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サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 ⑯
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第一章 2001年 春
十六
フランスパンサンドと激甘のラオコーヒーで、既に朝食を済ませたことを正直にN君に言えないまま、お腹が一杯の状態でタラート・サオの方にブラブラと向かった。
途中、郵便局に寄ってエアメールを出そうと思ったが、この日は日曜日だった。
こちらに来ていると曜日の感覚がなくなってしまう。
タラート・サオの周辺はビエンチャン市内で最も賑やかに思うくらい、乗り物や人々でごった返していた。
市場の向かいはバンヴィエンや南ラオス方面行きのバス乗り場になっていることもあって、朝から屋台やみやげ物売り場も営業していた。
走行する車やトゥクトゥクが舞い上げる砂埃などを気にもせずに、朝ごはん中の地元の人たちも多く見かけた。
僕達は市場の前にズラーと軒を連ねた果物屋や野菜売り場の並びにある屋台の前に座り、ヌードルスープを注文した。
隣の男性がが食べているヌードルはベトナムのフォーのようなものだったので、僕はそれを期待して待った。
間もなく運ばれてきたヌードルは米粉で作った半透明の白い麺で、まさしくフォーのようだった。
N君はパクチー(香草)が余り好きでないらしく、適当に唐辛子を練ったものを入れて食べはじめた。
僕もテーブルの上に置かれていた野菜類や調味料を加えて食べてみた。
出汁はやはり鶏がらスープでさっぱりとした感じ、パクチーも好きだし、すでにフランスパンサンドイッチでお腹が一杯でも美味しく食べることができた。
ふたりとも満足してお勘定を頼むと、なんと一万二千Kipと言うのだ。
ひとり六千Kipはいくらなんでも高すぎると思って、「So Expensive! Each3,000Kip Ok?」と言ってみたのだが、逞しいおばちゃんは首を横に振るだけで、聞く耳を持たないといった雰囲気であった。
やむなく六千Kipずつ支払ったが、これにはN君も、「ちょっとボラれたのと違いますか?ヌードルがビアラオの大瓶とほぼ同じ値段ということはないですもんね」と、ニコニコしながら言っていた。
(ボラれたといっても30円か40円程なんだけど、このあたりすでに現地の貨幣感覚になっていたのかもしれない)
まあいいやということで、市場内でビアラオがプリントされたティーシャツを一枚22,000キープで購入し、昨日のトゥクトゥクのアニイとの約束の時間が近づいてきたので宿に戻ると、すでにアニイが準備万端で待っていた。
「早いねぇ。ちょっと待って、支度してくるから」といった感じの会話で(まあそんな感じなんだ)部屋に戻り、カメラや貴重品が入ったミニバックを首からぶら下げて外に出た。
とりあえず値段の交渉を再度行っておこうと思い、「一人30,000Kipでブッダパークとフレンドシップブリッジ、博物館の三ヶ所だね」と念を押すと、ニッコリしてオッケーと彼が頷き、すぐに出発した。
僕達を乗せたトゥクトゥクは、昨日国境から来た道を逆方向に戻って行き、三十分近くも走っただろうか、フレンドリーシップブリッジの入口を通り越してしばらく走るとブッダパークという所に到着した。
入場料を支払い(千キープ、十五円ほどだったと記憶しています)、中に入って少し歩くと、いきなり腕枕をして横になっている行儀の悪い仏様が見えた。
寝仏というらしいのだが、何だコこれは?と思ってその方向に行くと、さらに首がいくつもある仏様やおかしなポーズをしている仏様がたくさん無造作に置かれていて、不謹慎だが声をあげて笑ってしまった。
入口付近にはジャングルジムのようなものがあり、勿論僕は上まで登ってパーク全体を見下ろして写真を撮った。
N君もあちこちウロウロしていたが、ここには登ろうとせずに、下から僕を眺めていた。
きっと彼は僕のことを、いい年をして何をはしゃいでいるんだろうって思ったに違いない。
ひとしきり回ってからブッダパークを出てトゥクトゥクに再び乗り、次に民族文化公園という所を訪れた。
ここはブッダパークの近くにあり、入場料はブッダパークと同じ千Kipだったと記憶している。
かなり広い敷地には野外劇場があり、その奥はビエンチャン市民がアウトドアを楽しむような森林公園で、若いグループが輪になって談笑しているのが見えた。
そこを抜けるとメコン川に突き当たり、川沿いに立つと遥か向こうに友好橋(フレンドリーシップブリッジ)が見えた。
敷地内には他にもラオスの人々の生活様式などを紹介した建物があったが、僕達が訪れた時は改装中で、室内はガラ-ンとしていた。
僅か二ヶ所と、遠くに友好橋を眺めただけなのに、次第に太陽が高くなってきたこともあって体中から汗が流れ出してきた。
N君はさすがに疲れ気味で、あちこち動き回って時にはセルフタイマーで写真を撮ったりしている僕を見て、少し呆れていた様子だった。
公園を出て道路の反対側で営業している出店に行き、トゥクトゥクのアニイに何か飲まないかと訊いたら、何でもよいというのでペプシを買って手渡し、休憩することにした。
少し言葉を交わすと、彼は三十二才で妻との間に三人の子供をもうけているとのことで、トゥクトゥクは本職だと語っていた。
僕に「Your familly?」と訊くので、「I am single. But,I have two son」と答えたら、首をひねって考え込んでいた。
午後十二時を過ぎたので帰ろうということになり、三十分ほどかかって宿に戻り、約束どおりふたりで六万Kip支払って、宿の前でアニイと記念撮影をして別れた。
僕より十五才も年下だが、しっかりした人物に思えた。
家族を守り、養っていくということは、どこの国の男性にとっても大変なんだ。
十六
フランスパンサンドと激甘のラオコーヒーで、既に朝食を済ませたことを正直にN君に言えないまま、お腹が一杯の状態でタラート・サオの方にブラブラと向かった。
途中、郵便局に寄ってエアメールを出そうと思ったが、この日は日曜日だった。
こちらに来ていると曜日の感覚がなくなってしまう。
タラート・サオの周辺はビエンチャン市内で最も賑やかに思うくらい、乗り物や人々でごった返していた。
市場の向かいはバンヴィエンや南ラオス方面行きのバス乗り場になっていることもあって、朝から屋台やみやげ物売り場も営業していた。
走行する車やトゥクトゥクが舞い上げる砂埃などを気にもせずに、朝ごはん中の地元の人たちも多く見かけた。
僕達は市場の前にズラーと軒を連ねた果物屋や野菜売り場の並びにある屋台の前に座り、ヌードルスープを注文した。
隣の男性がが食べているヌードルはベトナムのフォーのようなものだったので、僕はそれを期待して待った。
間もなく運ばれてきたヌードルは米粉で作った半透明の白い麺で、まさしくフォーのようだった。
N君はパクチー(香草)が余り好きでないらしく、適当に唐辛子を練ったものを入れて食べはじめた。
僕もテーブルの上に置かれていた野菜類や調味料を加えて食べてみた。
出汁はやはり鶏がらスープでさっぱりとした感じ、パクチーも好きだし、すでにフランスパンサンドイッチでお腹が一杯でも美味しく食べることができた。
ふたりとも満足してお勘定を頼むと、なんと一万二千Kipと言うのだ。
ひとり六千Kipはいくらなんでも高すぎると思って、「So Expensive! Each3,000Kip Ok?」と言ってみたのだが、逞しいおばちゃんは首を横に振るだけで、聞く耳を持たないといった雰囲気であった。
やむなく六千Kipずつ支払ったが、これにはN君も、「ちょっとボラれたのと違いますか?ヌードルがビアラオの大瓶とほぼ同じ値段ということはないですもんね」と、ニコニコしながら言っていた。
(ボラれたといっても30円か40円程なんだけど、このあたりすでに現地の貨幣感覚になっていたのかもしれない)
まあいいやということで、市場内でビアラオがプリントされたティーシャツを一枚22,000キープで購入し、昨日のトゥクトゥクのアニイとの約束の時間が近づいてきたので宿に戻ると、すでにアニイが準備万端で待っていた。
「早いねぇ。ちょっと待って、支度してくるから」といった感じの会話で(まあそんな感じなんだ)部屋に戻り、カメラや貴重品が入ったミニバックを首からぶら下げて外に出た。
とりあえず値段の交渉を再度行っておこうと思い、「一人30,000Kipでブッダパークとフレンドシップブリッジ、博物館の三ヶ所だね」と念を押すと、ニッコリしてオッケーと彼が頷き、すぐに出発した。
僕達を乗せたトゥクトゥクは、昨日国境から来た道を逆方向に戻って行き、三十分近くも走っただろうか、フレンドリーシップブリッジの入口を通り越してしばらく走るとブッダパークという所に到着した。
入場料を支払い(千キープ、十五円ほどだったと記憶しています)、中に入って少し歩くと、いきなり腕枕をして横になっている行儀の悪い仏様が見えた。
寝仏というらしいのだが、何だコこれは?と思ってその方向に行くと、さらに首がいくつもある仏様やおかしなポーズをしている仏様がたくさん無造作に置かれていて、不謹慎だが声をあげて笑ってしまった。
入口付近にはジャングルジムのようなものがあり、勿論僕は上まで登ってパーク全体を見下ろして写真を撮った。
N君もあちこちウロウロしていたが、ここには登ろうとせずに、下から僕を眺めていた。
きっと彼は僕のことを、いい年をして何をはしゃいでいるんだろうって思ったに違いない。
ひとしきり回ってからブッダパークを出てトゥクトゥクに再び乗り、次に民族文化公園という所を訪れた。
ここはブッダパークの近くにあり、入場料はブッダパークと同じ千Kipだったと記憶している。
かなり広い敷地には野外劇場があり、その奥はビエンチャン市民がアウトドアを楽しむような森林公園で、若いグループが輪になって談笑しているのが見えた。
そこを抜けるとメコン川に突き当たり、川沿いに立つと遥か向こうに友好橋(フレンドリーシップブリッジ)が見えた。
敷地内には他にもラオスの人々の生活様式などを紹介した建物があったが、僕達が訪れた時は改装中で、室内はガラ-ンとしていた。
僅か二ヶ所と、遠くに友好橋を眺めただけなのに、次第に太陽が高くなってきたこともあって体中から汗が流れ出してきた。
N君はさすがに疲れ気味で、あちこち動き回って時にはセルフタイマーで写真を撮ったりしている僕を見て、少し呆れていた様子だった。
公園を出て道路の反対側で営業している出店に行き、トゥクトゥクのアニイに何か飲まないかと訊いたら、何でもよいというのでペプシを買って手渡し、休憩することにした。
少し言葉を交わすと、彼は三十二才で妻との間に三人の子供をもうけているとのことで、トゥクトゥクは本職だと語っていた。
僕に「Your familly?」と訊くので、「I am single. But,I have two son」と答えたら、首をひねって考え込んでいた。
午後十二時を過ぎたので帰ろうということになり、三十分ほどかかって宿に戻り、約束どおりふたりで六万Kip支払って、宿の前でアニイと記念撮影をして別れた。
僕より十五才も年下だが、しっかりした人物に思えた。
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