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おまけ2
レオンと庭を散歩しました
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(子どもの頃のレオンとリーシャ)
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「母上。庭を歩きませんか?」
サロンのソファで本を読んでいたら、今日の授業が終わったらしきレオンに誘われた。
「ええ、喜んで」
ニコリと笑って立ち上がると、スッと肘を差し出された。
もう女性のエスコートもできるようになったレオン。
息子の成長に嬉しくなる。
エスコートに対する戸惑いはない。
殿下の子どもたちと一緒に暮らすので、私もマナーなど必要なことは習っているから。
そっとその腕を取ると、レオンは私を見上げて誇らしげに笑った。
サクサクと音を立てて、庭の小道を歩く。色とりどりの花が植えられた、とても美しく広い庭。
レオンが指を差しながらあれこれと教えてくれる。
最近、草木について授業で習っているのだという。その成果を私に見せてくれているのだ。
「あれはプリセラと言って南方原産の花なのですが、寒さにも強く色鮮やかなので王都でも人気なんです。花期が長いので時候の挨拶には向きませんが、代わりに見た目の割にどこでも育つ丈夫さや繁殖力の高さからーー」
「そうなのね」
レオンの説明に頷く。
その花は、中心は白く中ほどから紫と青のグラデーションがかかっている。菱形に近い花びらが幾重にも重なり合い、端にいくにつれてヒラヒラと波打っている。花びらの縁はチリチリと細かく縮れていて、まるでドレスの裾のよう。
とても見応えのある花だ。
「それからあの花はーー」
次々に一生懸命説明してくれるレオンが微笑ましくて、思わず口元がほころぶ。
草木は貴族の紋章や隠喩、花言葉、時候の挨拶など様々な場面で使われるので、王侯貴族には必須の知識らしい。
だからこの屋敷にはこんなにもたくさんの種類の植物が植えてあるのかと、今さらながらに納得した。
それにしても、よくこんなに色々覚えられるものだと感心する。自分が産んだ子だとは思えないほど優秀だ。やはり殿下の血を引いているから…
「…なんですか?母上」
レオンを眺めていたら、不思議そうな顔をされた。
軽く首を振る。
「幸せだと、そう思って」
大切な我が子の成長を、こんなに近くで見ていられる。
とても幸せなことだ。
本来なら、産むだけ産んで取り上げられていたかもしれない子…。
私の答えに、レオンは頬を赤くした。
「………私もです」
その表情が可愛くて、思わず頭を撫でる。
「愛しているわ」
そう呟くと、レオンはもごもごと呟きながら顔を逸らしてしまった。そろそろ親にそう言われると恥ずかしい年頃なのかもしれない。
少し寂しく思いながらも散歩は続く。
レオンは別に怒った訳ではなかったようで、その後も細かく色々教えてくれた。半分以上は聞いてすぐに忘れてしまったけれど、幸せなひと時だった。
広い庭にも端はある。
散歩の終わりに、花の枝を一本手渡された。微かに緊張を滲ませた表情で。
「これを、母上に」
可愛らしい花だ。
薄い黄色の細かい花がたくさん集まって咲いている。
「ありがとう」
笑って受け取ったのだけれど、レオンはすぐに目を逸らして俯いてしまった。
「…あの…母上は…花言葉など…詳しかったりは……」
ボソボソとした小さな声はよく聞き取れない。
「え?」
身を屈めて聞き返したけれど、レオンは顔を上げて首を振った。
「いえ、なんでもありません。独り言です」
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「母上。庭を歩きませんか?」
サロンのソファで本を読んでいたら、今日の授業が終わったらしきレオンに誘われた。
「ええ、喜んで」
ニコリと笑って立ち上がると、スッと肘を差し出された。
もう女性のエスコートもできるようになったレオン。
息子の成長に嬉しくなる。
エスコートに対する戸惑いはない。
殿下の子どもたちと一緒に暮らすので、私もマナーなど必要なことは習っているから。
そっとその腕を取ると、レオンは私を見上げて誇らしげに笑った。
サクサクと音を立てて、庭の小道を歩く。色とりどりの花が植えられた、とても美しく広い庭。
レオンが指を差しながらあれこれと教えてくれる。
最近、草木について授業で習っているのだという。その成果を私に見せてくれているのだ。
「あれはプリセラと言って南方原産の花なのですが、寒さにも強く色鮮やかなので王都でも人気なんです。花期が長いので時候の挨拶には向きませんが、代わりに見た目の割にどこでも育つ丈夫さや繁殖力の高さからーー」
「そうなのね」
レオンの説明に頷く。
その花は、中心は白く中ほどから紫と青のグラデーションがかかっている。菱形に近い花びらが幾重にも重なり合い、端にいくにつれてヒラヒラと波打っている。花びらの縁はチリチリと細かく縮れていて、まるでドレスの裾のよう。
とても見応えのある花だ。
「それからあの花はーー」
次々に一生懸命説明してくれるレオンが微笑ましくて、思わず口元がほころぶ。
草木は貴族の紋章や隠喩、花言葉、時候の挨拶など様々な場面で使われるので、王侯貴族には必須の知識らしい。
だからこの屋敷にはこんなにもたくさんの種類の植物が植えてあるのかと、今さらながらに納得した。
それにしても、よくこんなに色々覚えられるものだと感心する。自分が産んだ子だとは思えないほど優秀だ。やはり殿下の血を引いているから…
「…なんですか?母上」
レオンを眺めていたら、不思議そうな顔をされた。
軽く首を振る。
「幸せだと、そう思って」
大切な我が子の成長を、こんなに近くで見ていられる。
とても幸せなことだ。
本来なら、産むだけ産んで取り上げられていたかもしれない子…。
私の答えに、レオンは頬を赤くした。
「………私もです」
その表情が可愛くて、思わず頭を撫でる。
「愛しているわ」
そう呟くと、レオンはもごもごと呟きながら顔を逸らしてしまった。そろそろ親にそう言われると恥ずかしい年頃なのかもしれない。
少し寂しく思いながらも散歩は続く。
レオンは別に怒った訳ではなかったようで、その後も細かく色々教えてくれた。半分以上は聞いてすぐに忘れてしまったけれど、幸せなひと時だった。
広い庭にも端はある。
散歩の終わりに、花の枝を一本手渡された。微かに緊張を滲ませた表情で。
「これを、母上に」
可愛らしい花だ。
薄い黄色の細かい花がたくさん集まって咲いている。
「ありがとう」
笑って受け取ったのだけれど、レオンはすぐに目を逸らして俯いてしまった。
「…あの…母上は…花言葉など…詳しかったりは……」
ボソボソとした小さな声はよく聞き取れない。
「え?」
身を屈めて聞き返したけれど、レオンは顔を上げて首を振った。
「いえ、なんでもありません。独り言です」
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