【何カ所か18禁】鎮守様と異世界に

制覇行進

９３ 森での懺悔

　サニーはタカメと娘ミーミイを神降臨街に送っていく事が決まり、デンシャ車両の手配を終えた鹿島は、筋肉ムキムキ娘を伴い近くの森に潜んでいる、二十人の怪しい集団に向かった。

　鹿島達は森脇に着陸すると、徒歩で二十人の怪しい集団の方へ向かうと、藪の先から仲間内の遠慮のない会話が聞こえて来た。

「おい、今、隊長達が寝ているすきに逃げて、自由になろうよ。」
「今夜、楽しんでからでも、遅くはないだろう。」
「俺も人を殺すなど、いやだぞ。」
「ただ、脅して暴れるだけで、銀貨二枚もらえるのだぞ。」
と、四人の若者達は集団から離れ、大木の影で相談し合っていたのは、今夜どこかを襲う様子で、それに参加するか逃げ出すかの相談事の様子である。

　四人の意見は分かれているようで、互いに顔を見つめ合っていた。
「おい！農奴たちはどこへ行った！」
森の奥から声が響くと、二人の若者は声の方へ駆け出したが、残りの若者二人は気が乗らない様子で、足取り重たげに森の奥へ向かいだした。

　四人の会話を聞いていた鹿島は韋駄天瞬足走りで、気が乗らない様子の二人を幹の影から追い抜くと、気が乗らない様子の二人の前に神剣を抜いて飛び出した。
「この場から、森の奥に進むのは自業自得の地獄道だが、森から逃げ出せば未来がある。どっちを選ぶ。」
二人はガタガタと震えながら、
「どうして、森から逃げ出せば未来があるのだ？」
「チンジュ女神教会を目指せば、相談に乗ってくれる。」
「チンジュ女神教会は、どこにあるのでしょうか？」
「ビクトリー王国都まで、歩いていくのだな。」
「チンジュ女神教は農奴を解放し、土地をもらえるとの噂は聞いているが、噂でなく真実だと。」
「どうする。」
「仲間が二人、森の奥にいる。」
「ここから先は、自業自得の地獄道だと言ったはずだが。」
「二人は悪行道を選んだ天罰だと？」
「地獄道を選んだ者を一人生かせば、善良な人が五人死に、不幸になる人が大勢出る。」
と鹿島の信念に代わり、再びA―１１０号の思考理念が湧き出すのを感じながら、鹿島は必死になって自分の住んでいた法治社会を思考しだした。

　二人の若者は、たがいに結果を理解しあった様子でうなずき合うと、森の外に向かって駆け出した。

　鹿島の会話を聞いていた筋肉ムキムキ娘たちもこのまま森へ進めば、そこは修羅場になることは明白だと悟った。
「一人生かせば、善良な人が五人死に、不幸になる人が大勢出る。」
と一人の筋肉ムキムキ娘が唱えだすと、九人の娘達全員も同じ言葉を自分に言い聞かせるように唱えだした。

　鹿島は筋肉ムキムキ娘たちに、怪しい集団を囲むよう指示し終えると、
「起きろ！」
と怒鳴った。
木の根元で寝ていた集団は驚いた様子で飛び起きた。

　鹿島はゆっくりと集団の数を確認し終わると、
「十八人全員いるな。」とつぶやいた。
「なんだ？お前は！」
とリーダー格の男が鹿島に近寄ってきた。
「集落や街を襲うのは、理不尽な事と思っている奴は逃がしてやる。」
と、鹿島はすぐにたたき切りたい衝動を抑え、一人一人と目を合わせて理不尽な事と思って逃げ出す奴はいないかと確認しだした。

　筋肉ムキムキ娘たちは尾刃なぎなたを青く輝かせ、囲いを絞るようにゆっくりと集団に近付いてきた。
リーダー格の男は筋肉ムキムキ娘たちに気付くと、
「オイオイ。まさか男一人に、娘っ子十人だけで、俺ら二十人を相手する気か？」
と、娘たちを卑猥な目つきで嘗め回す様ににやけだした。
「理不尽な事と思っている奴は一人もいないか。」
と、鹿島は悔しそうに天を仰いだ。

「お前たちは、その理不尽な行為を受けようと希望してきたのか？だったら、野郎ども女を生け捕れ！抵抗する女は殺した後に犯す！」
リーダー格の男は鹿島に微笑むと、周りに怒鳴った。
「鴨が葱を背負って来たぞ！」
と男たちは筋肉ムキムキ娘たちに狂喜しながら突進して行くと、鹿島はその声に理性袋の緒が切れた。

　鹿島はリーダー格の男を居合切りすると、慌てて剣を抜く奴や、傍の槍をつかみ鹿島に向ける奴すべてをたたき切っていった。
筋肉ムキムキ娘たちも、
「一人生かせば、善良な人が五人死に、不幸になる人が大勢出る。」
と、念仏を唱えながら、自分達に向かってきた男たちを鎧ごとく身二つに切り割った

　大きな幹が斜めに切り貫かれて枝葉の付いた木が倒れると、幹のむこう側に胸から上の身体が無い二人が立っていた。
「隠れていないで、逃げていれば、仲間に会えただろうに。」
と、鹿島は神剣の血油を拭きながら懺悔するようにつぶやいた。

　森に静寂が訪れ、血生臭いにおいが充満しだすと、鹿島達は振り向く事なく森の外へ向かった。