメリアは、
「あ、あの……マリアさんは悪くないんです。マリアさんは私の事を助けようとしてくれただけで……。ごめんなさい。私がいけないんです。」
アメリアはマリアと父親の間に入り、深く頭を下げ、許しを請う。
そんなアメリアに父親は十分ですよと、
「そんな、顔をあげて下さい。マリアが世話になりましたね…。すみませんがお名前は………ん?…………アメリア?君はアメリアか?」
その言葉にアメリアも男の顔を覗き込み、よく見て、記憶をめぐらせる。
「はい、私はアメリアです。あの何処かでお会い………生徒会長!」
アメリアが記憶をたどり、思い出した人物は、かつて魔法学校で供に生徒会活動をした先輩だった。
「そうだ、生徒会長をしていたキースだ……ってそれは六年も昔の話さ、ほら、私にはこの五歳になる娘、マリアもいるしね。」
キースは先程までの怒りが何処かへ消えた様に、マリアの頭を撫で、アメリアに自慢の娘を、紹介する。
「そうですか、エネロワ先輩のお子様……道理で魔法もお得意で………。」
かしこまるアメリアにキースは、
「はは、昔のようにキース先輩でいいんだぞ?」
そうキースが言うが、アメリアは、
「では、キース様で……。」
と答えるだけだった。
突然アメリアと再会を果たしはこのマリアの父親のキース=エネロワ公爵は、かつて魔法学校で一番の成績を誇り、王国で百年に一人の逸材と言わしめた男だった。そんなキースは、アメリアの四年先輩で、生徒達の憧れの的だった。
アメリアも入学と同時に、生徒会で働くキースに憧れ、生徒会活動を始めたのだったが、そんなキースの血を受け継ぐ子供ならと、納得するアメリア。
「まぁ、そうだな……でも、この事は内緒で頼むぞ。しかし、君がいたなら草木を除くことなど………って、そう言えば君は座学は得意で学年で一番だったが、魔法はあまり……だったものな。」
笑い出すキースにアメリアは、
「ひどいです。先輩!」
と、にこやかに言った。
「キース先輩がいらっしゃると言うことは、奥様のローラ先輩はどちらに?」
アメリアが昔を思い出し、キースに問いかけるが、
「ああ、ローラか……彼女は一昨年の伝染病騒動があったろう?」
途端にトーンを落として話し出すキース………
「え?あれは……聖女様が現れて静められたと……」
この数年間、屋敷の使用人の如く使われていたアメリアは伝え聞いた事をたどたどしく思い出す。
「そしてその聖女は?」
キースは目を伏せる。
アメリアは、目を見開き、驚愕の表情を浮かべながら……
「大規模な魔法を使いすぎて亡くなって………ローラ様?!」
キースは小さく笑いを浮かべ、
「いや、ローラは聖女ではないが、その側近として働いていたからな………。まぁ、自慢の妻だよ。」
妻を誇りに想う男の顔がそこにはあった。
0
お気に入りに追加
219
あなたにおすすめの小説
今、私は幸せなの。ほっといて
青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。
卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。
そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。
「今、私は幸せなの。ほっといて」
小説家になろうにも投稿しています。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです
もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。
この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ
知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ
しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ
もぐすけ
ファンタジー
シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。
あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。
テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる