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第六話 自問自答するハルト【ハルト視点 】

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懐妊の報せは、ハルトにとって、青天の霹靂だった。

ハルトは、経営する会社で頭を抱えて歩き回りながら自問自答していた。

アンリエッタと結婚して、まだ半年…………。
それなのに、子供が出来たって?
なぜだ………まぁ、確かに子供が出来るような事は沢山したさ、我慢出来ずに中に………なんて事は数回のはずだ!
その時、以外はキチンと外に出したはずなのに……なぜだ!

ハルトは、イライラしているのか、髪をかきむしりながら、社長室内をウロウロする。

僕は、美しく、胸も大きくてスタイルも言うこと無し、何より僕とアンリエッタはとても身体の相性が良いんだ!
そして、何よりお金持ちの伯爵令嬢と結婚したんだ。

僕は、アンリエッタを抱いているときが一番幸せだったんだ。
彼女の香りも、吸い付くような肌も、手触りの良い髪も、何より、僕が激しく攻め立てた時の、表情も、声も、全てが僕を満足させてくれた…………。
なのに!!
それを、これから何ヵ月も味わえない?
あの女を、その間ずっと抱けないのか?

こんなことは間違っている!
まだ早いだろう?
ハルトは机の上の書類に当たり散らし、部屋中に撒き散らすと、また頭を抱えて歩き回る。
まだまだ、そんな事は先のはずだ!
僕が子持ち?
金はどうする?
子供なんてのは、『金食い虫』だと聞いた覚えもあるぞ!
いや待てよ?
ハルトは足を止め、顎を触りながら少し口角をあげる。
経済力なら、あいつと結婚してから、すこぶる領地経営が順調だったな。
会社も落ち目だったのが、かなり持ち直してきてもいる。
最近は金に幾らかの余裕はあッたな。
子供の一人や二人を育てるなんて余裕なのかもしれない。
しかし、子供が出来たら、どうなるんだ?
あれは大変みたいだったぞ。
先日、キース様の屋敷に出向いたときだったな………

「キース様、お子様が誕生されたそうですね。おめでとうございます。」

「ありがとう。しかし、その事は、少し小さな声で頼む。」

すると、ハルトは小声で、

「え?なぜですか?」

「ああ、実は、愛人に産ませた子でな……。ソフィアに聞かれるとうるさいんだ。」

「え?でも、私はソフィア様が産んだものと思っておりましたが……。」

「ああ、実はソフィアは子供が出来ない身体でな……ソフィアの父上である、ラインハート公爵に頼まれて、公爵が、平民に産ませた娘を、私の愛人にしたのだよ。そして、その平民に産ませた娘、マリアとの間に作った子がジョージなのだよ。ラインハート家の血をいれるためとは言え、公爵も酷なことをさせる………そして、それを、ソフィアが嫌ってな……。」

「まぁ、それはそうでしょうが………。大変なんですね。」

そんな話をしていると、遠くで赤ん坊の泣き声がする。

「ちょっと!また泣いたわよ!何とかしなさいよ!」

ソフィア婦人が、応接間のドアを乱暴に開け放ち、怒鳴り込んでくる! 

「ああ、わかったよ。じゃあすまないハルト、私はこれで失礼する」

「あ、お邪魔しております。ソフィア様、では、キース様私も失礼いたします。」

なんだか、キース様もやつれていたご様子だったな……。

子供が出来る………僕の平穏な生活はどうなるんだ?
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