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122閉じない防護扉
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午前三時、妹太陽は月光の助けを借りて自分を眺める者達の足元を明るくしてはいるが、
その明るさは日ごとに低下しだしているようである。
近衛師団は鹿島の行軍号令を、
今か今かと待っているが、鹿島はなかなか現れない。
「矢張り、布の街住人の護衛は、近衛師団でお願いします。」
「エミュー隊のいない第七師団では、戦闘力が落ちるだろう。」
「では、せめて第七師団の機動車輌を、近衛師団に編入してください。」
「何度言えばわかるのだ!病人や歩けなくなった人が出た時に困るだろう。そんな人たちを、見捨てることはできないだろう。」
と、鹿島とポールは作戦変更で対立していた。
「病人を乗せるトラックはあります。せめて二十五台だけでも引き取ってください。」
「心配するな。俺は怪物で、不死身だ。
参謀会議は終わりだ。俺の師団は出発する。」
と言って、鹿島はゲルを出た。
ポールは機動車輌隊の中隊長を呼んで、
「ホイール大尉。機動車輌を二班に分けろ。
一班は密かに閣下の師団後ろの警戒と、孤立した部隊の救援をしろ。
その過程で軍規律違反だと言われたら、その罪は俺がすべて引き受ける。」
ポールは自分の感情を鹿島に悟られた事で、
作戦変更がなされた原因に後ろめたさを感じていた。
それに、まだどの師団からも犠牲者が出てはいないので、
最初の犠牲者が近衛兵ではまずいとも判断した様子でもある。
「承りました。機動車輌を二班に分けます。
私が一班を指揮して、密かに閣下の師団の後ろから警護に向かいます。」
と言って、ホイール大尉はゲルを出ていった。
鹿島達はエミュー隊を先頭に、
歩兵を整列させて、機動車輌を後方の監視を命じて行軍した。
布の街の入り口には、
ミーテラの義兄に頼んでおいた、各家の玄関扉が山と積まれていた。
二台のトラックにそれらの扉を積み込んで、
近衛師団は再び行軍を始めた。
近衛師団進行方向十キロメートル先に、
五万のエミューに乗ったモーゴー国軍兵が、
丘の影に分散しているとの報告がコーA.Iから鹿島に連絡が来た。
鹿島はパブレットパソコンの画面を見つめて、
五万のモーゴー国軍の配置を確認すると近衛師団の行軍を停止させた。
各連隊長と中隊長を集めて作戦会議に参集させた。
「五万のモーゴー国軍は、丘の影に十の群れに分散している。
個別撃破に攻撃する予定だが構築は行う。」
「構築の規模は?」
「直径三百メートル。壁の高さ二メートル。
中心から百五十メートルは丘の下と同じ高さにして、
周りを固めて壁にする。
大きな丸の入り口は開放しておく。」
「八字形で無くて、袋型ですね。」
「そうなのだが、袋型の奥にエミューと機動車輌の収容場所も作る。」
と言って、鹿島は自分で描いた砦の図面を開いた。
砦の形は8の字型円形で、
8の字型円の中央接点付近には扉が描いてあった。
「エミューと機動車輌の収容場所の入り口と屋根は、トラックに積んであるドアを使う。
魔獣土蜘蛛の糸を縄に編んで、入口の開閉は工夫してくれ。」
と、鹿島は、入り口の開閉構造は丸投げした。
各連隊長と中隊長は、
各々が入り口の大きさと開閉構造を議論している中で、
鹿島は兵棋演習用の用紙を広げると、
モーゴー国軍の位置と自軍の砦の場所を書き込んだ。
「エミュー隊と機動車輌隊には、次の作戦を説明する。」
と言って、赤い線でエミュー隊の動きを書き込むと、
青い線で機動車輌の動きをも書きこんだ。
鹿島は兵棋駒を動かしながら、
「攻撃はエミュー隊と機動車輌だけで行い、
攻撃後は囮(おとり)となって、敵を砦まで引き寄せる。
最初のうちはそれの繰り返しするだけだ。」
と言って、個別にエミュー隊の動き方と退却を指示した。
機動車輌はエミュー隊の退却を確認したならば、
エミュー隊を守りながら、
入り口の開閉扉に逃げ込むタイミングの説明をした。
近衛隊は、
モーゴー国軍が隠れている丘まで二キロメートル手前の丘で停止して、
砦の壁づくりを行った。
構築工事が三分の二まで出来上がった頃、
モーゴー国軍の偵察隊が現れたが、
すぐに引き返したので、壁が完成するまで何事も起きなかった。
砦構築はエミュー隊と機動車輌に守られながら進められて、
入り口の開閉扉の構造は幅二十メートルと高さは五メートルで決まったようで、
入り口前に倒したままの二箇所のドアを作り砦は完成した。
ドアの閉鎖用綱は、機動車輌の移動中に荷台で行われていたので、
魔獣土蜘蛛の糸を編んだ縄にドアの二箇所の端っこは繋がれており、
それを人力で引くようである。
モーゴー国張飛馬将軍は、
近衛隊は徒歩のまま長蛇の列で現れると予想していたが、
砦を構築しだしたとの報告を受けて急遽作戦変更を指示した。
張飛馬将軍の戦い方においては、
砦の構築など砂漠の中では考えられない事であった。
「奴らは馬鹿か。自分の墓場を作り出しやがった。」
と、喜んでいた。
砂漠の中では、水は貴重である。
その水を確保できなければ、待っているのは死だけである。
七万の軍の食糧と水の運搬はかなりの数であるはずが、
偵察隊からの報告では、
亜人協力国軍に向かうそれらしき補給部隊は、
いないらしいと報告を受けていた。
「奴らは、十日後にはミイラになっているだろう。
補給部隊の馬鹿どもが奪われたエミューは高々二千だ。
悪あがきはするだろうから、出て来たら袋の鼠にしてやれ。」
と言って、高笑いをした。
エミューと機動車輌の収容場所ドアの閉鎖は何も問題がないので、
鹿島は個別撃破作戦を開始した。
五十台の機動車輌は各車両に八人の狙撃隊を乗車させると、
モーゴー国軍が隠れている丘を目指した。
機動車輌は丘の麓中央辺りに居る一群を狙って、
丘の頂を目指して坂を駆け登りだした。
丘のふもとに待機した二千五百頭のエミュー隊は、
エミューを座らせて隠れている。
機動車輌を追いかけてくるであろう、
モーゴー国軍を不意打ち迎撃する為の様子だ。
戦闘は丘の上からレール砲と無反動砲から発射されたクラスター爆弾には、
子爆弾の代わりに無情と思える丸い七ミリ鉛散弾が詰められていた。
無情の丸い七ミリ鉛弾丸を押し込めたクラスター爆弾は、
戦力の弱い親衛隊と第七師団だけが持っていた。
二十五台の機動車輌から打ち出されたクラスター爆弾は、
地上五メートル上空下方で炸裂した。
クラスター爆弾は選り分け(えりわけ)る事も差別する事もなく平等に、
モーゴー国軍の頭上から丸い七ミリ鉛弾丸の雨を降らした。
四百人の狙撃隊と、
一分間に千二百発発射出来る機関銃を搭載した五台の機動車輌も、
三百メートル下でまだ動き回っている一群に一斉に連射しだした。
戦場周りに潜んでいたモーゴー国軍の群れは、
強烈な響きと絶え間ない銃声に驚きながらも、
丘の上に居る機動車輌に気が付いた様子である。
丘の上にいた機動車輌隊の五分間射撃が終わると、
丘の下では立ち上がっている人はいなくて、
動けるものはただ這いずっているだけの様子である。
モーゴー国軍群れの両側群れ部隊はエミューに乗って、
一斉に機動車輌隊のいる丘目指して駆け出した。
機動車輌隊は一斉に丘から下りだすと、丘の中腹あたりで止まって、丘のふもとに待機しているエミュー隊とは反対側のふもと側に向かった。
モーゴー国軍も打ち合わせ済みであったようで、
次々と機動車輌隊のいた丘を目指して動き出した。
第二次戦闘戦も矢張り機動車輌隊であった。
機動車輌隊は丘の中腹から、
丘のふもとを迂回してきたモーゴー国軍の側面を攻撃しだすと、
その先頭を制するかのように、丁字戦法(ていじせんぽう)を行いだした。
丁字戦法は鹿島の好きな戦法の一つで、
近衛師団が結成された時から何度も訓練していた。
機動車輌隊は丘の中腹であった為か、
丘のふもとを迂回してきたモーゴー国軍よりも加速しているようであった。
丁字戦法(ていじせんぽう)はうまく軌道して先頭集団すべて倒すと、
機動車輌隊は迎撃態勢で残りの後方集団をも壊滅した。
機動車輌隊の戦闘が終わると鹿島から無線が入り、
「車輌隊長。エミュー隊と砦の中間辺りまで後退して、
そのまま平行に百メートル先で待機しろ。
次の攻撃目標はこちらから指示する。」
と、打ち合わせ済みの作戦順位は、
鹿島師団長自らが進行係を行っていた。
エミュー隊は間もなくモーゴー国軍が視界に入るとの連絡を受けると、起き上がりざま一斉射撃をモーゴー国軍先頭に浴びせた。
エミュー隊も矢張り丁字戦法で進むと多数の矢が飛来したが、
矢の届く距離ではないようで、全てのモーゴー国軍の一群は壊滅した。
エミュー隊は次の一群が現れるのを待っている様子である。
モーゴー国軍は、
鶴翼の陣に気付く事無く敵が袋の中に入ってきたと小躍りしていた。
モーゴー国張飛馬将軍は、
近衛隊は徒歩のまま長蛇の列で現れると予想していたが、
砦を構築しだしたとの報告を受けて、急遽作戦変更を指示した。
邪魔なのはエミュー隊だけであるとの報告を受けたモーゴー国張飛馬将軍は、自軍全ての群れを囮にして、
敵のエミュー隊を誘い出す鶴翼の陣を敷いた甲斐があったと喜んでいる。
モーゴー国軍ではエミュー隊が出てきたならば、
その対応も細かく打ち合わせ済みであった。
モーゴー国張飛馬将軍の思いは、
少数の攻撃隊しかいない亜人協力国軍は、
通常行動するのであれば群れの端を個別攻撃すると予想してその脇にいたのだが、
まさかの少数の攻撃部隊が中央部に現れるとは、
思っていなかったようである。
近衛師団エミュー隊の前にモーゴー国の新たな群れが現れると、
近衛師団エミュー隊は矢の届くギリギリの距離を保ち逃げ出しつつも、
追ってくる先頭を確実に倒してその後ろを混乱させていた。
モーゴー国張飛馬将軍は、鶴翼の陣を構えてさえいれば、
逃げ出したエミュー隊と機動車輌隊を包みこむ袋ネズミ作戦は、
自軍の動きは予想よりも早いので容易いと微笑んでいたが、
思わぬ反撃を受けてしまった。
機動車輌隊は鹿島の指示する群れの先頭に向かって、
絶え間なくクラスター爆弾と銃弾を撃ち込んで混乱させだした。
エミュー隊はモーゴー国軍の動きが速いので、
確実に退路をふさがれる状況であったが、機動車輌隊の確実な攻撃で、退路を断つことの出来る群れは壊滅させられてしまった。
エミュー隊が次々と砦の中に入って行くと、
機動車輌隊は矢の攻撃を受けながらも、
後ろ向きのままエミュー隊の後を追った。
機動車輌隊は全車砦の中に入ったが、
入り口前に倒してあった扉が持ち上がらない様子で、
一メートル上がると直ぐに地面に這いつくばってしまった。
砦の扉が持ち上がらない様子に気が付いた張飛馬将軍は、
まるで砂漠の死神が現れて、砦の中の魂を欲しがっているのか、
閉じることが出来ない防護扉入り口は、
砦の壁の意味をなくさせている。
防護扉を閉めろと怒鳴る声や反抗的にわめく声に、
張飛馬将軍は砦の内側の混乱を感じさせられた。
砂漠の死神は、
敵が逃げ込んだ扉を閉めさせない様に押さえつけていると思えた。
その動作は、
「おいで、おいで」と掌のように呼んでいるようにも感じた。
張飛馬将軍は、砂漠の死神の算段などどうであれ、
今起きている幸運の機会を逃したくなかった。
「全軍突撃せよ!」
張飛馬将軍はありったけの声を上げて叫んだ。
その明るさは日ごとに低下しだしているようである。
近衛師団は鹿島の行軍号令を、
今か今かと待っているが、鹿島はなかなか現れない。
「矢張り、布の街住人の護衛は、近衛師団でお願いします。」
「エミュー隊のいない第七師団では、戦闘力が落ちるだろう。」
「では、せめて第七師団の機動車輌を、近衛師団に編入してください。」
「何度言えばわかるのだ!病人や歩けなくなった人が出た時に困るだろう。そんな人たちを、見捨てることはできないだろう。」
と、鹿島とポールは作戦変更で対立していた。
「病人を乗せるトラックはあります。せめて二十五台だけでも引き取ってください。」
「心配するな。俺は怪物で、不死身だ。
参謀会議は終わりだ。俺の師団は出発する。」
と言って、鹿島はゲルを出た。
ポールは機動車輌隊の中隊長を呼んで、
「ホイール大尉。機動車輌を二班に分けろ。
一班は密かに閣下の師団後ろの警戒と、孤立した部隊の救援をしろ。
その過程で軍規律違反だと言われたら、その罪は俺がすべて引き受ける。」
ポールは自分の感情を鹿島に悟られた事で、
作戦変更がなされた原因に後ろめたさを感じていた。
それに、まだどの師団からも犠牲者が出てはいないので、
最初の犠牲者が近衛兵ではまずいとも判断した様子でもある。
「承りました。機動車輌を二班に分けます。
私が一班を指揮して、密かに閣下の師団の後ろから警護に向かいます。」
と言って、ホイール大尉はゲルを出ていった。
鹿島達はエミュー隊を先頭に、
歩兵を整列させて、機動車輌を後方の監視を命じて行軍した。
布の街の入り口には、
ミーテラの義兄に頼んでおいた、各家の玄関扉が山と積まれていた。
二台のトラックにそれらの扉を積み込んで、
近衛師団は再び行軍を始めた。
近衛師団進行方向十キロメートル先に、
五万のエミューに乗ったモーゴー国軍兵が、
丘の影に分散しているとの報告がコーA.Iから鹿島に連絡が来た。
鹿島はパブレットパソコンの画面を見つめて、
五万のモーゴー国軍の配置を確認すると近衛師団の行軍を停止させた。
各連隊長と中隊長を集めて作戦会議に参集させた。
「五万のモーゴー国軍は、丘の影に十の群れに分散している。
個別撃破に攻撃する予定だが構築は行う。」
「構築の規模は?」
「直径三百メートル。壁の高さ二メートル。
中心から百五十メートルは丘の下と同じ高さにして、
周りを固めて壁にする。
大きな丸の入り口は開放しておく。」
「八字形で無くて、袋型ですね。」
「そうなのだが、袋型の奥にエミューと機動車輌の収容場所も作る。」
と言って、鹿島は自分で描いた砦の図面を開いた。
砦の形は8の字型円形で、
8の字型円の中央接点付近には扉が描いてあった。
「エミューと機動車輌の収容場所の入り口と屋根は、トラックに積んであるドアを使う。
魔獣土蜘蛛の糸を縄に編んで、入口の開閉は工夫してくれ。」
と、鹿島は、入り口の開閉構造は丸投げした。
各連隊長と中隊長は、
各々が入り口の大きさと開閉構造を議論している中で、
鹿島は兵棋演習用の用紙を広げると、
モーゴー国軍の位置と自軍の砦の場所を書き込んだ。
「エミュー隊と機動車輌隊には、次の作戦を説明する。」
と言って、赤い線でエミュー隊の動きを書き込むと、
青い線で機動車輌の動きをも書きこんだ。
鹿島は兵棋駒を動かしながら、
「攻撃はエミュー隊と機動車輌だけで行い、
攻撃後は囮(おとり)となって、敵を砦まで引き寄せる。
最初のうちはそれの繰り返しするだけだ。」
と言って、個別にエミュー隊の動き方と退却を指示した。
機動車輌はエミュー隊の退却を確認したならば、
エミュー隊を守りながら、
入り口の開閉扉に逃げ込むタイミングの説明をした。
近衛隊は、
モーゴー国軍が隠れている丘まで二キロメートル手前の丘で停止して、
砦の壁づくりを行った。
構築工事が三分の二まで出来上がった頃、
モーゴー国軍の偵察隊が現れたが、
すぐに引き返したので、壁が完成するまで何事も起きなかった。
砦構築はエミュー隊と機動車輌に守られながら進められて、
入り口の開閉扉の構造は幅二十メートルと高さは五メートルで決まったようで、
入り口前に倒したままの二箇所のドアを作り砦は完成した。
ドアの閉鎖用綱は、機動車輌の移動中に荷台で行われていたので、
魔獣土蜘蛛の糸を編んだ縄にドアの二箇所の端っこは繋がれており、
それを人力で引くようである。
モーゴー国張飛馬将軍は、
近衛隊は徒歩のまま長蛇の列で現れると予想していたが、
砦を構築しだしたとの報告を受けて急遽作戦変更を指示した。
張飛馬将軍の戦い方においては、
砦の構築など砂漠の中では考えられない事であった。
「奴らは馬鹿か。自分の墓場を作り出しやがった。」
と、喜んでいた。
砂漠の中では、水は貴重である。
その水を確保できなければ、待っているのは死だけである。
七万の軍の食糧と水の運搬はかなりの数であるはずが、
偵察隊からの報告では、
亜人協力国軍に向かうそれらしき補給部隊は、
いないらしいと報告を受けていた。
「奴らは、十日後にはミイラになっているだろう。
補給部隊の馬鹿どもが奪われたエミューは高々二千だ。
悪あがきはするだろうから、出て来たら袋の鼠にしてやれ。」
と言って、高笑いをした。
エミューと機動車輌の収容場所ドアの閉鎖は何も問題がないので、
鹿島は個別撃破作戦を開始した。
五十台の機動車輌は各車両に八人の狙撃隊を乗車させると、
モーゴー国軍が隠れている丘を目指した。
機動車輌は丘の麓中央辺りに居る一群を狙って、
丘の頂を目指して坂を駆け登りだした。
丘のふもとに待機した二千五百頭のエミュー隊は、
エミューを座らせて隠れている。
機動車輌を追いかけてくるであろう、
モーゴー国軍を不意打ち迎撃する為の様子だ。
戦闘は丘の上からレール砲と無反動砲から発射されたクラスター爆弾には、
子爆弾の代わりに無情と思える丸い七ミリ鉛散弾が詰められていた。
無情の丸い七ミリ鉛弾丸を押し込めたクラスター爆弾は、
戦力の弱い親衛隊と第七師団だけが持っていた。
二十五台の機動車輌から打ち出されたクラスター爆弾は、
地上五メートル上空下方で炸裂した。
クラスター爆弾は選り分け(えりわけ)る事も差別する事もなく平等に、
モーゴー国軍の頭上から丸い七ミリ鉛弾丸の雨を降らした。
四百人の狙撃隊と、
一分間に千二百発発射出来る機関銃を搭載した五台の機動車輌も、
三百メートル下でまだ動き回っている一群に一斉に連射しだした。
戦場周りに潜んでいたモーゴー国軍の群れは、
強烈な響きと絶え間ない銃声に驚きながらも、
丘の上に居る機動車輌に気が付いた様子である。
丘の上にいた機動車輌隊の五分間射撃が終わると、
丘の下では立ち上がっている人はいなくて、
動けるものはただ這いずっているだけの様子である。
モーゴー国軍群れの両側群れ部隊はエミューに乗って、
一斉に機動車輌隊のいる丘目指して駆け出した。
機動車輌隊は一斉に丘から下りだすと、丘の中腹あたりで止まって、丘のふもとに待機しているエミュー隊とは反対側のふもと側に向かった。
モーゴー国軍も打ち合わせ済みであったようで、
次々と機動車輌隊のいた丘を目指して動き出した。
第二次戦闘戦も矢張り機動車輌隊であった。
機動車輌隊は丘の中腹から、
丘のふもとを迂回してきたモーゴー国軍の側面を攻撃しだすと、
その先頭を制するかのように、丁字戦法(ていじせんぽう)を行いだした。
丁字戦法は鹿島の好きな戦法の一つで、
近衛師団が結成された時から何度も訓練していた。
機動車輌隊は丘の中腹であった為か、
丘のふもとを迂回してきたモーゴー国軍よりも加速しているようであった。
丁字戦法(ていじせんぽう)はうまく軌道して先頭集団すべて倒すと、
機動車輌隊は迎撃態勢で残りの後方集団をも壊滅した。
機動車輌隊の戦闘が終わると鹿島から無線が入り、
「車輌隊長。エミュー隊と砦の中間辺りまで後退して、
そのまま平行に百メートル先で待機しろ。
次の攻撃目標はこちらから指示する。」
と、打ち合わせ済みの作戦順位は、
鹿島師団長自らが進行係を行っていた。
エミュー隊は間もなくモーゴー国軍が視界に入るとの連絡を受けると、起き上がりざま一斉射撃をモーゴー国軍先頭に浴びせた。
エミュー隊も矢張り丁字戦法で進むと多数の矢が飛来したが、
矢の届く距離ではないようで、全てのモーゴー国軍の一群は壊滅した。
エミュー隊は次の一群が現れるのを待っている様子である。
モーゴー国軍は、
鶴翼の陣に気付く事無く敵が袋の中に入ってきたと小躍りしていた。
モーゴー国張飛馬将軍は、
近衛隊は徒歩のまま長蛇の列で現れると予想していたが、
砦を構築しだしたとの報告を受けて、急遽作戦変更を指示した。
邪魔なのはエミュー隊だけであるとの報告を受けたモーゴー国張飛馬将軍は、自軍全ての群れを囮にして、
敵のエミュー隊を誘い出す鶴翼の陣を敷いた甲斐があったと喜んでいる。
モーゴー国軍ではエミュー隊が出てきたならば、
その対応も細かく打ち合わせ済みであった。
モーゴー国張飛馬将軍の思いは、
少数の攻撃隊しかいない亜人協力国軍は、
通常行動するのであれば群れの端を個別攻撃すると予想してその脇にいたのだが、
まさかの少数の攻撃部隊が中央部に現れるとは、
思っていなかったようである。
近衛師団エミュー隊の前にモーゴー国の新たな群れが現れると、
近衛師団エミュー隊は矢の届くギリギリの距離を保ち逃げ出しつつも、
追ってくる先頭を確実に倒してその後ろを混乱させていた。
モーゴー国張飛馬将軍は、鶴翼の陣を構えてさえいれば、
逃げ出したエミュー隊と機動車輌隊を包みこむ袋ネズミ作戦は、
自軍の動きは予想よりも早いので容易いと微笑んでいたが、
思わぬ反撃を受けてしまった。
機動車輌隊は鹿島の指示する群れの先頭に向かって、
絶え間なくクラスター爆弾と銃弾を撃ち込んで混乱させだした。
エミュー隊はモーゴー国軍の動きが速いので、
確実に退路をふさがれる状況であったが、機動車輌隊の確実な攻撃で、退路を断つことの出来る群れは壊滅させられてしまった。
エミュー隊が次々と砦の中に入って行くと、
機動車輌隊は矢の攻撃を受けながらも、
後ろ向きのままエミュー隊の後を追った。
機動車輌隊は全車砦の中に入ったが、
入り口前に倒してあった扉が持ち上がらない様子で、
一メートル上がると直ぐに地面に這いつくばってしまった。
砦の扉が持ち上がらない様子に気が付いた張飛馬将軍は、
まるで砂漠の死神が現れて、砦の中の魂を欲しがっているのか、
閉じることが出来ない防護扉入り口は、
砦の壁の意味をなくさせている。
防護扉を閉めろと怒鳴る声や反抗的にわめく声に、
張飛馬将軍は砦の内側の混乱を感じさせられた。
砂漠の死神は、
敵が逃げ込んだ扉を閉めさせない様に押さえつけていると思えた。
その動作は、
「おいで、おいで」と掌のように呼んでいるようにも感じた。
張飛馬将軍は、砂漠の死神の算段などどうであれ、
今起きている幸運の機会を逃したくなかった。
「全軍突撃せよ!」
張飛馬将軍はありったけの声を上げて叫んだ。
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