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制覇行進

145 精霊の憑依

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 鹿島とヒカリ王女は恍惚夢のベッド中で互いに身を寄せ合っていると、窓を揺るがす突然の爆裂音で、ヒカリ王女はびっくりしたように上半身を起こした。

鹿島もヒカリ王女の悲鳴で起こされた様子で、静かに下半身を起こして周りを警戒しながらもヒカリ王女を抱きしめた。

 再び窓を揺るがす爆裂音を聞いた鹿島は、
「花火か?」と窓の外へ眼を向けた。

陽はすでに天上近くまで登っていて、窓から見える青空に白と赤の雲の塊が西の方へゆっくりと流れて行っている。
白と赤の雲を追いかけるようにさらに白い雲が出現し、三度目の爆裂音が響いてきた。
「あれは祝いの紅白花火だな。」
と、鹿島はヒカリ王女に微笑んだ。
「紅白花火って?」
「俺の故郷では、お祝い事に、縁起物として赤と白が並べられるのだ。」
「あ、私のドレスは白色だから、従姉妹殿には赤色ドレスを勧めます。」
「サニーは何色にするのだろ?」
と鹿島が言葉を発していると、部屋いっぱいに若葉が満ち溢れ、
「葉を纏うのよ~。」とサニーの声が響いた。
「折角、髪も翅も真っ白になったのに、なんで葉っぱなの?」
「私は何から生まれた。」
「老樹。なるほどね。」と、鹿島は納得した。

 部屋いっぱいの若葉はそれぞれに一塊になり、サニーと葉っぱで覆われた六人の兵隊人形妖精が現れた。

 ヒカリ王女に憑依していたフローレン精霊はサニーにかしづき、
「我が主サニー様、この度、ヒカリ様はめでたく懐妊し、私がその子の守護霊となりました。」
「そうなの、では、主の交代を認めます。頑張りなさい。」
「はい。ありがとうございます。此れからは、ヒカリ様とその子に我が主として使え、タロー様からの寵愛を多く受けるよう、頑張ります!」
「あぁ~。」とサニーは嫌な顔をしながらも、「ふ、そっちなのね。」と微笑み直した。

 遅い朝食時、すでに食事終えていたイザベラ女王は、鹿島とサニーにヒカリ王女達三人の食欲を眺めながらも、後ろのテーブルに控えている六人の精霊達の突き刺す目線が気になり、
「それぞれのテーブル集団の色分けに、意味があるのかしら?」
とヒカリ王女とサニーの後ろテーブルを見比べだした。

「あります。従姉妹殿の後ろに控えている精霊たちは、従姉妹殿が望むなら、一緒に付き添いリボン引きとして、式場に向かいます。私とサニー様の後ろに控えて居る妖精たちは、それぞれの付き添いリボン引きです。」
「リボン引きとは?」
「タロー様の故郷での儀式だそうです、
なので、私のリボン引きは、憑依契約した精霊たちの内で、私が懐妊した時憑依していた私専用となった精霊フローレン様と精霊フローレン様配下の妖精たちです。
ですので、お腹にいる子の母親は、、、精霊フローレン様と私二人になります。従姉妹殿のリボン引きは仮の守護神で、六人の精霊様と憑依契約した内の一人精霊様それぞれが憑依し、従姉妹殿が懐妊した時、憑依してた精霊様が従姉妹殿とその子に守護と加護を授けます。」
「妊娠したと?従姉妹殿おめでとうございます!」
「ありがとうございます。従姉妹殿も頑張ってください。」
「私は、サニー様から加護を受けているが、さらに精霊様達から加護もいただけると?」
「従姉妹殿が望むのであれば、精霊様達の一人が、従姉妹殿専用の精霊様となられます。」
「専用?常に一緒だと?」
「懐妊できたならばね。」

 イザベラ女王は精霊様と憑依した状態で鹿島と閨を共に過ごし、その時解任した場合はその子は精霊の子になり、精霊様はその子の母親になるのだと理解した。
「従姉妹殿は常に精霊様たちと共に、、、タロー様と、、、、していると?」
「最初は、サニー様でしたが、サニー様は専有出来ないので、精霊様たちからの申し出に感激し、受けました。」
「専有出来るから?」
「精霊様からの専用加護を与えられた力は誰でも良いわけではなく、私が選ばれたのです。精霊様が私と子供に従属すると誓いました。伝説の始まりだと感じました。従姉妹殿も精霊様たちと話し合いませんか?」
「憑依をお願いしてみろと?」
「彼女たちも期待しています。」
「以前、サニー大精霊猊下からの憑依打診があったので、まずは、サニー大精霊猊下からの憑依を優先するべきかと思います。」
「あら、覚えていたの、だけどね、状況が変わったのでその約束は白紙にして、でも選択は自由よ。」
と、サニーが横から顔を出した。
「白紙とは?」
「私を専有出来ないが、あいつら精霊はイザベラちゃんと子供を主と敬い、常に専有できるわ。」
「主と敬いとは、精霊様が私に従属すると?」
「そこは彼女たちに聞いてみな。」
「サニー大精霊猊下が以前の申し込みを、白紙にして頂き感謝します。これより、精霊様たちとの話し合いをしとう御座います。」
と頭を下げた。

 イザベラ女王は鎮守聖国から軍事力援護と、精霊様占有機会が訪れ、サニー大精霊猊下並の加護を貰える事に、明るい展望が一気に見えてきた。
「大陸制覇。」と、つぶやきながら後ろのテーブルに向かった。

 イザベラ女王が席に着くと、
「すべての魔法は使えるが、火魔法が得意のサクラです。」
「私もすべての魔法が使え、瞬間移動念力使いのキクです。」
「ここにいる全員はすべての魔法を使えますが、私は土魔法使いボタンです。」
「私は風魔法使い、ユリです。」
「私は雷魔法使いのシャクヤクです。」
「私は支援強化の精霊魔法ナイスンです。」
六人の精霊たちはにこやかに微笑みながら、憑依受け入れ期待の目をイザベラに向けていた。

 イザベラ女王は六人を見回し、
「ヒカリ同様の憑依契約内容を、教えてほしい。」と頭を下げると、
「同じ条件でいいのなら。教えましょう。」
とサクラは微笑んで、隣席のキクに顎で指示した。
「憑依中の本体主導権はあなたですが、タローの精液半分は憑依者のもの。」
「思考、行動の決定権は、私であると?」
「助言を求められた場合は応えるが、あくまで助言だけです。」
「憑依契約をお願いしたい。」
「生まれた子供の教育には、われらも干渉します。」
「是非にお願いしたい。」
「私たちの誰かが専属精霊となったなら、その精霊はイザベラ女王を主と認めて従属となり常に憑依し続け、思考さえも一心同体で行動します。」
「不服なない。」

 イザベラ女王に取っては大雑把な決定契約内容だが、それらはすべての基本であると理解し、細かな取り決めは互いを縛るために、一人に決定権を持たせることは、万が一身動きできない状態に陥るのを防ぐためでもあったし、性行為の指導権争いをも避けるためでもある。

 イザベラ女王は妖精たちから予期せぬ従属憑依事提案ではあったが、すべてを手に入れる最良の道が開けたとの満足感を得ていた。
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