【何カ所か18禁】鎮守様と異世界に

制覇行進

１４０ 男の心理と女の心理

　二日後に婚礼式を控えたヒカリ王女はサニーからの憑依辞退との申し出に困惑しながらも、その意図を理解しようと努めながら聞いていた。
「大精霊様は、今後私に憑依しないと？」
「ヒカリちゃんが承諾するなら、替わりに七人の精霊たちが、代わる代わるに憑依したい様よ。七人の精霊たちが憑依しているとき、誰かの番で運よく受胎したならば、その時の憑依していた精霊が生まれてくる子供の専属加護霊となるわ。」
「将来生まれるかもしれない子供の加護霊は大精霊様でなく、七人の精霊様の一人だと？」
「ヒカリちゃんとイザベラちゃんはすでにチンジュ様の眷属であるから、チンジュ様と私からの加護は与えてあるから、そのまま子供たちに繋がるわ。赤ん坊が生まれた後も、ヒカリちゃんがタローとの閨を一人専用と望むか、又は、そのまま残りの六人と憑依を続けるかわ、自由よ。」
「イザベラの場合は？」
「やはり七人の精霊を受け入れるかは？自由よ。」
「大精霊様は憑依しなくても平気ですか？」
「悋気のことかしら？七人の配下眷属やヒカリちゃんにイザベラちゃんなら、私は嫉妬しないわ。だって、タローの心と体は私から離れなくできるから。」
と、サニーの自信の裏付けは、ヒカリ王女にイザベラ女王の潔癖性は娼婦パトラのテクニックを、半分しか受け入れきれない事を感じた方であって、七人の精霊やヒカリ王女にイザベラ女王たちに負けない自信を表す様に鼻を高くしたのは、娼婦パトラから教えられたテクニックで、タローが最高の快楽と満足感を得たのを確認したからであった。


「イザベラが大精霊だけをと、、、、望んだ場合は？」
「おそらく？イザベラちゃんは、、、、複雑かもしれない。私も、、、私もよ、タローを身も心も満足できる自信があるから、此れからは一人がいいわ。」
と言って、ヒカリ王女の部屋を出ていった。

　ヒカリ王女はサニーを見送りながら、
「イザベラは複雑、、、、何が？」
と、首を傾げた。


　イザベラ女王は反重力デンシャ車両の先頭に置かれた貴賓席に座っていた。
しかしながら、これまで護衛として付いていた女近習者の姿は無く、貴賓席のイザベラ女王を囲むように、侍女といかつい表情の騎士団が囲んでいた。

　イザベラ女王は心の中で、「私の最初の恋人は、最後の恋人、、、。」とつぶやいたが、巷で聞いた、（男は女の最初の恋人に成りたがるが、女は男の最後の恋人に成りたがる。）
との声が頭をよぎった。
「タロー様は私を最後の恋人にする、、、、のだろうか？」とつい、口でつぶやいてしまった。

　イザベラ女王は自分のつぶやきで後ろのざわめきに気づいたが、何事もないように外の景色に歓喜しだした。
「防御壁のない広大な街ですね。」
と神降臨街を眺めながら、みんなの関心を眼下の街並みへ向けた。

　みんなは本心か女王への気遣いからか、
「われら都の、五倍以上の大きさだ！」
騎士団から歓喜の声と、ため息混じりの低い声が響いた。

　イザベラ女王は自分が女王でなかったなら、タローに縋り付いて常に傍に寄り添い続けることは可能だが、それは大事な人たちを見捨てることであると理解していた。

「愛か国か？」と問われたら、自分の立場上の義務として、国と答えなければならなかった。
今迄の弱小国家のみじめさを、まだ見ぬ子供に引き継がすわけにはいかなかった。
今は周辺国を平定できるチャンスに恵まれたのだから、富国強兵は掴めるとの確信があったが、それは鎮守聖国の出方次第でもある。

　男としてのタローへの愛とあわせて、国としての打算が動く自分の気持ちの結論からして、今回の婚礼は不満など微塵もない最高の宝取得行為であると確認していたが、なぜか心の隅では灰色の靄を感じてもいた。
「私の最後の男は、、、タロー様、、、。だが、このモヤモヤは嫉妬？誰に対し？ヒカリに、、、負けるはずがない。サニー様に、、、子孫を残せないので、対象外。女神様にもない。では誰に？タロー様に群がるほかの女性たち？」
と、今回連れてこなかった女近習者たちの顔が浮かんだ。
「そうか。タローの最後の恋人への嫉妬だ。」
と、タローのにやけ表情に怒りを覚えた。

　イザベラ女王はデンシャ車両の扉が開くと、出迎えのヒカリ王女は鹿島の腕にしがみつきながら微笑んだ。
鹿島はサニーとヒカリ王女を両手組みして満面笑顔であるが、イザベラ女王は何故か嫉妬など湧く事なく微笑んだ。
鹿島の微笑み返しに、「私は犠牲者じゃない。」と胸の中から声が響いた。
男として、伴侶として、打算抜きでもタロー様は最初の純情をささげて悔いのない最上級の裏表のない実直な男であり、打算からも自分に最もふさわしい地位と気質を備えた夫であるとの思いがした。

「我にふさわしい、最高の配偶者殿だな。」
と鹿島を改めて見定め、満足感が身体中を駆け巡りついつぶやいた。

　鹿島達の後ろに控えている七人の女性陣がイザベラ女王に熱い好意視線を向けているのに気づき、大精霊サニー様と同じ背丈であるが、一人一人の顔に見覚えだあり、成長した七人の精霊たちだと理解した。

　イザベラ女王に付き添ってきた侍女たちと護衛騎士隊は二台の大きな引馬のいない客車にそれぞれ乗り込み、イザベラ女王とヒカリ王女は屋根も引馬もない二列席の客車に乗り込んだ。

「従姉妹殿、車の屋根がない事を、、、不思議に感じた？」
と後部座席左側に座ったヒカリ王女がほほ笑むと、イザベラ女王は曖昧に答える様に首を傾けた。
「この車は決して製作費を削ったのではないのよ。あなたを歓迎したい神降臨街の住民に、従姉妹殿を披露するためです。」
「わざわざ、この形容に製作したと？」
「タロー様の生まれ故郷では、この形容が高級車らしいわ。」
「屋根を取り付けない手抜き馬車が高級だと？」
と返事しながら不思議な爽やか風を感じていた。

　イザベラ女王は屋根のないトラックや箱型トラックが対向車線を猛スピードで通りすぎるのに驚き、
「ここでは、すべての荷車は魔道具か？」
「そうです。鎮守聖国では、すべての輸送車両は魔力で動きます。」
とヒカリ王女は自慢気な表情をした。

　鹿島は正面を見据えたまま振り返ることなく、
「しばらく、神降臨街に滞在して、ビクトリー女王国に必要なものがあるなら援助しますので、おっしゃって下さい。」
「イザベラちゃんが、此れからやりたいことに必要なものは、すべて用意するそうよ。」
助手席のサニーが振り返って応えた。

　イザベラ女王は軍事行動において、大量のデンシャ車両や猛スピードで走るトラックに、後ろからついてくるバスを欲しいと考えていた。
「更にデンシャ車両の追加と、魔道具車を提供してくれると？」
「百や二百車両ぐらいなら、すぐに用意できます。後、魔道具車の、、、運転手の教習をも指導します。」
と鹿島は振り返ることなく返事した。