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制覇行進
161 悋気
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うっとうしい雨の中、流民用避難テントが次々と組み建てられてはいるが、それでもまだ十分な収納スペースには程遠く、多くの人々は雨ざらし状態であった。
雨ざらしになっている人々に配給された雨合羽はナイロン製ではなく、この大陸既成の油紙で出来ていた。
医療修道士達が到着したことで、サニーや精霊たちは鹿島とイザベラ女王の居るC-003号機に帰って来た。
回復治療に当たったサニーや精霊たちからの報告では、
「タイガー軍が平定した地域から逃れてきた人々は商人や地主階級の人たちばかりで、奴隷や農奴たちは一人もいません。」
「奴隷や農奴たちの全員は、タイガー軍が平定した地域外側領主から逃れてきた人々ばかりです。」
「奴隷や農奴たちから聞いたことでは、『奴隷や農奴解放とは名ばかりの、乱暴狼藉搾取集団であるので、一時元オハラ国へ避難しろ』と言われたらしいです。」
「タイガー軍に平定されていない領主たちは、戦人以外はすべて避難させている様子です。」
鹿島はそれぞれの話を聞きながら、
「内乱であるなら、一般人は戦に巻き込まれることは少ないはずなのに、タイガー軍は一般人をも巻き込んでいるのか?」
「流民全員の感想は、盗賊団の反乱だと言っています。」
「いや!一部の者たちはチンジュ女神様の名を騙る、乱暴狼藉搾取集団だと言っています。」
「なに!何で鎮守様の名が出る。」
「タイガー軍の騎士たちは、、、元聖騎士団だとの噂らしいです。」
「その噂の事はみんなが知っているのか?」
「噂話をした者たちは、タイガー軍が平定した地域から逃れてきた地主階級者のみです。」
「今はまだ、地主階級者のみだな?」
「シャジャーイ王国内ではまだ土着信仰が主ですので、各宗派はチンジュ女神教を貶める機会と捉えるかもしれません。」
「だが今回、幸いにも医療修道士達の行動で、チンジュ女神教を貶める機会はなくなったであろう。」
「であるなら、いいのですが、とは言え?」
とサニーは顎に手を当て考え込んだ。
「何か心配事か?」
「噂をする者たちが、、、シャジャーイ王国中を逃げ回ると、少し厄介でしょう。」
「だ、、、な~。」と鹿島が力なく声を漏らすと、全員がうなずいた。
「とにかく最初の予定通り、シャジャーイ王国へ向かおう!」
鹿島が心中の思いを吹っ切れたように力強く掛け声を挙げると、流民受け入れの応援が駆け付けたヒカリ自治区国境守備隊の衛士兵隊長との打ち合わせを終えた、油紙雨合羽をかぶったヒカリ皇后は駆け込むようにC-003号機に帰ってくるなり、周りのみんなに遠慮気無く鹿島の腕にしがみつき、
「流民たちを受け入れることはこちら側にしても願ったりなので、希望の職業へ配置する旨を命じてきました。」
「万年人手不足が解消出来る事は、喜ばしいな。」
と鹿島も微笑み返しをした。
イザベラ女王は唇をかみしめ、羨まし気にヒカリ皇后に目を向けて、
「では私は国に帰ります。」と大きく息を吸い、全員に頭を下げて空間をゆがめて消えていった。
「あ、まって。」とヒカリ皇后と鹿島が声を出したが、すでにイザベラ女王は消えてしまっていた。
ヒカリ皇后は鹿島の腕に力を組めて寂しげに消えた空間を見つめていた。
たが、鹿島は自由に動く腕で空間を掴む仕草をした。
「何か言い忘れ?」
とサニーは上目遣いに微笑んだが、その目は笑ってはいなかった。
「いや、、、軍事行動を控えてもらいたいと、、、。」
「援護してもらった方がいいかも。」
とサニーが鹿島から目をそらすと、鹿島はサニーの真意を測りかねて、目をそらされた事でただ黙しするしかなかった。
「それよりも、今夜の夜伽番はイザベラであったはずが、何で引き留めてあげなかったかな~。」
とヒカリ皇后は靴つま先に付いた泥を気にする素振りで鹿島と顔を合わせること無く、紙コップジュースに手を伸ばすとストローで静かに吸い込んでいた。
鹿島は二人の悋気を感じながらも返事の代わりに、多色欲行為を隠すかの様に苦笑いするしかなかった。
雨ざらしになっている人々に配給された雨合羽はナイロン製ではなく、この大陸既成の油紙で出来ていた。
医療修道士達が到着したことで、サニーや精霊たちは鹿島とイザベラ女王の居るC-003号機に帰って来た。
回復治療に当たったサニーや精霊たちからの報告では、
「タイガー軍が平定した地域から逃れてきた人々は商人や地主階級の人たちばかりで、奴隷や農奴たちは一人もいません。」
「奴隷や農奴たちの全員は、タイガー軍が平定した地域外側領主から逃れてきた人々ばかりです。」
「奴隷や農奴たちから聞いたことでは、『奴隷や農奴解放とは名ばかりの、乱暴狼藉搾取集団であるので、一時元オハラ国へ避難しろ』と言われたらしいです。」
「タイガー軍に平定されていない領主たちは、戦人以外はすべて避難させている様子です。」
鹿島はそれぞれの話を聞きながら、
「内乱であるなら、一般人は戦に巻き込まれることは少ないはずなのに、タイガー軍は一般人をも巻き込んでいるのか?」
「流民全員の感想は、盗賊団の反乱だと言っています。」
「いや!一部の者たちはチンジュ女神様の名を騙る、乱暴狼藉搾取集団だと言っています。」
「なに!何で鎮守様の名が出る。」
「タイガー軍の騎士たちは、、、元聖騎士団だとの噂らしいです。」
「その噂の事はみんなが知っているのか?」
「噂話をした者たちは、タイガー軍が平定した地域から逃れてきた地主階級者のみです。」
「今はまだ、地主階級者のみだな?」
「シャジャーイ王国内ではまだ土着信仰が主ですので、各宗派はチンジュ女神教を貶める機会と捉えるかもしれません。」
「だが今回、幸いにも医療修道士達の行動で、チンジュ女神教を貶める機会はなくなったであろう。」
「であるなら、いいのですが、とは言え?」
とサニーは顎に手を当て考え込んだ。
「何か心配事か?」
「噂をする者たちが、、、シャジャーイ王国中を逃げ回ると、少し厄介でしょう。」
「だ、、、な~。」と鹿島が力なく声を漏らすと、全員がうなずいた。
「とにかく最初の予定通り、シャジャーイ王国へ向かおう!」
鹿島が心中の思いを吹っ切れたように力強く掛け声を挙げると、流民受け入れの応援が駆け付けたヒカリ自治区国境守備隊の衛士兵隊長との打ち合わせを終えた、油紙雨合羽をかぶったヒカリ皇后は駆け込むようにC-003号機に帰ってくるなり、周りのみんなに遠慮気無く鹿島の腕にしがみつき、
「流民たちを受け入れることはこちら側にしても願ったりなので、希望の職業へ配置する旨を命じてきました。」
「万年人手不足が解消出来る事は、喜ばしいな。」
と鹿島も微笑み返しをした。
イザベラ女王は唇をかみしめ、羨まし気にヒカリ皇后に目を向けて、
「では私は国に帰ります。」と大きく息を吸い、全員に頭を下げて空間をゆがめて消えていった。
「あ、まって。」とヒカリ皇后と鹿島が声を出したが、すでにイザベラ女王は消えてしまっていた。
ヒカリ皇后は鹿島の腕に力を組めて寂しげに消えた空間を見つめていた。
たが、鹿島は自由に動く腕で空間を掴む仕草をした。
「何か言い忘れ?」
とサニーは上目遣いに微笑んだが、その目は笑ってはいなかった。
「いや、、、軍事行動を控えてもらいたいと、、、。」
「援護してもらった方がいいかも。」
とサニーが鹿島から目をそらすと、鹿島はサニーの真意を測りかねて、目をそらされた事でただ黙しするしかなかった。
「それよりも、今夜の夜伽番はイザベラであったはずが、何で引き留めてあげなかったかな~。」
とヒカリ皇后は靴つま先に付いた泥を気にする素振りで鹿島と顔を合わせること無く、紙コップジュースに手を伸ばすとストローで静かに吸い込んでいた。
鹿島は二人の悋気を感じながらも返事の代わりに、多色欲行為を隠すかの様に苦笑いするしかなかった。
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