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話し合い
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メイドにお茶を用意させて人払いをした部屋で、夫と向かい合った。
「君は…彼が好きなのか?」
夫が躊躇いがちに口を開いた。
いきなり核心に踏み込むところも夫らしいと苦笑しつつ、曖昧に微笑んでみせた。
好きだ。
ダンのことが。
とても好き。
でもそれを夫に言うのは躊躇われた。
「そうか」
それでも夫は、私の反応を肯定と取ったようで、重いため息を吐いた。
夫が私に情を向けてくれているのは感じている。もっとも、彼にはもっと大切な人がいるのだけれど。
それでも、夫と私の間には絆がある。
夫婦として、一緒にこの家を守っていくパートナーとしての絆。
義務として子を作る為に、何度も夜をともにした絆。
そうして出来た、息子の親としての絆。
それが今、彼に痛みを与えているのだろうか。
ぼんやりと、そう思う。
「……あと一人、男児を産んでもらわなければならないが、その後は子どもさえできなければ好きにして構わない。…別れることはできないが」
長い沈黙の後、絞り出すような声で夫が言った。
あと一人
私たちには、まだ長男のロズウェルしかいない。この社会では、女は最低二人の男児を産むことを求められる。跡継ぎと、そのスペア。
娘も、嫁がせて関係強化に使えるけれど必須ではない。
意外な言葉に目を見開いた。
ダンと結ばれていいと、そういう意味に取っていいのだろうか…。
夫からそんな許可が出るのは予想外だった。精々、心の中で想うのを黙認してくれる程度だろうと思っていたのに。
信じられない思いで凝視する。夫は俯いて自分の拳を見つめている。
…この深刻な感じ、そういう意味で間違いないようだ。
夫のあまりの真面目さに思わずため息が出た。
「…君にばかりすまない」
私のため息を別の意味にとったのか、夫が謝罪した。
確かに、彼はもう何年も前から好きな女性と一緒に暮らしている。その女性との間に子どももいる。
そんな中で、私にばかり我慢をさせるのが申し訳ないと…。
本当に生真面目な人。
苦笑する。
男の当然の権利だと、自分は外に何人も女を囲って、妻には貞淑を求める男性が大半なのに。
妻なのだから当然だと、ダンを解雇して私を孤立させて閉じ込めて、妻としての義務を押しつけることだって、夫である彼にはできるのに。決してそうすることはないだろう。
夫のこういうところ、嫌いではない。完全に満足のいく形ではないけれど、私のこともできるだけ考えようとしてくれるところ。
わかっている。
生まれた子が夫以外の子かもしれないと、疑われるような行為はできないと。
流石に夫も、それを許す訳にはいかないだろう。
たとえ私に対して後ろめたく思っていても。
それに私も、そんな行為を自分に許せはしない。
私にはこの家の血を繋ぐ義務がある。
無関係なダンの血を混ぜることなどできない。
それは私のダンへの恋情とは別物なのだ。
男と女の身体の作りの違いだ。仕方がない。
だから私が、ダンに身を許すことはできない。…まだ。
理解しているけれど。
それでも少しだけ意地悪したくなってしまった。だから
「今さらですわ」
そう笑って、情けなく眉を下げる夫の顔を楽しんだ。
「君は…彼が好きなのか?」
夫が躊躇いがちに口を開いた。
いきなり核心に踏み込むところも夫らしいと苦笑しつつ、曖昧に微笑んでみせた。
好きだ。
ダンのことが。
とても好き。
でもそれを夫に言うのは躊躇われた。
「そうか」
それでも夫は、私の反応を肯定と取ったようで、重いため息を吐いた。
夫が私に情を向けてくれているのは感じている。もっとも、彼にはもっと大切な人がいるのだけれど。
それでも、夫と私の間には絆がある。
夫婦として、一緒にこの家を守っていくパートナーとしての絆。
義務として子を作る為に、何度も夜をともにした絆。
そうして出来た、息子の親としての絆。
それが今、彼に痛みを与えているのだろうか。
ぼんやりと、そう思う。
「……あと一人、男児を産んでもらわなければならないが、その後は子どもさえできなければ好きにして構わない。…別れることはできないが」
長い沈黙の後、絞り出すような声で夫が言った。
あと一人
私たちには、まだ長男のロズウェルしかいない。この社会では、女は最低二人の男児を産むことを求められる。跡継ぎと、そのスペア。
娘も、嫁がせて関係強化に使えるけれど必須ではない。
意外な言葉に目を見開いた。
ダンと結ばれていいと、そういう意味に取っていいのだろうか…。
夫からそんな許可が出るのは予想外だった。精々、心の中で想うのを黙認してくれる程度だろうと思っていたのに。
信じられない思いで凝視する。夫は俯いて自分の拳を見つめている。
…この深刻な感じ、そういう意味で間違いないようだ。
夫のあまりの真面目さに思わずため息が出た。
「…君にばかりすまない」
私のため息を別の意味にとったのか、夫が謝罪した。
確かに、彼はもう何年も前から好きな女性と一緒に暮らしている。その女性との間に子どももいる。
そんな中で、私にばかり我慢をさせるのが申し訳ないと…。
本当に生真面目な人。
苦笑する。
男の当然の権利だと、自分は外に何人も女を囲って、妻には貞淑を求める男性が大半なのに。
妻なのだから当然だと、ダンを解雇して私を孤立させて閉じ込めて、妻としての義務を押しつけることだって、夫である彼にはできるのに。決してそうすることはないだろう。
夫のこういうところ、嫌いではない。完全に満足のいく形ではないけれど、私のこともできるだけ考えようとしてくれるところ。
わかっている。
生まれた子が夫以外の子かもしれないと、疑われるような行為はできないと。
流石に夫も、それを許す訳にはいかないだろう。
たとえ私に対して後ろめたく思っていても。
それに私も、そんな行為を自分に許せはしない。
私にはこの家の血を繋ぐ義務がある。
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それは私のダンへの恋情とは別物なのだ。
男と女の身体の作りの違いだ。仕方がない。
だから私が、ダンに身を許すことはできない。…まだ。
理解しているけれど。
それでも少しだけ意地悪したくなってしまった。だから
「今さらですわ」
そう笑って、情けなく眉を下げる夫の顔を楽しんだ。
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