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制覇行進

85 変貌した工場地

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 唐揚げ祭りは続いているが、鹿島はサクラ達教官妖精たちの気が変わらないうちにと、イザベラ王女を伴って神降臨街に向うためにC-003号機のタラップを上りだした。
「従姉妹殿!待ってくれ!」
とヒカリ王女とマリーが駆け寄ってきて、二つの革袋を近習者に差し出した。
「王女様が神降臨街で品物を仕入れて、稼いだ金です。神降臨街では、何をするにも金が必要です。」
とマリーは二つの革袋を近習者に握らせた。
「マリーのいい様だと、この金はもう個人的には不要なので、神降臨街で従姉妹殿が使ってくれ。神降臨街で楽しむには、金が要る。金が無いと知りたい事や遣りたい目標が探せない。お金は神が与えた報酬の対価なのです。神降臨街は規律ある法事国家なので素晴らしい街だ。楽しんでほしい。」
と、ヒカリ王女は何かを託すように、イザベラ王女の手を握りしめた。

 イザベラ王女もヒカリ王女が言わんとしている心情を理解した様子で、
「気遣い感謝する。この金は有意義に使わせてもらう。」
と言って、固く手を握り返した。

 神降臨街に着いた一行は鎮守様へ挨拶に赴き、イザベラ王女達を紹介した。
鎮守様は始終にこやかではあるが、時々イザベラ王女を観察していた。
サニーは、鎮守様のイザベラ王女を見る目が変わっていく変化に気づいた様子で、又もや不機嫌顔になると、
「サニー、あなたにも良い事かもしてないわよ。」
と、意味深い目を向けた。

 鹿島はイザベラ王女達を神降臨街の商店街に案内していくと、十人の近習者は突然興奮しだしたのか、各店先に走り出した。
「王女様!これ見てください。シルクです。」
「王女様!この靴は兎亜人の造った靴だそうです。」
「この帽子もすてきです。」
と大声で騒ぎだした。

 遠くの商店前でも若い娘たちの騒ぐ声がしていたが、その騒ぎ声はだんだんとイザベラ王女達の騒ぎに近づいてきた。

 騒ぎながら近づいてきた若い娘たちはサニーに気づくと走り寄ってきて、
「お嬢ちゃん、この前はお礼を言わないで立ち去ってしまい、すみませんでした。改めてお礼を申しあげます。」
と頭を下げると、イザベラ王女の近習者の一人が(闇夜のカラス)と名乗った娘の頭を思いっきり殴った。
「大精霊猊下様を、お嬢とは失礼であろう!」
「ごめんなさい。大道で大精霊様と呼ぶのは、はばかれるだろうと思ったのです。」

 周りの店先に並んでいる商品に夢中になっていたベニイト商会の会長代理イトベニは騒ぎに気づくと、騒ぎ場所にすぐに駆け付けて、
「うちの護衛たちが迷惑をおかけしました。」
と言って、近習者達に頭を下げて顔を上げると、鹿島やサニーに気付いた。

 鹿島もサニーもイトベニに気づき、笑顔で挨拶した。
「イトベニ殿、(闇夜のカラス)冒険者達が護衛とは、どういうつながりから?」
「彼女たちが私の夫を護衛して、オハラ王国国境まで送ってくださったとの事を知り、引き継いだオハラ王国側の護衛を探してもらうのに雇いました。ここへ来た目的は、彼女たちの装備を整える目的と、司祭長様から、神降臨街市場調査と、ビクトリー王国から輸出できそうな品物調査を依頼され、昨夜デンシャ車両で送っていただいたのです。」

 イザベラ王女はイトベニの前に進み出て、
「で、ビクトリー王国から何を輸出できそうなのだ?」
と、期待するように尋ねると、
「菜種油と、コショウに鷹の爪辛子を考えています。」
「理由は?」
「三種類の作物は、ビクトリー王国では半値でございます。」

 イザベラ王女は一方的な輸入は、貨幣不足に陥るとすでに予感していた。
「ではその報告と、新たな輸出品の調査を頼みたい。」
とイザベラ王女は近習者の持っている一つの革袋を受取、イトベニに差し出した。
「失礼ながら、私はベニイト商会の会長代理イトベニと申しますが、あなた様はどのような御方でしょうか?」
「私は、イザベラといいます。ビクトリー王国の王女をしています。」
「え~、イザベラ王女様で、でしたか、大変なご無礼申し訳ありませんでした。」
「して、ベニイト商会は知っているが、代理とは?」
「良人が行方不明なので、代わりに商店を切り盛りしています。」
「夫が行方知れずとは、難儀だな。」
と、寂しげにサニーに目を向けると、サニーは無関心を装うように遠くの空に目を流した。

 イザベラ王女は話題を変えようと、
「何か珍しい品を見つけたか?」
「店頭に並んでいるものは、珍しい品物だらけで、材料は身近なものなのに、いろんな種類の美味しい料理です。案内致します。」
と、イトベニは腰を低くしてイザベラ王女一行を導くように歩き出した。
最初に入った店の看板は、化粧品と書いてあった。

 鹿島はイトベニに、
「イトベニ殿、ここにある商品は私には日常品なので、何が珍しいのかがわからない。なので、イザベラ王女たちを案内していただきたい。そして宿も探してやってくれ。宿が決まったら受付の者に、教会に連絡するよう頼んでほしい。」
「畏まりました。お任せ下さい。」
と、イトベニは丁寧に頭を下げた。

 鹿島とサニーは教会に戻り、イザベラ王女一行達の宿泊費は鎮守聖国が支払うよう命じて、C-002号に会うために工業地へと向かった。

 鹿島とサニーは工業地上空に着いて驚愕した。
「タロー!岩山が全てなくなっているぞ!」
と操縦席の窓に体を伸ばして叫んだ。
鹿島も、妖精たちと築いたダムが跡形もなく消えていることに気付いた。

 建物の上空では多くの飛行体が飛び交い、建物から伸びた円形からは、熱だけが放出している蜃気楼の揺らぎだけが見て取れた。
鹿島の記憶にはないが、A―110号の情景記憶の世界であった。

 C-002号はスーパーコンピューターと呼ぶに相応しい各大きさの箱の並ぶ部屋にいた。
C-002号は鹿島とサニーの訪問を予知していたように、立ち上がって迎えた。
「魔石を使った製品を教えてほしい。」
と、鹿島が尋ねると、スクリーンに次々とドローン型飛行物体や、列車車両が映しだしていき、各種類大小さまざまな四輪車も映し出していった。
鹿島は変電所と思える建物を映しだしたのに気づいて、魔石に関係があるなら、ほかの用途だろうと思い尋ねた。
「この建物は、なんだ?」
「電気を貯蓄する場所です。」
「水力発電所はどうなった?」
「すべて地下に移し終えていて、電子モーターに接続し終えています。」
「電子モーターとは?」
「磁石棒の代わりに、電子を高速で回転させるモーターです。百ワットの電流電圧特性を千ボルトに変換するモーターです。」
「少ない電圧を、高電圧に出来るモーターだと?」
「そうです。」
「意味が分からん。無から有を生み出すみたいな理論だな。」
「そうです。」
鹿島はまたもや、無から有を生み出せると言いのけたC-002号を不思議そうに眺めた。

「あの船は?」
「電子モーターでジェット噴射を起こして進む船です。」
「スクリューなしということか?」
「水中で水をジェット噴射しながら、進みます。」
「で、今必要か?」
「将来必要になります。」
「それも魔石の力か?」
「全ては鉱物魔石と科学の融合なのです。」
「鉱物魔石?この魔石とはどこが違うの?」
と、サニーはペンダントにしている軍隊魔蜂女王から出た赤い魔石を取り出した。
「魔物からたまに出る魔石は、科学と融合しません。魔物魔石は魔法と力を合わせあう、すなわち次元空間から力を呼び出す、力だと思います。」
「ダークマーラーとか?」
「かもしれません。」
鹿島は完全に理解不能に陥った。

「大量破壊兵器は、製造していないだろうな。」
と鹿島はここ最近の心配事を尋ねた。
「ここでは、その様な火薬類や爆裂を封じ込めた兵器の設計はしていませんし、話題にものぼりませんが、すでに火薬は存在していますので、いずれ、人種は強力な爆裂弾をそのうち製造するでしょうし、他の兎亜人によって爆裂を封じ込めた兵器も出現するでしょう。」
と、背後から兎亜人賢者が答えた。

 兎亜人賢者はさらに微笑んで、
「電子回路の防衛兵器があれば、すべての攻撃を無効化するのはたやすいでしょう。それに、月に住んでいるらしい羽衣姫さえも、半導体の存在には気が付かないでしょうから、妖精たちを守れますでしょう。」
と、鹿島は妖精たちが攻撃されるとの意味不明な言葉を聞いた。

 サニーは顔を真っ赤にして半狂乱になり、わめきだした。
「羽衣姫に勝てると?本当に勝てるのか?半導体とやらは、最上級精霊様でも勝てなかった羽衣姫に勝てるのか?」
とかなりの興奮状態になった。
「サニー、どうしたのだ?」
と鹿島が心配げにのぞき込むと、サニーの目から涙が止まらなくなっていた。
「仇を討ちたい。めちゃくちゃ討ちたい。」
と言って、サニーは鹿島に抱き着いた。
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