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第2章
9 レオンの手を、取ります
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「リーシャ…もう………父上の身がわりでも…いい…から………私に…抱かれ…て…ください…」
私の肩をつかんだレオンが、苦しげに訴えた。
「レオン…!?」
どうしていきなり、そんなことを…
「すみません…あなたの気持ちが私に向くまで、いつまでだって待つつもりだったんです。でも…」
レオンの顔は青白く、今にも壊れてしまいそうだった。
「でも、一度は吹っ切れたように見えたのに、それでもあなたは私の手を取ってはくれない……そんなに父上がいいですか?私では代わりになれませんか?私では…あなたの心を向けるには足りませんか?何をしたら、あなたは私のものになってくれるんですか…?」
レオンの手に力がこもった。
痛みに思わず眉を顰めたけれど、それにさえ気づく余裕がないようで。
「リーシャ…」
不意に引き寄せられ、キスをされた。
突然のことに、体が強張る。
それを見て、レオンが苦く笑った。
「酷いな、リーシャ」
そして呟いた。
まるで殿下のような口調で。
「僕の可愛いリーシャ」
耳元でレオンが苦しそうに囁く。
「レオ…ン?」
「………僕のことは、父上だと思ってくれていいよ」
苦い、笑い声。
そしてもう一度キスされた。
引き剥がそうと腕に力を込めたけれど、びくともしない。
「リーシャ…君が欲しい…」
至近距離で囁かれた。
暗い瞳で。
そして三度目のキス。
今度は舌が入ってきた。
苦しそうな、泣いているような呻き声とともに、舌を絡められる。
レオンの辛そうな様子が耐えられなくて、どうにか止めたくて、思わずレオンの舌を噛んだ。
「っ!?」
体を離し、驚いたような目で私を見つめるレオン。その目はさっきよりもずっと傷ついて見えた。
「やめ…て…殿下の振りなんて…しないで…」
「…君が望むことなら…君が喜ぶことなら、なんだってするよ。したいんだ。リーシャ」
首を横に振って、殿下の真似をする必要などないと告げる。けれど彼に伝わっていないことに気づいた。
「レオン…殿下はもう…」
…なんと言えばいいのだろう?
私の心を占めていない?
それは、少しだけ嘘になってしまう。
まだ、殿下を想う気持ちが完全に消えた訳ではない。…多分一生、少しだけ、私はあの人のことを想い続けてしまうのだろう。
でも、今レオンを止めた理由はそれではない。
それをどう、レオンに伝えればいいのだろう。
迷ってレオンを見つめた。
こんなに傷つけてしまったのに、それでも私の言葉を待ってくれているレオンを。
…全部正直に言おう
たとえ呆れられてしまっても
優しい彼の目が覚めて、嫌われてしまったとしても
そう思った。
「……私が今、惹かれているのはあなたよ、レオン…」
レオンの目が、大きく見開かれた。
この続きを言うのは勇気がいるけれど、言わない訳にはいかない。伝えなくてはいけない。レオンに。
「でも…自信がないの。…ある訳ないでしょう?こんな私が、どうやってあなたを幸せにできるというの?だってそうでしょう?こんな、特に何ができる訳でもない女。あなたを愛していた筈なのに、あっさり殿下に心を奪われるような女。おまけに私とあなたは血がーー」
そっと唇を塞がれた。
体の芯が、震える。
「リーシャ…本当に?」
レオンが、震える手で私の頬を包んだ。
「本当に、今は私のことが好き?父上より?男として?」
潤んだ瞳で見つめられる。
私の頬に当てられた彼の手にそっと触れた。
少し首を動かして、彼の手のひらにキスをする。想いを込めて。
そして頷いて彼を見つめた。
レオンが、こんな私でも望んでくれるというのなら。
あんなにも容易く殿下に揺らいでレオンへの想いを失くした私を、求めてくれるというなら。
レオンが、それでも私が欲しいと言ってくれるなら。
今度こそ、私の全部を受け取って欲しい。
心も身体もすべて。
この先の人生すべて。
私のすべてを。
あなたにーー
私の肩をつかんだレオンが、苦しげに訴えた。
「レオン…!?」
どうしていきなり、そんなことを…
「すみません…あなたの気持ちが私に向くまで、いつまでだって待つつもりだったんです。でも…」
レオンの顔は青白く、今にも壊れてしまいそうだった。
「でも、一度は吹っ切れたように見えたのに、それでもあなたは私の手を取ってはくれない……そんなに父上がいいですか?私では代わりになれませんか?私では…あなたの心を向けるには足りませんか?何をしたら、あなたは私のものになってくれるんですか…?」
レオンの手に力がこもった。
痛みに思わず眉を顰めたけれど、それにさえ気づく余裕がないようで。
「リーシャ…」
不意に引き寄せられ、キスをされた。
突然のことに、体が強張る。
それを見て、レオンが苦く笑った。
「酷いな、リーシャ」
そして呟いた。
まるで殿下のような口調で。
「僕の可愛いリーシャ」
耳元でレオンが苦しそうに囁く。
「レオ…ン?」
「………僕のことは、父上だと思ってくれていいよ」
苦い、笑い声。
そしてもう一度キスされた。
引き剥がそうと腕に力を込めたけれど、びくともしない。
「リーシャ…君が欲しい…」
至近距離で囁かれた。
暗い瞳で。
そして三度目のキス。
今度は舌が入ってきた。
苦しそうな、泣いているような呻き声とともに、舌を絡められる。
レオンの辛そうな様子が耐えられなくて、どうにか止めたくて、思わずレオンの舌を噛んだ。
「っ!?」
体を離し、驚いたような目で私を見つめるレオン。その目はさっきよりもずっと傷ついて見えた。
「やめ…て…殿下の振りなんて…しないで…」
「…君が望むことなら…君が喜ぶことなら、なんだってするよ。したいんだ。リーシャ」
首を横に振って、殿下の真似をする必要などないと告げる。けれど彼に伝わっていないことに気づいた。
「レオン…殿下はもう…」
…なんと言えばいいのだろう?
私の心を占めていない?
それは、少しだけ嘘になってしまう。
まだ、殿下を想う気持ちが完全に消えた訳ではない。…多分一生、少しだけ、私はあの人のことを想い続けてしまうのだろう。
でも、今レオンを止めた理由はそれではない。
それをどう、レオンに伝えればいいのだろう。
迷ってレオンを見つめた。
こんなに傷つけてしまったのに、それでも私の言葉を待ってくれているレオンを。
…全部正直に言おう
たとえ呆れられてしまっても
優しい彼の目が覚めて、嫌われてしまったとしても
そう思った。
「……私が今、惹かれているのはあなたよ、レオン…」
レオンの目が、大きく見開かれた。
この続きを言うのは勇気がいるけれど、言わない訳にはいかない。伝えなくてはいけない。レオンに。
「でも…自信がないの。…ある訳ないでしょう?こんな私が、どうやってあなたを幸せにできるというの?だってそうでしょう?こんな、特に何ができる訳でもない女。あなたを愛していた筈なのに、あっさり殿下に心を奪われるような女。おまけに私とあなたは血がーー」
そっと唇を塞がれた。
体の芯が、震える。
「リーシャ…本当に?」
レオンが、震える手で私の頬を包んだ。
「本当に、今は私のことが好き?父上より?男として?」
潤んだ瞳で見つめられる。
私の頬に当てられた彼の手にそっと触れた。
少し首を動かして、彼の手のひらにキスをする。想いを込めて。
そして頷いて彼を見つめた。
レオンが、こんな私でも望んでくれるというのなら。
あんなにも容易く殿下に揺らいでレオンへの想いを失くした私を、求めてくれるというなら。
レオンが、それでも私が欲しいと言ってくれるなら。
今度こそ、私の全部を受け取って欲しい。
心も身体もすべて。
この先の人生すべて。
私のすべてを。
あなたにーー
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