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制覇行進
165 嵐の前
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鹿島達の方へ街道先から駆けてくる馬上から、
「名主様!オニキチです。緊急事態になりました!」
との声で子供達はヒカリ皇后の手を払いのけ、「桶屋のオニキチ叔父さん!」と満面笑顔で大きく手を振りだした。
日が傾きだしたころ、操縦馭者元名主ジロチョウは眉間を寄せて、オニキチからの話に聞き入っていた。
「オニキチ。逃げるか戦うかの、これは由々しき事態になったようだな。」
「オオマサは一人で領主館に、飛び込むやもしれません。」
「だな、先ずは隣ハママツ集落にこの度の出来事を伝え、周りの集落に反乱一揆を呼び掛け合いの協力を頼み願え。俺は今から隣領地のオオオカ様に、われらの保護を求める書簡を書く。それの使いをも頼む。」
「オオオカ領主様への救援を求めるとの、書簡のことも皆に伝えます。」
と言って、ヒカリ皇后からもらったお菓子をほおばっている二人の子供たちと戯れているオチョー夫人のもとへ行き、
「おねぇ~、マーヤが殺されました。」と、力なく目を伏せた。
「誰に何で?」
「詳しい話しは、名主様から聞いてください。」
「ほかにけがをした人は?」
「今のところ大丈夫です。」
「今の所?」
「今のところはです。」
との言葉でオチョーは何かを悟って黙り込んだが、
「オニキチ。夫から頂いた餞別銭を、私にちょうだい。」
オニキチは微笑似ながら巾着袋口を下に向け、銀貨一枚を振り落としてオチョーに手渡した。
「ごめんね。せっかくいただいたのに取り上げてしまい、ごめんね。」と
オチョーはオニキチの手首を握って頭を下げた。
「おねぇ~、気にするな。もともと俺らが貰える権利のない餞別だ。」と、微笑み替えした。
書簡を受け取ったオニキチは馬にまたがり、街道を外れて草原を駆け出していった。
ジロチョーはオニキチを見送ると、鹿島達のもとへ向かいだした。
「何のお礼も出来ず、心苦しいのですが、我らは元の集落へ帰ることにしました。」
と言って頭を下げると、オチョーが巾着袋から銀貨三枚と銅貨七枚を差し出し、
「今はこれだけしかお礼ができませんが、お受け取りください。」と言って、ヒカリ皇后へ差し出した。
「お金を受け取る行為など、何もしていないわ。」
「夫の傷を治療していただき、私達の命さえも助けていただきました。本当にありがとうございました。いつか恩返しの機会がありましたら、必ず恩をお返しいたします。」
「気にしないでください。あなた方は、これからお金は大事でしょうから、次にお会いした時に受け取りましょう。」と言って、ヒカリ皇后は両手を後ろに回した。
ジロチョーは鹿島に頭を下げ、
「本来ならば、シミズ集落に招いて歓迎したいのですが、いささか面倒ごとが起き、迷惑をおかけするでしょうから招待できないのです。」
といって深く頭を下げた。
「気にするな。」と鹿島は微笑みを返した。
鹿島達はジロチョーに監察官の残した焼け焦げなかった剣一振りと四本の槍を渡し、シミズ集落に引き返すジロチョー家族を見送った。
鹿島は精霊たちの夕飯の希望を聞き、C-003号機を呼び出してヒカリ皇后だけを残し、獲物を求めて森へ入っていった。
牛ほどの大きさの猪魔物はすぐに見つかり、五人の精霊たちによりミンチ状態にされた。
「おい!いくらなんでも、ミンチはやりすぎだろう。食用にするには血抜きが出来る状態で狩れよ。」
「手加減は無理。」
「分かった。次から俺が狩る。次の獲物探しを頑張ってくれ。」
程なく次の獲物は見つかったが、しかしながら、象より重たいであろうコスモドラゴンタイプの超大型爬虫類化け物であった。
「ちょっとこれ、俺一人では無理だ。サニー手伝ってくれ。」
「私も手加減できないので無理。」
超大型爬虫類化け物は鹿島達に気づき、猛突進してきた。
超大型爬虫類化け物の猛突進は大型ダンプカー並みの勢いである。
サニーたち精霊は一斉に飛翔していき、咄嗟の出来事であったので鹿島だけが取り残された。
「骨が砕ける!」といって横跳びしたが、かなり跳ね飛ばされてしまった。
「ぎゃ~。」と鹿島が叫ぶと、
「回復!」と精霊達の魔素の塊が鹿島に飛んできた。
鹿島は転がりながら痛さと回復を交互に感じながら、何とか立ち上がったが、超大型爬虫類化け物は大きく口を開けて猛突進して来た。
鹿島はいくらか間合いがあった事で大きくジャンプし、超大型爬虫類化け物の背中に飛び乗ろうとしたが、化け物の背中は剣先の並んだ棘だらけであった。
「ぎゃ~。やばやば。」といって二十センチ長さの棘と棘の間に片足で着地しようと試みが、化け物が背中をゆすっている為に、鹿島はとっさに神剣で背中を刺して背中への着地をしない様に、神剣に全体重を乗せて逆立ち状態になった。
しかしながらコスモドラゴンタイプの超大型爬虫類化け物はかなり長い尻尾を持っていて、尻尾は棘を逆立てて、鹿島を横殴りに襲い掛かった。
「何やってんのよ!」とサニーは鹿島を抱きしめ、背中から剥がす様に強く抱きかかえて浮上したが、逆立った棘は鹿島の顔に向かってきた。
鹿島は渾身の力で、逆立った棘を刈り取る様に神剣を横に払った。
切り残った棘が鹿島の鼻先をかすっていったとき、
「風刃、」「氷槍。」「岩潰し。」「消し去る炎。」「綱石つぶて。」との声が響くと、
超大型爬虫類化け物の頭部分は肉ミンチとならずに消し飛散した。
「タロー貸しだよ!」と五人の精霊たちが鹿島に向かって気勢を上げた。
鹿島は、今夜は寝せてもらえないどころか、干からびるまで吸い出される予感を感じた。
「唐揚げ、から揚げ、からあげ祭りだ。好物、好物、ワッショイワッショイ。」
と大型中華鍋の周りで、五人の精霊たちが踊りだしていた。
「名主様!オニキチです。緊急事態になりました!」
との声で子供達はヒカリ皇后の手を払いのけ、「桶屋のオニキチ叔父さん!」と満面笑顔で大きく手を振りだした。
日が傾きだしたころ、操縦馭者元名主ジロチョウは眉間を寄せて、オニキチからの話に聞き入っていた。
「オニキチ。逃げるか戦うかの、これは由々しき事態になったようだな。」
「オオマサは一人で領主館に、飛び込むやもしれません。」
「だな、先ずは隣ハママツ集落にこの度の出来事を伝え、周りの集落に反乱一揆を呼び掛け合いの協力を頼み願え。俺は今から隣領地のオオオカ様に、われらの保護を求める書簡を書く。それの使いをも頼む。」
「オオオカ領主様への救援を求めるとの、書簡のことも皆に伝えます。」
と言って、ヒカリ皇后からもらったお菓子をほおばっている二人の子供たちと戯れているオチョー夫人のもとへ行き、
「おねぇ~、マーヤが殺されました。」と、力なく目を伏せた。
「誰に何で?」
「詳しい話しは、名主様から聞いてください。」
「ほかにけがをした人は?」
「今のところ大丈夫です。」
「今の所?」
「今のところはです。」
との言葉でオチョーは何かを悟って黙り込んだが、
「オニキチ。夫から頂いた餞別銭を、私にちょうだい。」
オニキチは微笑似ながら巾着袋口を下に向け、銀貨一枚を振り落としてオチョーに手渡した。
「ごめんね。せっかくいただいたのに取り上げてしまい、ごめんね。」と
オチョーはオニキチの手首を握って頭を下げた。
「おねぇ~、気にするな。もともと俺らが貰える権利のない餞別だ。」と、微笑み替えした。
書簡を受け取ったオニキチは馬にまたがり、街道を外れて草原を駆け出していった。
ジロチョーはオニキチを見送ると、鹿島達のもとへ向かいだした。
「何のお礼も出来ず、心苦しいのですが、我らは元の集落へ帰ることにしました。」
と言って頭を下げると、オチョーが巾着袋から銀貨三枚と銅貨七枚を差し出し、
「今はこれだけしかお礼ができませんが、お受け取りください。」と言って、ヒカリ皇后へ差し出した。
「お金を受け取る行為など、何もしていないわ。」
「夫の傷を治療していただき、私達の命さえも助けていただきました。本当にありがとうございました。いつか恩返しの機会がありましたら、必ず恩をお返しいたします。」
「気にしないでください。あなた方は、これからお金は大事でしょうから、次にお会いした時に受け取りましょう。」と言って、ヒカリ皇后は両手を後ろに回した。
ジロチョーは鹿島に頭を下げ、
「本来ならば、シミズ集落に招いて歓迎したいのですが、いささか面倒ごとが起き、迷惑をおかけするでしょうから招待できないのです。」
といって深く頭を下げた。
「気にするな。」と鹿島は微笑みを返した。
鹿島達はジロチョーに監察官の残した焼け焦げなかった剣一振りと四本の槍を渡し、シミズ集落に引き返すジロチョー家族を見送った。
鹿島は精霊たちの夕飯の希望を聞き、C-003号機を呼び出してヒカリ皇后だけを残し、獲物を求めて森へ入っていった。
牛ほどの大きさの猪魔物はすぐに見つかり、五人の精霊たちによりミンチ状態にされた。
「おい!いくらなんでも、ミンチはやりすぎだろう。食用にするには血抜きが出来る状態で狩れよ。」
「手加減は無理。」
「分かった。次から俺が狩る。次の獲物探しを頑張ってくれ。」
程なく次の獲物は見つかったが、しかしながら、象より重たいであろうコスモドラゴンタイプの超大型爬虫類化け物であった。
「ちょっとこれ、俺一人では無理だ。サニー手伝ってくれ。」
「私も手加減できないので無理。」
超大型爬虫類化け物は鹿島達に気づき、猛突進してきた。
超大型爬虫類化け物の猛突進は大型ダンプカー並みの勢いである。
サニーたち精霊は一斉に飛翔していき、咄嗟の出来事であったので鹿島だけが取り残された。
「骨が砕ける!」といって横跳びしたが、かなり跳ね飛ばされてしまった。
「ぎゃ~。」と鹿島が叫ぶと、
「回復!」と精霊達の魔素の塊が鹿島に飛んできた。
鹿島は転がりながら痛さと回復を交互に感じながら、何とか立ち上がったが、超大型爬虫類化け物は大きく口を開けて猛突進して来た。
鹿島はいくらか間合いがあった事で大きくジャンプし、超大型爬虫類化け物の背中に飛び乗ろうとしたが、化け物の背中は剣先の並んだ棘だらけであった。
「ぎゃ~。やばやば。」といって二十センチ長さの棘と棘の間に片足で着地しようと試みが、化け物が背中をゆすっている為に、鹿島はとっさに神剣で背中を刺して背中への着地をしない様に、神剣に全体重を乗せて逆立ち状態になった。
しかしながらコスモドラゴンタイプの超大型爬虫類化け物はかなり長い尻尾を持っていて、尻尾は棘を逆立てて、鹿島を横殴りに襲い掛かった。
「何やってんのよ!」とサニーは鹿島を抱きしめ、背中から剥がす様に強く抱きかかえて浮上したが、逆立った棘は鹿島の顔に向かってきた。
鹿島は渾身の力で、逆立った棘を刈り取る様に神剣を横に払った。
切り残った棘が鹿島の鼻先をかすっていったとき、
「風刃、」「氷槍。」「岩潰し。」「消し去る炎。」「綱石つぶて。」との声が響くと、
超大型爬虫類化け物の頭部分は肉ミンチとならずに消し飛散した。
「タロー貸しだよ!」と五人の精霊たちが鹿島に向かって気勢を上げた。
鹿島は、今夜は寝せてもらえないどころか、干からびるまで吸い出される予感を感じた。
「唐揚げ、から揚げ、からあげ祭りだ。好物、好物、ワッショイワッショイ。」
と大型中華鍋の周りで、五人の精霊たちが踊りだしていた。
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