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制覇行進

136 きな臭くなる国境

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 鹿島はパトラ情報長官からの報告書とタイガーからの書簡を見比べていた。

鹿島専用執務室の机の前では、サニーとヒカリ王女に七人の精霊たちはテーブルにある大量のお菓子類に堪能していた。
「タイガー聖騎士団隊長の出目は、どうやら、シャジャーイ王国の王族で、処刑された前王太子の息子らしい。」
「王継続資格があると?」
「王継続資格のない反逆者一族との報告だ。」
「何で反逆者なのだ?」
「前王に毒を盛った容疑だ。」
「誰の言い分かしら?」
とサニーと鹿島の会話を聞いていたヒカリ王女は、紅茶をすすりながら首を傾げた。
「もちろん、現王側でしょうね。」
と鹿島の代わりにサニーが返事した。
「王位継続問題は、どこの国でも起きることだわ。」
「タイガー聖騎士団長からの要望は、度重なる盗賊たちがシャジャーイ王国に逃げ込むので、シャジャーイ王国との交渉を求めてきている。」
そして机の書類に目を通して、
「イザベラ女王からの要請は二つだが、一つは度重なる盗賊たちの襲撃に対し、盗賊たちの逃げ先であるシャジャーイ王国への援助をやめるとのことだ。」
「つまり、シャジャーイ王国側で盗賊どもを取り締まれと?」
「そこには触れていない。ただ援助をやめるとしか書かれていない。」
「シャジャーイ王国との戦を望んでいると?」
「それはただの推測だ。が、もう一つの重要な報告がある。ヒカリ殿にも関係がある。」
「まさか!アクコーと対峙する行動を起こすと!」
「そのまさかだ。すでにオハラ王国に攻め込んだ。」
「従姉妹殿の戦略戦術は、どの様に?」
「戦略などない様子で、ただがむしゃらに、アクコー王の居る王都を目指しているらしい。」
「従姉妹殿を止めはしないが、協力はできない。」
「ゴールドル伯爵殿を抑えきれるか?」
「抑えます。」
と言って鹿島の机にある無線機に飛びついた。

ヒカリ王女は無線機先の通信交換手に向かって、
「ゴールドル邸宅へ連絡してほしい。」と心の動揺を隠すように静かにつぶやいた。

 しばらくのちにゴールドル伯爵の声が部屋中に響いた。
「王女様こちらから連絡しようと思っていました。ビクトリー王国軍が我が国に攻め込んできました。」
と、一気に話し出した。
「私も今知った。敵対行動も、援軍も必要ない。静観していてほしい。何かあったら連絡するし、報告があればいつ何時でも良いから、連絡してほしい。」
「ではそのようにしますが、ビクトリー王国軍がアクコーを討ち取った後、速やかに我が国から撤退するでしょうか?」
「撤退してもらう。」
「承知しました。しかしながら、監視軍の派遣は承諾してほしい。」
「監視だけだ。」
「了解です。」

 無線を切ったヒカリ王女は肩を落として目をつぶった。

「タローどうするの?」
とサニーは食いかけのケーキの横に、フォークを置いて尋ねた。

鹿島はしばらく沈黙していたが、
「イザベラ女王の次の標的は、おそらく、、、、シャジャーイ王国、、、だろうから、、、。先ずはタイガー聖騎士団長殿からシャジャーイ王国へ使節を送らせ、以後の行動は彼に任そう。」
「戦も辞さないと?」
「ビクトリー王国が宣戦布告する前に、シャジャーイ王国に対しては我が国の態度を、はっきりと決める必要がある。」
「タイガー聖騎士団長の意向を、、、重視すると。」
「そうだ。タイガー殿の希望に沿いたい。」
「シャジャーイ王国の国王を望むなら、かなえると。」
「仲間なら、当然だろう。」
と言って鹿島は無線機を使い、アチャカ首相とエントツ大臣を呼び出した。

 執務室の隣部屋のソファーにはアチャカ首相とエントツ大臣は並んで座っていた。
鹿島はこれまでのシャジャーイ王国に対する、ビクトリー王国とタイガー聖騎士団長のいきさつを説明した。
「ビクトリー王国はシャジャーイ王国に対し、戦端を開く可能性があると?」
「おそらく、、、。」
「その前に、タイガー聖騎士団長を国王にしたいと?」
「彼が望むなら。」
「お館様はどのような協力をなさると?」
「タイガー聖騎士団長と配下の聖騎士団の聖騎士資格を取り消し、自由に行動させる。我が国はそれを後押しする。全力でだ。」
「了解しました。ではそのようにできる段取りを行います。」
「すまん。俺のわがままなら、忌憚なく言ってくれ。」
「お館様がなさりたいことには、われらは全力で協力します。」
と、二人は立ち上がり頭を下げたのち退席して行った。
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