上 下
123 / 195
第四章 タイ・ラオス・ベトナム駆け足雨季の旅

サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 123

しおりを挟む

       第七話


 ラオスに入国して市内へのタクシーやトゥクトゥク乗り場に佇む僕に、トゥクトゥク野郎が次々声をかけてくる。

「オールドマーケット?ツーハンドレッドフィフティバーツ!」と。

 それはあまりにエクスペンシブやないでっか!と言ったところで、どうやらこの料金がやはり相場のようだ。

 50バーツで行けと言った時に、人相の悪いトゥクトゥク野郎が「よし、乗れ!」と言ったが、おそらく目的地に着いて支払いの際にはきっちり250バーツと言って、ひと悶着あるに違いないと思われたので、僕はあきらめて人の良さそうなトゥクトゥクを選んで乗り込んだ。

 結局、出発間際にラオス人の女の子がふたり乗り込んできて、三人を乗せてトゥクトゥクは走り出した。

 女の子たちの料金はのちに分かるのだが、僕と同じタラートサオで降りて1万キップも支払っていなかったように窺えた。(この時期1万キップは120円程度、250バーツは1000円弱でした)

 市内へ向かう道は、もう四度目のラオス訪問だがほとんど変わっていないように思われた。

 少し舗装部分が増えたかなと感じる道路と、道路沿いに点在する民家の中に明らかに新築または改装した建物が目立つ程度か。

 途中、トゥクトゥクを一人の若い女性が手を挙げて止めた。

 まだ3人程度は余裕のある座席へ彼女が乗り込んできた。 
 ところがこれが驚きの美女。

 彼女の容貌はまるでバンコクのBTS車内やバラゴンなどで見られる、携帯電話やコスメなどの大広告に起用されているモデルさんのようなのだ。

 スレンダーな体躯を薄いピンクのブラウスに白のスカートで包み、白のハイヒールをお履きになった彼女は、とても洗練された雰囲気が漂っていた。

 しかもブラウスの胸の辺りはハミ乳で、ほのかに甘い香水のにおいがトゥクトゥック内に漂い、男は僕だけだし、まるでキャバクラにいるようだった。(行ったことはないが)

 ラオスにもこんな美女がいるのだ。

 僕は驚きと好奇でチラチラと彼女の方に何度も何度も目が行ってしまい、クラクラと目まいがしそうなくらい、うっとりとその姿に見とれてしまうのだった。

 ここで「一枚写真を撮らせてください」と言うのが慣れた旅人なのかも知れないが、残念ながら言えなかった。

 心舞い踊る僕とラオス女性三人を乗せたトゥクトゥクはタラートサオで止まり、全員が降りた。
 美女はトゥクトゥク野郎と何やら世間話を交わしてからタラートサオに入って行った。

 おそらく美女は、タラートサオの中に前回訪れた際に見た、三階建ての新しいショッピングセンターのどこかの店舗に勤めているのではないかと推測された。

 宿にバックパックをおろしてから、あとで見に行ってみよう。

 さて、重いバックパックを背負ってチャンターゲストハウスに向かった。

 この年の元旦に訪れた時は、シーズンでもあったので予約メールを入れていた。
 今回も六月二十六日の朝に着きますと一応メールを出していた。

 空はノンカイに着いた時と変わらずどんよりと曇っていた。
 旅行者の姿は見えない。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

天空からのメッセージ vol.97 ~魂の旅路~

天空の愛
エッセイ・ノンフィクション
そのために、シナリオを描き そのために、親を選び そのために、命をいただき そのために、助けられて そのために、生かされ そのために、すべてに感謝し そのためを、全うする そのためは、すべて内側にある

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

処理中です...