上 下
133 / 195
第四章 タイ・ラオス・ベトナム駆け足雨季の旅

サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 133

しおりを挟む

       第十七話

 2007年6月30日の夜、僕はラオスのサワナケートで、ベトナムのダナン行き国際バスに乗った。

 目的地はベトナムのフエ。翌朝の午前中には着く見込みである。

 ベトナム国境の町・デーンサワンへ向かったオンボロガタピシノンエアコンバスは、小雨が降り続く中、順調に走った。

 途中で国境を越える際に降車するだけだと思い込んでいた僕は、デーンサワンに到着してバスを降ろされた時、入国の手続きを終えたらすぐに出発するものと思っていた。

 ところが全員降りたあと、そのバスは荷物を積んだままどこかへ走り去った。

 降ろされた客たちは、最初呆然と立ち尽くしていたという印象だったが、係員のような小柄な男が何か言ったあと三々五々散っていった。

 降り続く小雨。民家の軒下で雨をしのいで立っている人々もいる。

 道路の両側には粗末な食堂があり、一軒の食堂の上が仮眠所となっているようだ。
 とりあえず食堂を抜けて狭い階段を上がってみた。

 するとそこには、狭い部屋に何十人ものラオス人やベトナム人が折り重なるように寝ていた。
 もちろん僕が入る余地は猫の額ほどもなかった。仕方なく食堂へ引き返す。

 その時突如として便意が襲った。おなかがグルグルと鳴る。

 国境付近は山岳地帯になっていて、夜になると気温が下がり、バスから降りたあと小雨の中をしばらく立っていたから急に冷えたのかも知れない。

 はて?トイレはどこにあるのだ。一階の食堂は人で溢れていた。

 店の人も次々と注文が来る料理を作ったり、飲み物を運ぶのに忙しい様子でトイレの場所を訊けない。

 慌てて道路を渡って反対側の食堂へ急ぐ。客席を抜けてキッチンに飛び込み、中年の女性に「トイレ!」と叫ぶ。

 建物の裏を指差す女性。サンキュウ!と言ってその方向へ雪崩込むように急ぐ。

 するとそこには粗末な小屋があり、明らかにトイレのようだった。
 電気をつけて中に入ると、しゃがみ型の日本式トイレがあった。(日本式とは少し違いますが)

 ホッとする間もなく、トイレが視界に入ったことで身体がすぐに反応し、激烈に便意が襲った。

 ズボンを下ろしてしゃがむや否や怒涛の勢いで排出されるものが・・・。
 しかもそれは下痢の様相を呈しており、さらに勢い余って少々便器をそれて飛び散ったものも・・・。(汚いのでこの程度にしますが)

 トイレにしゃがみながら、「いったい僕はこの国境で何をしているのだ?」と自分に可笑しくなったのでした。

 さて、スッキリしたあと先ほどの食堂に戻ると、バスで一緒だった欧米人カップルが大勢の現地人たちに挟まれて座っていた。
 偶然にも隣の椅子が空いていたのでそこに座った。

「いやぁ、いったい我々どうなるの?」と僕。

「ボーダーが開く朝までここで待つのじゃないか?」と男性。

 訊けばフランス人で、もうかれこれ一年以上旅を続けているとか。

 男性は白髪の混じった金髪の髭を顔中に貯え、一見すると日本の歌手で「また会う日まで」を歌っていた尾崎紀世彦さんにそっくりだった。かなりの年配である。

 女性はというと、彼には不釣合いな若いフランス人形のような美女。

 「いったいこの世の中はどうなっているのだ?」と心で憤慨する僕だった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

天空からのメッセージ vol.97 ~魂の旅路~

天空の愛
エッセイ・ノンフィクション
そのために、シナリオを描き そのために、親を選び そのために、命をいただき そのために、助けられて そのために、生かされ そのために、すべてに感謝し そのためを、全うする そのためは、すべて内側にある

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

処理中です...