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99 ケーキ屋

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 鹿島達が神降臨街教会に着くと、双子の修道女が迎えに来て、
「遅いわよ!」
「そうよ!予定より二日遅れだよ!」
と、鹿島には意味の分からない怒りかたをした。

 荷台からミルチャンと母親ツル殿が下りてくると、
「閣下のお子さんですか?」
「違う!」
「すごい美人ですが、新しい愛人ですか?」

 双子の修道女は、代わるがわる質問してくる。
「なんでそんな発想が出る!」
「だって、二人の奥さんを同時に孕ませた、色男でしょう。」

「無節操。手当たり次第。」
「尻軽。ドンファン。おまけに、未遂ながらあたしたちまで無限切り。」
と双子の修道女は代わる代わる言って、互いに顔を見合わせながら、
ツル殿をチラリチラリと見ては言いたい放題である。

 双子の修道女の言う事は事実であり否定など出来ないので、
鹿島は二人を無視して教会に入った。

「ちょっと待って!私たちが案内します。
お二人の奥さんと教皇様の待っている、お部屋に案内します。」
との声掛けに、
鹿島は「二人の奥さん」との言葉を聞き、
ガイア様との行為が思い出さされたのか、
冷や汗がおでこに湧き出てきたが、
だが、全ての行為中は時間が止まっていたと気が付いた。

 双子の修道女の先導案内で後ろを振り向いて、
ミルチャンと母親ツル殿は付いて来ているか確認すると、
ミルチャンは鹿島に走り寄り、
鹿島の手を握ってにこりと笑いかけてきた。

 部屋に入ると、マーガレットとパトラは、
大きなおなかを抱えながら二人共鹿島に抱き付いて、
キスの応酬三昧で出迎えてくれた。

「なんで危ないことばかりやるの、私もパトラも半狂乱になって、
閣下の旅の最中に何度も監視衛星のレーザー砲を撃としたことか、
その度に何度もテテサとマティーニに制止されたわよ。」

「何語で話しているのでしょ。」
「聞いたことのない言葉だね。」
と、双子の修道女は鹿島達の会話を理解できないようで、
顔を見合わせて首を傾げ合っている。

 二人は双子の会話を無視して、
「そうよ。反省しなさい!」
とパトラも怒っている。

「そんな心配させるほどの事は~~なかったと思うが?」
二人の平手が鹿島のほほへ飛んできた。

 鹿島のほほはサンドイッチにされて、かなりの衝撃が襲った様である。

 鹿島は、ほほの痛さよりも、『ま。も。り。ま。す。』
と言ってくれた魔石の不誠実さが、頭をかすめた。

「ごめんなさい!もう危ないことはしません。」
謝りながら、魔石は不誠実だと思う事にした。

「痴話げんかはそこまで。ツルさんとミルチャンが驚いています。」

 鹿島はテテサに救われて、要約席に座ることができた。

 テテサはやや不満顔の双子の修道女を退席させたのち、
ツル殿に向かって、
「閣下からツルさんとミルチャンを、
守ってほしいと連絡をもらいました。
ガイア教会は必ず二人の守り壁となり、以後、後援を約束します。
こちらが亜人協力国の首席行政長官のマーガレットと副首席行政長官パトラです。
仲裁人として、その後は保護保証者となってもらいます。
そういう事情なので、
行政長官二人を同席させてもよろしいでしょうか?」
「よろしくお願いします。」
とツル殿は立ち上がって同意して頭をさげた。

 鹿島はテテサの目配りを受けるとツル殿の同意をもらい、
ミルチャンを連れて部屋から出た。

 ミルチャンの手を引いて通路を歩いていると、
通路角に居る双子の修道女は、鹿島達を待っていたようである。

 車両置き場に向かい、
武器なし軽機動車輌の助手席にミルチャンを乗せている間に、
双子の修道女は鹿島の断りもなく、後ろ座席に乗り込んでいる。

「俺達はミルチャンと、これから繫華街に行く予定だが、君たちは?」
「これから甘いものを食べる予定でしょう。ご一緒します。」
「何だか?そんな気がしたの。」
と双子は鹿島の行動を先読みしていた。

 鹿島は、なんか侮れない勘の良さを持った二人だと感じた。

 仕方なしに双子の修道女を引き連れて、甘味屋看板の前で止まり、
ミルチャンの手を引いて三人を伴い中に入っていくと
ケーキが陳列されたケースの前で好きなケーキを選ばせた。

 ミルチャンは多くの種類のケーキに注文が決めきれない様子なので、仕方なしに七種類のケーキを選んでもらい、
六個を三等分に一個を二つに切る分けてもらうようである。

 双子の修道女の注文は無しで、
三つに切り分けたケーキを三人で分配することとした。
残りの半分にしたケーキは、鹿島とミルチャンの分である。

 飲み物は、ミルチャンは一角羊のホットミルクで、
双子の修道女等は同じレモンティーを注文するが、
鹿島は貴重で高価な珈琲にした。
三人は鹿島の珈琲に味見口をつけるが、苦み走った顔をした。

 無線から教会にいる四人の会話が鹿島にも聞き取れて、
ツル殿は泣きながら、
ゲルグの無法とその取り巻きの強引さを訴えている。

 三人の運営委員達は、ゲルグの無法をなじり、
取り巻きの強引さにかなり怒り出している。

 四人の会話では、
ゲルグと元サンビチョ王族への怒りが沸騰している様子である。
これでは誰もイアラの弁護者はいなさそうで、鹿島は不安になっている。

 とうとう慰謝料の話しまで出だしたが、
ツル殿は泣きながら関わりを嫌がっている。

 鹿島の前のテーブルでは何時の間にか、
各自の皿に乗っている残りのケーキは、最後の一つだけになっている。

 ミルちゃんと双子はまだ欲しそうな顔であるが、
いつまでもミルチャンを預かることは不味いだろうと思い、
鹿島は仕方なしに、
「教会にもお土産を買っていこう。」
と言わされた。

 双子の修道女は、かなりの数らしい指を折りながら数えだすと、
ミルチャンの手を引いてケーキが陳列されているケースの前に立ち、
ミルチャンに五個のケーキを注文するように言っている。

 名目はできたとばかりに、
双子の修道女は十八個のケーキを追加している。

「三人の運営委員様達の分と、ミルチャンとお母さんの分ですが、
ついでに同僚へのあいさつ分も追加しました。」
と、当たり前のように、双子の修道女は鹿島に微笑んだ。

 店員に支払金額を聞くと、
銅貨はサービスで切り落としますと微笑まれた。
しかしながら大銀貨二貨幣はしっかり請求されている。

「伴侶様は今お金持ちでしょう。太っ腹大統領!」
と双子のどちらかが言うので、
「トーヨーほめ過ぎだ。」
と返すと、

「トーヨー?」
「見分け方ができないので、二人の名前を足して二で割った。」
「失礼しちゃうわ。私はトートー。」
「私はヨーヨー。よく見て違いはいっぱいあるでしょう。」
「そうよ!美人は私。胸の大きさでも私。」
「あ~~。私が言おうとしていたのに。」
と、くだらない論争になっているので鹿島は無視して、
ミルチャンの手を引いて店を出た。

「だったらいいな♬~だったらいいな♪~♪」
と、二人で歌いながら、軽機動車輌に乗り込んで教会を目指した。

 双子の修道女等は、自分たちのことを言われていると思ったようで、
「失礼な歌ですね。」
と二人でハモっている。

 鹿島の本心はそうだよと思いながら、
当てつけるようにミルチャンの歌声に合わせた。
ミルチャンは鹿島の腕を握って、
微笑みながら大きな声で、教会に着くまで歌い続けている。

 ツル殿と三人の運営委員達の所へケーキを届けてから、
別部屋に行ってタブレットパソコンの画面で戦場の様子を見る事にした。

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