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29快感
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鹿島は、テテサと修道院との微弱無線を感受して、解読したとのコーA.Iから連絡を受けた。
「どの様な内容ですか?」
「パンパ街のムースン一家と仲間達二十五名と、トマトマ.ドンク伯爵領の農地を放棄した農民家族三百名が、明日の朝、パンパ街の森端で落合い、亜人協力国に向かうとのことです。」
「解った。準備を進める。」
テテサと各修道院との微弱無線は、教会建物から毎回定期便のように発せられている。
テテサと修道院との連絡は、亜人協力国にとり、実害はない内容なので放置する事にしいるが、只、無線機の形状と仕組みは不明である。
だけどいつの日か、テテサの説明を受けられると期待して不問としている。
鹿島はパトラ分隊五十名とハービーハン騎馬隊三十名に、新たにパンパ街の住民が移住してくることを告げ、その迎合と警護のために夜明けに外壁門へ集合するよう要請した。
迎合と警護の準備ができたころ、総司令官マーガレットから鹿島に無線が入り、パンパ街の住民が移住してくる事をテテサから説明されて、移民の警護要請を受けたとのことである。
迎合と警護の準備を既に済ませてあることは秘密にして様で、亜人協力国には喜ばしい事と、閣下と共にパトラ分隊五十名とハービーハン騎馬隊を、移住者の為に迎えに行く事をテテサに伝えたとの連絡がきた。
軽機動装甲車の運転をパトラに任して、トラック三台の運転もやはりエルフで、荷台にパトラ分隊と陸戦隊が乗車した。
ハービーハン騎馬隊三十頭も、きれいに整列して後ろからついてくる。
「パトラ、車の運転はどうですか?」
「馬も好きだが、閣下と一緒なら、車の運転の方が好きです。」
と言いながら、パトラの長い耳と、色白の顔が真っ赤になっている。
女性の手を握ったこともないのに、ましてや告白されたことのない鹿島は、ストレートな告白なのか?お世辞なのかがわからないまま、自分が運転している気分になり、
「ありがとう。俺の胸はパクパクしているが、安全運転でおねがいします。」
と、モテキなどなかった鹿島は、返事するのが精一杯である。
鹿島は森が見えてくると、森を背にエミューに引かれた幌荷車隊を確認した。
幌荷車隊の先頭集団の中に両手を大きく振っている毛皮商人ムースンを確認した様子で、ムースンの横に止まるようパトラに指示した。
「ムースン殿、亜人協力国に来ていただける事に、感謝します。」
「閣下殿は強い方なのに、謙虚な人ですね。」
「住民いればこその、亜人協力国なのですから。」
「やはりあなた様は、ガイア様に愛される資格者なのですね。後、耕作者の家族等九組が遅れていますが、必ず来ますのでお待ちください。」
「あちらの金ぴかと、白色甲冑組の方たちは、どのような人たちですか?」
「ガイア教会の騎士団です。今紹介します。」
と言い、金ぴか甲冑に向かっていった。
金ぴか甲冑の男は少し損大な態度で、怪訝そうに、
「ガイア教会の騎士団長ヨーコー.ガイア.サンシーと言います。貴殿がガイア様に愛された人ですか?」
「俺は、ガイア様に愛された者かは解らないのだが、貴方の胸に描かれたエネルギー体なら、俺の体を通り抜けたのは事実です。この様な赤色微粒子が集まった塊でした。」
と、鹿島が手のひらを広げると、赤色微粒子は四方から飛んできて、鹿島の手のひらいっぱいに盛り上がった。
騎士団長ヨーコーは、驚愕の顔をして、
「伝説の妖精の泊まり人なのですね。カジマ提督閣下は、ガイア様に愛された者と思われます。ガイア様の伝言は、受け取りましたか?」
「伝言かどうかは、わからないが、赤色微粒子が集まった塊が通り抜けた時、頭の中で、【六常の仁、礼、信、義、智、絆、を持つものよ、世に平和と安泰を】と、響いた。」
と、後ろの言葉を省いた理由は、全てを晒すには、上目線から醸し出して来る雰囲気を感じての事からであった。
「どのような力を授かりましたか?」
「授かったのかは、わからないが、聞いたことのないこちらの大陸語なのに、猫亜人の子供達と会話ができ、あなたと今、会話ができています。後、力持ちになり、疾風迅雷を感じます。」
「世に平和と安泰の伝言に、我らも協力したいと思います。何なりとお申し付けください。」と、神に傅(かしず)くように、片膝を地に付けた。
ムースン達も同じ様に、傅(かしず)いて、片膝を地に付けた。
「ちょっとまて、俺は神ではない。ただの人間種だ。」
「人間種ですが、ガイア様に愛された人です。」
と、騎士団長ヨーコーは、鹿島に念を押すように詰め寄る仕草をした。
「騎士団長ヨーコー.ガイア.サンシー殿、帥(そち)たちの予定行動は、われらと共に亜人協力国の為に、働くという事ですか?」
「我らの主はガイア様で、教皇様は道を教える人です。
教皇様は我らに、ガイア様に愛された人からガイア様の伝言を聞き、共に行動するようにとの言葉でした。世に平和と安泰の為に、働きたいのです。」
「俺の命令に従うと?」
「ガイア様が降臨した地を聖地とし、テテサ様は、ガイア様に愛された人を探しだした事で、聖者テテサ様になりました。
次の教皇になる可能性もあります。聖職者テテサ様は、亜人協力国と共に行動すると、宣言しています。
我らもガイア様に愛された人の目指す、世に平和と安泰の為に、この命を捧げます。」
「俺は亜人と、人種も同じ様に個人の尊厳を持って、付き合いたいと思っているが、帥(そち)たちはどのように思うのですか?」
「ガイア様を崇拝する者は、友であり、みな平等な兄弟です。」
「では、亜人協力国に歓迎しよう。」
「よろしくお願いいたします。」
鹿島が感じた騎士団長ヨーコー.ガイア.サンシーの言葉は、ガイア様のみに忠誠を誓うだけのようで、ヨーコーの感じている世に平和と安泰の具体策を、運営委員会では改めて聞かねばならないようだが、しかしながらヨーコーは、亜人との言葉が一言も出ないことで、亜人協力国の亜人との距離を取るようにも感じる。
ムースンは、馬と鞍に興味を持ったようで、ハービーハンに色々と尋ねているようである。
「こんな動物、見たこと無いのですが、ガイア様の眷属でしょうか?」
「いいえ、亜人協力国の守り人たち故郷の乗り物で、馬と言います。友達として付き合っている家畜です。」
「家畜ですか?」
コーA.Iからの無線が入り、
「九台の幌荷車隊コース上と思われる一キロ先に、銀色狼似キャルド二十五頭が、寄り集まっています。注意してください。」
各分隊長には無線機を渡しておいたので、ハービーハンもコーA.Iからの無線を聴いていたようで、軽機動装甲車の運行操作席に向かい、パトラに何事かを話しているようである。
パトラが運行操作席から降りて、ハービーハンと共に鹿島の方へ来て、
「閣下、キャルドの狩りをしたいです。」
「いいですよ。ハービーハン騎馬隊は、九台の幌荷車隊の護衛に行ってください。だけども幌荷車隊に近寄るときは馬を見たことないでしょうから、気を付けて近寄ってください。」
「閣下殿、合点承知!」
と、ハービーハンは返答してパトラに向かって、
「では族長、我らが十頭倒して、残り十五頭を追い込んできます。」
「合点承知!」
と、パトラが応えたのは、キャルド狩りはすでに決まっていたようであった。
鹿島はパトラの剣筋もよく、身体能力は人種よりも高いので、大丈夫と確信しているから、
「なあ~、パトラ、キャルド一頭だけを残して、貴女が剣で倒しませんか?」
「三メートルのキャルドを弓矢なら兎も角、剣で倒すのですか?自信無いです。」
「大丈夫でしょう。キャルドは突進してくるだけなので、訓練通り横に避けて、キャルドの首と前足を叩くように、切ればいいだけです。貴女なら出来ます。あと俺がカバーします。」
三メートルのキャルドに、パトラは少し怯えもあるようだが、鹿島のカバーの言葉に安心したようで、
「閣下のカバーがあるなら、合点承知!」
と、パトラは少し震えた声で答えた。
パトラは分隊から十四人を前面に並べて点呼を取り、その後ろに残り全員を配置して、
「一人一度だけ、一頭のみ、二度目はなし。最初に右端一と中央八から撃ち、次は二と九の順に二人ずつ、左順番に撃つように、撃ち漏らしがあったなら、後ろの一頭だけ残し、後ろの列は、自由に銃で撃って良い。」
やはり一頭は残すようで、それを理解させるために一頭残すことを強調して、整列させた。
パトラと鹿島は前列の中央に並び、キャルドを追い込んで来る騎馬隊を待った。
エルフ分隊全員レーザー銃を構え、パトラは両刃チェーンソー剣を中段に構えている。
鹿島はパトラの肩に手を当てて、リラックスした微笑み顔で、
「パトラ、貴女はいつでも出ていいが、レーザー銃の撃ち初めての合図は貴女です。」
パトラはかなり緊張していた様子で、肩に手を当てると一瞬目を丸くしたが、すぐに微笑み返した。
一キロ先の草原で騎馬隊は縦列で進んでいたが、散開した後パトラ側に向かって来始めた。
どうやら騎馬隊はすでに十頭のキャルドを仕留めたようで、残りのキャルドを長い鞭を使いながら、追い込んで来るようである。
先頭のキャルドがパトラから百メートルの距離に近付く辺りで、騎馬隊は左右に散ったのを確認した後、パトラの肩を軽く押すと、
「一番、八番撃ち方初め!」
と、自分を鼓舞するかのように、力の入った声でパトラは叫んだ。
一頭残して十四頭のキャルドの頭半分は、エルフ戦士により全て炭にされていた。
十四頭のキャルドが倒れたのを確認して、パトラは残りの一頭に向かって行くので、鹿島はパトラの後ろに付いて行き、キャルドまでの五十メートルくらいの位置で、
「上段に構えて、ここで待て。」
と、鹿島はパトラに声をかけた。
キャルドはパトラから五メートル位の距離からジャンプして、パトラに襲い掛かったが、鹿島は後ろからパトラの腰を持ち上げ、左足で地を強く蹴り、大きく右にジャンプして、
右足が地に着いた瞬間、全身の力を込めて右足を踏ん張り、キャルドの腹にパトラを直角に立ち向わせて、鹿島が切れと叫ぼうと思った時に、パトラの剣は既にキャルドの首に向かっていた。
切り口は頭に近い部分であった為に少し浅かったようで、キャルドの首は胴にまだ残っている。
パトラはそれでもなお左側に横たわったキャルドに向かうと、キャルドの左足がパトラに襲いかかるが、パトラはキャルドの左足諸共首を切り落とした。
静まり返っていた、エルフ分隊の方から歓声が挙がった。
パトラは顔中汗だらけである。
「閣下、指が動きません。」
と声を掛けてくるなり、鹿島に寄りかかってきた。
鹿島は、パトラの声は震えながらも、その身体は硬直しているようで、目だけが微笑んでいるが、顔の表情も引きつっている
「すまん。少し刺激が強すぎたようだ。」
「いいえ、快感です。」
と、言って鹿島に抱だれた腕の中に崩れた。
パトラは、これまで経験したことのない震えともに、快感が全身を貫いてしまったために力が抜けてしまっている様子だった。
鹿島はパトラを抱いたまま指をほぐしてあげると、剣を受けとり剣に着いたキャルドの血を払うと、パトラは鹿島の動作で我に返ったようで、起き上がりざま剣に手のひらを向け、
「水よ、湧き出ろ。」
と、唱えると、パトラの掌前の何も無い空中から水が噴き出してきて、剣に着いたキャルドの血をきれいに洗い流した。
「パトラ、今の水は、どうゆう仕組みで、どこから出した。」
パトラはきょとんとした顔で、
「水魔法でしょう。」
「魔法?誰でも出来るのか?」
「守り人様ほどではないが、各自、得意、不得意、ありますわ。」
「他にも何かできるのか?」
「火魔法、光魔法かな。」
「爆裂魔法みたいなものは?」
「閣下みたいな爆裂魔法は出来ません。爆裂魔法が出来る人は、伝説の勇者だけだと思います。」
「パンパ街での爆裂は魔法ではない。手りゅう弾と言って科学と物理学だ。然らば、爆裂魔法はあるのだ。」
「勇者伝説では伝えられていますが、閣下等みたいに、王宮の光魔法や火を噴く筒、それに壁から出る誰でも使える水道水、それらに対抗できる魔法はありません。」
「勇者は、今もいるのですか?」
「います。閣下です。」
パトラは得意顔で強く答えた。
どうやらパトラは、鹿島たちのことを魔法の国から来た人々と、勘違いしていたようであるので、
「全ては、我が国の物理学と科学技術によるもので、魔法ではありません。」
鹿島が知っている架空の世界が、この惑星では現実であるらしい。
鹿島は皆が魔法を知らないままで突然に魔法に遭遇すると、混乱して危険も有るだろうから、魔法については調査の必要がありそうだと思った。
「どの様な内容ですか?」
「パンパ街のムースン一家と仲間達二十五名と、トマトマ.ドンク伯爵領の農地を放棄した農民家族三百名が、明日の朝、パンパ街の森端で落合い、亜人協力国に向かうとのことです。」
「解った。準備を進める。」
テテサと各修道院との微弱無線は、教会建物から毎回定期便のように発せられている。
テテサと修道院との連絡は、亜人協力国にとり、実害はない内容なので放置する事にしいるが、只、無線機の形状と仕組みは不明である。
だけどいつの日か、テテサの説明を受けられると期待して不問としている。
鹿島はパトラ分隊五十名とハービーハン騎馬隊三十名に、新たにパンパ街の住民が移住してくることを告げ、その迎合と警護のために夜明けに外壁門へ集合するよう要請した。
迎合と警護の準備ができたころ、総司令官マーガレットから鹿島に無線が入り、パンパ街の住民が移住してくる事をテテサから説明されて、移民の警護要請を受けたとのことである。
迎合と警護の準備を既に済ませてあることは秘密にして様で、亜人協力国には喜ばしい事と、閣下と共にパトラ分隊五十名とハービーハン騎馬隊を、移住者の為に迎えに行く事をテテサに伝えたとの連絡がきた。
軽機動装甲車の運転をパトラに任して、トラック三台の運転もやはりエルフで、荷台にパトラ分隊と陸戦隊が乗車した。
ハービーハン騎馬隊三十頭も、きれいに整列して後ろからついてくる。
「パトラ、車の運転はどうですか?」
「馬も好きだが、閣下と一緒なら、車の運転の方が好きです。」
と言いながら、パトラの長い耳と、色白の顔が真っ赤になっている。
女性の手を握ったこともないのに、ましてや告白されたことのない鹿島は、ストレートな告白なのか?お世辞なのかがわからないまま、自分が運転している気分になり、
「ありがとう。俺の胸はパクパクしているが、安全運転でおねがいします。」
と、モテキなどなかった鹿島は、返事するのが精一杯である。
鹿島は森が見えてくると、森を背にエミューに引かれた幌荷車隊を確認した。
幌荷車隊の先頭集団の中に両手を大きく振っている毛皮商人ムースンを確認した様子で、ムースンの横に止まるようパトラに指示した。
「ムースン殿、亜人協力国に来ていただける事に、感謝します。」
「閣下殿は強い方なのに、謙虚な人ですね。」
「住民いればこその、亜人協力国なのですから。」
「やはりあなた様は、ガイア様に愛される資格者なのですね。後、耕作者の家族等九組が遅れていますが、必ず来ますのでお待ちください。」
「あちらの金ぴかと、白色甲冑組の方たちは、どのような人たちですか?」
「ガイア教会の騎士団です。今紹介します。」
と言い、金ぴか甲冑に向かっていった。
金ぴか甲冑の男は少し損大な態度で、怪訝そうに、
「ガイア教会の騎士団長ヨーコー.ガイア.サンシーと言います。貴殿がガイア様に愛された人ですか?」
「俺は、ガイア様に愛された者かは解らないのだが、貴方の胸に描かれたエネルギー体なら、俺の体を通り抜けたのは事実です。この様な赤色微粒子が集まった塊でした。」
と、鹿島が手のひらを広げると、赤色微粒子は四方から飛んできて、鹿島の手のひらいっぱいに盛り上がった。
騎士団長ヨーコーは、驚愕の顔をして、
「伝説の妖精の泊まり人なのですね。カジマ提督閣下は、ガイア様に愛された者と思われます。ガイア様の伝言は、受け取りましたか?」
「伝言かどうかは、わからないが、赤色微粒子が集まった塊が通り抜けた時、頭の中で、【六常の仁、礼、信、義、智、絆、を持つものよ、世に平和と安泰を】と、響いた。」
と、後ろの言葉を省いた理由は、全てを晒すには、上目線から醸し出して来る雰囲気を感じての事からであった。
「どのような力を授かりましたか?」
「授かったのかは、わからないが、聞いたことのないこちらの大陸語なのに、猫亜人の子供達と会話ができ、あなたと今、会話ができています。後、力持ちになり、疾風迅雷を感じます。」
「世に平和と安泰の伝言に、我らも協力したいと思います。何なりとお申し付けください。」と、神に傅(かしず)くように、片膝を地に付けた。
ムースン達も同じ様に、傅(かしず)いて、片膝を地に付けた。
「ちょっとまて、俺は神ではない。ただの人間種だ。」
「人間種ですが、ガイア様に愛された人です。」
と、騎士団長ヨーコーは、鹿島に念を押すように詰め寄る仕草をした。
「騎士団長ヨーコー.ガイア.サンシー殿、帥(そち)たちの予定行動は、われらと共に亜人協力国の為に、働くという事ですか?」
「我らの主はガイア様で、教皇様は道を教える人です。
教皇様は我らに、ガイア様に愛された人からガイア様の伝言を聞き、共に行動するようにとの言葉でした。世に平和と安泰の為に、働きたいのです。」
「俺の命令に従うと?」
「ガイア様が降臨した地を聖地とし、テテサ様は、ガイア様に愛された人を探しだした事で、聖者テテサ様になりました。
次の教皇になる可能性もあります。聖職者テテサ様は、亜人協力国と共に行動すると、宣言しています。
我らもガイア様に愛された人の目指す、世に平和と安泰の為に、この命を捧げます。」
「俺は亜人と、人種も同じ様に個人の尊厳を持って、付き合いたいと思っているが、帥(そち)たちはどのように思うのですか?」
「ガイア様を崇拝する者は、友であり、みな平等な兄弟です。」
「では、亜人協力国に歓迎しよう。」
「よろしくお願いいたします。」
鹿島が感じた騎士団長ヨーコー.ガイア.サンシーの言葉は、ガイア様のみに忠誠を誓うだけのようで、ヨーコーの感じている世に平和と安泰の具体策を、運営委員会では改めて聞かねばならないようだが、しかしながらヨーコーは、亜人との言葉が一言も出ないことで、亜人協力国の亜人との距離を取るようにも感じる。
ムースンは、馬と鞍に興味を持ったようで、ハービーハンに色々と尋ねているようである。
「こんな動物、見たこと無いのですが、ガイア様の眷属でしょうか?」
「いいえ、亜人協力国の守り人たち故郷の乗り物で、馬と言います。友達として付き合っている家畜です。」
「家畜ですか?」
コーA.Iからの無線が入り、
「九台の幌荷車隊コース上と思われる一キロ先に、銀色狼似キャルド二十五頭が、寄り集まっています。注意してください。」
各分隊長には無線機を渡しておいたので、ハービーハンもコーA.Iからの無線を聴いていたようで、軽機動装甲車の運行操作席に向かい、パトラに何事かを話しているようである。
パトラが運行操作席から降りて、ハービーハンと共に鹿島の方へ来て、
「閣下、キャルドの狩りをしたいです。」
「いいですよ。ハービーハン騎馬隊は、九台の幌荷車隊の護衛に行ってください。だけども幌荷車隊に近寄るときは馬を見たことないでしょうから、気を付けて近寄ってください。」
「閣下殿、合点承知!」
と、ハービーハンは返答してパトラに向かって、
「では族長、我らが十頭倒して、残り十五頭を追い込んできます。」
「合点承知!」
と、パトラが応えたのは、キャルド狩りはすでに決まっていたようであった。
鹿島はパトラの剣筋もよく、身体能力は人種よりも高いので、大丈夫と確信しているから、
「なあ~、パトラ、キャルド一頭だけを残して、貴女が剣で倒しませんか?」
「三メートルのキャルドを弓矢なら兎も角、剣で倒すのですか?自信無いです。」
「大丈夫でしょう。キャルドは突進してくるだけなので、訓練通り横に避けて、キャルドの首と前足を叩くように、切ればいいだけです。貴女なら出来ます。あと俺がカバーします。」
三メートルのキャルドに、パトラは少し怯えもあるようだが、鹿島のカバーの言葉に安心したようで、
「閣下のカバーがあるなら、合点承知!」
と、パトラは少し震えた声で答えた。
パトラは分隊から十四人を前面に並べて点呼を取り、その後ろに残り全員を配置して、
「一人一度だけ、一頭のみ、二度目はなし。最初に右端一と中央八から撃ち、次は二と九の順に二人ずつ、左順番に撃つように、撃ち漏らしがあったなら、後ろの一頭だけ残し、後ろの列は、自由に銃で撃って良い。」
やはり一頭は残すようで、それを理解させるために一頭残すことを強調して、整列させた。
パトラと鹿島は前列の中央に並び、キャルドを追い込んで来る騎馬隊を待った。
エルフ分隊全員レーザー銃を構え、パトラは両刃チェーンソー剣を中段に構えている。
鹿島はパトラの肩に手を当てて、リラックスした微笑み顔で、
「パトラ、貴女はいつでも出ていいが、レーザー銃の撃ち初めての合図は貴女です。」
パトラはかなり緊張していた様子で、肩に手を当てると一瞬目を丸くしたが、すぐに微笑み返した。
一キロ先の草原で騎馬隊は縦列で進んでいたが、散開した後パトラ側に向かって来始めた。
どうやら騎馬隊はすでに十頭のキャルドを仕留めたようで、残りのキャルドを長い鞭を使いながら、追い込んで来るようである。
先頭のキャルドがパトラから百メートルの距離に近付く辺りで、騎馬隊は左右に散ったのを確認した後、パトラの肩を軽く押すと、
「一番、八番撃ち方初め!」
と、自分を鼓舞するかのように、力の入った声でパトラは叫んだ。
一頭残して十四頭のキャルドの頭半分は、エルフ戦士により全て炭にされていた。
十四頭のキャルドが倒れたのを確認して、パトラは残りの一頭に向かって行くので、鹿島はパトラの後ろに付いて行き、キャルドまでの五十メートルくらいの位置で、
「上段に構えて、ここで待て。」
と、鹿島はパトラに声をかけた。
キャルドはパトラから五メートル位の距離からジャンプして、パトラに襲い掛かったが、鹿島は後ろからパトラの腰を持ち上げ、左足で地を強く蹴り、大きく右にジャンプして、
右足が地に着いた瞬間、全身の力を込めて右足を踏ん張り、キャルドの腹にパトラを直角に立ち向わせて、鹿島が切れと叫ぼうと思った時に、パトラの剣は既にキャルドの首に向かっていた。
切り口は頭に近い部分であった為に少し浅かったようで、キャルドの首は胴にまだ残っている。
パトラはそれでもなお左側に横たわったキャルドに向かうと、キャルドの左足がパトラに襲いかかるが、パトラはキャルドの左足諸共首を切り落とした。
静まり返っていた、エルフ分隊の方から歓声が挙がった。
パトラは顔中汗だらけである。
「閣下、指が動きません。」
と声を掛けてくるなり、鹿島に寄りかかってきた。
鹿島は、パトラの声は震えながらも、その身体は硬直しているようで、目だけが微笑んでいるが、顔の表情も引きつっている
「すまん。少し刺激が強すぎたようだ。」
「いいえ、快感です。」
と、言って鹿島に抱だれた腕の中に崩れた。
パトラは、これまで経験したことのない震えともに、快感が全身を貫いてしまったために力が抜けてしまっている様子だった。
鹿島はパトラを抱いたまま指をほぐしてあげると、剣を受けとり剣に着いたキャルドの血を払うと、パトラは鹿島の動作で我に返ったようで、起き上がりざま剣に手のひらを向け、
「水よ、湧き出ろ。」
と、唱えると、パトラの掌前の何も無い空中から水が噴き出してきて、剣に着いたキャルドの血をきれいに洗い流した。
「パトラ、今の水は、どうゆう仕組みで、どこから出した。」
パトラはきょとんとした顔で、
「水魔法でしょう。」
「魔法?誰でも出来るのか?」
「守り人様ほどではないが、各自、得意、不得意、ありますわ。」
「他にも何かできるのか?」
「火魔法、光魔法かな。」
「爆裂魔法みたいなものは?」
「閣下みたいな爆裂魔法は出来ません。爆裂魔法が出来る人は、伝説の勇者だけだと思います。」
「パンパ街での爆裂は魔法ではない。手りゅう弾と言って科学と物理学だ。然らば、爆裂魔法はあるのだ。」
「勇者伝説では伝えられていますが、閣下等みたいに、王宮の光魔法や火を噴く筒、それに壁から出る誰でも使える水道水、それらに対抗できる魔法はありません。」
「勇者は、今もいるのですか?」
「います。閣下です。」
パトラは得意顔で強く答えた。
どうやらパトラは、鹿島たちのことを魔法の国から来た人々と、勘違いしていたようであるので、
「全ては、我が国の物理学と科学技術によるもので、魔法ではありません。」
鹿島が知っている架空の世界が、この惑星では現実であるらしい。
鹿島は皆が魔法を知らないままで突然に魔法に遭遇すると、混乱して危険も有るだろうから、魔法については調査の必要がありそうだと思った。
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