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150生贄

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 鹿島は奴隷となっていたインデアンエルフを集めて、
これまでの経緯を一人ずつ個別に尋ねた。

「私たちの集落に突然人種が現れて、集落全員が奴隷となりました。」
と、ほとんどのインデアンエルフは答えた。

 中には山に山菜採り中に誘拐されたと訴える人もいた。

 鹿島は、
これからの生活をどうするのかをインデアンエルフに尋ねると、
皆は突然のことなので、身の振り方を思案しだした。

 鹿島は身の振り方を決めるまでの、
暫くの期間を彼らに与えると宣言した。

 鹿島の前には裕福な服装をした七家族が集められていて、

「俺は亜人協力国の守り人だ。
わが国では、罪人奴隷以外の奴隷制度は厳罰に処される。
ましてや誘拐や襲撃においての奴隷狩りは人道にも劣る。
許しがたいが、命だけは助けよう。
衣食と馬車の所有は認めるが、
それ以外には保有している貨幣に応じて、
いくらかは渡す気持ちはある。」
と、厳しい顔を七家族に向けた。

 鹿島は伝令兵五名と共に七家族を伴い、
各一軒事に順次一人ずつを案内して、
衣類の持ち出しと貨幣の提出を求めた。

 鹿島は後ろから肩を握り込んで、
感知テレパシーを最大限に活用した。

 やはり全ての裕福な服装をした者たちは、
隠している財産は隠匿したまま提出しなかった。

「これがすべての財産か?」
と、鹿島は提出された貨幣を前にして、肩をつかんだまま尋ねた。

「そうだこれだけだ!」
と恰幅の良い男は自信ありげに答えた。

「では後から出てきた貨幣は、お前のものではないのだな。」
と、鹿島は皮肉な顔を浮かべた。

「おい。そこの壁を壊せ。」
と、鹿島は、
恰幅の良い男が思い描いた貨幣の隠し場所を伝令兵五名に命じた。

 壁の中からはおびただしい金貨と白金貨が出てきた。

「思わなぬ財宝を掘り当てたぞ。」
と鹿島は微笑んだ。

「あそれは親父が隠していたお金だ。俺のものだ。」
「お前は知らなかったのだから、お前のものではない。」
と鹿島は、
最初に出された貨幣の半分を裕福な服装をした者へ渡すと、
伝令兵に命じて、裕福な服装をした者を外へ連れ出させた。

 七家族すべてが同じ態度で、同じ様にかなりの貨幣を隠匿したが、鹿島の不思議な頭で考えている感知テレパシーによってすべて暴露された。

 七家族は最初に出された半分の貨幣と、
いくばくかの着替えと共に屋敷から追放された。

 鹿島は七家族の全ての財産を披露して、
囚われの身となっていた奴隷全員に分配した。

「本当にこんなにお金をいただいた上に、故郷へ帰れるのですか?」

「ここに残って耕作するもよし。故郷に帰るのも自由です。
それ以外に、
最も安全なインデアンエルフの新しい耕作地へ向かうも自由です。」
と、鹿島は個人の尊厳を持つことを約束させて百四十名の振り分けを行った。

 それぞれの希望者は三分の一に分かれて、
残る者たちと、帰る者たちに、希望の地に向かう者たちに分かれた。

 七つの屋敷を囲むように砦の建設が行われて、
近衛師団は更に広範囲に奴隷解放に向かった。

 戦況拡大を予感した鹿島は、トーマス元帥に増援を要請した。

 コーA.Iからの報告では、毒ガス弾を積んだ三本マスト帆船が、
エゲレス国の港から出たとの報告がなされたので、
鹿島は闇夜に紛れて毒ガス弾を積んだ三本マスト帆船を攻撃するように要請した。

 更に何度も毒ガスを輸送する事を繰り返すようならば、
毒ガス製造工場への攻撃を許可した。

 亜人協力国軍に対抗して新大陸での横暴な土地略奪者等は、
法執行機関レインジャーを名乗って兵の募集を始めだすと五十万の兵が集まり、
更に銃を提供する代わりに、
傭兵となるようにインデアンエルフに働きかけだした。

 インデアンエルフは部族同士の対立が激しい様子で、
対立側がレインジャー隊に入ると、
その一方側は亜人共和国軍に参加希望してきた。

 鹿島は、部族同士のいがみ合いをパトラどう思っているのか、
意見を聞きたくなって通信機に手をかけると、
パトラから逆に鹿島に通信が入った。
 
 何時ものようにパトラは、
いろんな装飾品や薬に、
いろんな野菜の種を屋台に陳列して市場に出ていると、
トボトボと一角牛の親子を引いてくるインデアンエルフ娘に気が付いた。

「どうしたの?」
とパトラは、屋台の前に来たインデアンエルフ娘に声がけした。

「ごめんなさい。
子牛を育てきれなくなりましたので、お返しに来ました。」
と言って、インデアンエルフ娘は泣き出した。

 パトラは真新しい住まい兼用事務所にインデアンエルフ娘を案内して、涙の訳ありを聞いた。

「移動した場所では獲物は豊富ですし、作物もよく育つ場所なので、暫くは移動しなくてもいいと安心していましたが、
魔物が出て来て、狩りが出来なくなってしまいました。
私は魔物のお腹を壊す薬を飲んで、
生贄にならなければならなくなりましたので、
子牛を育てることができないのです。」
パトラは直ぐに鹿島に連絡をした。

「閣下。最初に遭遇した耳長種族の部族では、
魔物に人身御供(ひとみごくう)の習慣があるようです。
如何しましょうか?」

「人身御供?なんじゃそれ?」
「理不尽な行為です。
こちらの耳長種族は、魔物に生贄を与えて、
利益を確保する為のようです。
奴隷化よりも残酷な行為です。」
と、パトラは憤慨している。

「無茶苦茶な習慣だ!そちらでの対応策はありますか?」
と、鹿島も憤慨しだした。

「私にお任せくださいますか?」
とパトラは叫んだ。

「任せる。いや、頼みます。」
と鹿島も叫んだ。

 パトラは三千人の守備隊の内から、
二千の守備隊と魔物討伐隊を率いて、
インデアンエルフ娘の集団先に向かった。

 新しい集落では焼き畑農場がすでに出来ていて、
多くのトウモロコシ畑になっていた。

 近衛師団ランボーイ連隊長は、
インデアンエルフ娘の集落を囲んで、全員を一カ所に集めた。

 パトラは集落の長老たちを集めて、
「またお会いしましたが、
我々はあなた達にかなりの援助与えると伝えたが、拒否した理由は、自分達の権力を維持で出来ないと、判断したからだろう!」
と、パトラは怒鳴った。

「何を根拠に、怒鳴るのだ!」
と、長老の一人が叫んだ。

「私は、あなた方に安定と、自主性を持つことが出来ますと言ったが、皆が自主性を持つ事を恐れていた柄だろう。」
「お前は何の権利で、われらを責めるのだ!」

「これから我らは、魔物を討伐する。
お前らは指導者として、模範を示す必要があるはずだ。
魔物をおびき出す餌となってもらう。
他の者達には要求するぐらいだから、同意できるだろう~。」
と、パトラはドヤ顔で三人の長老たちを見つめた。

「なんで俺らだ。俺らがいなければ、皆は行動判断ができない。」
と、反抗しだした。

「三人を捕縛しろ!」
と、パトラはランボーイ連隊長に命じた。

「皆、何とかしろ!」
と捕縛された長老たちが叫ぶが、
完全武装して取り囲んでいる二千の兵の前では、
誰一人動ける者たちは居なかった。

 三本の杭に縛られた長老達の前には、
魔物のお腹を壊す薬と言われている薬瓶を握りしめているランボーイ連隊長がいた。

「お前たちはゲス野郎だな。
自分勝手すぎるだろう。
皆は常に怯えていて赤ん坊を抱いている母親は、
自分の番が来るのではと不安がって母乳が出なくなってしまったようだが、お前たちはどのような気持ちを持っていたのだ。」
と言いながら、
長老達の鼻先を抑えると、薬瓶を口の中に差し込んだ。

 三本の杭に縛られた長老達は、一晩中青い顔色になり苦しんでいた。

 三人の下半身は、前と後ろからの排泄物で汚れてしまっていた。

 三人はそんな状態のまま朝になっても、まだ苦しがっているが、
パトラと魔物討伐隊は、苦しがっている三人を無視していた。

「近くにいるようだが、なかなか出てこないな。」
と、パトラは林の方を向いている。

「餌が悪いのかな?」
と、ランボーイ連隊長は三人の方へ振り向いた。

「三人共に、はらわたが腐っているからだろう。」
と、魔物討伐隊のリーダらしき男は、林の方を向いたまま答えた。

 お昼近くになり、
近衛師団による二角牛を捕らえてきたようで、
二角牛の首の巻いた三本の綱を三人の杭に其々に結んだ。

「これで少しは、餌らしくにはなるだろう。」
と、討伐隊は最後の綱を結び終えると叫んだ。

 二角牛の匂いに誘われたのか、焼き畑の方から魔物が現れた。

 魔物討伐隊は一斉に戦闘態勢となって、魔物に向かっていった。

 レール砲は多数の半月尾刃を打ち出すと、
魔物をミンチにするかのように身体中に浴びせた。

 レール砲から発射された爆裂弾丸は魔物の顔に集中しだした。

 杭につながれた一角牛は、
三人を括り付けられた状態のままの杭を引き抜いてしまい、
魔物から逃げるように三人を引きずりながら駆け出した。

 魔物討伐隊の攻撃は、
魔物の比較的防御の弱い腹を集中的に攻撃しだすと、
内臓さえも吹き飛ばしていた。

 魔物の抵抗も住様しく、尾刃はところ構わずに薙ぎ払っている。

 魔物討伐隊の攻撃は、すでに頭の部分を吹き飛ばしていて、
魔物討伐隊は尾の付け根を集中的に攻撃しだした。

 尾刃の動きが止まると、
挟みユンボは心臓ごと赤い魔石とつかんで魔物を動かなくさせた。

 一角牛はさすがに三人を引きずっての走りでは、
かなりの力を使ったのかへばり込んでいた。
三人の長老は泡を吹きながらも、まだ苦しがっている。

 パトラは三人の長老のそばに行くと、
三人は泣き叫びながら許しを請いだした。

「魔物に食われなくて良かったな。」
と言いながら、尾刃剣を抜いて綱を切った。
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