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未知の生命体との遭遇

156燃える鳥

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 スクリーンに映ったパトラと運営委員会では、
中野学校諜報員から持たされた膨大な量の報告書を前にして、
流浪の民の生い立ちと理念と祝福されているとの拠り所により、
約束された土地へ帰れるとの希望があるとの報告書であった。

 運営委員会とすれば、曖昧過ぎる拠り所だとの思いだが、
同情出来る部分はあるので、
突き放す事は出来ないとの結論を出した。

 ガイア様の眷属であろうと思っている闇の樹海に住む二万年樹霊ならば、
これまでの経過を知るであろうとのおもいで、
老樹霊を会議に招待することを決めた。

ガイア女神様だけを信じて、九つの徳を常に讃えなさいと、十の約束をさせると、約束の土地を与えました。」

 老樹霊は、国を持たない流浪の民は、
過去になぜ約束された土地を授けられたのかの経緯を話し出した。

「海に面した広い草原と、
豊かな土壌の樹海を管理していた最初に生まれた老樹霊は、
民族ごと奴隷にされていた民を憐れんで、
彼らを導いて豊かな土地へ案内した。

 老樹霊は{自分は決して神ではない}と言って、
自分の姿の偶像化を禁止しました。

 ガイア女神様だけを信じて、九つの徳を常に讃えなさいと、
九つの徳を修得し、偶像崇拝を禁止して、十の約束をさせると、
約束の土地を与えました。」

「十の約束?九つの徳以外に何の為に?何故偶像化を禁止に?」

「以前、ガイア様は七千年眠りの最中と、お話ししたでしょう。
その最中に、
自分の判断でガイア女神の意志の助けだと言ってしまった事と、
老樹霊は自分を偶像化される事には、罪悪感があったのでしょう。」

「なぜ彼等は、約束の土地を追い出されたのですか?
最初に生まれた老樹霊は、
なぜ最後まで面倒見てやれなかったのでしょうか?」

「約束の土地は、約束を遂行する約束でしょう。
何故に反故にされたの?
流浪の民は、自分で故郷を放棄したの?」
と、
テテサ教皇とマーガレットは次々と不審がった。

「いいえ、騙されて奪われたのです。
当時、次第に隣国一帯を従えだした征服者は、
共にガイア様の偶像を祀り、
庇護されている事に感謝を表そうと誘いました。」

「約束の土地を与えられ導かれた民衆も、
誘われて偶像を祀ったのですか?」

「導かれた民衆はすでに亡くなっていて、
子供や孫の時代であったがために、
祖先の受けた加護で土地所有者になったことと、
豊かになった、自分達は感謝を表すべきだと主張するものが現れだしたのです。」

「感謝を表す。自然な行為だろう。」

「約束を破って老樹霊の偶像を造ったのは一部の流浪の民ですが、
導かれた民衆の子孫はたがいに衝突して憎みあい、
内部分裂してしまいました。
囁いたのは隣国一帯を従えだした征服者であり、謀略家であった。
囁いたのは今のカントリ国の祖先たちです。」

「約束を破らせて、衝突して憎み合わせるのが、目的であったと?
しかしながら、老樹霊であれば、未然に防げたであろうに?」

「最初に生まれた老樹霊は、何故諌めなかったの?」
「最初に生まれた老樹霊は、
人間と深く関わるのを避けたかったようです。」

「何が約束された土地を、放棄した原因なの?」

「約束の地は、豊かな土地なので多くの人種が集まりはじめました。
隣国の征服者は開墾に協力すると偽って、
自国の奴隷を使って次々と樹海を伐採して耕作地にしていきました。

そして、奴隷達は、豊かな土地の樹海に火をつけてしまいました。

約束された者たちの子孫が老樹霊の偶像を造り、
偶像崇拝してしまった事で、老樹霊は責任を感じたのか、
土地を明け渡すために人種のなすがままに炎を受け入れたのでしょう。」

「当時であったならば、魔物や魔獣を使役すれば防げただろうに、
何で抵抗しなかったの?」

「彼らを導いた老樹霊は、彼らの安全の為に、
魔物も魔獣もすでに樹海から追い出してしまっていたのです。」

「まさか?最初に生まれた老樹霊も、その炎で焼けてしまったのでは?」

「 導きの老樹霊は征服者によって焼かれてしまったが、
老樹木が燃え盛っているのに、
自分の種を征服者に追われた約束の土地をもらった人々に託して、
消えてしまいました。」
老樹木の跡地には、征服者は神殿建造した。
神殿には三つの聖なる柩が納められた。否定しません。老樹木の跡地には、征服者の棺が置かれたそうです。」

「流浪の民となった原因は、
大陸の半分を支配したというカントリ国の祖先たちですか?」

「そうです。最初に生まれた老樹霊の加護がなくなった約束の地を与えられた子孫は、
征服されて奴隷に落とさそうになったが、
人々は国を捨てて流浪の民となったのです。」

「ですからカントリ国の民は、
約束を反故にするガイア様を軽んずるのでしょうか?」
と、テテ教皇は寂しげに呟いた。

「軽んずる事は否定しません。
カントリ国の祖先達征服者は、
老樹木跡地に神殿建て祀りました。

神殿には、約束の地を与えられた子孫を追い出した、
英雄の聖なる柩が納められたらしいです。」

 約束の地の支配者となったカントリ国の祖先達は、
何故か民衆から毎月生贄を求め、
民を虐げて奴隷扱いをする事で、
支配した者たちにかなりの恨みと反感を貯蓄させてしまいました。

一人の指導者が出て、支配者階級を孤立化させることに成功して、
支配階級を追放しました。

生贄となった犠牲者の遺骨が大量に出た神殿は、
犠牲者の遺骨を祀っているので、
今住んでいる人たちにとっても聖地なのです。」

「流浪の民に、約束したのはガイア女神さまではなく、
心優しい老樹霊であったと教えましょう。」

「心優しい老樹霊はガイア様の半身でしたので、
約束はガイア様のお告げに等しいのです。」

「私たち半身も誰かと約束をすると、
ガイア様のお告げになるのですか?」

「はい。ガイア女神様の約束になります。」

 マーガレットとテテサ教皇は唖然としているが、
スクリーンに映ったパトラは、

「私はいっぱい、いろんな人と約束し合った。
それらは全てガイア女神様の約束になると?」

「当然です。半身様たちの言葉は全て、ガイア様の言葉になります。」

 三人の半身達は、自分の言葉の重みに気づいた様子なのか、
三人は口に手を当てて唇を隠した。

 ガイア女神の半身三人と二万年老樹霊は、
国を持たない流浪の民の処置をどうするかの調査をすることで一致した。

 神降臨街の戦略運営委員会室では、パトラの娘レイの要請で、
鹿島の子供たち四人と三人の運営委員達は、
流浪の民の故郷聖地について話し合っていた。

「簡単でしょう。
流浪の民に他の土地を与えて第二の聖地とすればよいでしょう。」

「方法は?」
「コーA.Iからの知識で学んだ事で、
奇跡を起こすのは可能だと知りました。」
と、
レイは三人の運営委員に満面の笑顔で答えると、
残りの三人の子供らも頷いた。

 子供たち四人は、既にコーA.Iからの教育を受けていたので、
すべての面で個々の特徴成果を上げていた。


 鹿島とパトラは、
七つの屋敷砦の中で壁のスクリーンに見入っていた。

「遠く離れた場所に居る、赤い微粒子たちにどのようにして、
連絡できるのだ。」
と、鹿島は監視衛星から噴出された円盤型ドローンに見入っていた。

「子ども達は、私たちの知らない、力を持ってるようね。」
と、パトラも神殿街の上空を旋回している円盤型ドローンに見入っている。

 スクリーンの片隅に四人の子供達も映し出された。
四人は輪になって手を繋ぎあうと、
赤い微粒子は輪の中に小さな蚊柱を作り出した。

 小さな蚊柱は、周りの赤い微粒子たちを吸収しだしている。

「あ、本当に、ドローンに赤い微粒子が集まりだしてきたわ。」
と、パトラは歓喜の声を上げた。

 レイとキズナは赤い微粒子と話ができるので、
赤い微粒子を円盤型ドローンに集めて、
老樹霊がムー帝都上空で出現させた燃える鳥を再現できると、
自信満々に説明していた。

 運営委員会の親たちは子ども達の話に半信半疑であったのだが、
スクリーンに映し出さている映像では、
ドローンに赤い微粒子が付着しだしていくと、
それが現実に起こりそうだと感じていた。

 子ども達四人の輪の中の小さな赤い蚊柱は、
部屋の壁から次々と現れる多くの赤い微粒子を吸収しているはずなのに、
大きさ形そのままなので少しも増えてるようには思えなかったが、
ドローンに付着していく赤い微粒子たちは、
直径五メートルのドローンを覆い隠すほどに増えだしていた。

 神殿街の中央丘は流浪の民の神殿跡地であったが、
今は壁だけになってしまっていた。
多くの流浪の民はその壁に巡礼に訪れている。

 今日は安息日であったためか、多くの巡礼者が集まっていた。

 神殿街の住民と巡礼者は、
周りの赤い微粒子が上空に向かって流れだすのに気づき始めた。

 五メートルの円盤型ドローンは、
既に直径十メートルを超えていたために、
聖地上空を旋回している赤い塊となった円盤型ドローンに、
住民と巡礼者は皆気付いて、
みんなが赤い塊に注目しだすと、
赤い塊は炎に包まれた燃える鳥がごとく、
鋭い嘴(くちばし)に燃え盛る翅(はね)となり、ハッキリと確認できる

 二十メートル以上の燃える鳥となって聖地上空を旋回し出した。

 燃える鳥は旋回しながら、トルコ軍歌(祖先も祖父も)と共にテテサ教皇の歌声も始じまった。

「神殿街に居る皆に告げたい。
遠い昔、虐げられていた民族に、
約束の地、神殿街と周りの豊かな土地を与えたが、
今は違う人達の故郷となってしまいました。
虐げられていた民族に、再び違う場所の約束の地を与えたい。
約束の地は聖人テテサ教皇の指導に従ってもらいたい。
今住んでいる人たちは、私の加護を受けているので、
何者も住む権利を侵すことは出来ないが、
住民と協力しながら平和な生活を希望するのなら、
新たなる移住者として約束の民族者にも、私の加護は受け取れる。」
と、テテサ教皇はマイクを通して、
円盤型ドローンの音響スピーカーで音声を伝えた。

 流浪の民となった国を持たない民族は、
この事件後に民族の意志を二つに割ってしまったが為に、いろんな事件が起きたが、
テテサ教皇の努力と、この民族は賢いことが特徴であったが為に、
個人の意見は違うが、民族間の絆は切れる事はなく、
亜人協力国と共に科学と技術開発に大きく貢献することになる。

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