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45聖人テテサの奇跡
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神降臨街とパンパの草原では、此れから何かが起きる予感を感じさせる天の怒りの声とも思える、強烈な雨と風が吹き荒れている。
神降臨街石壁外のパンパでは、強い風と激しい雨の中で、ゲルやテントの設置に苦労している反テテサ派軍が、亜人協力国戦略室のスクリーンに映りだされている。
大河向き北門先には、サンビチョ王国軍が既に陣を設置していた。
パンパ向きの東門には、反テテサ派聖騎士団とゲルググ王軍が並び、
嵐の中でゲルやテントの設置に苦労している様子である。
南門側には川を挟んだ川岸に、着いたばかりのトロンボ王国の軍勢が映し出されている。
増水した川の周りでは渡河する事に、兵はしり込みしているようである。
照準合わせなのか東門の上に設置した大砲から、ゲルググ王軍のゲルやテントの設置場に砲弾が落下した。
ゲルやテントの設置を試みていた者たちから、ゲルやテントは彼らの手を離れて、
トロンボ王国軍の川を挟んだ向かい側へ全て吹き流された。
東門の砲撃が合図のように、北門と南門からも数発の砲弾が、
それぞれの向かい側の敵陣営に打ち込まれた。
サンビチョ王国軍のゲルやテントは、すでに設置されていたが、
辛うじて雨風に耐えていたが、ゲルやテントは砲弾爆風の為に、
闇の樹海の方へ吹き飛んでいった。
トロンボ王国軍もゲルやテントの設置を試みていたが、特に強い川風に耐えきれずに、
幾つかのゲルやテントが吹き飛んでいるが、飛来した砲弾で残りのすべてが、
パンパのはるか彼方に吹き流されていった。
輸送艦の屋上に設置された方向性スピーカーから、周りの嵐を遮る様な高く太い音で、
テテサの声が響いた。
その声は耳だけでなく、身体中に重く響く感じで、
「修道司祭を名乗る、偽善者サコン、偽善者ウコン, 偽善者ヨーコー。
お前たちはカオスを目的とした闇の魔王を、ガイア様の降臨した、この神降臨街に嵐を伴い案内したようだが、それはすでにガイア様は予知していた。
闇の魔王の出現を知らされたガイアに愛された勇者様は、使徒様の力を借りて完璧な石の防壁を造って置いていたので、神降臨街には闇の魔王など決して入らせない。
すぐに立ち去れ!立ち去らねば、お前たちを使徒様の光で焼き尽くして、
ガイア様のいずれ使徒なる私は、闇の魔王ごと炭にする事が出来る。
今起きている不幸と試練は、闇の魔王のカオスの始まりであろうが、
闇の魔王に騙されている 孝 を持つ兵たちよ、両親の待つ故郷に帰れる時まで耐えろ。
闇の魔王はこの嵐と共に現れたが、ガイア様の加護を受けた 義 の子供らよ、
人道的を理解して正義を貫け。
ガイア様を信じる 梯(てい) の者達よ、兄弟姉妹からの憂俱を感じるのであれば、夜が明けるまでは耐えてくれ。
だがいつまでもガイア様より授かった、九つの徳を唱える神降臨街に敵対するのであれば、
仁 の我らとて、使徒様より授かった爆裂魔法をもって対抗する。
この嵐は、全て闇の魔王の性格から起きていることであるが、
生涯ガイア様の加護を必要と知るなら、この場でガイア様に詫びて、
節 度を持って自分の家に帰り、もう一度、仁、礼、智、信、孝、節、梯(てい)、義、絆、九つの徳を唱え、個人の尊重と仁を胸に、平等と博愛をもって詫びてください。
ガイア様を尊敬し、共に学んで正義を愛した元 礼 の者達よ、神降臨街の壁に向かい、
一晩黙祷せよ、ガイア様はその 信 を望んでいます。
隠れている闇の魔王よ、ガイア様に愛された 智 の者に挑戦しても無駄だ、
一晩中浄化の 絆 の光で神降臨街を照らして嵐を防いで見せる。
それでも攻撃するのであれば、お前の隠れた体ごと炭にしてやる。
忘九者は闇の世界へ帰れ!
ここは九つの徳を唱える善人たちの住まう土地だ!」
鹿島は九つの徳をちりばめて混ぜ込んだ、なかなかのテテサの演説であるがふと考えた。
節度の節は武士の戒め心得であり理解できるが、鹿島の知っている八つの徳目には入ってない。
だけど, 忠がなくて、節と絆は、ガイア教会の教え九つの徳目には入っているようである。
サコン司祭とウコン司祭や騎士団長ヨーコー等は何かを叫んでいるが、
強い風と雨音にかき消されている。
一晩中神降臨街の壁と輸送艦と教会は、サーチライトと照明弾に照らされて、
浄化の絆光を演出した。
朝起きて、暗い空の雲は意思あるように途切れながら、
神降臨街から遠ざかるように、高速で流れて遠ざかっていく。
雨は徐々に弱くなり、風だけがまだ強い。
そんな中では反テテサ派軍も攻め寄せきれずに、壁の高さの櫓を製作中のようで、
神降臨街防衛隊は暫く放って置いた。
そろそろ雲の切れ間に太陽も確認できる青紫の空になり、時間も昼近くになったので、
反テテサ派軍を挑発するために、テテサは東門の上に立った。
「闇の魔王を引き連れた者たちよ、なぜにまだ居る。
天罰を恐れてないのか?闇の魔王を崇拝する偽善者サコン、偽善者ウコン, 偽善者ヨーコー、
使徒の光が怖くて隠れたか?」
テテサの呼びかけに、エミューに引かれた旅車の屋根上に三人は乗り、
弓隊と聖騎士団を率いて現れた。
「哀れな、同情する価値もない、闇の魔王に支配された者どもよ、神聖な聖甲冑姿に擬態した者達よ、何故に神降臨街の壁に向かい、一晩黙祷しなかった!
既に魔王に支配されていて、正義を愛した礼の者の欠片も残ってはいなかったか。」
と、再びテテサの声は大音響で轟いた。
「われらは、闇の魔王など知らん。魔法使いにおだてられた偽聖人テテサの討伐は、われらの義務だ。」
「不埒なことを、ガイア様を侮辱するでない!」
「何の証拠をもって、われらを闇の魔王の手先という。」
「三人互いに顔を見合わせてみよ。誰が魔王に取り付かれているか、わかるであろう。」
ヨーコーは、テテサの言葉を遮るように、
「弓隊、ガイア様を語る偽物に、正義の矢を打ち込め。風はガイア様の導きで追い風だ。」
石壁の上にいる防衛隊は、
テテサに向かってくる矢を、全てレーザー銃とレーザー砲で消しさり、
弓隊に砲弾の雨を降らした。
爆裂弾丸は全ての反テテサ派軍の弓隊を沈黙させた。
反テテサ派軍の櫓は完成した様子で、エミューに引かせて神降臨街に向かってくる。
壁に取り付けない斜面下で、ひときわ大きい櫓には爆裂砲で対応して、
小型に櫓には大砲で藻屑にした。
徐々に空が暗くなりだすと、テテサは悪魔払いの聖典を、静かな歌声と、
ときには怒り声で、トルコ軍歌(祖先も祖父も)に合わせて歌いだした。
攻める兵たちは不安げに薄暗くなっていく空を見上げながら、
強烈な爆裂に怯えて逃げまわる者、うずくまる者と、
軍としての統制は無くなった様子である。
太陽の一筋の光をも消して、月が太陽を覆い隠す寸前、
スピーカーは大音響でトルコ軍歌(祖先も祖父も)を響かせたが、太陽は闇の中に消えてしまった。
闇に包まれると、曲の合間にテテサは叫んだ。
「ガイア様、使徒様負けないで、光をわれらに!悪魔に罰を!」
と叫ぶと、一段と甲高いトルコ軍歌(祖先も祖父も)が響き渡り、
月の端から蒼白い光が、
旅車と屋根上に居る三人を蒸発させてしまい、旅車の灰だけが残った。
蒼白い光が月の端から出た部分から、徐々に太陽が回復を始めて、
周りも徐々に普段の昼間になったのに合わせたように、
曲は大きく響き渡り、そして静かに低く鳴り止んだ。
全ての兵はひれ伏したまま怯えながら、ガイア様の九つの徳教訓を唱え始めた。
鹿島は、騎士団長ヨーコーに付いた聖騎士団を、闇の悪魔の手先と印象させるのと、
此れからは、テテサの力を完璧にするために、テテサが指名する聖騎士団を編成し直す為には、彼等は不要であると結論を出した。
レーザー銃を装備したエルフ騎馬隊六十頭と、そして鱗甲冑に身を包み、
尾刃剣を発動させた勇者の剣を持った、聖騎士団のメイディ等十人は鹿島に続いた。
レーザー銃を装備したエルフ騎馬隊は、ヨーコーに付いた聖騎士団三百人に突撃した。
聖騎士団三百人は、消えた騎士団長ヨーコー達を怪奇事と受けとめ、
唖然として立ち尽くしている所で百八十人の頭が消えた。
エルフ騎馬隊は、理解できない恐怖で逃げ出し始めた騎士団を追いかけだした。
鹿島は韋駄天のごとく俊足で、まだ五十人ぐらいの立ち尽くしている、残りの騎士団に切り込むと、逃げ出す者もいたが、エミューに乗った聖騎士団のメイディ等十人は、
韋駄天の如き速い鹿島の後から付いて行き、
鹿島のうち漏らした聖騎士団を切り倒しながら付いて来た。
騎士団長ヨーコーに付いた反テテサ派聖騎士団は、
鹿島とメイディ等聖騎士団十人が駆け抜けた後には、
草原に横倒されてしまっただけである。
逃げ出していた反テテサ派の聖騎士団も、全てエルフ騎馬隊に倒されていた。
東門の上にいるテテサが、再び呼び掛けた。
「サンビチョ国王、ゲルググ国王、トロンボ国王共に、神降臨街教会に出頭せよ。
兵は昨日の説教を忘れることなく、家に帰り平穏に暮らせ。」
兵たちは、テテサの呼びかけにポツリポツリと立ち上がり、
気力なさげに立ち尽くしている。
ゲルググ国王とトロンボ国王共に、神降臨街教会に出頭してきたが、
サンビチョ新国王ゲルグは、わずかな親衛隊を率いて、神降臨街パンパから逃げ去った。
ゲルグは後ろを振り向くことなくエミューにまたがり、従う親衛隊を振り切り、
駆けに駆けて王都を目指しながら、独り言を呟き続けた。
「騎士団長ヨーコーは俺に囁いた。亜人協力国の領地と、トマトマ.ドンク元伯爵領地と、ヘレニズ.サンビチョ公爵の元領地を俺に譲ると約束した。
亜人協力国の兵士は、総勢三千人しかいなので三カ所に分散するから、
神降臨街には千人程しか守備兵はいないから、四か国で其々に四カ所の門を一度に攻め込んだなら、防御は不可能であると。」
約束された勝利であったはずなのに、何が敗因なのか理解出来ない。
ヒット王国軍が来なかったのが原因なのか。
矢張り原因は、サコン司祭とウコン司祭や 騎士団長ヨーコー等が、
闇の魔王に支配されていたので、ガイア様の反感を受けたのが敗因の原因であったろう。
「俺は悪くない。闇の魔王に支配されていたサコン司祭とウコン司祭や騎士団長ヨーコー等が悪い奴らだ。」
ゲルグは父上に謝り許しを請おうと、ひたすらに駆けに駆け続けた。
ゲルグ王は辻褄を合わす事だけを考えながら、駆けに駆けたが既に日は落ちて、
宵の口新月暗闇の中を真っ暗な草原を、王都門前のかがり火目指して駆けた。
ゲルグ王は開いたままの門と、かがり火周りにいた兵どもには無関心で、
門柱の松明を取り、それをかざして門を駆け抜けた。
ゲルグ王は女性の疳高い悲鳴と焼け焦げの匂いに気付き、
周りを見渡すと人が無数に倒れている異常事態に気が付いた。
街中は戦場ごとく乱れていて、家中の物を投げ棄てた様に家具類が通路に散乱している。
一人の女性を取り合う二人の兵に道を塞がれて、ゲルグ王は立ち往生していると、
門前のかがり火周りにいた兵どもが、ゲルグ王に後ろから襲いかかってきた。
ゲルグ王はカントリ王の前へ引き出された。
「カントリ王これは何のつもりだ。亜人協力国との戦闘中は、不可侵ではなかったか。」
「勿論、不可侵は守りました。亜人協力国との戦闘は、昼前に終わったようなので、
サンビチョ王国に我が民が強制されていたので、われらは救出に来ただけです。
救出した我が民に合わせてやれ。」
と、カントリ王は隣の親衛隊に命じた。
現れたのはどこにでもいる、売春宿の売れなさそうな年増女であった。
「私はサンビチョ国の奴隷商人に強制され、無理矢理売春宿で働かされていました。」
「非道なサンビチョ王国に、我が国のすべての民は憤慨しているので、
他にもいっぱいいる強制被害者調査のために、サンビチョ王国を占領する。」
「無体な、言い掛りだ!」
「お前の首と前国王の首を、亜人協力国に送り亜人協力国と友好関係を結ぶ。
これが政治だ。間抜けなゲルグ王よ。」
と、カントリ王は高笑いした。
テテサは一段高い演説台の説教机を両手で掴み、説教室の両側には、
聖騎士団と修道士が並んでいる。
ゲルググ国王とトロンボ国王は、説教机の下に控えめな態度で膝をついている。
「そなたらから、悪魔の匂いがする。悪魔と契約をしたのですか?」
「決して、悪魔とは契約していません。」
「悪魔と契約をしていたのは、サコン司祭、ウコン司祭, 騎士団長ヨーコー等三人だけでしょう。」
「三人だけで、昼間の明るさを闇にしてしまうなど、不可能でしょう。」
「造反聖騎士団を加えても無理ですか?」
「それだと可能かもしれないが、余りにも広範囲に闇は広がった。
神降臨街外にいた悪魔だけとは思えない。帥たちの感じで他に誰がいる。」
ゲルググ国王は、何かに気づいたように、
「神降臨街討伐を強く勧めた者等なら、心当たりがございます。」
「私も強く勧めた者等を知っています。」
「そのものらを聖騎士団長メイディに報告せよ。メイディは、報告を受けた内容を捜査し検証を命じる。」
「聖騎士団総力を持って、解決します。」
これを境に聖騎士団の司法教育が、コーA.Iにより行われて、初代司法長官メイディが誕生する。
ゲルググ国王とトロンボ国王は、鹿島達の居る会見の間にテテサとともに現れて、
両名とも理不尽な攻撃を行ったことを深く反省し、退位する旨を伝えた。
「両国とも亜人協力国に併合するならば、退位する必要はない。
併合しないのであれば、占領する。選べ!」
ゲルググ国王とトロンボ国王は平伏して、
「聖人テテサの口添えに感謝します。ありがとうございます。
ガイア様に愛された亜人協力国に併合していただけるのは、名誉でございます。」
テテサの説得があったようで、併合はすんなりと決まった。
「ゲルググとトロンボは知事に任命する。亜人協力国の国是を守り、速やかに遂行せよ。
そのことに協力は惜しまない。我が国の兵となった者どもをまとめて帰国せよ。」
「ガイア様に誓い、閣下と亜人協力国に忠誠を誓います。」
と言って二人は退出した。
テテサの威光は絶大になったようで、彼らをテテサの意のままに行動させた様子である。
鹿島は、夜明け前コーA.Iに起こされて跳ね起きた。
カントリ王はゲルグ国王と元国王の首を落とした後に、その首を持った使者隊が、
神降臨街に向かって来ているとのことである。
鹿島は鱗甲冑を身に付けて作戦室に急いだ。
程なくして、全運営委員が現れて五者協議した結果、
カナリア街の守備隊は、ヒット国再建の手伝いに回した。
三湖街とパンパ街の守備隊全員に、サンビチョ王都に向かうように指示した。
ビリー等教育参謀は、先行してサンビチョ王軍を足止めするよう要請した。
神降臨街の守備は五百を残して、全ての乗り物を用意させた。
カントリ王の使者が東門に現れたとの連絡で、
鹿島はヘレニズ公爵とイアラ王女に、女傑騎士団を伴い東門に向かった。
カントリ王の使者は門の外から、使者の口上を述べた。
「偉大なる我らが王、カントリ王様より、遣わしてあげるものがある。謹んで受け取れ!」
尊大な言い方であるが、それは不問にして門を開けた。
細目に貧相なずる賢い顔の使者は、鹿島達を見渡して、
「亜人協力国の王に会いたい、取りつげ!」
と、鹿島達を見回した。
「俺が、亜人協力国の指導者だ!何用で参った。」
カントリ王の使者は、エミューの上から鹿島を見下した目をして、配下の者に顎で指示した。
配下の者は布地を開き、二つ生首を鹿島の前に並べると同時に、
後ろの方から悲鳴にも似た嗚咽が起こり、抜刀する音も聞こえた。
鹿島は両手を横に広げて後ろを制した。
「此れは何のつもりだ!なぜ、かような生首を神降臨街に持ってきた。」
「そちたちに仇なす者達の首だ。カントリ王様より遣わされた。
感謝してカントリ王様に挨拶に伺え。」
「この首、渡す相手が違うぞ。われらはこの首などいらぬ!
カントリ王の首なら喜んで受け取ろう。」
と、鹿島は、細目に貧相なずる賢い顔の使者を睨みつけた。
鹿島の広げた両手を無視して、女傑騎士団が五人の使者に襲いかかり、
五人の使者はエミューから引きずり降ろされて、なすすべもなく取り押さえられたが、
口上を述べた細目に貧相なずる賢い顔の使者は、激しく抵抗している。
イアラ王女は首の前にかしずき、
「父上様、兄上様、悔しかったであろう。おいたわしや。仇は必ず打ちます」
イアラ王女は生首を布地に巻き戻し、脇のヘレニズ公爵に預けて、
カントリ王の使者を取り押さえている女傑騎士団に目配りをした。
イアラ王女はチェーンソー剣の柄を握りこんだ。
カントリ王国の細目に貧相なずる賢い顔の使者は、
捕縛している女傑騎士に激しく抵抗していたが、一瞬緩くなった束縛をほどき、
貧相なずる賢い顔の使者は立ち上がりざま、正面のイアラ王女に切りかかった。
イアラ王女は右足を引いて、貧相なずる賢い顔の使者の剣を軽くいなして、
向き直った細目に貧相なずる賢い顔の使者を、チェーンソー剣で首横の肩から鎧ごと袈裟懸けに切り裂いた。
イアラ王女の悲しみと怒りそのままの、体中から燃え上がる火事場の力である。
顔面蒼白となっているイアラ王女の目から大量の涙が落ちていて、そのまま二つの首を抱きしめながら崩れ落ちると、神降臨街中に轟く程の大声で泣きだした。
イアラ王女の泣き声に、女傑騎士団は合唱するかのように、矢張り神降臨街中に轟く程の大声で泣きだした。
ヘレニズ公爵は、何かに呪うように、大量の涙と共に地面をたたいている。
使者の配下達はエミューの背に、二つに割かれた細目に貧相なずる賢い顔の遺体を乗せて、神降臨街から追い立てられるように去っていった。
神降臨街石壁外のパンパでは、強い風と激しい雨の中で、ゲルやテントの設置に苦労している反テテサ派軍が、亜人協力国戦略室のスクリーンに映りだされている。
大河向き北門先には、サンビチョ王国軍が既に陣を設置していた。
パンパ向きの東門には、反テテサ派聖騎士団とゲルググ王軍が並び、
嵐の中でゲルやテントの設置に苦労している様子である。
南門側には川を挟んだ川岸に、着いたばかりのトロンボ王国の軍勢が映し出されている。
増水した川の周りでは渡河する事に、兵はしり込みしているようである。
照準合わせなのか東門の上に設置した大砲から、ゲルググ王軍のゲルやテントの設置場に砲弾が落下した。
ゲルやテントの設置を試みていた者たちから、ゲルやテントは彼らの手を離れて、
トロンボ王国軍の川を挟んだ向かい側へ全て吹き流された。
東門の砲撃が合図のように、北門と南門からも数発の砲弾が、
それぞれの向かい側の敵陣営に打ち込まれた。
サンビチョ王国軍のゲルやテントは、すでに設置されていたが、
辛うじて雨風に耐えていたが、ゲルやテントは砲弾爆風の為に、
闇の樹海の方へ吹き飛んでいった。
トロンボ王国軍もゲルやテントの設置を試みていたが、特に強い川風に耐えきれずに、
幾つかのゲルやテントが吹き飛んでいるが、飛来した砲弾で残りのすべてが、
パンパのはるか彼方に吹き流されていった。
輸送艦の屋上に設置された方向性スピーカーから、周りの嵐を遮る様な高く太い音で、
テテサの声が響いた。
その声は耳だけでなく、身体中に重く響く感じで、
「修道司祭を名乗る、偽善者サコン、偽善者ウコン, 偽善者ヨーコー。
お前たちはカオスを目的とした闇の魔王を、ガイア様の降臨した、この神降臨街に嵐を伴い案内したようだが、それはすでにガイア様は予知していた。
闇の魔王の出現を知らされたガイアに愛された勇者様は、使徒様の力を借りて完璧な石の防壁を造って置いていたので、神降臨街には闇の魔王など決して入らせない。
すぐに立ち去れ!立ち去らねば、お前たちを使徒様の光で焼き尽くして、
ガイア様のいずれ使徒なる私は、闇の魔王ごと炭にする事が出来る。
今起きている不幸と試練は、闇の魔王のカオスの始まりであろうが、
闇の魔王に騙されている 孝 を持つ兵たちよ、両親の待つ故郷に帰れる時まで耐えろ。
闇の魔王はこの嵐と共に現れたが、ガイア様の加護を受けた 義 の子供らよ、
人道的を理解して正義を貫け。
ガイア様を信じる 梯(てい) の者達よ、兄弟姉妹からの憂俱を感じるのであれば、夜が明けるまでは耐えてくれ。
だがいつまでもガイア様より授かった、九つの徳を唱える神降臨街に敵対するのであれば、
仁 の我らとて、使徒様より授かった爆裂魔法をもって対抗する。
この嵐は、全て闇の魔王の性格から起きていることであるが、
生涯ガイア様の加護を必要と知るなら、この場でガイア様に詫びて、
節 度を持って自分の家に帰り、もう一度、仁、礼、智、信、孝、節、梯(てい)、義、絆、九つの徳を唱え、個人の尊重と仁を胸に、平等と博愛をもって詫びてください。
ガイア様を尊敬し、共に学んで正義を愛した元 礼 の者達よ、神降臨街の壁に向かい、
一晩黙祷せよ、ガイア様はその 信 を望んでいます。
隠れている闇の魔王よ、ガイア様に愛された 智 の者に挑戦しても無駄だ、
一晩中浄化の 絆 の光で神降臨街を照らして嵐を防いで見せる。
それでも攻撃するのであれば、お前の隠れた体ごと炭にしてやる。
忘九者は闇の世界へ帰れ!
ここは九つの徳を唱える善人たちの住まう土地だ!」
鹿島は九つの徳をちりばめて混ぜ込んだ、なかなかのテテサの演説であるがふと考えた。
節度の節は武士の戒め心得であり理解できるが、鹿島の知っている八つの徳目には入ってない。
だけど, 忠がなくて、節と絆は、ガイア教会の教え九つの徳目には入っているようである。
サコン司祭とウコン司祭や騎士団長ヨーコー等は何かを叫んでいるが、
強い風と雨音にかき消されている。
一晩中神降臨街の壁と輸送艦と教会は、サーチライトと照明弾に照らされて、
浄化の絆光を演出した。
朝起きて、暗い空の雲は意思あるように途切れながら、
神降臨街から遠ざかるように、高速で流れて遠ざかっていく。
雨は徐々に弱くなり、風だけがまだ強い。
そんな中では反テテサ派軍も攻め寄せきれずに、壁の高さの櫓を製作中のようで、
神降臨街防衛隊は暫く放って置いた。
そろそろ雲の切れ間に太陽も確認できる青紫の空になり、時間も昼近くになったので、
反テテサ派軍を挑発するために、テテサは東門の上に立った。
「闇の魔王を引き連れた者たちよ、なぜにまだ居る。
天罰を恐れてないのか?闇の魔王を崇拝する偽善者サコン、偽善者ウコン, 偽善者ヨーコー、
使徒の光が怖くて隠れたか?」
テテサの呼びかけに、エミューに引かれた旅車の屋根上に三人は乗り、
弓隊と聖騎士団を率いて現れた。
「哀れな、同情する価値もない、闇の魔王に支配された者どもよ、神聖な聖甲冑姿に擬態した者達よ、何故に神降臨街の壁に向かい、一晩黙祷しなかった!
既に魔王に支配されていて、正義を愛した礼の者の欠片も残ってはいなかったか。」
と、再びテテサの声は大音響で轟いた。
「われらは、闇の魔王など知らん。魔法使いにおだてられた偽聖人テテサの討伐は、われらの義務だ。」
「不埒なことを、ガイア様を侮辱するでない!」
「何の証拠をもって、われらを闇の魔王の手先という。」
「三人互いに顔を見合わせてみよ。誰が魔王に取り付かれているか、わかるであろう。」
ヨーコーは、テテサの言葉を遮るように、
「弓隊、ガイア様を語る偽物に、正義の矢を打ち込め。風はガイア様の導きで追い風だ。」
石壁の上にいる防衛隊は、
テテサに向かってくる矢を、全てレーザー銃とレーザー砲で消しさり、
弓隊に砲弾の雨を降らした。
爆裂弾丸は全ての反テテサ派軍の弓隊を沈黙させた。
反テテサ派軍の櫓は完成した様子で、エミューに引かせて神降臨街に向かってくる。
壁に取り付けない斜面下で、ひときわ大きい櫓には爆裂砲で対応して、
小型に櫓には大砲で藻屑にした。
徐々に空が暗くなりだすと、テテサは悪魔払いの聖典を、静かな歌声と、
ときには怒り声で、トルコ軍歌(祖先も祖父も)に合わせて歌いだした。
攻める兵たちは不安げに薄暗くなっていく空を見上げながら、
強烈な爆裂に怯えて逃げまわる者、うずくまる者と、
軍としての統制は無くなった様子である。
太陽の一筋の光をも消して、月が太陽を覆い隠す寸前、
スピーカーは大音響でトルコ軍歌(祖先も祖父も)を響かせたが、太陽は闇の中に消えてしまった。
闇に包まれると、曲の合間にテテサは叫んだ。
「ガイア様、使徒様負けないで、光をわれらに!悪魔に罰を!」
と叫ぶと、一段と甲高いトルコ軍歌(祖先も祖父も)が響き渡り、
月の端から蒼白い光が、
旅車と屋根上に居る三人を蒸発させてしまい、旅車の灰だけが残った。
蒼白い光が月の端から出た部分から、徐々に太陽が回復を始めて、
周りも徐々に普段の昼間になったのに合わせたように、
曲は大きく響き渡り、そして静かに低く鳴り止んだ。
全ての兵はひれ伏したまま怯えながら、ガイア様の九つの徳教訓を唱え始めた。
鹿島は、騎士団長ヨーコーに付いた聖騎士団を、闇の悪魔の手先と印象させるのと、
此れからは、テテサの力を完璧にするために、テテサが指名する聖騎士団を編成し直す為には、彼等は不要であると結論を出した。
レーザー銃を装備したエルフ騎馬隊六十頭と、そして鱗甲冑に身を包み、
尾刃剣を発動させた勇者の剣を持った、聖騎士団のメイディ等十人は鹿島に続いた。
レーザー銃を装備したエルフ騎馬隊は、ヨーコーに付いた聖騎士団三百人に突撃した。
聖騎士団三百人は、消えた騎士団長ヨーコー達を怪奇事と受けとめ、
唖然として立ち尽くしている所で百八十人の頭が消えた。
エルフ騎馬隊は、理解できない恐怖で逃げ出し始めた騎士団を追いかけだした。
鹿島は韋駄天のごとく俊足で、まだ五十人ぐらいの立ち尽くしている、残りの騎士団に切り込むと、逃げ出す者もいたが、エミューに乗った聖騎士団のメイディ等十人は、
韋駄天の如き速い鹿島の後から付いて行き、
鹿島のうち漏らした聖騎士団を切り倒しながら付いて来た。
騎士団長ヨーコーに付いた反テテサ派聖騎士団は、
鹿島とメイディ等聖騎士団十人が駆け抜けた後には、
草原に横倒されてしまっただけである。
逃げ出していた反テテサ派の聖騎士団も、全てエルフ騎馬隊に倒されていた。
東門の上にいるテテサが、再び呼び掛けた。
「サンビチョ国王、ゲルググ国王、トロンボ国王共に、神降臨街教会に出頭せよ。
兵は昨日の説教を忘れることなく、家に帰り平穏に暮らせ。」
兵たちは、テテサの呼びかけにポツリポツリと立ち上がり、
気力なさげに立ち尽くしている。
ゲルググ国王とトロンボ国王共に、神降臨街教会に出頭してきたが、
サンビチョ新国王ゲルグは、わずかな親衛隊を率いて、神降臨街パンパから逃げ去った。
ゲルグは後ろを振り向くことなくエミューにまたがり、従う親衛隊を振り切り、
駆けに駆けて王都を目指しながら、独り言を呟き続けた。
「騎士団長ヨーコーは俺に囁いた。亜人協力国の領地と、トマトマ.ドンク元伯爵領地と、ヘレニズ.サンビチョ公爵の元領地を俺に譲ると約束した。
亜人協力国の兵士は、総勢三千人しかいなので三カ所に分散するから、
神降臨街には千人程しか守備兵はいないから、四か国で其々に四カ所の門を一度に攻め込んだなら、防御は不可能であると。」
約束された勝利であったはずなのに、何が敗因なのか理解出来ない。
ヒット王国軍が来なかったのが原因なのか。
矢張り原因は、サコン司祭とウコン司祭や 騎士団長ヨーコー等が、
闇の魔王に支配されていたので、ガイア様の反感を受けたのが敗因の原因であったろう。
「俺は悪くない。闇の魔王に支配されていたサコン司祭とウコン司祭や騎士団長ヨーコー等が悪い奴らだ。」
ゲルグは父上に謝り許しを請おうと、ひたすらに駆けに駆け続けた。
ゲルグ王は辻褄を合わす事だけを考えながら、駆けに駆けたが既に日は落ちて、
宵の口新月暗闇の中を真っ暗な草原を、王都門前のかがり火目指して駆けた。
ゲルグ王は開いたままの門と、かがり火周りにいた兵どもには無関心で、
門柱の松明を取り、それをかざして門を駆け抜けた。
ゲルグ王は女性の疳高い悲鳴と焼け焦げの匂いに気付き、
周りを見渡すと人が無数に倒れている異常事態に気が付いた。
街中は戦場ごとく乱れていて、家中の物を投げ棄てた様に家具類が通路に散乱している。
一人の女性を取り合う二人の兵に道を塞がれて、ゲルグ王は立ち往生していると、
門前のかがり火周りにいた兵どもが、ゲルグ王に後ろから襲いかかってきた。
ゲルグ王はカントリ王の前へ引き出された。
「カントリ王これは何のつもりだ。亜人協力国との戦闘中は、不可侵ではなかったか。」
「勿論、不可侵は守りました。亜人協力国との戦闘は、昼前に終わったようなので、
サンビチョ王国に我が民が強制されていたので、われらは救出に来ただけです。
救出した我が民に合わせてやれ。」
と、カントリ王は隣の親衛隊に命じた。
現れたのはどこにでもいる、売春宿の売れなさそうな年増女であった。
「私はサンビチョ国の奴隷商人に強制され、無理矢理売春宿で働かされていました。」
「非道なサンビチョ王国に、我が国のすべての民は憤慨しているので、
他にもいっぱいいる強制被害者調査のために、サンビチョ王国を占領する。」
「無体な、言い掛りだ!」
「お前の首と前国王の首を、亜人協力国に送り亜人協力国と友好関係を結ぶ。
これが政治だ。間抜けなゲルグ王よ。」
と、カントリ王は高笑いした。
テテサは一段高い演説台の説教机を両手で掴み、説教室の両側には、
聖騎士団と修道士が並んでいる。
ゲルググ国王とトロンボ国王は、説教机の下に控えめな態度で膝をついている。
「そなたらから、悪魔の匂いがする。悪魔と契約をしたのですか?」
「決して、悪魔とは契約していません。」
「悪魔と契約をしていたのは、サコン司祭、ウコン司祭, 騎士団長ヨーコー等三人だけでしょう。」
「三人だけで、昼間の明るさを闇にしてしまうなど、不可能でしょう。」
「造反聖騎士団を加えても無理ですか?」
「それだと可能かもしれないが、余りにも広範囲に闇は広がった。
神降臨街外にいた悪魔だけとは思えない。帥たちの感じで他に誰がいる。」
ゲルググ国王は、何かに気づいたように、
「神降臨街討伐を強く勧めた者等なら、心当たりがございます。」
「私も強く勧めた者等を知っています。」
「そのものらを聖騎士団長メイディに報告せよ。メイディは、報告を受けた内容を捜査し検証を命じる。」
「聖騎士団総力を持って、解決します。」
これを境に聖騎士団の司法教育が、コーA.Iにより行われて、初代司法長官メイディが誕生する。
ゲルググ国王とトロンボ国王は、鹿島達の居る会見の間にテテサとともに現れて、
両名とも理不尽な攻撃を行ったことを深く反省し、退位する旨を伝えた。
「両国とも亜人協力国に併合するならば、退位する必要はない。
併合しないのであれば、占領する。選べ!」
ゲルググ国王とトロンボ国王は平伏して、
「聖人テテサの口添えに感謝します。ありがとうございます。
ガイア様に愛された亜人協力国に併合していただけるのは、名誉でございます。」
テテサの説得があったようで、併合はすんなりと決まった。
「ゲルググとトロンボは知事に任命する。亜人協力国の国是を守り、速やかに遂行せよ。
そのことに協力は惜しまない。我が国の兵となった者どもをまとめて帰国せよ。」
「ガイア様に誓い、閣下と亜人協力国に忠誠を誓います。」
と言って二人は退出した。
テテサの威光は絶大になったようで、彼らをテテサの意のままに行動させた様子である。
鹿島は、夜明け前コーA.Iに起こされて跳ね起きた。
カントリ王はゲルグ国王と元国王の首を落とした後に、その首を持った使者隊が、
神降臨街に向かって来ているとのことである。
鹿島は鱗甲冑を身に付けて作戦室に急いだ。
程なくして、全運営委員が現れて五者協議した結果、
カナリア街の守備隊は、ヒット国再建の手伝いに回した。
三湖街とパンパ街の守備隊全員に、サンビチョ王都に向かうように指示した。
ビリー等教育参謀は、先行してサンビチョ王軍を足止めするよう要請した。
神降臨街の守備は五百を残して、全ての乗り物を用意させた。
カントリ王の使者が東門に現れたとの連絡で、
鹿島はヘレニズ公爵とイアラ王女に、女傑騎士団を伴い東門に向かった。
カントリ王の使者は門の外から、使者の口上を述べた。
「偉大なる我らが王、カントリ王様より、遣わしてあげるものがある。謹んで受け取れ!」
尊大な言い方であるが、それは不問にして門を開けた。
細目に貧相なずる賢い顔の使者は、鹿島達を見渡して、
「亜人協力国の王に会いたい、取りつげ!」
と、鹿島達を見回した。
「俺が、亜人協力国の指導者だ!何用で参った。」
カントリ王の使者は、エミューの上から鹿島を見下した目をして、配下の者に顎で指示した。
配下の者は布地を開き、二つ生首を鹿島の前に並べると同時に、
後ろの方から悲鳴にも似た嗚咽が起こり、抜刀する音も聞こえた。
鹿島は両手を横に広げて後ろを制した。
「此れは何のつもりだ!なぜ、かような生首を神降臨街に持ってきた。」
「そちたちに仇なす者達の首だ。カントリ王様より遣わされた。
感謝してカントリ王様に挨拶に伺え。」
「この首、渡す相手が違うぞ。われらはこの首などいらぬ!
カントリ王の首なら喜んで受け取ろう。」
と、鹿島は、細目に貧相なずる賢い顔の使者を睨みつけた。
鹿島の広げた両手を無視して、女傑騎士団が五人の使者に襲いかかり、
五人の使者はエミューから引きずり降ろされて、なすすべもなく取り押さえられたが、
口上を述べた細目に貧相なずる賢い顔の使者は、激しく抵抗している。
イアラ王女は首の前にかしずき、
「父上様、兄上様、悔しかったであろう。おいたわしや。仇は必ず打ちます」
イアラ王女は生首を布地に巻き戻し、脇のヘレニズ公爵に預けて、
カントリ王の使者を取り押さえている女傑騎士団に目配りをした。
イアラ王女はチェーンソー剣の柄を握りこんだ。
カントリ王国の細目に貧相なずる賢い顔の使者は、
捕縛している女傑騎士に激しく抵抗していたが、一瞬緩くなった束縛をほどき、
貧相なずる賢い顔の使者は立ち上がりざま、正面のイアラ王女に切りかかった。
イアラ王女は右足を引いて、貧相なずる賢い顔の使者の剣を軽くいなして、
向き直った細目に貧相なずる賢い顔の使者を、チェーンソー剣で首横の肩から鎧ごと袈裟懸けに切り裂いた。
イアラ王女の悲しみと怒りそのままの、体中から燃え上がる火事場の力である。
顔面蒼白となっているイアラ王女の目から大量の涙が落ちていて、そのまま二つの首を抱きしめながら崩れ落ちると、神降臨街中に轟く程の大声で泣きだした。
イアラ王女の泣き声に、女傑騎士団は合唱するかのように、矢張り神降臨街中に轟く程の大声で泣きだした。
ヘレニズ公爵は、何かに呪うように、大量の涙と共に地面をたたいている。
使者の配下達はエミューの背に、二つに割かれた細目に貧相なずる賢い顔の遺体を乗せて、神降臨街から追い立てられるように去っていった。
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