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制覇行進

196 共同ガサ入れ

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 警視庁のとある教室風景部屋。
ハイナは黒板前に立っていて、鹿島は黒板の横に座り、黒板を挟んだ反対側には、警視庁公安部調査官との立札と捜査四課課長との立札が、それぞれ二人の男の前に置いてあった。

 ハイナは両腕にできた鳥肌をさすりながら、
「では、昨夜の調査報告をしてください。」
と高位席にいる男に声がけした。
背丈高い、十頭身の中性的なまつ毛パーマ美男子が腰をシナリ動作しながら立ち上がり、お姉え言葉で、
「警視庁公安部テロリスト調査官のアキヒロで~ㇲ。ゆんべ~ェ、ハイナちゃんとデートしながら~ァ、“イガカンジャ団“の経営する~う、ダラククラブの呼び込み娘に~ィ唾つけています~う。」
と又、シナリ動作しながら席に着いた。

ハイナは美男子アキヒロをドヤ顔で睨み、
「デートではないです。捜査下見確認でした。」
と、また腕の鳥肌をさすりだした。

捜査四課課長との立札の男が立ち上がり、
「今回は情報省探査部と、警視庁公安部との初めての共同ガサ入れだが、今回の“ガサ入れ”は外国人犯罪者を取り締まる俺らの縄張りなので、決して失敗は許されない。なお、逃走者が窓や屋根から逃げ出す場合があり得る。気を抜かないで事に当たれ。」
と、鬼の形相でまくし立てた。

 捜査四課課長はダラククラブ周辺の見取り図を描き、各場所に×印を書き込んで、
「ではダラククラブへの偽装潜入捜索は、第一潜入部隊は警視庁公安部調査官アキヒロ殿率いる捜査四課五名を先行させ、その後五分後に捜査四課五名も入ります。
ほか、残りの捜査官は建物出入口を監視して、店内で騒ぎが起きた時、すかさず建物に侵入して出入りの者たちの確保。以上。質問は、ありますか?」

鹿島は、捜査四課課長及びその配下全員が緊張している様子だと感じ、
「ハイナ。俺らの縄張りだと言っていたが、何事かあったのか?」
「情報省探査部から、警視庁公安部へ協力を仰いだところ、捜査四課課長から偽装潜入捜索への、強引な割り込みを受けました。」
「互いのメンツか?」
「私たち情報省探査部は、少数対象者への個別対応は出来ますが、集団者への対応戦力はありません。」
「警視庁公安部テロリスト課も同じなのか?」
「捜査四課課長からの、強引な割り込みがあったってことは、私たち情報省探査部調査課と、同じ規模ではないでしょうか?」
「今回は互いのメンツ上、捜査四課だけのガサ入れにならなかった。のか?」
「パトラ大臣の話ですと、陛下が加わるなら、失敗はあり得ない。なので、情報省探査部調査課も参加しろとの命令が下りました。」
「功績の取り合い?」
「予算の取り合いかも。」
「あ~、そうですか。では、おれは脱走者阻止への、対応班に加わるわ。」
鹿島はダラククラブ内潜入捜索への、参加を断念した。

 神降臨街繫華街は歌舞伎町程ではないが、飲食街はすすき野、池袋、宗右衛門町に思案橋繫華街並みであった。

 捜索隊は隊ごとに順次繫華街を目指し、鹿島とハイナは最後尾でゆっくりと進んだ。

 先頭集団のアキヒロは千鳥足で呼び込みをあしらいつつ、立ちんぼ女性をからかいながら、のんびりとした千鳥足でダラククラブ前に着いた。

「俺を覚えているかな~。」
と、用心気に行きかう通行人を品定めしている、ダラククラブ看板前の呼び込み娘に声がけした。
「昨日の同伴女性がいるにもかかわらず、私に流し目したでしょう。」
「夕んべはあなたの姿がまぶたに焼き付いていて、眠れなかったのだ。」
「また、そんなうれしいことを。」
と言って、娘はアキヒロの腕にしがみつき、
「で、貴方はナンパ師?それともお客様?」
「後ろの五人も連れだ。」
「あなたは遊び人風だけど、後ろの方々は武骨そう。風貌がいかついているので、用心する部類の香りが漂っているのよね~。」
と、警戒の目を五人に向けた。
「奴らは俺の配下で特に無骨者達だから、緊張しているだけさ。だからここへ、誘ったのさ。少し奴らを柔らかくしてくれ。」
と巾着を取り出し、内で銀貨音をさせて銀貨一枚を娘に渡した。

「ま、確かに緊張してるっちゃ、緊張してる様子だわァ。
あなたの連れなら心配ないでしょう。ここはそうゆう天国場所なので、すぐにフニャフニャになるわ。」
と、上機嫌になり、店の奥に向かって、
「お得意さんと、天国場所に不慣れな連れ五名も入ります。」
と、元気よく薄暗い店内に向かって声を上げた。

 店内にいる薬物常習者特有の雌目たちはアキヒロを無視し、不慣れな連れと名指しされた五名に群がった。
「なんで俺は無視された。」
「貴方は、私好みの男だからよ。」
と、娘はさらに掴んでいる腕に力を込めた。

 アキヒロが娘の体を手際よく触りまくっていると。
「虜にしてあげるから、、、。」
と、娘はアキヒロの一物が気に入ったのか、手の力を強軟弱と込めて握りしめ、
「私のオンリーか、ヒモでもいいわよ。」
と、娘はアキヒロの唇を吸いだした。
アキヒロは満面の笑顔で娘を魅了し、ほってった雌目顔になった頭を下腹部にいざないながら周りを見回した。
周りの席では、五人の武骨者達は雌目たちのサービスが濃厚になるごとに、銀貨一枚を巻き上げられていた。

 五人の武骨者達がズボンを脱がされそうになり遠慮がちに抵抗しだしたころ、ダラククラブ店の前では騒ぎが起きていた。

「何だ!俺らは、客だぞ!」
「酔っぱらいは、入店拒否と書いてあるでしょう。」
「よってなどいない!」
「酔っぱらいは、みんなそう言います。判断は私共です。」
第二潜入部隊、捜査四課課長と捜査員五名が、「入れろ。」「入れないと。」ダラククラブ男性従業員五人と揉めだしていた。

 鹿島といつの間にか忍者風黑衣装に着替えたハイナは、騒ぎ場所の向かい側建物屋根にいた。
鹿島が周りを見回すと、二十人の捜査員は騒ぎの中心地ダラククラブ二階建て建物をすでに囲んでいた。

 表の騒ぎに気づいたアキヒロは娘の頭を下半身から離し、身じろぎして着衣を整えると、
「不法なる過剰のサービス容疑者どもを、現行犯逮捕する。」
と言って、薄暗い店内に指の先から灯火を現した。

五人の捜査員達も慌てて着衣を整えると、
「全員動くな!手を頭後ろにそろえ!床にひざまずけ!」
と言って、拳銃らしきものを両手で支え、店内総てを見回す様に用心深く左右に動かした。

 だが、一人の男が立ち上がって逃げ出すと、爆裂音と共に男は背中を叩き潰された状態で床に倒れた。
と、同時に雌目娘達が悲鳴を上げながら、店内を駆け回りだした。

騒然とする店内で、アキヒロと五人の捜査員達は雌目娘達のパニック状態に啞然としていて、客や従業員と思しき男達も店内を駆け回る半裸娘達を眺めていた。

ようやっと、第二潜入部隊も表の男たちを確保した様子で、騒然としている店内に駆け込んできた。
「各自、捜索!」と捜査四課課長が怒鳴ると、啞然としていた五人の捜査員達も、客や従業員と思しき男達を店内角隅一カ所に集め、女達をロッカールームに集めた。

 第二潜入部隊捜査員五名は静かにになった店内を確認すると、階段に向かって走り出した。

第二潜入部隊が店内に駆け込んだのを確認した包囲捜査員達は、二階建物外の非常階段から駆け上がっていた。

 二階で爆裂音と怒号に悲鳴が響いている中、アキヒロの相方をしていた娘が腹から血を出しながら、ロッカールームから飛び出てきた。

腹から血流している娘に向かって、角隅の男集団から大型ラギオール似の両刃タガーナイフが飛んできた。
娘は空中でタガーナイフを掴むと、心配気の表情で近づいていた無防備のアキヒロに襲い掛かった。

アキヒロの胸にタガーナイフが突き刺さる、、、寸前、青い光がタガーナイフをはじいた。
「アキヒロ殿、油断しすぎだぞ。」
と捜査四課課長は上段の構えから、鱗縁側刃を横形水平に構え直しながらも刃下からにらんだ。

娘は真っ赤になったドレスのまま再びアキヒロに突進していき、拳銃を構えたアキヒロの頭を踏むと、捜査四課課長の頭上を越えて店の扉から外へ飛び出た。
みんなが声を出して後を追いだしたが、すでに娘の姿は開いた扉の外にも見いだせなかった。

 娘は店から飛び出すと、屋根にいる鹿島達の建物に向かい、一階の看板を踏み台にして屋根に飛び移ってきた。
鹿島達は血だらけの娘が店から飛び出すのを見て、屋根から飛び降りようと身構えたとき、突然目の前に娘が現れた。

鹿島は驚き、「は!」と発し、
娘は鹿島の顔に向かって、「チェ!」とにらみ、
互いの音が交差した。

「逃がさないわよ、伊賀のサル飛び!」
とハイナは鍔なし小太刀を片手に、屋根から屋根に飛び移りながら逃げる娘を追いかけだした。

 追跡が遅れた鹿島は、追跡ドローンから送られてくる逃走地点を割り出し、瞬間移動しながら先回りした。

 ハイナを振り切った娘が屋根から飛び降り、人影のない屋台置き場に姿を現した。

「パチパチパチパチ」と鹿島は手をたたきながら屋台の影から現れ、
「かなりの出血の様子だが、見事な体力だ。」
「ふん。」と娘は鼻で返事して、腹から血だまりを鹿島に投げつけた。
「え!これは肝臓か?」
「若い娘の肝臓だ。新鮮だぞ。」
「もしかして、、まさか仲間の娘の、、、、。」
「仲間?エサが仲間のはずがなかろう。」
「エサ?」
「お前をおびき出す餌の一つだ。」
「お前て?俺のことか?」
「子供から婆まで、好色のお前のことだよ。」
「お前とは初見だが、俺が誰だか知っていると?」
「特級賞金首の鎮守聖陛下殿だろう。似顔絵同様、腑抜けた顔だな。俺は美形と巨根が好きだが、おまえは番外だ。」
「傷つくぜ。」
「辛うじて、地位があるから、女たちをたぶらかしたのだろうが、俺は面食いなので殺す。」
といって
速攻連続斬りで鹿島に迫った。

鹿島は連続斬りを軽く弾いたがつもりが接触感覚がない事と、不思議な気配を背中に感じた。
「陛下様!後ろ!」
鹿島の月光影からタガーナイフが飛び出してきた。

 鹿島はとっさに神剣で地面の黒い影を切った。
地面から血吹雪が噴き出し、徐々に娘の姿が現れてきた。

姿を現した娘はすでにこと切れていた。

「なんだこれは?」
「伊賀忍法影憑依。」
「ハイナは忍法に詳しいのか?」
「風魔忍法ならば、そこそこに。」
「しかし伊賀忍法。といったぞ。」
「裏社会での伊賀忍法、影憑依者は有名な暗殺者の呼び名です。
一度も暗殺標的を仕損じたことのないと聞き及んでいます。
しかし、伊賀のサル飛びが、影憑依者とは知らなかった。」
「伊賀のサル飛び?」
「伊賀棟梁の四人娘の一人です。各娘達はそれぞれに暗殺集団を率いて、実行しています。」
「ほかにまだ三人暗殺者がいると?」
「霧斬りサンゾー。両使いニュードー。穴住コスケ。と呼ばれています。ただ忍法は不明です。」
「霧隠れ、入道、穴、、小助?どっかの勇士名に似ているな。」
「影憑依者を倒すなど、すごい快挙です。」

「次は”コーガカンジャ団“の店か。」
「あれだけの騒ぎを起こしてしまいましたので。うわさが広がる前に、時を移さず、すぐに実行すべきです。」
「法的には、殴り込みなどできないだろう。」
「誰かが、拉致されて命の危険がある場合、緊急強制捜査ができます。」
「警視庁公安部と捜査四課への配慮はどうする。」
「あんな不手際する奴らなど、、、。」
「いや、突入時には、協力を仰ごう。して、誘拐される人の目星は誰?」
「陛下の力で、妖精様を囮にできませんか?」
「え~。むりだろうな~。」
「我が国の首脳達の命が狙われています。大精霊猊下様に相談しても無理でしょうか?」
「そうだな。相談しよう。」
と、鹿島は身内が狙われているのに、手段も躊躇なども無用と怒りが湧き上がってきた。

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