7 / 195
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 ⑦
しおりを挟む
第一章 2001年 春
タイにはこれまで六十五回ほど、ラオスには二十回あまり訪れていますが、この旅行記の背景は2001年の春で、このときはまだ二度目の訪問でした。だから、いろんなものが目新しくて驚きの連続でした。
当時は、現在とはネット環境や社会情勢がかなり違っていますので、ところどころ意外に感じられるかも知れません。
七
タイの出国イミグレーション近くでトゥクトゥクを降りた。
おじさんには約束の四十バーツ(百二十円弱)を支払い、コップン・カーとお礼を言ってゲートに向かった。
ゲートの前までに来ると、網のフェンスの向こうに鉄道線路が敷かれており、いずれこれが友好橋(フレンドリーシップブリッジ)を渡ってラオスの首都・ヴィエンチャンまで開通するらしいのだが、ラオス側の経済的事由により工事が進まないらしい。
(現在は完成して鉄道での国境の行き来が可能になっています)
今回の旅は、ラオスのアライバルビザを国境で取得するということが、駆け出しのバックパッカーの僕にとってはひとつの目的でもあった。
何度も僕の話に出てくる、前年にベトナムで数日間過ごした彼女が、この友好橋のボーダーでラオスビザを簡単に取得したと話していた。
だがその後、翌年になって何等かの理由で、アライバルビザの取得が一時不可能になったという情報を、僕はWebなどで確認していた。
ラオスは1999年から2000年をラオス観光年としていたので、それが終わったことにより、アライバルビザは友好橋では簡単に取れなくなったのかもしれないと僕は思っていた。
国情の変化でビザの状況が変わるのは仕方がなく、もし取得できなかった場合はその時に考えればいいことである。
ラオスビザは日本で旅行代理店などに依頼すると一万数千円もかかり、タイ側の国境近くの代行者に頼むと、それなりに便利な面はあっても二千バーツが相場(この時のレートで五千八百円ほどかな)と聞いていたから、できれば自分で取りたいと思っていたのだ。
ここからはバスに乗って、メコン川のこちら側にあるタイのイミグレーション窓口近くにて一旦降車し、タイ出国手続きをするらしい。
バスに乗り込む前に係員に十バーツを支払って空席に座る。
バックパックは膝の上に置いて出発を待つ。
大勢のタイ人やラオス人と、旅人らしき数人の欧米人とアジア人が乗り込んできてからようやくバスは出発した。
だが、わずか三分ほどでタイ出国窓口に到着した。
慌ただしく下車する乗客、送れずについて行くと大きなテーブルがいくつか設置されており、出国カードが置かれていた。
それを一枚手にする人と、カードを持たずに出国窓口に並ぶ人とに分かれていた。
どういった区別があるのか分からなかったが、ともかく僕は出国カードを取って、空いている椅子に座ってテーブルの上で慎重に記入をはじめた。
情報によれば、出国手続きを早く済ませる人と記入に時間がかかる人とがいるから、バスは一定時間待ってある程度乗車したら、メコン川を渡ってラオス入国窓口へ出発してしまうらしいのだ。
しかしバスは次々来るから、最初支払った十バーツのチケットさえ持っていれば、次のバスに乗って渡っても何等差し支えがない。
もちろん僕は出国カードの記入に手間取り、乗ってきたバスはとっくに行ってしまった。
だが、そんなことは気にせずに記入デスクでまわりを見渡してみると、数人の欧米人旅行者の他に、僕と同じようにボンヤリとした感じの日本人らしき男性を見つけた。
早速、僕は彼の方へ近づいていった。
「こんにちは~、日本の方ですよね」
「そうですけど」
「僕はこういった書類を書くのに慣れてないんですよ。ちょっと教えてくれませんか」
僕は意識的に微笑みながら言った。
ところが彼は、「いや、僕もあまり知りませんねん。適当に書いたらええんとちゃいますか」と、バリバリの大阪弁で目を細めながら言うのであった。
中背の少しふっくらとした体躯で、しかも言葉からして関西人らしいということから、僕はホッとした気持ちになり、「ラオスは初めてですか?」と訊いてみた。
この時に知り合った彼と、この先ビエンチャンからバンビエン、そしてルアンパバーンへと、旅は道連れ世は何とかになるとは、この時は全く思わなかった。
タイにはこれまで六十五回ほど、ラオスには二十回あまり訪れていますが、この旅行記の背景は2001年の春で、このときはまだ二度目の訪問でした。だから、いろんなものが目新しくて驚きの連続でした。
当時は、現在とはネット環境や社会情勢がかなり違っていますので、ところどころ意外に感じられるかも知れません。
七
タイの出国イミグレーション近くでトゥクトゥクを降りた。
おじさんには約束の四十バーツ(百二十円弱)を支払い、コップン・カーとお礼を言ってゲートに向かった。
ゲートの前までに来ると、網のフェンスの向こうに鉄道線路が敷かれており、いずれこれが友好橋(フレンドリーシップブリッジ)を渡ってラオスの首都・ヴィエンチャンまで開通するらしいのだが、ラオス側の経済的事由により工事が進まないらしい。
(現在は完成して鉄道での国境の行き来が可能になっています)
今回の旅は、ラオスのアライバルビザを国境で取得するということが、駆け出しのバックパッカーの僕にとってはひとつの目的でもあった。
何度も僕の話に出てくる、前年にベトナムで数日間過ごした彼女が、この友好橋のボーダーでラオスビザを簡単に取得したと話していた。
だがその後、翌年になって何等かの理由で、アライバルビザの取得が一時不可能になったという情報を、僕はWebなどで確認していた。
ラオスは1999年から2000年をラオス観光年としていたので、それが終わったことにより、アライバルビザは友好橋では簡単に取れなくなったのかもしれないと僕は思っていた。
国情の変化でビザの状況が変わるのは仕方がなく、もし取得できなかった場合はその時に考えればいいことである。
ラオスビザは日本で旅行代理店などに依頼すると一万数千円もかかり、タイ側の国境近くの代行者に頼むと、それなりに便利な面はあっても二千バーツが相場(この時のレートで五千八百円ほどかな)と聞いていたから、できれば自分で取りたいと思っていたのだ。
ここからはバスに乗って、メコン川のこちら側にあるタイのイミグレーション窓口近くにて一旦降車し、タイ出国手続きをするらしい。
バスに乗り込む前に係員に十バーツを支払って空席に座る。
バックパックは膝の上に置いて出発を待つ。
大勢のタイ人やラオス人と、旅人らしき数人の欧米人とアジア人が乗り込んできてからようやくバスは出発した。
だが、わずか三分ほどでタイ出国窓口に到着した。
慌ただしく下車する乗客、送れずについて行くと大きなテーブルがいくつか設置されており、出国カードが置かれていた。
それを一枚手にする人と、カードを持たずに出国窓口に並ぶ人とに分かれていた。
どういった区別があるのか分からなかったが、ともかく僕は出国カードを取って、空いている椅子に座ってテーブルの上で慎重に記入をはじめた。
情報によれば、出国手続きを早く済ませる人と記入に時間がかかる人とがいるから、バスは一定時間待ってある程度乗車したら、メコン川を渡ってラオス入国窓口へ出発してしまうらしいのだ。
しかしバスは次々来るから、最初支払った十バーツのチケットさえ持っていれば、次のバスに乗って渡っても何等差し支えがない。
もちろん僕は出国カードの記入に手間取り、乗ってきたバスはとっくに行ってしまった。
だが、そんなことは気にせずに記入デスクでまわりを見渡してみると、数人の欧米人旅行者の他に、僕と同じようにボンヤリとした感じの日本人らしき男性を見つけた。
早速、僕は彼の方へ近づいていった。
「こんにちは~、日本の方ですよね」
「そうですけど」
「僕はこういった書類を書くのに慣れてないんですよ。ちょっと教えてくれませんか」
僕は意識的に微笑みながら言った。
ところが彼は、「いや、僕もあまり知りませんねん。適当に書いたらええんとちゃいますか」と、バリバリの大阪弁で目を細めながら言うのであった。
中背の少しふっくらとした体躯で、しかも言葉からして関西人らしいということから、僕はホッとした気持ちになり、「ラオスは初めてですか?」と訊いてみた。
この時に知り合った彼と、この先ビエンチャンからバンビエン、そしてルアンパバーンへと、旅は道連れ世は何とかになるとは、この時は全く思わなかった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
天空からのメッセージ vol.97 ~魂の旅路~
天空の愛
エッセイ・ノンフィクション
そのために、シナリオを描き
そのために、親を選び
そのために、命をいただき
そのために、助けられて
そのために、生かされ
そのために、すべてに感謝し
そのためを、全うする
そのためは、すべて内側にある
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる