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控え室を出て、大聖堂へ向かうと、大きな扉の前でソフィアの父、オリビエが待っていた。
「ソフィア、お前から出た話とはいえ、これは立派な政略結婚だ。そして、君を家から出すのはやはり気が進まないな。」
花嫁の父親然とした発言に、いつもの父とは違うものを感じるソフィアは、オリビエに小声で応える。
「そんな、お父様……ハルト様と結婚できるのは全てお父様のお力添えの賜物。本当にありがとうございます。そして長い間、お世話になりました。」
オリビエはソフィアから出た、汐らしいセリフに、一つ溜め息をつくと、
「ま、お前にもそんな一面があるのだと教えてくれるこの結婚に感謝するかな。しかし、そのドレスは綺麗だな。高い金を出したことだけはある。」
そうオリビエが言う通りに、ソフィアが纏うウエディングドレスは、眩いばかりの純白のドレスはAラインのシルエットをしており、ドレス全体に、レースがふんだんに使われていて、ちりばめられたクリスタルがキラキラと輝き、豪華さをより強調していた。
ソフィアは少し拗ねたように、お前から
「もう、お父様は意地悪ですね、ドレスだけですか?」
そうたずねられたオリビエは、少し気恥ずかしそうに、
「そうだな……ソフィア、綺麗になったな……さっ、行こうか………頼む!」
オリビエの言葉にあわせて荘厳な雰囲気を称える大聖堂の巨大な扉が開かれる。
多くの参列者が一斉にソフィアに注目している。
二人はゆっくりと歩みを進め、祭壇へと向かう。
参列者の中には国王や王太子の姿も見受けられた。
そして、ヴァージンロードの先にハルトの姿を確認する。
【ハルト様……今日もそんな瞳をしているのね。緊張や気負いとかではなく、本当に感情が死んでしまっているよう……でも、そんな貴方の『瞳』がたまらなく良いわ。】
ソフィアは、自らの結婚式……それも国王まで出席している式にも関わらず、ハルトの虚ろな表情と闇を称えた『瞳』を眼にし、背中がゾクゾクするほど感じていた。
祭壇へと続く階段の脇に立つハルトの前で、二人は立ち止まり、ソフィアをエスコートしていた父、オリビエがハルトに会釈をする。
そして、父はヴァージンロードを外れ、ソフィアはハルトのエスコートのもと、法王の待つ祭壇へと向かう。
階段を昇る途中、ハルトに小声で話しかける。
「ハルト様、お加減は如何ですか?今日もあまり優れないようですが……。」
フッと小さく息を吐くハルトは、
「君はこんな時も話しかけてくるのか……。まぁ良い。前も要ったように病気ではないから大丈夫だ。それより、これは貴族の政略結婚だ、君もあまり気が進まないなかもしれないが、まぁ、これも生まれ性だ……お互い受け入れよう。」
そう言って、ひとつ、ひとつゆっくりと階段を昇るハルトの横顔を見ながら、ヴェールの下に隠れるソフィアは顔は紅潮していた。
【ハルト様、これは政略結婚ですけど、気が進まないのは貴方だけみたい…。ああ、とても良いお顔を、している……。私、顔が赤らんできてる……『誓いのキス』の時にハルト様にバレてしまうかも……でもバレてショックを受ける時の貴方の顔が傍で見れるのね……それも良いかも知れないわ。】
そんな事を考えるソフィアを他所に、儀式は進み、指輪の交換、を終える。
ヴェールを捲り、ソフィアの紅潮した顔が露になるが、ハルトはそんな事を気にする様子もなく、『誓いのキス』をソフィアの手の甲にするのだった。
【え?ハルト様……手の甲?……】
唇に来ると思っていたソフィアは、ショックと戸惑いを抱えたままハルトと共にヴァージンロードを進み、大聖堂を後にするのだった。
「ソフィア、お前から出た話とはいえ、これは立派な政略結婚だ。そして、君を家から出すのはやはり気が進まないな。」
花嫁の父親然とした発言に、いつもの父とは違うものを感じるソフィアは、オリビエに小声で応える。
「そんな、お父様……ハルト様と結婚できるのは全てお父様のお力添えの賜物。本当にありがとうございます。そして長い間、お世話になりました。」
オリビエはソフィアから出た、汐らしいセリフに、一つ溜め息をつくと、
「ま、お前にもそんな一面があるのだと教えてくれるこの結婚に感謝するかな。しかし、そのドレスは綺麗だな。高い金を出したことだけはある。」
そうオリビエが言う通りに、ソフィアが纏うウエディングドレスは、眩いばかりの純白のドレスはAラインのシルエットをしており、ドレス全体に、レースがふんだんに使われていて、ちりばめられたクリスタルがキラキラと輝き、豪華さをより強調していた。
ソフィアは少し拗ねたように、お前から
「もう、お父様は意地悪ですね、ドレスだけですか?」
そうたずねられたオリビエは、少し気恥ずかしそうに、
「そうだな……ソフィア、綺麗になったな……さっ、行こうか………頼む!」
オリビエの言葉にあわせて荘厳な雰囲気を称える大聖堂の巨大な扉が開かれる。
多くの参列者が一斉にソフィアに注目している。
二人はゆっくりと歩みを進め、祭壇へと向かう。
参列者の中には国王や王太子の姿も見受けられた。
そして、ヴァージンロードの先にハルトの姿を確認する。
【ハルト様……今日もそんな瞳をしているのね。緊張や気負いとかではなく、本当に感情が死んでしまっているよう……でも、そんな貴方の『瞳』がたまらなく良いわ。】
ソフィアは、自らの結婚式……それも国王まで出席している式にも関わらず、ハルトの虚ろな表情と闇を称えた『瞳』を眼にし、背中がゾクゾクするほど感じていた。
祭壇へと続く階段の脇に立つハルトの前で、二人は立ち止まり、ソフィアをエスコートしていた父、オリビエがハルトに会釈をする。
そして、父はヴァージンロードを外れ、ソフィアはハルトのエスコートのもと、法王の待つ祭壇へと向かう。
階段を昇る途中、ハルトに小声で話しかける。
「ハルト様、お加減は如何ですか?今日もあまり優れないようですが……。」
フッと小さく息を吐くハルトは、
「君はこんな時も話しかけてくるのか……。まぁ良い。前も要ったように病気ではないから大丈夫だ。それより、これは貴族の政略結婚だ、君もあまり気が進まないなかもしれないが、まぁ、これも生まれ性だ……お互い受け入れよう。」
そう言って、ひとつ、ひとつゆっくりと階段を昇るハルトの横顔を見ながら、ヴェールの下に隠れるソフィアは顔は紅潮していた。
【ハルト様、これは政略結婚ですけど、気が進まないのは貴方だけみたい…。ああ、とても良いお顔を、している……。私、顔が赤らんできてる……『誓いのキス』の時にハルト様にバレてしまうかも……でもバレてショックを受ける時の貴方の顔が傍で見れるのね……それも良いかも知れないわ。】
そんな事を考えるソフィアを他所に、儀式は進み、指輪の交換、を終える。
ヴェールを捲り、ソフィアの紅潮した顔が露になるが、ハルトはそんな事を気にする様子もなく、『誓いのキス』をソフィアの手の甲にするのだった。
【え?ハルト様……手の甲?……】
唇に来ると思っていたソフィアは、ショックと戸惑いを抱えたままハルトと共にヴァージンロードを進み、大聖堂を後にするのだった。
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