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エピローグ〜数年後〜
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私は今、ダンと屋敷で暮らしている。
もう…身体の繋がりもある。
夫が許してくれたから…。
ダンに触れたい、触れられたいとずっと思ってはいたけれど、それはしてはいけないことだとも思っていた。
いざ、触れられても良いとなると強い抵抗があった。
けれど、
「君にもできる限り幸せになって欲しい」
そんな言葉を大真面目に言った夫に背中を押されるようにして、ダンと夜を過ごした。
ダンは、一生身体の関係を持たなくても、私の側にいてくれたかもしれない。
けれど、ダンと初めて夜を共にして、そうしなくてよかったと心から思った。
好きな人と一つになることが、こんなにも幸せなことだとは思わなかった。
私はキスされた瞬間からことが終わるまで、ほぼ泣きどおしだった。
嬉しくて。幸せすぎて。
ダンの全てを受け入れられる。そのことが、嬉しすぎて。
ダンも私につられたのか、最後の方は少し泣いていた。
いい大人が二人してバカみたいだとは思ったけれど、涙が止まらなかった。
翌朝、ダンは改めて私に剣を捧げて誓った。
「あなたを一生、一番近くでお護りします。私の全てで」
それは、私たちにとっては婚姻の誓いも同然だった。
どうにかすると言っていた夫は、今まで使われていなかった夫婦の寝室の続き部屋を、ダンの部屋と定めた。
つまり、誰にも見咎められることなく、夜もダンと一緒にいられる。
夫自らがそう決めたこと、そして屋敷に帰ってきた時には私に優しく接してくれることもあってか、使用人たちからの風当たりは思ったほどキツくない。
昼間は、ダンとも主従の距離を保っている。
あくまでこの屋敷の主人は夫だと、態度で示す為にも。使用人たちの態度があまり変わらなかったのは、その所為もあるのかもしれない。
流石にダンとの間に子どもを作る訳にはいかないので、話し合った結果ダンが手術を受けた。避妊薬も考えたのだけれど、質のいいものはとても高く、そもそも日常的に使用すれば副作用の心配があったので。
ダンは
「俺はあなたさえいればいい」
と言ってくれるけれど、もしかしたら残念がっているかもしれない。自分の子どもを残せないことを。
けれど、どうしてもこの線は譲れなかった。
していいことと、してはいけないこと。
今の状況が既に十分イレギュラーなのだから、これ以上はダメなのだ。
私は本当は少し、残念に思っているのだけれど、こればかりは仕方がない。
夫は相変わらず、想い人と暮らしている。この屋敷と比べるのもおかしなくらい小さな家で。
何だか夫を追い出したみたいで気が引けるのだけれど
「君には、この屋敷でやってもらわなければならない仕事がある。私はどうせ王宮勤めだから、寝るところさえあればいい」
と言われてしまった。
そういうところも、夫らしいと苦笑する。
「それに私は、今とても幸せだ」
そう心から微笑む夫を見て、これは当分は意見を変えなそうだとあきらめる。この話はまたしばらく経ってからにしよう。
代わりに
「私もです」
そう返した私に、夫はとても嬉しそうな顔で笑ってくれた。
もう…身体の繋がりもある。
夫が許してくれたから…。
ダンに触れたい、触れられたいとずっと思ってはいたけれど、それはしてはいけないことだとも思っていた。
いざ、触れられても良いとなると強い抵抗があった。
けれど、
「君にもできる限り幸せになって欲しい」
そんな言葉を大真面目に言った夫に背中を押されるようにして、ダンと夜を過ごした。
ダンは、一生身体の関係を持たなくても、私の側にいてくれたかもしれない。
けれど、ダンと初めて夜を共にして、そうしなくてよかったと心から思った。
好きな人と一つになることが、こんなにも幸せなことだとは思わなかった。
私はキスされた瞬間からことが終わるまで、ほぼ泣きどおしだった。
嬉しくて。幸せすぎて。
ダンの全てを受け入れられる。そのことが、嬉しすぎて。
ダンも私につられたのか、最後の方は少し泣いていた。
いい大人が二人してバカみたいだとは思ったけれど、涙が止まらなかった。
翌朝、ダンは改めて私に剣を捧げて誓った。
「あなたを一生、一番近くでお護りします。私の全てで」
それは、私たちにとっては婚姻の誓いも同然だった。
どうにかすると言っていた夫は、今まで使われていなかった夫婦の寝室の続き部屋を、ダンの部屋と定めた。
つまり、誰にも見咎められることなく、夜もダンと一緒にいられる。
夫自らがそう決めたこと、そして屋敷に帰ってきた時には私に優しく接してくれることもあってか、使用人たちからの風当たりは思ったほどキツくない。
昼間は、ダンとも主従の距離を保っている。
あくまでこの屋敷の主人は夫だと、態度で示す為にも。使用人たちの態度があまり変わらなかったのは、その所為もあるのかもしれない。
流石にダンとの間に子どもを作る訳にはいかないので、話し合った結果ダンが手術を受けた。避妊薬も考えたのだけれど、質のいいものはとても高く、そもそも日常的に使用すれば副作用の心配があったので。
ダンは
「俺はあなたさえいればいい」
と言ってくれるけれど、もしかしたら残念がっているかもしれない。自分の子どもを残せないことを。
けれど、どうしてもこの線は譲れなかった。
していいことと、してはいけないこと。
今の状況が既に十分イレギュラーなのだから、これ以上はダメなのだ。
私は本当は少し、残念に思っているのだけれど、こればかりは仕方がない。
夫は相変わらず、想い人と暮らしている。この屋敷と比べるのもおかしなくらい小さな家で。
何だか夫を追い出したみたいで気が引けるのだけれど
「君には、この屋敷でやってもらわなければならない仕事がある。私はどうせ王宮勤めだから、寝るところさえあればいい」
と言われてしまった。
そういうところも、夫らしいと苦笑する。
「それに私は、今とても幸せだ」
そう心から微笑む夫を見て、これは当分は意見を変えなそうだとあきらめる。この話はまたしばらく経ってからにしよう。
代わりに
「私もです」
そう返した私に、夫はとても嬉しそうな顔で笑ってくれた。
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お読みいただきありがとうございました!
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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なので楽しかったと言ってもらえてほっとしています。
子どもがグレそうになったらあの真面目な顔で諭すのかと思うとちょっと笑ってしまいますw
ありがとうございました!
というか何でダンと肉体関係があることになってるんだろうと…