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制覇行進
206 森での戦闘
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隊長リルドラが村人達の輪に向かうと、交渉者スカシッペが熱弁をふるっていた。
隊長リルドラは
「あの男は何を言っているのだ?」と、
胸幅広い女傑に声がけした。
「あのうさん臭い商人が、人質を買って出た。」
「ほう、それは面妖な。」
「リルドラ様も奇妙な事だと?」
「俺の名を知っているのか?」
「数々の武勇伝も聞いています。」
「俺に武勇伝など、噂だろう。貴女様の名はなんと申すのでしょう。」
「アンティオペーと申します。」
「アンティオペーどの、また後で。」
と、隊長リルドラは「人質を買って出た。」との言葉を思案しながらも、礼儀正しく腰を折った。
「して、人質を買って出たとのことだが、お主は何者だ?」
と隊長リルドラは暗殺者と認知している男の前に進み出た。
「通りすがりの旅商人です。今後、アマゾネス村様には是非とも、お得意様としての縁を持ちたいと、得意な交渉術で誘拐犯人と村の仲介を申し出ました、スカシッペと申す小物にございます。」
「して、奴らの要求は聞いてきたのか?」
「はい。治安部隊長様と衛士兵二名様だけの同行と、子供たちの代わりの人質は私でも良いが、釈放金の上乗せを命じられました。」
「わかった。許容範囲だ。三人の元親衛隊騎士の安全を保障しているので、同行は想定済みだ。但し、上乗せ分も含め、金貨四十五貨で手を打ってくれ。他には何か要求があるか?」
「絶対外せない要求として、わたくしが解放されるまで、治安部隊長様と衛士兵二名様で何事が起きても、私の護衛することを要求します。」
「そなたが人質を買って出たのは、われらが三人の元親衛隊騎士の安全を保障する為に同行するとわかっているので、人質を申し出たのだろうから、解放されるまでは安全は保障しよう。」
と言って、金貨四十五貨の入った巾着を差し出した。
スカシッペは要求事が余りにも上手くいく事で内心戸惑ったが、ヒカリ自治区の経済力であれば無理な要求ではなかったし、騎士道を重んじる隊長リルドラだと、護衛の約束事は守るのだろうと納得した。
誘拐事件周りでは、関係者全員が歓喜しているが、なれど、小躍りする者はだれもいない中で、デンシャ車両内の鹿島だけが、タブレットの画面に感動の腕を上げていた。
「そんなに喜ぶこと?」
と、サニーがドヤ顔で鹿島を見つめた。
「まさか解決策を、敵が提案してくるなどとは思わなかったし、淡々とそれを了解するリルドラ殿は、役者やのう。」
「表情なく返事している兄様は、大根役者とも思える。」
「いやいや、リルドラ殿は内心シメタとの思いを隠すなど、名演技者だろう。」
鹿島の失意していた表情が歓喜に変わったことで、ヒカリ皇后も満面笑顔でこぶしを握り締、
「確かに、リルドラは暗殺者達の目論見にすぐに気づき、内心の喜びを隠して上乗せ金を払い、周りに被害が及ばない場所を催促するなど、大したものです。」
との会話中、パブレットパソコンの映像には、隊長リルドラが子ども達を抱いて酒場から出てきた。
村の広場に歓声がとどろいている中、スカシッペは金貨袋を大事そうに抱いて、三人の元親衛隊騎士に人質として囚われているにもかかわらず、三人を従える様に村の出入り口に向かった。
デンシャ車両内では、
「あのコーガカンジャ団野郎、人質なのにそのように感じないほど、堂々としてやがる。」
「目論見がうまくいったので、全く警戒心がないわ。」
「まさに、そうだな。」
ヒカリ皇后と鹿島が浮かれている傍で、
「兄様は何をぐずぐずとなさっているのよ。」
と、マリーは兄、隊長リルドラが鼻の下を伸ばして、アンティオペーに話しかけている間イラつきを隠さなかった。
スカシッペと三人の元親衛隊騎士は治安部隊長リルドラとその配下二人を無視する様に、街道を急ぎ足で進んでいた。
「オイオイ、奴らなぜにリルドラ殿たちを、残して急ぐのだ?」
「兄様がぐずぐずしているからよ。」
「いや、何か理由があるのかもしれん。ドローンの監視を増やそう。」
「森へ入ったなら、木魂の協力が得られるので、心配ないわ。」
と、サニーはヒカリ皇后の肩に留まっている銀色妖精ツボミを避ける様に、鹿島の横に来ていた。
隊長リルドラは女傑アンティオペーとの会話に心地よさを感じてしまい、元親衛隊騎士と交渉人の護衛役を約束したにもかかわらず、かなり遅れていることに気づいて街道を駆け出していた。
元親衛隊騎士と交渉人四人は打合せ通り、街道から離れて森の方へ向かった。
「治安部隊長様~。たすけてくれ~。」との声で、
街道を駆け出していた治安部隊は、街道から離れて森へ向かう四人に気づき、すぐさま森に入りかけている四人を追った。
「おうおう。いい展開だな。俺らも森へ向かおう。」
と、パブレットパソコンはそのままにし、鹿島は瞬間移動で扉から出て行き、サニーに精霊たちやヒカリ皇后も空間移動で車内から消えた。
マリーが声を出す暇もなく、全員が消えてしまった。
マリーにしてみれば、ただ車内をうろうろするしか思い浮かばず、次の行動は何をすべきかと混乱しているのか、何度もパブレットパソコンをのぞき込んでは、またうろうろしだした。
リルドラと二人の治安隊員たちは森に入った四人組を追って藪をかき分けると、枝葉には血が付いていて、地面にも血が滴っていた。
隊長リルドラは枝葉に着いている血をこすると、匂いを確かめた。
「これは、、、一刻前の古い血のりだが微かに獣の匂いがする。周りを警戒しながら奴らを探す。誘拐交渉人も警戒しろ。奴も敵だ。」
「あの商人もですか?」
「たびたびの襲撃者の仲間だとの、確実な証拠がある。」
「確実なのですね。」
「確実だ。」と、
隊長リルドラは鹿島達からの情報以外に、アンティオペーから、「商人は危険者。」との通報を思い出していた。
地面の血跡は森の奥深くまで続いていた。
森の中では、スカシッペと三人の元親衛隊騎士は藪をかき分けながら、森の奥を目指していた。
「おい。もうここらでいいだろう。」
と、元親衛隊騎士ヒローは肩で息をしながら、先頭を駆けて行くスカシッペに声がけするが、スカシッペは片手で自分のお尻をぺんぺんしながら素知らぬふりをし、残りの片手で藪の枝葉を払いながら奥へ消えていった。
「野郎!金貨を持ち逃げしやがった!」
と、元親衛隊騎士ヒローが叫ぶと、息を切らしながらインポイとコーシクもようやっと追いついて来た。
「あの野郎!ふざけた真似をしやがって!」
と、遅れて現れた二人は元気を取り戻したかの様に、枝葉が切り落とされた痕に向かって行った。
藪の中では河童の最後っ屁か、はたまたスカンクのおならかと思える、強力な臭いと三人の涙栓を破いた。
三人が涙顔と嘔吐しながら藪から飛び出ると、
「歌えや!」との声と共に、六本の苦無が飛んできた。
六本の苦無は元親衛隊騎士の甲冑部分がずれ落ちている膝皿に食い込んだ事で、三人はさらに泣きっ面に蜂の形相で転倒した。
「ギャーッ。」と三人は合唱し合ったのみならず、また六本の苦無が三人を襲い、両腕と肩部分の継ぎ手部に深々と刺さった事で、女子供が泣き叫ぶ様に大声を発しだした。
当然三人の合唱は歌うとは程遠い、全身全霊をささげた大泣きっ面での悲鳴であった。
リルドラと二人の治安隊員たちは血跡を確認しながら、急いでいたのにもかかわらず、四人のかなり後方にいた。
しかしながら泣き叫ぶ声を聴き、四人の位置方向を確認出来た。
泣き叫ぶ声の位置方向には藪は無く、リルドラと二人の治安隊員たちをいざなうがごとく低い草だけが生えていた。
リルドラと二人の治安隊員たちは、泣き叫びながら転がり続ける三人の元親衛隊騎士達を、啞然として見つめた。
ところが突如として、枝葉の間から殺意丸出しの苦無が三人に襲い掛かってきた。
治安隊員二人にそれぞれ二本の苦無が襲い掛かり、隊長リルドラには四本の苦無が襲い掛かった。
苦無は三人に向かって的確確実と思える速さで、甲冑に保護させていない顔めがけて飛んできた。
ところが、三人の顔は苦無が襲い掛かる直前、吹き飛んだ。
三人はあまりにも衝撃が強かったのか、そのまま気を失ってしまった。
「ヒカリちゃん!加減を考えなさい!」と、サニーの声がした。
「あたし、、、危ないと思っただけなのに、なぜか無意識に風魔法を発動したみたい。こんな経験は初めてです~。」と、語尾を弱めて弁解し、ヒカリ皇后は気を失っている三人のもとへすぐに空間移動した。
苦無の飛んできた方向から、
「なんだ!金貨が消えて、葉っぱだらけだ!金貨はどこに行った!」
との叫び声と共に、森中に、空気銃の鈍い三連射発射音が響き続いた。
その頃、鹿島はパブレットパソコンを忘れたことで、”コーガカンジャ団”の位置を確認できないことに気づいた。
「サニー俺を誘導してくれ!」
と叫ぶと、
「今、手を離せないので、誘導は無理。私を感じて早く来なさいよ。」
と冷たい返事だけがきた。
サニーは鋼鉄ワニ族男の振り回す大剣との交戦中であり、かなりの苦戦を強いられていた。
「全く不死身の鋼鉄鱗板は厄介だわ。」と、
瞬間移動を交えての雷、水刃、風刃、氷槍と多彩な攻撃していたが、死んだはずの又三郎だと気づき、
「生き返りやがったのか!」と叫んだ。
「何?俺を知っていると?」
が、よく見ると顔は瓜二つだが、死んだはずの又三郎よりも若干、魔素貯蔵塊は小さいと感じた。
「いや、人違いであった。」と、
サニーは神降臨街の隠れ家にいたワニ男とは、魔素塊鑑定から別人だと確認した。
「その様子だと、俺の兄を知っているな。又三郎は死んだのか?」
「お前に話すことなど、何もない。」
「お前が殺したのか?」
「話す必要はない。」と、
サニーは翅を広げて、
「軍隊魔蜂の毒針をくらえ!」と、
翅をはばたかせ、無数の毒針を飛ばした。
「これはこれは、精霊様とは驚いたな。なぜに俺たちに敵対するのだ?」
と、ハリネズミ状態の又四郎は不敵にニヤリと笑った。
「私の家族の家族が、襲われているからだ。」
「もっともな理由だ。だが、たとえ精霊様とて、不死身の俺を倒せるかな?」
「それを確かめている最中さ。老樹液!」
と叫んだが、ハリネズミ状態の鋼鉄ワニ族又四郎には変化がなかった。
サニーは銀色妖精が生まれた大木の樹脂で、軍隊魔蜂の石化を目撃しているので、鹿島やヒカリ皇后のみならず、すべての精霊たちを含め全員が石化しなかった。
とりわけ亜人の場合はどのような状態になるのか、確認する必要があると思った。
隊長リルドラは
「あの男は何を言っているのだ?」と、
胸幅広い女傑に声がけした。
「あのうさん臭い商人が、人質を買って出た。」
「ほう、それは面妖な。」
「リルドラ様も奇妙な事だと?」
「俺の名を知っているのか?」
「数々の武勇伝も聞いています。」
「俺に武勇伝など、噂だろう。貴女様の名はなんと申すのでしょう。」
「アンティオペーと申します。」
「アンティオペーどの、また後で。」
と、隊長リルドラは「人質を買って出た。」との言葉を思案しながらも、礼儀正しく腰を折った。
「して、人質を買って出たとのことだが、お主は何者だ?」
と隊長リルドラは暗殺者と認知している男の前に進み出た。
「通りすがりの旅商人です。今後、アマゾネス村様には是非とも、お得意様としての縁を持ちたいと、得意な交渉術で誘拐犯人と村の仲介を申し出ました、スカシッペと申す小物にございます。」
「して、奴らの要求は聞いてきたのか?」
「はい。治安部隊長様と衛士兵二名様だけの同行と、子供たちの代わりの人質は私でも良いが、釈放金の上乗せを命じられました。」
「わかった。許容範囲だ。三人の元親衛隊騎士の安全を保障しているので、同行は想定済みだ。但し、上乗せ分も含め、金貨四十五貨で手を打ってくれ。他には何か要求があるか?」
「絶対外せない要求として、わたくしが解放されるまで、治安部隊長様と衛士兵二名様で何事が起きても、私の護衛することを要求します。」
「そなたが人質を買って出たのは、われらが三人の元親衛隊騎士の安全を保障する為に同行するとわかっているので、人質を申し出たのだろうから、解放されるまでは安全は保障しよう。」
と言って、金貨四十五貨の入った巾着を差し出した。
スカシッペは要求事が余りにも上手くいく事で内心戸惑ったが、ヒカリ自治区の経済力であれば無理な要求ではなかったし、騎士道を重んじる隊長リルドラだと、護衛の約束事は守るのだろうと納得した。
誘拐事件周りでは、関係者全員が歓喜しているが、なれど、小躍りする者はだれもいない中で、デンシャ車両内の鹿島だけが、タブレットの画面に感動の腕を上げていた。
「そんなに喜ぶこと?」
と、サニーがドヤ顔で鹿島を見つめた。
「まさか解決策を、敵が提案してくるなどとは思わなかったし、淡々とそれを了解するリルドラ殿は、役者やのう。」
「表情なく返事している兄様は、大根役者とも思える。」
「いやいや、リルドラ殿は内心シメタとの思いを隠すなど、名演技者だろう。」
鹿島の失意していた表情が歓喜に変わったことで、ヒカリ皇后も満面笑顔でこぶしを握り締、
「確かに、リルドラは暗殺者達の目論見にすぐに気づき、内心の喜びを隠して上乗せ金を払い、周りに被害が及ばない場所を催促するなど、大したものです。」
との会話中、パブレットパソコンの映像には、隊長リルドラが子ども達を抱いて酒場から出てきた。
村の広場に歓声がとどろいている中、スカシッペは金貨袋を大事そうに抱いて、三人の元親衛隊騎士に人質として囚われているにもかかわらず、三人を従える様に村の出入り口に向かった。
デンシャ車両内では、
「あのコーガカンジャ団野郎、人質なのにそのように感じないほど、堂々としてやがる。」
「目論見がうまくいったので、全く警戒心がないわ。」
「まさに、そうだな。」
ヒカリ皇后と鹿島が浮かれている傍で、
「兄様は何をぐずぐずとなさっているのよ。」
と、マリーは兄、隊長リルドラが鼻の下を伸ばして、アンティオペーに話しかけている間イラつきを隠さなかった。
スカシッペと三人の元親衛隊騎士は治安部隊長リルドラとその配下二人を無視する様に、街道を急ぎ足で進んでいた。
「オイオイ、奴らなぜにリルドラ殿たちを、残して急ぐのだ?」
「兄様がぐずぐずしているからよ。」
「いや、何か理由があるのかもしれん。ドローンの監視を増やそう。」
「森へ入ったなら、木魂の協力が得られるので、心配ないわ。」
と、サニーはヒカリ皇后の肩に留まっている銀色妖精ツボミを避ける様に、鹿島の横に来ていた。
隊長リルドラは女傑アンティオペーとの会話に心地よさを感じてしまい、元親衛隊騎士と交渉人の護衛役を約束したにもかかわらず、かなり遅れていることに気づいて街道を駆け出していた。
元親衛隊騎士と交渉人四人は打合せ通り、街道から離れて森の方へ向かった。
「治安部隊長様~。たすけてくれ~。」との声で、
街道を駆け出していた治安部隊は、街道から離れて森へ向かう四人に気づき、すぐさま森に入りかけている四人を追った。
「おうおう。いい展開だな。俺らも森へ向かおう。」
と、パブレットパソコンはそのままにし、鹿島は瞬間移動で扉から出て行き、サニーに精霊たちやヒカリ皇后も空間移動で車内から消えた。
マリーが声を出す暇もなく、全員が消えてしまった。
マリーにしてみれば、ただ車内をうろうろするしか思い浮かばず、次の行動は何をすべきかと混乱しているのか、何度もパブレットパソコンをのぞき込んでは、またうろうろしだした。
リルドラと二人の治安隊員たちは森に入った四人組を追って藪をかき分けると、枝葉には血が付いていて、地面にも血が滴っていた。
隊長リルドラは枝葉に着いている血をこすると、匂いを確かめた。
「これは、、、一刻前の古い血のりだが微かに獣の匂いがする。周りを警戒しながら奴らを探す。誘拐交渉人も警戒しろ。奴も敵だ。」
「あの商人もですか?」
「たびたびの襲撃者の仲間だとの、確実な証拠がある。」
「確実なのですね。」
「確実だ。」と、
隊長リルドラは鹿島達からの情報以外に、アンティオペーから、「商人は危険者。」との通報を思い出していた。
地面の血跡は森の奥深くまで続いていた。
森の中では、スカシッペと三人の元親衛隊騎士は藪をかき分けながら、森の奥を目指していた。
「おい。もうここらでいいだろう。」
と、元親衛隊騎士ヒローは肩で息をしながら、先頭を駆けて行くスカシッペに声がけするが、スカシッペは片手で自分のお尻をぺんぺんしながら素知らぬふりをし、残りの片手で藪の枝葉を払いながら奥へ消えていった。
「野郎!金貨を持ち逃げしやがった!」
と、元親衛隊騎士ヒローが叫ぶと、息を切らしながらインポイとコーシクもようやっと追いついて来た。
「あの野郎!ふざけた真似をしやがって!」
と、遅れて現れた二人は元気を取り戻したかの様に、枝葉が切り落とされた痕に向かって行った。
藪の中では河童の最後っ屁か、はたまたスカンクのおならかと思える、強力な臭いと三人の涙栓を破いた。
三人が涙顔と嘔吐しながら藪から飛び出ると、
「歌えや!」との声と共に、六本の苦無が飛んできた。
六本の苦無は元親衛隊騎士の甲冑部分がずれ落ちている膝皿に食い込んだ事で、三人はさらに泣きっ面に蜂の形相で転倒した。
「ギャーッ。」と三人は合唱し合ったのみならず、また六本の苦無が三人を襲い、両腕と肩部分の継ぎ手部に深々と刺さった事で、女子供が泣き叫ぶ様に大声を発しだした。
当然三人の合唱は歌うとは程遠い、全身全霊をささげた大泣きっ面での悲鳴であった。
リルドラと二人の治安隊員たちは血跡を確認しながら、急いでいたのにもかかわらず、四人のかなり後方にいた。
しかしながら泣き叫ぶ声を聴き、四人の位置方向を確認出来た。
泣き叫ぶ声の位置方向には藪は無く、リルドラと二人の治安隊員たちをいざなうがごとく低い草だけが生えていた。
リルドラと二人の治安隊員たちは、泣き叫びながら転がり続ける三人の元親衛隊騎士達を、啞然として見つめた。
ところが突如として、枝葉の間から殺意丸出しの苦無が三人に襲い掛かってきた。
治安隊員二人にそれぞれ二本の苦無が襲い掛かり、隊長リルドラには四本の苦無が襲い掛かった。
苦無は三人に向かって的確確実と思える速さで、甲冑に保護させていない顔めがけて飛んできた。
ところが、三人の顔は苦無が襲い掛かる直前、吹き飛んだ。
三人はあまりにも衝撃が強かったのか、そのまま気を失ってしまった。
「ヒカリちゃん!加減を考えなさい!」と、サニーの声がした。
「あたし、、、危ないと思っただけなのに、なぜか無意識に風魔法を発動したみたい。こんな経験は初めてです~。」と、語尾を弱めて弁解し、ヒカリ皇后は気を失っている三人のもとへすぐに空間移動した。
苦無の飛んできた方向から、
「なんだ!金貨が消えて、葉っぱだらけだ!金貨はどこに行った!」
との叫び声と共に、森中に、空気銃の鈍い三連射発射音が響き続いた。
その頃、鹿島はパブレットパソコンを忘れたことで、”コーガカンジャ団”の位置を確認できないことに気づいた。
「サニー俺を誘導してくれ!」
と叫ぶと、
「今、手を離せないので、誘導は無理。私を感じて早く来なさいよ。」
と冷たい返事だけがきた。
サニーは鋼鉄ワニ族男の振り回す大剣との交戦中であり、かなりの苦戦を強いられていた。
「全く不死身の鋼鉄鱗板は厄介だわ。」と、
瞬間移動を交えての雷、水刃、風刃、氷槍と多彩な攻撃していたが、死んだはずの又三郎だと気づき、
「生き返りやがったのか!」と叫んだ。
「何?俺を知っていると?」
が、よく見ると顔は瓜二つだが、死んだはずの又三郎よりも若干、魔素貯蔵塊は小さいと感じた。
「いや、人違いであった。」と、
サニーは神降臨街の隠れ家にいたワニ男とは、魔素塊鑑定から別人だと確認した。
「その様子だと、俺の兄を知っているな。又三郎は死んだのか?」
「お前に話すことなど、何もない。」
「お前が殺したのか?」
「話す必要はない。」と、
サニーは翅を広げて、
「軍隊魔蜂の毒針をくらえ!」と、
翅をはばたかせ、無数の毒針を飛ばした。
「これはこれは、精霊様とは驚いたな。なぜに俺たちに敵対するのだ?」
と、ハリネズミ状態の又四郎は不敵にニヤリと笑った。
「私の家族の家族が、襲われているからだ。」
「もっともな理由だ。だが、たとえ精霊様とて、不死身の俺を倒せるかな?」
「それを確かめている最中さ。老樹液!」
と叫んだが、ハリネズミ状態の鋼鉄ワニ族又四郎には変化がなかった。
サニーは銀色妖精が生まれた大木の樹脂で、軍隊魔蜂の石化を目撃しているので、鹿島やヒカリ皇后のみならず、すべての精霊たちを含め全員が石化しなかった。
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