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猫の日 前日
しおりを挟む「あの…ね…?」
「ん?」
夜、寝室に入ってから意を決して聞いた。
本当は昨日聞くつもりだったんだけど聞けなかった事。
明日の朝は聞くの忘れてるかもしれないし、帰宅した彼にいきなり凄いのを渡されたら、きっと腰が引けてしまう。
だから
「明日の猫の日…何かするの…?」
言って真っ赤になる。
何だかまるで、自分からそういう事を誘っているように聞こえたから。
「良かった」
彼がニッコリ笑った。
「君が乗り気で。凄く嬉しいよ」
…乗り気じゃない。
別に進んでそんな格好、したい訳じゃない。
でも…彼が「して」って言うなら、断るつもりもない…。
そう思って俯いた。
すると
「明日は、これ着て?」
渡されたのは、あまり大きくない紙袋。服とかが入るサイズじゃない。
…今回は、耳だけとかかな?
ちょっとほっとしながら袋の口を開けて中を覗き込んで。
それからバシっと閉じた。
「な…な…な……」
口をパクパクさせる。
言葉が出ない。
詳しくはないけれど、さっき見たのはきっとアレだ。
心臓がバクバクいう。
彼が笑う。
「着て、くれるよね?旦那様の為に」
凄くいやらしい笑み。
でも格好良くて大好きで。
頷く以外の返事はないのだけれど、流石に即答はできずに真っ赤になった。
◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
私の手から紙袋を取り上げて、彼がベッドの上に中身を広げていく。
猫耳
これはわかってた。
彼が言わなくても、付けるつもりでいた。
ファー付きの手錠
これも…想定内だ。
たまに、縛られたりはしてるし…
尻尾…
これも…まあ、うん……
初めてだけど、猫だから耳があれば尻尾もあっても…おかしくは…ない………うん……
でも……
その隣。
なんか黒いレザーの、輪っかみたいのがいくつも繋がったヤツ!
それ絶対、ボンテージとかそういうヤツだっ…!!
黒いツヤツヤしたエナメルレザーっぽい輪っかと、金属の輪が繋がってる何か。
小さいのに、存在感が……
「当日見せて驚かせようかと思ったんだけど、まだちょっと君には刺激が強いかなって」
彼の手が、私を押し倒して髪をシーツに押さえつけた。
「だけど一日あれば、心の準備ができるでしょ?」
ニッコリ笑った彼の顔が近づいてくる。
心の準備、必要かなとは思ってたけどっ!でもアレは一日じゃ足りない気がする……
「だから今日は、これを着た君を想像しながらするね?」
いや何でそうなるの…
と突っ込めずに、ボタンが外されていく。
今日妄想するだけで、満足してくれないだろうか…。
「きっと凄く似合うだろうなぁ。明日が楽しみ…」
ちゅっと何度もキスされる。
…泣きたい。
明日アレを自分が着てるだろうって、わかるだけに。
だってこんなワクワクしてる彼を前に、拒否なんてできない。
でも…
チラっと横目でそれを見る。
もう、服とは絶対に言えないし、下着とも言いにくいそれ。
マイクロビキニよりは面積大きいだろうけど、レザーってなんか妙にいやらしくて……
じっとそれを横目で見ていたら、不意に目元にキスされた。
「そんなに気になる?今すぐ着る?」
ブンブンと思いきり首を横に振った。
たとえ明日着るとしても、今日は遠慮したい。
もしかしたら、明日彼の気が変わって着なくてよくなるかもしれな……いとは全く思えないけれど。
それでも前倒しするつもりはない。
「じゃあ、そんなに熱い視線を向けて、僕を嫉妬させないで」
彼の大きな手に胸を揉まれながらキスされる。
相変わらず私の旦那様は、無機物にも平等に嫉妬深い。
「今日は頭の中でアレを君に着せて、明日は本当にアレを着た君を抱ける。一つで二度楽しめる。贅沢だなぁ」
楽しそうに笑う彼に、一瞬「実際に今すぐ着た方がマシなんじゃ」なんて考えが浮かんだけど、多分そんな事はない筈だ。
アレを着るのは、一度きりで済ませたい…。
「…君の白い肌に、黒のエナメルはよく映えるだろうね……」
頭の中でまざまざと想像しているであろうそんな言葉に、羞恥を煽られるけれど。
でもきっと、実際に着る方が恥ずかしいから今は耐える。
服を脱がされ、じっと見つめられる。
じっと………
じっと…………………
じっと………………………………
「っ…長いよっ…!」
思わず突っ込んだら
「ごめん、ごめん。アレ付けた君があまりに凄くて。…放ったらかしてごめんね?」
………!!
そんなに凄いの!?
アレ、そんなに凄いの!??
今は革と金属の塊が置いてあるだけだから、装着後どんな感じかわからない。だから余計に腰が引ける。
でも
「大丈夫。今からちゃんと、可愛がってあげるから…」
ちゅっとキスする彼から逃げられる筈も無くて、宣言通り今日もきっちり可愛がられてしまった…。
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