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第五章・ミャンマー行きの予定が何故か雲南へ
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 173
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二十三話
2009年12月29日、僕の乗る大型デラックスバスは、ガラ空きの高速道路をガンガン飛ばし、一路昆明を目指していた。
僕はその途中の景洪(ジンホン)までのチケットを持っていた。
乗務員も知っているはずなので、洪景のバスターミナル到着まで二階ベッドで仰臥して窓外の景色を眺めていた。
時刻は午後4時を過ぎた。
田舎の田園風景が続く高速道路、いつになったら着くのか、宿も探さないといけないので、少し気持ちが焦る。
と・・・その時、突然バスは高速道路の路肩で停車した。
「○△■※×△!」
上方お笑い芸人の中川家の弟そっくりな乗務員が何やら僕に叫ぶ。
窓際の上段ベッドで顔を上げて「何だ?」と聞くと、「ここが景洪だ」という。
「な、な、何だって?ここが景洪って、高速道路の路肩なんだけど・・・。」
仕方なくバックパックを担いで下車すると、中川家弟は「向こうの反対側の道路に渡ってバスが来るのを待って景洪まで行け」と言うのだ。(おそらくそういう風なことを言っているはず)
僕が躊躇していると、一緒に渡ってやると言う。
車が来ていないことをしっかり確かめてから、まずは中央分離帯へ急ぎ足で渡る。
今度は反対側から車が来ていないことを再度確かめてから反対車線の路肩へ急ぎ渡った。
重いバックパックを背負って、ヨイショヨイショと渡りながら、「僕はいったい何をしているのだ?」と自問自答するのだった。
中国雲南の田舎町に似つかわしくない高速道路の路肩で、汚れたバックパックを背負って佇む一人の中年日本人。
自分の姿を客観的に観察し、自嘲に似た苦笑いが自然に出た。
中川家弟は「それじゃ気をつけて!ここで向こうから来るバスに手を振って止めて、景洪のバスターミナルまで行けばいいよ!」ってなことを、いとも簡単にできるように言った。(身振り手振りで)
そして彼は再び駆け足で中央分離帯から昆明行きのバスに戻った。
佇む僕にバスの乗客たちは手を振る。
タイ人青年も南米系アメリカ人も窓から僕に向かって「良い旅を!」とでも言っているのか、手を振るのであった。
バスは走り去った。
高速道路の路肩に残された僕。
既に陽は傾き始めている。不安が心を支配し始めた。
しかし不安がってばかりいても仕方がない。
向かってくるバスに手を振らなければ行けない。
景洪まで何とか行かないと、高速道路の路肩の周辺には民家など見えないのだ。
1台、また1台とバスが通過する。大型バスもあればマイクロバスも通る。
しかし日本の高速道路のように頻繁に通るわけではない。
うかうかしていたら日が暮れる。
そして僕は視界に入った1台の白いマイクロバスに向かって手を大きく振った。
2009年12月29日、僕の乗る大型デラックスバスは、ガラ空きの高速道路をガンガン飛ばし、一路昆明を目指していた。
僕はその途中の景洪(ジンホン)までのチケットを持っていた。
乗務員も知っているはずなので、洪景のバスターミナル到着まで二階ベッドで仰臥して窓外の景色を眺めていた。
時刻は午後4時を過ぎた。
田舎の田園風景が続く高速道路、いつになったら着くのか、宿も探さないといけないので、少し気持ちが焦る。
と・・・その時、突然バスは高速道路の路肩で停車した。
「○△■※×△!」
上方お笑い芸人の中川家の弟そっくりな乗務員が何やら僕に叫ぶ。
窓際の上段ベッドで顔を上げて「何だ?」と聞くと、「ここが景洪だ」という。
「な、な、何だって?ここが景洪って、高速道路の路肩なんだけど・・・。」
仕方なくバックパックを担いで下車すると、中川家弟は「向こうの反対側の道路に渡ってバスが来るのを待って景洪まで行け」と言うのだ。(おそらくそういう風なことを言っているはず)
僕が躊躇していると、一緒に渡ってやると言う。
車が来ていないことをしっかり確かめてから、まずは中央分離帯へ急ぎ足で渡る。
今度は反対側から車が来ていないことを再度確かめてから反対車線の路肩へ急ぎ渡った。
重いバックパックを背負って、ヨイショヨイショと渡りながら、「僕はいったい何をしているのだ?」と自問自答するのだった。
中国雲南の田舎町に似つかわしくない高速道路の路肩で、汚れたバックパックを背負って佇む一人の中年日本人。
自分の姿を客観的に観察し、自嘲に似た苦笑いが自然に出た。
中川家弟は「それじゃ気をつけて!ここで向こうから来るバスに手を振って止めて、景洪のバスターミナルまで行けばいいよ!」ってなことを、いとも簡単にできるように言った。(身振り手振りで)
そして彼は再び駆け足で中央分離帯から昆明行きのバスに戻った。
佇む僕にバスの乗客たちは手を振る。
タイ人青年も南米系アメリカ人も窓から僕に向かって「良い旅を!」とでも言っているのか、手を振るのであった。
バスは走り去った。
高速道路の路肩に残された僕。
既に陽は傾き始めている。不安が心を支配し始めた。
しかし不安がってばかりいても仕方がない。
向かってくるバスに手を振らなければ行けない。
景洪まで何とか行かないと、高速道路の路肩の周辺には民家など見えないのだ。
1台、また1台とバスが通過する。大型バスもあればマイクロバスも通る。
しかし日本の高速道路のように頻繁に通るわけではない。
うかうかしていたら日が暮れる。
そして僕は視界に入った1台の白いマイクロバスに向かって手を大きく振った。
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