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制覇行進
71 近衛兵とタイガー聖騎士
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鹿島達は聖騎士たちが集めてきた五頭の馬の轡(くつわ)を握りながら、鱗甲冑を朝日でクジャク羽色に輝かせ、達成感を誇るように遠ざかっていく騎士団を見送っていた。
イザベラ王女とホルヘ公爵が馬の手綱を傍の低木に結びだすと、周りに中隊長らしき兵が集まってきだし、その後ろには小隊長印羽を付けた兵たちが遠巻きになりだした。
「状況報告を聞きたい。」
とホルヘ公爵が周りを見回して査問するように問いかけた。
ホルヘ公爵の正面にいた男が一歩前に出て、
「元総括元帥殿!治療妖精様たちや、治療師を派遣していただきありがとうございました。」
と頭を下げると、周り全員は基より、遠くの端の者達までもが頭を下げた。
「それは、チンジュ女神教、教徒となったイザベラ王女様の功績だ。」
とイザベラ王女に向かって頭を垂れて、すぐに向き直し、
「なぜこのような惨事が起きたのだ?」
と険しい顔になった。
一歩前に出た男は部外者である鹿島達をちらりと見た。
目線を感じた鹿島はとっさに、惨事の状況は機密にしなければならないことが起きたと判断すると、
「帰るぞ!」
と言って馬に乗り出したが、すでにサニーもヒカリ王女も馬に乗ろうとしていた。
鹿島達が馬で進みだすと、鹿島達を中心に取り囲んでいた兵たちの間が割れ、両側に人垣の道が伸びながらできていった。
両側の鎧姿の人垣では、すでに鎧を脱いでいる兵たちも直立不動して腕を胸に当てた。
鹿島を先頭に進んで行くと、人垣全員はヒカリ王女に注目し、感動の低い吐き声うめきと共に頭を垂れだした。
鹿島達が感動の低い吐き声うめきに見送られていた頃、タイガー達は防護壁門内側に着いていた。
「タイガー殿。困ったことが起きた。ま、他の衛士兵達は溜飲を下げてはいるが、、、俺も責任上ナ~。」
と門番衛士兵長はそれ以上言いたくなさそうに下を向いた。
「とは?」
門番衛士兵長は門を過ぎてくる馬車に注目して、
「どこかの馬車を護衛していた、、、黒い甲冑の者が、俺らのくそったれ上官を叩きのめしてくれたらしい。
われらは、その強者殿の捕縛を命じられているのだが、誰もがそんな指示には従いたくないのだ。」
と言いながら頭を搔き出した
「一杯飲んでくれ。」
タイガーはすぐに加害者を察知した様子で、銀貨と銅貨の入った革袋を門番衛士兵長に投げた。
「こんな気はなかったのに、悪いな。みんなでゴチになるぜ。あとはこちらでうまく処理しときます。」
といって門番衛士兵長は片手をあげ、片目をつぶった。
「ま、俺らの仲だ。何かあったら連絡をくれ。」
「あ~、失業したなら、領地を持たない俺たちを迎えてくれ。」
門番衛士兵長は、領地を持たない下級貴族階級者のようである。
「失業しなくても、近衛兵全員歓迎するぞ。」
「ハハハハハ、そんなことを大っぴらに言われると困る。こっちの戦力が半分になってしまう。」
「これは失言であった。ハハハハハ、忘れてくれ。」
門番衛士兵長は門番達に向き直し、
「今の話は、ジョークだから、本気にするなよ!」
と笑い顔で諭していた。
タイガーと門番衛士兵長は互いに通じ合っている仲のようである。
鹿島達が土埃を上げながら防護壁門に向かうと、鹿島達に気が付いた門番衛士兵たちは、通行しようと並んでいる列を自分達の後ろに押し出して門前道両脇に整列し並んだ。
鹿島は門番衛士兵達からの誰何がなさそうなのに気づくと、馬の足でリズムを取りながらゆっくりと門を通り過ぎた。
門番衛士兵達は鹿島達が通り過ぎるまで、その正体を見抜こうと全員が強いまなざしを鹿島達に向けていた。
イザベラ王女とホルヘ公爵が馬の手綱を傍の低木に結びだすと、周りに中隊長らしき兵が集まってきだし、その後ろには小隊長印羽を付けた兵たちが遠巻きになりだした。
「状況報告を聞きたい。」
とホルヘ公爵が周りを見回して査問するように問いかけた。
ホルヘ公爵の正面にいた男が一歩前に出て、
「元総括元帥殿!治療妖精様たちや、治療師を派遣していただきありがとうございました。」
と頭を下げると、周り全員は基より、遠くの端の者達までもが頭を下げた。
「それは、チンジュ女神教、教徒となったイザベラ王女様の功績だ。」
とイザベラ王女に向かって頭を垂れて、すぐに向き直し、
「なぜこのような惨事が起きたのだ?」
と険しい顔になった。
一歩前に出た男は部外者である鹿島達をちらりと見た。
目線を感じた鹿島はとっさに、惨事の状況は機密にしなければならないことが起きたと判断すると、
「帰るぞ!」
と言って馬に乗り出したが、すでにサニーもヒカリ王女も馬に乗ろうとしていた。
鹿島達が馬で進みだすと、鹿島達を中心に取り囲んでいた兵たちの間が割れ、両側に人垣の道が伸びながらできていった。
両側の鎧姿の人垣では、すでに鎧を脱いでいる兵たちも直立不動して腕を胸に当てた。
鹿島を先頭に進んで行くと、人垣全員はヒカリ王女に注目し、感動の低い吐き声うめきと共に頭を垂れだした。
鹿島達が感動の低い吐き声うめきに見送られていた頃、タイガー達は防護壁門内側に着いていた。
「タイガー殿。困ったことが起きた。ま、他の衛士兵達は溜飲を下げてはいるが、、、俺も責任上ナ~。」
と門番衛士兵長はそれ以上言いたくなさそうに下を向いた。
「とは?」
門番衛士兵長は門を過ぎてくる馬車に注目して、
「どこかの馬車を護衛していた、、、黒い甲冑の者が、俺らのくそったれ上官を叩きのめしてくれたらしい。
われらは、その強者殿の捕縛を命じられているのだが、誰もがそんな指示には従いたくないのだ。」
と言いながら頭を搔き出した
「一杯飲んでくれ。」
タイガーはすぐに加害者を察知した様子で、銀貨と銅貨の入った革袋を門番衛士兵長に投げた。
「こんな気はなかったのに、悪いな。みんなでゴチになるぜ。あとはこちらでうまく処理しときます。」
といって門番衛士兵長は片手をあげ、片目をつぶった。
「ま、俺らの仲だ。何かあったら連絡をくれ。」
「あ~、失業したなら、領地を持たない俺たちを迎えてくれ。」
門番衛士兵長は、領地を持たない下級貴族階級者のようである。
「失業しなくても、近衛兵全員歓迎するぞ。」
「ハハハハハ、そんなことを大っぴらに言われると困る。こっちの戦力が半分になってしまう。」
「これは失言であった。ハハハハハ、忘れてくれ。」
門番衛士兵長は門番達に向き直し、
「今の話は、ジョークだから、本気にするなよ!」
と笑い顔で諭していた。
タイガーと門番衛士兵長は互いに通じ合っている仲のようである。
鹿島達が土埃を上げながら防護壁門に向かうと、鹿島達に気が付いた門番衛士兵たちは、通行しようと並んでいる列を自分達の後ろに押し出して門前道両脇に整列し並んだ。
鹿島は門番衛士兵達からの誰何がなさそうなのに気づくと、馬の足でリズムを取りながらゆっくりと門を通り過ぎた。
門番衛士兵達は鹿島達が通り過ぎるまで、その正体を見抜こうと全員が強いまなざしを鹿島達に向けていた。
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