【完結】浮気相手の男爵令嬢を妊娠させた？色々と好きにやられたようなので、チョットいたずらしちゃいますね。

浮気相手の男爵令嬢を妊娠させた？色々と好きにやられたようなので、チョットいたずらしちゃいますね。 前編

空には暗雲がたちこめ、今にも雨が振りだしそうな、気配をしている夜の事……

ブラン侯爵邸ではそんな空模様と同じく、嵐がふき荒れようとしていた………


魔法の灯りがボゥッと浮かぶ部屋のなか、その淡い光が二人の男女を照らしている。

沈黙を破ったのは女性だった。

「ハルト様、お話というのは？………」

不安げな表情を浮かべる女と、言葉をなかなか発しないハルト………

「そうだな、こうして黙っていても埒があかないな……さて、何から話したものか……結論から言おう。マリア、君との婚約を破棄しなければいけなくなった。」

ハルトは沈痛な面持ちでそう言葉を吐き出す。

マリアは何を言われたのか理解出来ないといった感じで、

「えっ！婚約破棄ですか？……え？あの…理由は何ですか？」

ハルトと婚約してから、これといって落ち度のある行動をした覚えのないマリアはハルトにそう問う。
ハルトは申し訳無さそうに、

「実はソフィアを妊娠させてしまったんだ………。君との婚約中にこんなことになってすまない。」

ハルトはマリアに頭を下げ、謝罪するが、婚約破棄に浮気の告白、その上相手を妊娠させたと、情報の多さに混乱するマリア……

「え？あの…ハルト様は浮気を……」

ブラン家の一員になるべく努力してきたマリアには寝耳に水の言葉だったようで、ショックを隠せないでいるとハルトは、

「そうだ……今さら隠しても仕方がないからな…相手はヴェール男爵令嬢のソフィアだ……」

そう相手の名を告げるハルト………
そして、マリアは確かめるように、

「そうですか……そしてお相手のソフィアさんは…」

「ああ妊娠している……」

ハルトはそう告げる。
マリアはその言葉を信じられないのか、

「それは本当なのですか？」

そう問いかけると、ハルトは隣の部屋のドアを開きながら、

「そう言うと思って、ソフィアを呼んでいる……入ってくれ。」

開かれた扉の奥から、男爵令嬢ソフィアが、顔を出し、申し訳なさそうに、

「すみません。マリア様…私のお腹にはハルト様との愛の結晶が……」

そう言って、何枚かの書類をハルトに手渡す。

「これが医者の書面だ……ここにある通り、妊娠しているんだそうだ……」

ハルトから書類を受け取り、医師のサインがしてあるものに眼をとおすマリア……

外は雷が鳴り響き、雨音が激しく聞こえる……。

そして、書面から視線をハルトに移すと、

「そうですか……分かりました。それで、ハルト様は私との婚約は破棄されるんですね？」

そう念を押すマリア。
ハルトは何か憑き物が落ちたかのように、スッキリとした表情で、

「ああ、そうすることが自然だろう……。」

マリアは、そのハルトの態度に苛立ちを感じ、

「そうですね。浮気相手が妊娠…それでは婚約を継続することは出来ないでしょう……分かりました。しかし、この責任はしっかりと……」

そうワナワナと怒りに震えながら言葉を絞り出す。
ハルトはそんなマリアの事を見ようともせずに、

「ああ、慰謝料はキチンと支払うよ。」

そう言って、ソフィアの肩に手を置き、引き寄せる。
マリアはもうハルトを見ていると発狂していまいそうだったので、視線をずらし、

「ええ、それに、我がノワール家と、このブラン家の商売での契約も…」

そう言ってハルトの様子を伺う。
ハルトは慌てたように、

「待ってくれ、それは私と君との婚約には…」

マリアは慌てるハルトの言葉を遮るように、言葉に怒気を混ぜながら、

「関係ないわけが無いですよね？浮気はつまり裏切り、そんな事を平気でする家系との繋がりはお父様は切るべきだと判断なさります。」

マリアのあまりの勢いに気圧されたハルトは、

「そ、そうか……まぁ、そ、それも仕方がないか……」

気落ちするハルトに、マリアは最後に、

「ええ、それでは、私はもうこの屋敷にはいるつもりは無いので出て行かせていただきます！」

ガタガタと窓を揺らす風が激しさを増している……

「しかし外は嵐になっているぞ？」

そんなハルトの言葉に、マリアは冷たい視線をハルトに向け、

「そんな事は関係ありません。」

そう言い切ると、マリアは暴風雨が激しくなるなか、屋敷を後にするのだった。