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if サイラスルート

サイラスとの初めての夜です

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(2章7 揺らいでしまいますの分岐)
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何故、あの時頷いてしまったのだろう。
分からない。

でもあの時、私はサイラスの手を取った。
サイラスを、選んだ…。




「母上…」

寝台の上でサイラスと二人きり。胸も下もたくさん触られた。けれど今日は何故かお尻には触れられていない。なのにサイラスは挿れる体勢をとった。

「サイラス…?」

そっちは…
サイラスのモノが当てられた場所に戸惑うと、サイラスが苦笑を返した。

「いくよ、母上」

「ぁああっ…!?」

サイラスのモノが挿入ってきた。いつもとは違う場所に。きゅっとそれを締めつけながらも混乱する。

「サイ…ラスっ…ど…してっ…?」

「……………嫌?」

不安そうな眼で見つめられて、反射的に首を横に振った。サイラスの空気が和らぐ。

「でも…どうして…」

「……………嫌じゃないなら、少しだけ黙ってて」

抽送を開始されて、どちらにしろしゃべれなくなった。
別に嫌ではないのだけれど驚いた。サイラスはいつも、こちらに挿れるのは嫌がっていたから。だから今日も当たり前のようにお尻に挿れられるとばかりーー

思考を巡らせかけたけれど、中をかき回される刺激に思考もかき回されていく。

とても気持ちがよくて。他のことなんて考えられない。
身体が、サイラスから与えられる快感で満たされていく。

すぐ目の前にある、きつく寄せられた眉を見つめた。珍しく余裕のないその表情に、鼓動が大きく脈打つ。サイラスの顎から伝った汗が、私の肌に落ちる。

「中に出すよ」

奥に叩きつけられて。

「僕のリーシャ」

吐き出す瞬間にそう囁かれた。

中がドロドロに溶けてしまったような錯覚。身体がサイラスのモノにきつく絡みつく。

「サイラスっ…」

目を閉じて快感に浸る。

気持ちいい。でも、もっと欲しい。

その気持ちを隠す。
そんな風にねだるのは流石に恥ずかしい…
くすりとサイラスが笑った。

「少し待ってて母上。もっとしてあげるから」

隠したつもりでバレていた。
恥ずかしさに頬が赤くなる。
その頬にキスされる。

「リーシャは可愛いね」

目を細めて笑われて。恥ずかしいけれど嬉しい。
けれど、一つ気になった。
口に出そうとして少し躊躇う。
…言ったら多分、サイラスを傷つけてしまう…

「何?リーシャ」

サイラスが言い淀む私に気づいた。
今日、サイラスは私を何度も「リーシャ」と呼ぶ。けれど…

「リーシャ…」

促すように、キスされた。
ああ…やっぱり似ている……

…言いにくいけれど…今言った方がいいだろう。

「その…」

満足そうなサイラスの微笑みを見つめる。

「なぁに?リーシャ」

サイラスの甘い声。
今から言うことが申し訳ない。
でも今言わないと、多分、いつかもっと傷つけてしまう…。

「その…呼び方…」

「……嫌?」

途端にサイラスが顔色を変えた。
微笑みがスッと消える。

「…僕に名前で呼ばれるのは嫌?父上にも兄上にも呼ばせてたくせに?」

声にも苛立ちが混じる。

「僕に呼ばれるのは嫌?」

頬に手をすべらされる。
でもその手つきは、先ほどまでの優しいものとは違っていて。

「ごめんなさい…そう呼ばれると……混乱してしまいそうで……」

ああ…やっぱり傷つけた…。

申し訳なさに目を伏せる。
決して嫌な訳ではない。
でも、夢中になったら、どうしても間違えてしまいそうな気がするのだ。
その顔で。その声で。そう呼ばれると。
彼らは……あまりに似すぎている。
最中に違う名前を呼ぶのだけは避けたかった。

沈黙が落ちる。
私に触れるサイラスの手が震えている。続いて大きなため息。
やっぱり…怒らせてしまっただろうか…。
視線を上げられない。

サイラスの手が、そっと私の肩に触れた。

「仕方ないよね。最中に父上や兄上を呼ばれたら、僕、母上に何しちゃうかわからないし」

静かな声。
言葉では理解を示しながらも、見上げた瞳は笑っていなかった。

「ごめんなさ…」

キスで先を封じられる。

「いいよ。理解できない訳じゃない」

先ほどよりは少し落ちついた声。
静かに見つめ合う。
暫しの沈黙。

「………じゃあ…「リィ」って呼ぼうか」

「え…?」

「母上のこと、僕はリィって呼ぶ。それでどう?」

真面目な顔のサイラス。
その提案に、驚きながらも頷いた。

「だから絶対に、間違えたりしたら嫌だよ?」

今度は少し悪戯っぽく。
でも本気の口調で。
その言葉にもう一度頷いた。

よかった。怒っていない。
それに

「リィ」なんて愛称で呼ばれたことは今までなかった。
そう呼ぶのはサイラスだけ。私の人生で、サイラスだけ。
何か特別なものをもらったような気がして、心がふわふわする。自然と頬が緩んだ。

「でも…」

なんだろう?
言葉を切ったサイラスを見つめる。

「僕だけって不公平だよね?」

「え?」

意味がわからなくて首を傾げた。

「リィも、僕のこと別の名前で呼んで?」

じっと見つめられる。

「え…?でも…」

サイラスは間違えたりしないのでは…

「「サイラス」は息子としての名前でしょ?夫として、別の名前で呼んで」

「…夫?」

唐突なその言葉に驚いて目を瞬く。

「違うの?僕はそのつもりで母上を…じゃないね、リィを抱いたんだけど。母う…リィは違ったの?僕はリィの何?ただの息子?望んだ時に気持ちよくしてくれるだけの相手?」

「……っ…」

サイラスが、そんなつもりでいてくれたなんて知らなかった…
驚きと戸惑いで、返事ができない。

「ねぇ、気の迷いで僕に抱かれたの?それとも………この先ずっと、僕のものになるつもりで?」

「………………………」

酷い話、自分の気持ちをよく考えていなかった。
ただあの時、サイラスに選んでと言われて、衝動的に抱きついてしまったのだ。

私、どうして?
どうしてサイラスに縋ったの?
どうしてサイラスを選んだの?
どうしてサイラスに抱かれたの?

わからない…。
答えられない私に、サイラスが続けた。
俯いて。
私のお腹に手を当てて。
らしくない暗い声で。

「ここに、さ。僕の精液、もう入っちゃったよ?…妊娠するかもしれないね。今日、僕との子を。……どうするの?………母上…」

ついさっき、そうしたことを後悔している声。

けれどサイラスにそう言われて、湧き上がったのは嫌悪ではなく歓喜だった。そしてそれは自然と表情にも出た。

気配で気づいたのだろうか。サイラスが顔を上げて呆然と私を見つめた。
嬉しそうに笑う私を。
サイラスの子を妊娠した可能性に、喜ぶ私を。

「なんだ、そっか」

一転して破顔したサイラスに抱きしめられた。

「そっか、母上」

軽く口づけられる。続いて擦り寄せられた頬がくすぐったい。
何も言葉にはしていないのに伝わっている。それが何だかとても幸せに思えて、私もサイラスに頬を擦り寄せた。
二人してクスクス笑う。

なんだ。私はそういうつもりで、サイラスに抱かれたのか。
彼と子どもを作って一緒に育てたいと。ずっと一緒にいたいと。そういうつもりで。
心が一気に軽くなった。

「じゃあ確実にできるまで頑張るよ」

サイラスの嬉しそうな声。

「僕のリィ。愛してる」

今度は、その言葉を素直に受け止められた。

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