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42サンビチョ王国の内情
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イアラ王女は女傑騎士団の剣術訓練中に、国王に呼び出されて玉座の間へ向かった。
玉座の間に入ると、両側にサンビチョ王国評議会員が並び、
王座近くには兄である皇太子ゲルグ殿下と、対極に叔父であるヘレニズ公爵が、
互いに不機嫌な顔で睨み合っている。
「亜人協力国に対し、交戦か同盟かに意見が割れた。王女イアラ、お前の意見を聞きたい。亜人協力国と開戦した場合、結果はどのようになると思う。」
「万の兵士を持っても、亜人協力国の戦士一人さえ傷付ける事が出来ず、無残に敗退するでしょう。」
評議会員全員は驚愕の声を上げると、
「妄想か?神の軍団か?何の根拠で?姫はおかしくなったのか?」
と、あちらこちらで、ひそひそ話が漏れていた。
「皆に分かりやすく、説明しろ」
と、国王は不機嫌に言葉を発した。
イアラ王女は護衛衛兵に剣と甲冑を用意させると、甲冑を床に立ててから甲冑の中に剣を入れ、チェーンソー剣を発動させると、剣諸共甲冑を二つに切り割った。
イアラ王女は更に鱗製兜をかぶり、衛兵に、
「魔物の鱗甲冑なので、切るなり、突くなり、好きにしてよい。」
と、両腕を広げて身構えた。
衛兵が躊躇していると、叔父のヘレニズ公爵が痺れを切らした様で、
「早くお前の腕前を見せてみろ。」
と、催促したが、遠慮気味に胴に切り込み、平伏してしまった。
それを見ていた兄の皇太子ゲルグが、衛兵の剣を取り上げてイアラ王女の広げた腕に、
気合い声で切り込んできた。
皇太子ゲルグは、イアラ王女の上腕部の鎧に切りかかったが、
鎧は虹色に輝き剣をはねのけた。
「国王陛下、ご覧のように甲冑には傷もつきません。
亜人協力国の前衛戦士達は皆、この装備です。
女傑騎士団二十名が一瞬で、眷属に乗っているエルフ族の爆裂を封じ込めた魔法の杖から、火花と共に鉛の矢が二十名全員の同じ肩下箇所へ命中した。
その爆裂を封じ込めた魔法杖を二千以上保有していて、
強力な爆裂を発動する砲を搭載した自力魔法で動く、何者も追いつけない荷車を多数保有しています。
一番怖いのは亜人協力国の守り人とエルフ親衛隊五十人の持つ、一瞬で首から上を炭にしてしまう光魔法の杖でしょう。
この様な装備だから、魔物を倒せるのも理解できるでしょう。」
王国評議会員は、凍り付いたように静まり返っている。
「亜人協力国との付き合い方は、パンパ街の修道院長が『亜人協力国に対して、賢い国は友好を求め、愚かな国は奪おうとします。決して、愚かな国に成らない様に』と、言った。
これがすべてでしょう。」
と、ヘレニズ公爵が付け加えると、
「そんな愚かな国に成らない為だけに、叔父上様は、亜人協力国に領地を献上したのですか?」
「皇太子!ヘレニズ公爵に対して、その様な事を言うのは、余が許さない!国のことを考え決断し、国の食糧を確保した上に、食料中継地に成ったが故、我が国に利益さえも、もたらしている。」
王国評議会員からの拍手に、皇太子ゲルグは黙り込んだ。
「余は、教会司祭からの討伐要請を断ろうと思う。皆はどうだ!」
「父上様、教会に集まっている聖騎士団と敵対すると?」
と皇太子ゲルグは食い下がるが、
「聖騎士団がその気ならば、対峙するまでだ。亜人協力国とは、友好関係でいたい。」
それでもなお皇太子は何故か、司祭の申し込みは受けねば成らないと、
「六か国の連合軍と対峙するかも知れない、それでもなお司祭の要望を断るというのですか?」
大声で叫んだ。
「その時の為に、亜人協力国と同盟を結びたいと思う。王女イアラ。同盟は可能か?」
「必ずや、可能です。」
「賛同者は手を挙げよ。」
皇太子を除く、玉座の間全員が挙手した事により、国王陛下は上機嫌で、
「王女イアラ、余の代理として、亜人協力国と同盟調印にあたり、全権大使に任命する。」
「必ずや、同盟を結んできます。」
国王陛下と叔父上様は、強い絆で結ばれている事を、確認させられた出来事でもあった。
イアラ王女は女傑騎士団総勢六十名を引き連れて、亜人協力国へと向かった。
戦略会議の議題は、反テテサ派を迎撃殲滅後、サンビチョ王国の改革と農奴の開放を、どの様な戦略で進めるかである。
テテサから、サンビチョ王国の大まかな政治体制と、領民の意識についての説明がなされた。
「建前は、絶対君主制ですが、王国評議会制度で国政を運営しています。
奴隷制度もあり、耕作地は貴族の荘園が殆どで、農奴の数はどの国よりも多いと思います。
サンビチョ王都の教会は反亜人で、自分たちの事をハイヒューマンと呼んでいます。
騎士団長ヨーコーと共に、反対派の中心的な行動をしているようです。」
「農奴と奴隷解放は、課題だね」
鹿島とすれば、サンビチョ王国は真っ先に併合したい隣国である。
「サンビチョ王国の荘園崩壊は、時間の問題だけでしょう。」
マーガレットは、自信気に発言した。
そして、テテサもマーガレットの言葉に、頷いて
「正攻法ならば、荘園を買い上げ、農奴に土地を分配するにしても、一年は係るかもしれない。最も手取り早い方法で攻めたいわ。」
マティーレとパトラは、テテサの含みを揶揄しながら、
「これは、テテサの管轄ですね。よろしくお願いいたします。」
「種まきした事気づいていたの、だけどチョット劇薬だから、役者が増えるかもしれないので、閣下の負担が増えるかも。」
テテサの自信ある表情は、聖人と思えない、怪しげな色化を漂わせて鹿島を覗き込む。
「強さを引け散らす聖騎士団長、権力志向の司祭、強欲な国王たち。他にも役者が?」
「好戦狂皇太子ゲルグ。」
「彼はサンビチョ王国軍を、国王の許可なく動かせないでしょう。」
「王都の教会に、マティーレの許可で、白金貨三貨寄付しました。その貨幣で、どの位傭兵を集めきれるかしら。三百人かな?六百人かも?」
「その傭兵と、自分の親衛隊で、何かをなすと。」
「好戦的で、自己慢心の皇太子ゲルグ、きっと動くと思います。」
農奴と奴隷解放はテテサの悲願で有り、
亜人協力国の国是そのものの基礎思想の一つである。
鹿島にふと疑問が湧いた。
「今、話し合っている中で、サンビチョ王国の農奴と奴隷解放は、以前から決めていた計画ですか?」
「ヘレニズ.サンビチョ公爵が、傭兵を募集している時に話し合ったわ。」
「あの時は正当な理由で、サンビチョ王国と戦争になると思ったが、テテサと王女イアラの行動で、ヘレニズ公爵は、戦争起こすことは、自国に不利と気が付いたので、回避されてしまいました。」
「白金貨二千貨を捨てても、良かったと?」
「どうせ、土の中に落ちていた石ころでしょう。」
「王女イアラに鱗甲冑と、チェーンソー剣を渡したのは?」
「彼女、無知か無関心か、シリーほど、農奴と奴隷解放を重要な事と、気づいていないわ。」
「だから。サンビチョ王国の統治は、王女イアラにしたいのと、亜人協力国の強さを知らしめる事が、重要だからです。」
「今日の戦略会議は、戦後の統治する方法と、統治者の選別です。」
「人材不足ですね。」
「サンビチョ王国はイアラ、補佐人ヘレニズ公爵、ヒット王国はシリー、補佐人ミクタ。
あとの国は軍政で、閣下に任せましょう。」
「軍政って、占領ですか?」
「軍政を敷いて、政府を立ち上げてください。できた政府と併合の条約を結びます。」
サンビチョ王国に至っては、まだ国王は健在で、イアラ王女を奉ることは、
内政干渉であるが、皇太子ゲルグのクーデターを確信しているのか、運営委員会の四人は、個人の尊厳、人種差別、農奴と奴隷解放、教育の普及、それらの為なら、冷酷に行動するようである。
亜人協力国の国是の為なら、既存利益者を追い落とすのは、
運営委員会の四人の使命だと、決意しているからかもしれない。
皇太子ゲルグのクーデター計画、その事を裏付ける動きが、サンビチョ王都の教会から、多数の聖騎士団と傭兵の集結が確認できて、その中央に常に皇太子ゲルグの姿が確認されると、コーA.Iからの報告がなされていた。
サンビチョ王都の教会から、聖騎士団が四方の国に向かったとの事と、
イアラ王女に率いられた六十名の女傑騎士団が、神降臨街に向かって来ていると、
コーA.Iから報告がもたらされた。
神降臨街にイアラ王女に率いられた、六十名の女傑騎士団が訪問してきた。
円卓会議室に、イアラ王女と付き添いの二名が、鹿島の前に金貨の入った革袋を差し出して、
「治療して頂いた、回復万能薬の代金です。金貨五百貨にて、了解していただきたい。」
亜人協力国において医療費は無料であるが、イアラ王女を含め女傑騎士団は、
亜人協力国の住民ではないので万能薬と治療費の対価を払い、互いに対等な立場を示したいようである。
「この度お伺い致しましたのは、我が国サンビチョ王国と亜人協力国は末永く、友好関係を築くために、同盟調印にまかり越しました。」
「友好関係を築くことは、我が国の利益であり希望でもあるが、我が国の国是をご存じの上での、同盟関係を結びたいと言う事ですか?」
「亜人協力国の国是は、聖人テテサの説教で理解しましたが、サンビチョ王国に馴染む事と、馴染め無いことがございます。」
「馴染む事ができると思う事と、馴染め無い事を教えて頂けませんか?」
「個人の尊厳、人種差別、教育の普及、これらの事は、わたくしも賛同できますし、サンビチョ王も賛同してくれるでしょうが、農奴と奴隷は所有者の財産であり、売り買い禁止は、貴族と地主の抵抗があるでしょうから、サンビチョ王国での、農奴と奴隷の開放は難しいでしょう。」
「個人の尊厳を理解して賛同したとしても、奴隷や農奴や小作人に対して、人道的な扱いを受けさせるとは思えないが?我が国の国是と合致しないのであれば、同盟の合意は難しいでしょう。」
「私も全権を任されているが、亜人協力国の国是全てを受け入れたいが、農奴と奴隷は所有者の財産だと認めていただきたい、でないと国が崩壊します。貴族と地主の反発が起きると、国の運営においては難しくなりますので、理解してください。」
「今日はここまでとして、後日改めて話し合いましょう。何かいい考えが浮かぶまで、保留としよう。」
「私も何か良い案があるか、考えます。」
イアラ王女は、サンビチョ王国の崩壊を防ぐには、どこまで妥協すべきかの答えを、自分を守ってくれるガイア様に期待して神降臨街教会に出向いた。
聖人テテサの説教受ける事が、同盟合意のヒントが授かるとの思いで、
「聖人テテサ様、農奴と奴隷解放は、現状では不可能です。我が王は、反聖人テテサ様派に与するつもりはありません。与しないと決めますと、数か国を敵に回してしまいます。
切羽詰まっている我が国は、亜人協力国と同盟出来ないと、国の存亡が危ういのです。お力を授けてください。」
「同盟を結ぶのは、政治体制及び国是が同じでないと、逆に国の住民から不平不満が出て、現政権存続は難しいでしょう。救援ではだめですか?」
「鉄の結束の関係を、同盟で表したいのです。」
「イアラ王女、農奴と奴隷解放は、現状では不可能だが、いずれ農奴と奴隷は逃亡するでしょう。それを見越して、王の決断一つで可能でしょう。」
「現時点では、農奴と奴隷解放など、王には決断出来ないと思います。」
「統治を、一極集中国家に改革するしかないのでは?」
「一極集中国家は、我が王家の悲願であるが、方法がわかりません。」
「サンビチョ王国の運営は両輪のように、王と評議会とで運営し、各自に年額報酬を決めて、軍と税を一極集中して王の権限運営にすれば、国は農奴と奴隷解放する事で税収増となり、荘園を持つものは、管理することなく、毎月の収入が保証されます。今の状態で農奴と奴隷解放しないで置くなら、間違いなく搾取されていると思う者達の逃亡者は増えるでしょう。」
「それを行うには、貴族の持つ荘園を、取り上げねばならないか、買い上げるとしても、かなりの資金が必要になり、不可能ではないでしょうか?」
「サンビチョ王国が、亜人協力国の国是に同意して、決断したならば、資金はガイア教会が保証する形で、亜人協力国の銀行から借り受けるよう、手配します。」
「亜人協力国の銀行?」
「銀行とは、だれでも貨幣を預けると金利がもらえて、資金が必要な人に貨幣を貸します。」
「金利が高くて、返せなくなるのでは?」
「亜人協力国の最高金利は、法律で三パーセントです。」
此れは、イアラ王女にはあまりにも壮大な案で、自分だけでは決断できかねると思い、父である王にお伺いを立てる必要があると判断した。
亜人協力国においては常に住民受け入れ状態であるから、農奴と奴隷はいずれにせよ、亜人協力国に逃亡するであろう。
亜人協力国の国是はガイア様の意思である事を皆が知ると、荘園と地主の運営が崩壊することを予感させる、イアラ王女はそのことに国王が気付いてくれるのを、祈るばかりである
玉座の間に入ると、両側にサンビチョ王国評議会員が並び、
王座近くには兄である皇太子ゲルグ殿下と、対極に叔父であるヘレニズ公爵が、
互いに不機嫌な顔で睨み合っている。
「亜人協力国に対し、交戦か同盟かに意見が割れた。王女イアラ、お前の意見を聞きたい。亜人協力国と開戦した場合、結果はどのようになると思う。」
「万の兵士を持っても、亜人協力国の戦士一人さえ傷付ける事が出来ず、無残に敗退するでしょう。」
評議会員全員は驚愕の声を上げると、
「妄想か?神の軍団か?何の根拠で?姫はおかしくなったのか?」
と、あちらこちらで、ひそひそ話が漏れていた。
「皆に分かりやすく、説明しろ」
と、国王は不機嫌に言葉を発した。
イアラ王女は護衛衛兵に剣と甲冑を用意させると、甲冑を床に立ててから甲冑の中に剣を入れ、チェーンソー剣を発動させると、剣諸共甲冑を二つに切り割った。
イアラ王女は更に鱗製兜をかぶり、衛兵に、
「魔物の鱗甲冑なので、切るなり、突くなり、好きにしてよい。」
と、両腕を広げて身構えた。
衛兵が躊躇していると、叔父のヘレニズ公爵が痺れを切らした様で、
「早くお前の腕前を見せてみろ。」
と、催促したが、遠慮気味に胴に切り込み、平伏してしまった。
それを見ていた兄の皇太子ゲルグが、衛兵の剣を取り上げてイアラ王女の広げた腕に、
気合い声で切り込んできた。
皇太子ゲルグは、イアラ王女の上腕部の鎧に切りかかったが、
鎧は虹色に輝き剣をはねのけた。
「国王陛下、ご覧のように甲冑には傷もつきません。
亜人協力国の前衛戦士達は皆、この装備です。
女傑騎士団二十名が一瞬で、眷属に乗っているエルフ族の爆裂を封じ込めた魔法の杖から、火花と共に鉛の矢が二十名全員の同じ肩下箇所へ命中した。
その爆裂を封じ込めた魔法杖を二千以上保有していて、
強力な爆裂を発動する砲を搭載した自力魔法で動く、何者も追いつけない荷車を多数保有しています。
一番怖いのは亜人協力国の守り人とエルフ親衛隊五十人の持つ、一瞬で首から上を炭にしてしまう光魔法の杖でしょう。
この様な装備だから、魔物を倒せるのも理解できるでしょう。」
王国評議会員は、凍り付いたように静まり返っている。
「亜人協力国との付き合い方は、パンパ街の修道院長が『亜人協力国に対して、賢い国は友好を求め、愚かな国は奪おうとします。決して、愚かな国に成らない様に』と、言った。
これがすべてでしょう。」
と、ヘレニズ公爵が付け加えると、
「そんな愚かな国に成らない為だけに、叔父上様は、亜人協力国に領地を献上したのですか?」
「皇太子!ヘレニズ公爵に対して、その様な事を言うのは、余が許さない!国のことを考え決断し、国の食糧を確保した上に、食料中継地に成ったが故、我が国に利益さえも、もたらしている。」
王国評議会員からの拍手に、皇太子ゲルグは黙り込んだ。
「余は、教会司祭からの討伐要請を断ろうと思う。皆はどうだ!」
「父上様、教会に集まっている聖騎士団と敵対すると?」
と皇太子ゲルグは食い下がるが、
「聖騎士団がその気ならば、対峙するまでだ。亜人協力国とは、友好関係でいたい。」
それでもなお皇太子は何故か、司祭の申し込みは受けねば成らないと、
「六か国の連合軍と対峙するかも知れない、それでもなお司祭の要望を断るというのですか?」
大声で叫んだ。
「その時の為に、亜人協力国と同盟を結びたいと思う。王女イアラ。同盟は可能か?」
「必ずや、可能です。」
「賛同者は手を挙げよ。」
皇太子を除く、玉座の間全員が挙手した事により、国王陛下は上機嫌で、
「王女イアラ、余の代理として、亜人協力国と同盟調印にあたり、全権大使に任命する。」
「必ずや、同盟を結んできます。」
国王陛下と叔父上様は、強い絆で結ばれている事を、確認させられた出来事でもあった。
イアラ王女は女傑騎士団総勢六十名を引き連れて、亜人協力国へと向かった。
戦略会議の議題は、反テテサ派を迎撃殲滅後、サンビチョ王国の改革と農奴の開放を、どの様な戦略で進めるかである。
テテサから、サンビチョ王国の大まかな政治体制と、領民の意識についての説明がなされた。
「建前は、絶対君主制ですが、王国評議会制度で国政を運営しています。
奴隷制度もあり、耕作地は貴族の荘園が殆どで、農奴の数はどの国よりも多いと思います。
サンビチョ王都の教会は反亜人で、自分たちの事をハイヒューマンと呼んでいます。
騎士団長ヨーコーと共に、反対派の中心的な行動をしているようです。」
「農奴と奴隷解放は、課題だね」
鹿島とすれば、サンビチョ王国は真っ先に併合したい隣国である。
「サンビチョ王国の荘園崩壊は、時間の問題だけでしょう。」
マーガレットは、自信気に発言した。
そして、テテサもマーガレットの言葉に、頷いて
「正攻法ならば、荘園を買い上げ、農奴に土地を分配するにしても、一年は係るかもしれない。最も手取り早い方法で攻めたいわ。」
マティーレとパトラは、テテサの含みを揶揄しながら、
「これは、テテサの管轄ですね。よろしくお願いいたします。」
「種まきした事気づいていたの、だけどチョット劇薬だから、役者が増えるかもしれないので、閣下の負担が増えるかも。」
テテサの自信ある表情は、聖人と思えない、怪しげな色化を漂わせて鹿島を覗き込む。
「強さを引け散らす聖騎士団長、権力志向の司祭、強欲な国王たち。他にも役者が?」
「好戦狂皇太子ゲルグ。」
「彼はサンビチョ王国軍を、国王の許可なく動かせないでしょう。」
「王都の教会に、マティーレの許可で、白金貨三貨寄付しました。その貨幣で、どの位傭兵を集めきれるかしら。三百人かな?六百人かも?」
「その傭兵と、自分の親衛隊で、何かをなすと。」
「好戦的で、自己慢心の皇太子ゲルグ、きっと動くと思います。」
農奴と奴隷解放はテテサの悲願で有り、
亜人協力国の国是そのものの基礎思想の一つである。
鹿島にふと疑問が湧いた。
「今、話し合っている中で、サンビチョ王国の農奴と奴隷解放は、以前から決めていた計画ですか?」
「ヘレニズ.サンビチョ公爵が、傭兵を募集している時に話し合ったわ。」
「あの時は正当な理由で、サンビチョ王国と戦争になると思ったが、テテサと王女イアラの行動で、ヘレニズ公爵は、戦争起こすことは、自国に不利と気が付いたので、回避されてしまいました。」
「白金貨二千貨を捨てても、良かったと?」
「どうせ、土の中に落ちていた石ころでしょう。」
「王女イアラに鱗甲冑と、チェーンソー剣を渡したのは?」
「彼女、無知か無関心か、シリーほど、農奴と奴隷解放を重要な事と、気づいていないわ。」
「だから。サンビチョ王国の統治は、王女イアラにしたいのと、亜人協力国の強さを知らしめる事が、重要だからです。」
「今日の戦略会議は、戦後の統治する方法と、統治者の選別です。」
「人材不足ですね。」
「サンビチョ王国はイアラ、補佐人ヘレニズ公爵、ヒット王国はシリー、補佐人ミクタ。
あとの国は軍政で、閣下に任せましょう。」
「軍政って、占領ですか?」
「軍政を敷いて、政府を立ち上げてください。できた政府と併合の条約を結びます。」
サンビチョ王国に至っては、まだ国王は健在で、イアラ王女を奉ることは、
内政干渉であるが、皇太子ゲルグのクーデターを確信しているのか、運営委員会の四人は、個人の尊厳、人種差別、農奴と奴隷解放、教育の普及、それらの為なら、冷酷に行動するようである。
亜人協力国の国是の為なら、既存利益者を追い落とすのは、
運営委員会の四人の使命だと、決意しているからかもしれない。
皇太子ゲルグのクーデター計画、その事を裏付ける動きが、サンビチョ王都の教会から、多数の聖騎士団と傭兵の集結が確認できて、その中央に常に皇太子ゲルグの姿が確認されると、コーA.Iからの報告がなされていた。
サンビチョ王都の教会から、聖騎士団が四方の国に向かったとの事と、
イアラ王女に率いられた六十名の女傑騎士団が、神降臨街に向かって来ていると、
コーA.Iから報告がもたらされた。
神降臨街にイアラ王女に率いられた、六十名の女傑騎士団が訪問してきた。
円卓会議室に、イアラ王女と付き添いの二名が、鹿島の前に金貨の入った革袋を差し出して、
「治療して頂いた、回復万能薬の代金です。金貨五百貨にて、了解していただきたい。」
亜人協力国において医療費は無料であるが、イアラ王女を含め女傑騎士団は、
亜人協力国の住民ではないので万能薬と治療費の対価を払い、互いに対等な立場を示したいようである。
「この度お伺い致しましたのは、我が国サンビチョ王国と亜人協力国は末永く、友好関係を築くために、同盟調印にまかり越しました。」
「友好関係を築くことは、我が国の利益であり希望でもあるが、我が国の国是をご存じの上での、同盟関係を結びたいと言う事ですか?」
「亜人協力国の国是は、聖人テテサの説教で理解しましたが、サンビチョ王国に馴染む事と、馴染め無いことがございます。」
「馴染む事ができると思う事と、馴染め無い事を教えて頂けませんか?」
「個人の尊厳、人種差別、教育の普及、これらの事は、わたくしも賛同できますし、サンビチョ王も賛同してくれるでしょうが、農奴と奴隷は所有者の財産であり、売り買い禁止は、貴族と地主の抵抗があるでしょうから、サンビチョ王国での、農奴と奴隷の開放は難しいでしょう。」
「個人の尊厳を理解して賛同したとしても、奴隷や農奴や小作人に対して、人道的な扱いを受けさせるとは思えないが?我が国の国是と合致しないのであれば、同盟の合意は難しいでしょう。」
「私も全権を任されているが、亜人協力国の国是全てを受け入れたいが、農奴と奴隷は所有者の財産だと認めていただきたい、でないと国が崩壊します。貴族と地主の反発が起きると、国の運営においては難しくなりますので、理解してください。」
「今日はここまでとして、後日改めて話し合いましょう。何かいい考えが浮かぶまで、保留としよう。」
「私も何か良い案があるか、考えます。」
イアラ王女は、サンビチョ王国の崩壊を防ぐには、どこまで妥協すべきかの答えを、自分を守ってくれるガイア様に期待して神降臨街教会に出向いた。
聖人テテサの説教受ける事が、同盟合意のヒントが授かるとの思いで、
「聖人テテサ様、農奴と奴隷解放は、現状では不可能です。我が王は、反聖人テテサ様派に与するつもりはありません。与しないと決めますと、数か国を敵に回してしまいます。
切羽詰まっている我が国は、亜人協力国と同盟出来ないと、国の存亡が危ういのです。お力を授けてください。」
「同盟を結ぶのは、政治体制及び国是が同じでないと、逆に国の住民から不平不満が出て、現政権存続は難しいでしょう。救援ではだめですか?」
「鉄の結束の関係を、同盟で表したいのです。」
「イアラ王女、農奴と奴隷解放は、現状では不可能だが、いずれ農奴と奴隷は逃亡するでしょう。それを見越して、王の決断一つで可能でしょう。」
「現時点では、農奴と奴隷解放など、王には決断出来ないと思います。」
「統治を、一極集中国家に改革するしかないのでは?」
「一極集中国家は、我が王家の悲願であるが、方法がわかりません。」
「サンビチョ王国の運営は両輪のように、王と評議会とで運営し、各自に年額報酬を決めて、軍と税を一極集中して王の権限運営にすれば、国は農奴と奴隷解放する事で税収増となり、荘園を持つものは、管理することなく、毎月の収入が保証されます。今の状態で農奴と奴隷解放しないで置くなら、間違いなく搾取されていると思う者達の逃亡者は増えるでしょう。」
「それを行うには、貴族の持つ荘園を、取り上げねばならないか、買い上げるとしても、かなりの資金が必要になり、不可能ではないでしょうか?」
「サンビチョ王国が、亜人協力国の国是に同意して、決断したならば、資金はガイア教会が保証する形で、亜人協力国の銀行から借り受けるよう、手配します。」
「亜人協力国の銀行?」
「銀行とは、だれでも貨幣を預けると金利がもらえて、資金が必要な人に貨幣を貸します。」
「金利が高くて、返せなくなるのでは?」
「亜人協力国の最高金利は、法律で三パーセントです。」
此れは、イアラ王女にはあまりにも壮大な案で、自分だけでは決断できかねると思い、父である王にお伺いを立てる必要があると判断した。
亜人協力国においては常に住民受け入れ状態であるから、農奴と奴隷はいずれにせよ、亜人協力国に逃亡するであろう。
亜人協力国の国是はガイア様の意思である事を皆が知ると、荘園と地主の運営が崩壊することを予感させる、イアラ王女はそのことに国王が気付いてくれるのを、祈るばかりである
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