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制覇行進

130 文明遺跡

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 鎮守様はいつの間にか王都からいなくなっていたが、十日後の結婚式場は神降臨街教会で行われることで、イザベラ女王は準備の為にビクトリー王国に残り、ヒカリ王女はゴールドル伯爵領へと向かうこととなった。

 鹿島はヒカリ王女をゴールドル伯爵邸宅に降ろして、神降臨街へ向かった。

 操縦席の隣にはサニーが座り、七人の精霊たちは操縦席の鹿島にまとわり左右に陣取っていた。

 C-003号機から見える眼下の元ナントン領地では、多くのブルドーザーが動き回っていた。

元ミミズ街はすでに町並の面影はなく、ただの瓦礫山となっていた。

 復興工事場所を過ぎた川向う先には、壮大な農場が広がっていた。
ぽつりぽつりの森と集落を取り囲む緑の農場と、収穫を迎えた茶色になった穀物畑が地平線先まで広がっていた。

「あれ?魔獣樹海が無くなって、何時の間にか、農場になっているよ。」
「だとしても、耕作地の広さに対して、、、かなり、、、人がまばらだわ。」

 地平線まで続く農場ではかなり遠くの間隔で、多くのトラックターが動き回っていた。
鹿島は眼下のトラックターを見つめて、旅客機から眺めた地球のアメリカ大陸の農場を思い浮かべていた。
「耕作地は、ここまで機械化したのか。」
と耕作地帯から伸びた線路をも見つめていた。
「C-002号は、すべての知識を使用するつもりか?」
「C-002号機イコール、チンジュサマでしょう。」
「、、、、、。」
鹿島はサニーの言葉で鎮守様の意向だと気が付いが、あまりにも急激な技術移行を危ぶんでいた。

 鹿島の危惧は大量虐殺兵器への懸念であった。

 一国の規模であった魔獣樹海は既に大河近くまでが農場となっていて、神降臨街を上空から遠視すると、幾重もの道路と線路が放射状に広がっていた。
農場地帯を切り裂くように線路と道路は真っ直ぐに、多くの船が停泊している博多港にも伸びていた。

 港の船は殆どが帆船マストを備えているが、鹿島は見覚えのある二隻の鉄製貨物船に気づいた。
「スクリュー型新造があるぞ。」
「スクリュー型新造?あれは、魔石で水を噴射して進む、魔道具船よ。」
とサクラ精霊が説明した。
「水を噴射?」
「噴射力で進むらしいわ。」
「詳しく説明してくれ。」
と鹿島が周りを見回すと、
「わかりません。」
と、七人の精霊たちは合唱した。

 鳥居と旗がたなびく元母艦であった教会屋上に、C-003号機は降り立った。

 鹿島とサニーに七人の精霊たちは、屋上からエレベーターを使い司令室へ向かった。

 司令室は元のままであったが、司令席には修理型ロボットが進化した人型が座っていた。

 進化人型ロボットからは無数の配線が伸びて、壁にはドローからの映像が多くの画面を映し出してある。

 進化人型ロボットは首だけをまわし、
「聖騎士団長、初めまして、私はZ-998号です。各情報を統括しています。第三格納庫でチンジュ女神様がお待ちです。」
と、無表情で挨拶した。
「ここでの俺は鎮守聖国王ではなく、聖騎士団長なのか?」
「はい、元銀河連合軍中尉であったA―110号は、我等の対象からすれば、元A―110号の立場はチンジュ女神教の聖騎士団長です。」
「なら、ここでの総括責任者は誰だ?」
「最高指導者である、チンジュ女神様です。」

 空母艦においては、鹿島の立場は銀河連合軍中尉ではなく、ましてや鎮守聖国王でもなく、鎮守様を頂点とした新たな総括体制を構築した、チンジュ女神教会の聖騎士団長だと確信した。
ゆえに、元銀河連合軍所属すべてがチンジュ女神教の配下となったのだと感じた。。

 鹿島は大農場を思い出し、鎮守様の思想信条を思案して、「食足世平の為か。」とつぶやいた。
サニーは「ショウソクヨヘイ?どんな意味?」
「全ての人々に食べ物がいきわたれば、世の中は平和になる。」
「確かに、各国同士が争っている根本原因は、常に飢餓に見舞われる食糧不足だからね。」
「食糧問題が解消したその後なら、残る問題等々、解決できる小さな事変だけになるな。」
「人種においては、因果応報は常だから、それはどうかな?」
とサニーは投げやりに答えた。
「互いに、常に恨み節を持ち、復讐し合うと?」
サニーは肩を上げただけで、返事はしなかった。

 第三格納庫に入った鹿島の第一声は、
「なんだ~ここは?何の研究所だ!」
元は航宙機の格納庫であったが、今では航宙機は残っていないので、ガランとしていた空間だけの場所には、多くの電算機らしき物が乱立していた。

天井には多くの配線と配管が取り付けてあり、異様な感じを与えていた。

 各電算機の前には多くの進化人型ロボットが動き回っていた。
進化人型ロボットが電算機の間から現れ、胸にはZ-999の番号が書いてあった。
「お待ちしていました聖騎士団長。チンジュ女神様の所に案内します。」
と言って背を向けると、背中にも同じ様に番号が書いてあった。

 電算機が置いてある中央部に鎮守様が立っていた。
「ようやっと、魔石電子回路のスーパーコンピューターが完成したわ。」
と鎮守様は多くの配線の付いた冠を外しながら微笑んだ。

 魔石電子回路の存在はすでに知らされていたが、鹿島の知識においては、空母艦には驚異的な戦略コンピューターがあり、スーパーコンピューターがなぜ必要なのかを知らされてはいなかった。
「何のための、スパコンでしょうか?」
「この惑星を守るためです。」
「何から?」
「失われた文明の残影からよ。」
「失われた文明?何か発見したのですか?」
「ドローンが、砂漠大陸で見つけた遺跡があり、近い将来遺跡文明人からの脅威があるかもと、思えるのです。それに、羽衣姫の脅威が来た場合、対抗手段も備えなければならないでしょう。」
「それでこの惑星住民が飢えることがないよう文明開化、いや、機械化産業を進めていると?」
「全ての科学の発展は、急ぐ必要がある思うわ。」
鹿島は全く意味を理解することができないので、それ以上の疑問を口にできなかった。

 鎮守様は鹿島達を率きいて再び司令室へ向かった。

 指令室の壁に多くの地表面を映し出す映像が一部分大きくなり、
「この砂漠地帯には八千年前の古代遺跡があります。何らかの核爆発によるガラス質地表土と、残存放射能が確認できました。」
「人工的に核分裂ができる、文明があったと?」
鎮守様は無言になり、肯定も否定もしなかったのは、まだ核心証拠が無いのだと感じた。

 鎮守様は無言で大きなクレーター映像を観ながら、
「この穴周辺の重力は、異常です。」
「異常とは?」
「地表面での今の気圧が一気圧に対し、穴周辺の重力は二気圧の荷重が起きています。」
「クレーターの中に、重たい金属があると?」
「それは少しだけ正解ですが、このクレーターの周りから空を見上げた映像がこれです。」

 遠視映像ではクレーターから円錐状に伸びた部分には星はなく、その周りでは星明りが揺らめくように、消えては現れるのを確認できた。

 クレーターの横から星空を見上げた映像には、円盤で星空を隠したようにその部分には星明かりが見えなかった。
「こんな明るい星空を見えなくする、円盤か何か浮いているのか?」
「推測した結論では、ダークマーラらしき重力を伴う未知の物質が穴に吸い込まれているのではと、思う。」
「ホワイトホール?」
「ブラックホールとも言える。が、目視できる物質は吸い込んではいない。ただ暗い影だけが地中に吸い込まれている。重力の変化は、影の影響だと思う。」
「で、私に調査しろと?」
「今はまだ、その段階ではない。暫くはZ-0号型で調査する予定です。が、、、、。」
と言って鎮守様はサニーを見つめた。

 中央スクリーンには、兎亜人とZ-0号型がせわしなく動き回る横の円形筒内に、干からびた人型八頭身が映し出された。

「あ、羽衣姫!」
サニーは鬼の形相で映像を見つめた。
「矢張り、、、、。間違いなく、羽衣姫ですか?」
「干からびていても、こいつは絶対に忘れない。」
ほかの精霊たちもうなずいた。

「踏査にて発見したこのミイラは、プルトニウムの残量からして、既に八千年前に死んでいます。」
「では、私たちが五十年前に見た、羽衣姫ではないと?」
「異種人工人型です。」

 鹿島は鎮守様の「異種人工人型。」との言葉を不審に思い、
「このミイラは、人工物ですか?」
「干からびた外皮と、内側の肉質類や脳も干からびてはいるが、それら三部分の遺伝子DNAは全く別物です。ので、人工物だと思う。」
「どのように違うのでしょう?」
「表皮は鱗の構造で、干乾びた内臓はスライムに近く、脳の部分は細胞性粘菌またはアメーバーの集合体。かな?」
「三種類の生物が合体したと?」
「クレーターの機能と、干からびた生命体、それを、賢者と弟子に、Z-0号達が調べています。」

 鹿島は、この惑星は地球とかなり似ている環境だと思っていたが、似て非なる先史文明と魔素が存在した惑星だと知らされた。
とは言え不安は感じるが、どうこうできる問題ではないと、それ以上の考えを諦めた。
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