【何カ所か18禁】鎮守様と異世界に

制覇行進

１３９ 男の本懐

　月明かりの下、コージンヤマ村外野営地の草陰で鳴いていた虫の声がぴたりと止んだ。

　衛士兵寝ずの歩哨番からの警告が何もない中、
ニキチがテント周りに人の気配を感じて静かに起き上がると、三人の護衛達は武装した状態で横になっていた様子で、腰の尾刃剣を静かに抜きながらも、緊張な面持ちでテント外の気配を検索しだした。

　三人の護衛達はニキチを囲むように中央に置きテント入口へ向かうと、テントを突き破って無数の槍先が突き抜けてきた。

三人の護衛達は尾刃剣を赤く発動させて、テントを突き貫けてきた無数の槍穂先を次々と切り落とした。

　デンシャ車両がテント上空に現れたのと同時に、四人にテント幕が覆いかぶさり無数の槍先が四人を襲った。

　四人はテント幕に覆いかぶさりながらも、三人の護衛たちは鱗甲冑に守られて、二十本以上の槍穂先を切り落してテント幕を切り裂いたが、しかしながら三人の護衛の隙間から、三本の槍先が装備なしのニキチの体を貫いていた。

　三人の護衛たちが次々と繰り出る槍穂先に翻弄されだす中、ニキチは被さったテント幕を払いのけて鉄製両刃剣を捨て、体に刺さった槍を抜いて杖代わりにした。

　デンシャ車両は取り囲んでいた粗末な衣装の群れを、無慈悲にも押しつぶしながら着地した。

三人の護衛たちは粗末な衣装の群れが混乱しだした事で、いくらかの余裕ができた。
「ヨハン！行政官様をデンシャ車両へ運べ！後は引き受ける！」
ニキチは真っ蒼な顔で、
「俺はもう駄目だァッ。三人とも早く引けぇ。」
と槍を杖代わりにしたニキチは声を絞り出して目を剥いていた。

「お前ら全員ここで死ぬのだ！」
と粗末な衣装の群れのリーダーらしき男がほくそ笑んだ。

　ニキチは群れのリーダーらしき男に目を剥いて、
「お前は、盗賊団の頭目でトクジローだろう？面は割れている。」
「はァ？確かに俺はトクジローだが、頭目は俺じゃない。」
「じゃ～誰が頭目だ？」
「ここにはいねぇよ。」
「テントの陰に隠れている奴が、頭目か？」

　ニキチの声掛けで衛士兵用のテント影から出てきたのは、クロコマ.カツゾー衛士兵隊長であった。
「どうせお前ら全員皆殺しだ。」
「お前もグルだと思ったが、まさか頭目だとは気づかなかったわ。」
とニキチが睨み付けると、クロコマ.カツゾー衛士兵隊長は呪文を唱えだした。

「火炎魔法！」とクロコマ.カツゾー衛士兵隊長が叫ぶと、ニキチも叫んだ。
「竜巻刃！」

　クロコマ.カツゾー衛士兵隊長が起こした火炎放射は、「竜巻刃。」に巻き込まれて押し戻された。
炎を巻き込んだ竜巻は周りの賊達だけでなく、衛士兵隊長とトクジローをも巻き込んだ。

　ヨハンは混乱に乗じてニキチを支えて走ろうとしたが、ニキチはまるで足に根が生えたかのように微動だにしないので声掛けしたが、既にニキチの目は天に向いたままこと切れていた。

「ヨハン！早くしろ！」
「行政官様は既にこと切れている。それに足に根が生えて動かせない。礎決意を尊重し、置いて行ってやろう！」
三人は雄叫びを上げながら、退却進行先にいる賊達を見二つに割きながら、デンシャ車両に向かって駆け出した。

　三人の護衛たちはデンシャ車両の窓から遠ざかる武装集団が炎を消そうと、混乱状態になっている様を見据えながら、仁王立ちして微動だにしないニキチの様を見据え無念の涙した。