7 / 208
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 ⑦
しおりを挟む
第一章 2001年 春
タイにはこれまで六十五回ほど、ラオスには二十回あまり訪れていますが、この旅行記の背景は2001年の春で、このときはまだ二度目の訪問でした。だから、いろんなものが目新しくて驚きの連続でした。
当時は、現在とはネット環境や社会情勢がかなり違っていますので、ところどころ意外に感じられるかも知れません。
七
タイの出国イミグレーション近くでトゥクトゥクを降りた。
おじさんには約束の四十バーツ(百二十円弱)を支払い、コップン・カーとお礼を言ってゲートに向かった。
ゲートの前までに来ると、網のフェンスの向こうに鉄道線路が敷かれており、いずれこれが友好橋(フレンドリーシップブリッジ)を渡ってラオスの首都・ヴィエンチャンまで開通するらしいのだが、ラオス側の経済的事由により工事が進まないらしい。
(現在は完成して鉄道での国境の行き来が可能になっています)
今回の旅は、ラオスのアライバルビザを国境で取得するということが、駆け出しのバックパッカーの僕にとってはひとつの目的でもあった。
何度も僕の話に出てくる、前年にベトナムで数日間過ごした彼女が、この友好橋のボーダーでラオスビザを簡単に取得したと話していた。
だがその後、翌年になって何等かの理由で、アライバルビザの取得が一時不可能になったという情報を、僕はWebなどで確認していた。
ラオスは1999年から2000年をラオス観光年としていたので、それが終わったことにより、アライバルビザは友好橋では簡単に取れなくなったのかもしれないと僕は思っていた。
国情の変化でビザの状況が変わるのは仕方がなく、もし取得できなかった場合はその時に考えればいいことである。
ラオスビザは日本で旅行代理店などに依頼すると一万数千円もかかり、タイ側の国境近くの代行者に頼むと、それなりに便利な面はあっても二千バーツが相場(この時のレートで五千八百円ほどかな)と聞いていたから、できれば自分で取りたいと思っていたのだ。
ここからはバスに乗って、メコン川のこちら側にあるタイのイミグレーション窓口近くにて一旦降車し、タイ出国手続きをするらしい。
バスに乗り込む前に係員に十バーツを支払って空席に座る。
バックパックは膝の上に置いて出発を待つ。
大勢のタイ人やラオス人と、旅人らしき数人の欧米人とアジア人が乗り込んできてからようやくバスは出発した。
だが、わずか三分ほどでタイ出国窓口に到着した。
慌ただしく下車する乗客、送れずについて行くと大きなテーブルがいくつか設置されており、出国カードが置かれていた。
それを一枚手にする人と、カードを持たずに出国窓口に並ぶ人とに分かれていた。
どういった区別があるのか分からなかったが、ともかく僕は出国カードを取って、空いている椅子に座ってテーブルの上で慎重に記入をはじめた。
情報によれば、出国手続きを早く済ませる人と記入に時間がかかる人とがいるから、バスは一定時間待ってある程度乗車したら、メコン川を渡ってラオス入国窓口へ出発してしまうらしいのだ。
しかしバスは次々来るから、最初支払った十バーツのチケットさえ持っていれば、次のバスに乗って渡っても何等差し支えがない。
もちろん僕は出国カードの記入に手間取り、乗ってきたバスはとっくに行ってしまった。
だが、そんなことは気にせずに記入デスクでまわりを見渡してみると、数人の欧米人旅行者の他に、僕と同じようにボンヤリとした感じの日本人らしき男性を見つけた。
早速、僕は彼の方へ近づいていった。
「こんにちは~、日本の方ですよね」
「そうですけど」
「僕はこういった書類を書くのに慣れてないんですよ。ちょっと教えてくれませんか」
僕は意識的に微笑みながら言った。
ところが彼は、「いや、僕もあまり知りませんねん。適当に書いたらええんとちゃいますか」と、バリバリの大阪弁で目を細めながら言うのであった。
中背の少しふっくらとした体躯で、しかも言葉からして関西人らしいということから、僕はホッとした気持ちになり、「ラオスは初めてですか?」と訊いてみた。
この時に知り合った彼と、この先ビエンチャンからバンビエン、そしてルアンパバーンへと、旅は道連れ世は何とかになるとは、この時は全く思わなかった。
タイにはこれまで六十五回ほど、ラオスには二十回あまり訪れていますが、この旅行記の背景は2001年の春で、このときはまだ二度目の訪問でした。だから、いろんなものが目新しくて驚きの連続でした。
当時は、現在とはネット環境や社会情勢がかなり違っていますので、ところどころ意外に感じられるかも知れません。
七
タイの出国イミグレーション近くでトゥクトゥクを降りた。
おじさんには約束の四十バーツ(百二十円弱)を支払い、コップン・カーとお礼を言ってゲートに向かった。
ゲートの前までに来ると、網のフェンスの向こうに鉄道線路が敷かれており、いずれこれが友好橋(フレンドリーシップブリッジ)を渡ってラオスの首都・ヴィエンチャンまで開通するらしいのだが、ラオス側の経済的事由により工事が進まないらしい。
(現在は完成して鉄道での国境の行き来が可能になっています)
今回の旅は、ラオスのアライバルビザを国境で取得するということが、駆け出しのバックパッカーの僕にとってはひとつの目的でもあった。
何度も僕の話に出てくる、前年にベトナムで数日間過ごした彼女が、この友好橋のボーダーでラオスビザを簡単に取得したと話していた。
だがその後、翌年になって何等かの理由で、アライバルビザの取得が一時不可能になったという情報を、僕はWebなどで確認していた。
ラオスは1999年から2000年をラオス観光年としていたので、それが終わったことにより、アライバルビザは友好橋では簡単に取れなくなったのかもしれないと僕は思っていた。
国情の変化でビザの状況が変わるのは仕方がなく、もし取得できなかった場合はその時に考えればいいことである。
ラオスビザは日本で旅行代理店などに依頼すると一万数千円もかかり、タイ側の国境近くの代行者に頼むと、それなりに便利な面はあっても二千バーツが相場(この時のレートで五千八百円ほどかな)と聞いていたから、できれば自分で取りたいと思っていたのだ。
ここからはバスに乗って、メコン川のこちら側にあるタイのイミグレーション窓口近くにて一旦降車し、タイ出国手続きをするらしい。
バスに乗り込む前に係員に十バーツを支払って空席に座る。
バックパックは膝の上に置いて出発を待つ。
大勢のタイ人やラオス人と、旅人らしき数人の欧米人とアジア人が乗り込んできてからようやくバスは出発した。
だが、わずか三分ほどでタイ出国窓口に到着した。
慌ただしく下車する乗客、送れずについて行くと大きなテーブルがいくつか設置されており、出国カードが置かれていた。
それを一枚手にする人と、カードを持たずに出国窓口に並ぶ人とに分かれていた。
どういった区別があるのか分からなかったが、ともかく僕は出国カードを取って、空いている椅子に座ってテーブルの上で慎重に記入をはじめた。
情報によれば、出国手続きを早く済ませる人と記入に時間がかかる人とがいるから、バスは一定時間待ってある程度乗車したら、メコン川を渡ってラオス入国窓口へ出発してしまうらしいのだ。
しかしバスは次々来るから、最初支払った十バーツのチケットさえ持っていれば、次のバスに乗って渡っても何等差し支えがない。
もちろん僕は出国カードの記入に手間取り、乗ってきたバスはとっくに行ってしまった。
だが、そんなことは気にせずに記入デスクでまわりを見渡してみると、数人の欧米人旅行者の他に、僕と同じようにボンヤリとした感じの日本人らしき男性を見つけた。
早速、僕は彼の方へ近づいていった。
「こんにちは~、日本の方ですよね」
「そうですけど」
「僕はこういった書類を書くのに慣れてないんですよ。ちょっと教えてくれませんか」
僕は意識的に微笑みながら言った。
ところが彼は、「いや、僕もあまり知りませんねん。適当に書いたらええんとちゃいますか」と、バリバリの大阪弁で目を細めながら言うのであった。
中背の少しふっくらとした体躯で、しかも言葉からして関西人らしいということから、僕はホッとした気持ちになり、「ラオスは初めてですか?」と訊いてみた。
この時に知り合った彼と、この先ビエンチャンからバンビエン、そしてルアンパバーンへと、旅は道連れ世は何とかになるとは、この時は全く思わなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる