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国興し
64 イザベラ王女
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鹿島とサニーは王女達の乗った馬車の後ろから付いて行くと、広い敷地に豪華な屋敷に着いた。
鹿島は豪華な屋敷を眺めながら、ゴールドル領主邸宅は平民からしたら憧れる威厳であったが、貴族階級としてはあばら屋だったのかと思い浮かべた。
その威容豪華な屋敷を見た鹿島は、故郷日本の首都にある迎賓館を連想した。
「この敷地すべてを耕作地にしたなら、幾つの家族を養えるのだろうか?」
と、鹿島は屋敷の敷地を見回した。
「はぁ~。タローは、こんな屋敷に住んでみたい。とは言わないのか?」
「掃除が大変だろうから、俺には無理。」
「掃除?」
「だってさ、同居人はサニー、、、、と、サクラ、キク、ボタン、シャクヤク、ユリ達だろうから、誰もが掃除が得意とは思えない。」
「お手伝いさんを雇う気はないの?」
「他人に、プライバシーを覗かれたくない。」
「へ~ぇ。プライバシーね~。」
と、サニーはドヤ顔で鹿島を見つめた。
「叔父上様。待ちかねたぞ!」
と、豪華な馬車が屋敷門を過ぎると、屋敷内から甲冑姿の娘が馬車に向かってきた。
鹿島は鎮守様の容姿には微々落ちるがとの想いで、スタイル抜群で非常に魅力的な鎧姿の娘が真っ赤な髪をなびかせている姿に魅入った。
ホルヘ公爵は馬車から降りると、丁寧にヒカリ王女の手を取り降りるのを手伝った。
ホルヘ公爵はヒカリ王女がキチンと着地したのを確認すると、鎧姿の娘に向き直った。
「イザベラ王女様、いかがなさいました。」
「親父様や、愚弟が話にならん。叔父上様に政務に復帰していただこうと、お願いに来ました。で、そちらの麗しき女性は、誰?」
「初めまして、イザベラ王女。私は、ヒカリ.オハラと申します。よろしく従姉妹殿。」
と、ヒカリ王女は貴婦人の挨拶式に、スカートの裾を摘まんで腰を下した。
イザベラ王女は一瞬理解しがたいことが起きたときの状態であったが、
「あ、初めまして、従姉妹殿。」
と言って、手を差しだしたが、珍しいものを観察するように見つめていた。
ホルヘ公爵は固まっているイザベラ王女に声がけした。
「イザベラ王女様ともあろう人が、緊張するなど、どうなされた?」
「いや、まさか、オハラ王族が先に訪問するなど、、、とは?」
「オハラ王国から何かを期待したのなら、それは無駄だ。ヒカリ王女様は、我が国と鎮守聖国使節の仲立ちで訪問してきたのだ。」
「我が国と鎮守聖国との仲立ちで訪問してきた?何の為に?」
「友好条約のためです。」
「わざわざ、オハラ王国の向こう側から、護衛騎士団無しで?」
「護衛は、最強の剣士と最強の魔法使いです。二人は万の軍団でも殲滅します。」
「それは、私に対する挑戦か?」
「まさか、イザベラ王女に挑戦などしないです。」
「だが、最強の剣士をうたうのであれば、私もビクトリー王国では最強だ。」
サニーは舌なめずりすると、
「だと、タロー!私、この娘が気に入ったわ。お相手なさい。」
と、サニーはイザベラ王女と鹿島をけしかけた。
「相手はまだ小娘だ!無理だろう。」
「小娘だと!」
と怒り狂ったイザベラ王女は、背中に背負った大剣を抜いて鹿島に切りかかった。
イザベラ王女は大剣を軽々と振り回して、鹿島を庭の中央に追い詰めだした。
「タロー!遊んでないで、きちんと相手をしなさい。」
「そうだな。顔に似合わないバカ力の突進猛者だし、相手してやるか。」
と言って、鹿島は腰から鞘のまま抜いた。
鹿島は鞘と鍔をしっかり固定し終えると、正眼に構えた。
鹿島が準備終えたのを確認したイザベラ王女、
「バカ力の突進猛者だと!馬鹿にするな!」
と言って、鋭い剣技を得意げに披露しだした。
「少しは鍛錬しているようだな。」
と鹿島は言いながらも、鞘を合わせることなく大剣の刃を避け続けた。
「どうしたものかな?まさか殴ったり蹴ったりなど、できないし。」
「治療は任せなさい!」
とサニーが叫んだが、
「そういう問題ではないだろう!俺の心情だろう。」
「本当の剣の極意を、伝授しなさい!」
とサニーが叫んだ。
「あいつ、何を考えているのだ。」
鹿島は仕方なしに鞘を合わせ、振りかぶってくる大剣を斜め下に落ちるように受け流すと、大剣の刃先は鹿島の足元の小石を二つに割った。
イザベラ王女はすぐに大剣を鹿島に向けて下からすくい上げたが、鹿島も上る大剣の勢いをさらに加速させようと弾いた。
イザベラ王女は弾かれた大剣を離すまいと、上段に振りかぶったまま後ろによろけた。
サニーは服の模様翅を広げると、イザベラ王女の方へ飛翔していった。
イザベラ王女はよろけながら、翅を広げたサニーに見入って固まった。
「あなた何者?」
「私は、大精霊サニーです。イザベラに提案があります。聞きたい?」
「どの様な?」
「あなたに私が憑依して、タローを打ち負かす。」
「大精霊サニー様が、憑依するなら、勝てると?」
「試してみます?」
「可能なら是非にお願いします。このままでは手も足も出ない。せめて一太刀でも返したい。」
「一太刀を返したい。と、やっぱりあなたが気に入ったわ。」
と言って、サニーはイザベラ王女をすり抜けるように消えた。
「タロー!手加減しないわよ!」
「うっそだろう!何で今度はサニーなの!」
「風圧!」
とイザベラ王女が叫ぶと同時に、空気圧力と大剣を突き出してきた。
鹿島は鋭い突きを避けようと大剣を弾いたが、空気圧力を避けることができず、後ろの大木の幹にぶち当たった。
『今よ!』とイザベラ王女は身体からの声を感じた。
鹿島は起き上がると、大剣が目前に迫ってきたのに気づいた。
鹿島は大剣を避けきれないと判断すると鞘で受けつつ、
「風刃!」大剣の鍔近くを目掛けて片手手刀で振り抜いた。
「あ、なに?」
イザベラ王女の振り下ろした大剣の刃部分は、鍔先から空中に飛んでいった。
イザベラ王女は柄を握りしめたまま、切り込んだ勢いを制することが出来ずに鹿島にぶつかった。
鹿島はイザベラ王女を怪我させないようにと、ぶっつかる勢いを和らげるクッション代わりに胸で受け止めた。
イザベラ王女は鹿島の腕に抱かれているのに気づくとすぐに飛びのき、
「無礼者!手打ちにしてやる!」
と叫び、刃のない柄を掲げると、再び身体からの声を感じた。
『イザベラ、落ち着きなさい。ここからが本番よ。ヒカリ王女の剣を取り上げて、再度挑戦よ。』
イザベラ王女は、ヒカリ王女の腰につるした剣から目を移すことなく突進して行き、
「従姉妹殿。親戚のよしみの縁だ!借りる!」
と言って、ヒカリ王女の腰につるした剣を引き抜くと、鞘を残して持ち去った。
黒い尾刃剣は、怒り狂ったイザベラ王女の感情に反応したのか青く輝きだした。
鹿島は青く輝き迫る尾刃剣を危険だと判断すると、すぐにその場方飛び退いた。
青く輝く尾刃剣は、鹿島が背にしていた一メートル大木の幹を切断した。
「な、な、なんなのだ、この剣は!」
と切り倒したイザベラ王女は、倒れた幹の横にある切り株に驚いた眼で見入った。
『ほら!いきなさい!』
との声でイザベラ王女は我に返って鹿島に向かっていった。
鹿島もようやっと腹を決めた様子で、静かに神剣を抜き中段に構え、イザベラ王女に剣先を向けた。
イザベラ王女が上段から振り下ろした剣を又もや下方に弾くと、イザベラ王女の首に一筋の血が流れた。
イザベラ王女がやはり下から切り上げると、鹿島は鉄板鎧の胴部分だけを切り裂いた。
イザベラ王女は尾刃剣を振り回しながら鹿島に切りかかるが、両手を守る鎧がすべて剥ぎ取れていた。
『むやみに突っ込まないで、タローと同じ様に剣先を流しなさい!』
と身体の声が怒鳴った。
イザベラ王女は、正眼に構えたタローを真似る様に、両手で尾刃剣の柄を握りしめてやはり正眼に構えた。
イザベラ王女は首に一筋の血が流れた前後を思い出しながら、尾刃剣を走らせる剣筋を頭に描いた。
描いた剣先が向かうのは鹿島の首である。
イザベラ王女は掛け声と共に、鹿島の剣を打ち落とすように剣を合わせた反動で鹿島の首に向かった。
しかしながら、首に向かって尾刃剣を払ったが、鹿島の体はすでに横向きで一メートル斜め先にいた。
イザベラ王女は鹿島の動き方を思い出していた。
「足を持ち上げないで、滑らせていた。」
とぽつりとつぶやくと、同じ様に足先だけを地面につけたまま滑らせた。
イザベラ王女は足を持ち上げることなく、足先だけを地面につけたまま滑らせる動作をまねて再び鹿島に切り込んだ。
イザベラ王女は、正眼に構えたタローに滑らせる反復を繰り返しながら、何度も挑み続けた甲斐があり、鹿島が首に向かって来る尾刃剣を避けようと体を横にずらしたのを見切った。
イザベラ王女の尾刃剣先は、微かであるが鹿島の首の皮に傷をつけて一筋の血を流した。
鹿島は首から流れ出た血を指で確認すると、
「やられたな。」
と言って、神剣を鞘に納めると、イザベラ王女は精魂尽きた様子で座り込んだ。
「回復薬を飲みなさい。」
「え、もしかして、妖精の製造した回復薬ですか?」
「ま、妖精は手伝うだけで、製造は薬師精霊よ。」
「貴重では?」
「この国ではそうかもしれないが、鎮守聖国の薬屋には、棚にいっぱい並んでいるわ。」
「是非に輸入したい。」
「その交渉に私たちが来ました。」
「護衛でなくて、大使だと?」
「ヒカリちゃんの護衛兼大使よ。」
「ヒカリちゃんて、それほど親しいのですか?」
「イザベラもちゃん呼びされたい?」
「是非に、出来れば、配下扱いしていただければ、光栄です。」
「では特別に家族扱いするわ。」
「光栄です。」
「フフフフ。」
とサニーは含み笑いをしだした。
鹿島は豪華な屋敷を眺めながら、ゴールドル領主邸宅は平民からしたら憧れる威厳であったが、貴族階級としてはあばら屋だったのかと思い浮かべた。
その威容豪華な屋敷を見た鹿島は、故郷日本の首都にある迎賓館を連想した。
「この敷地すべてを耕作地にしたなら、幾つの家族を養えるのだろうか?」
と、鹿島は屋敷の敷地を見回した。
「はぁ~。タローは、こんな屋敷に住んでみたい。とは言わないのか?」
「掃除が大変だろうから、俺には無理。」
「掃除?」
「だってさ、同居人はサニー、、、、と、サクラ、キク、ボタン、シャクヤク、ユリ達だろうから、誰もが掃除が得意とは思えない。」
「お手伝いさんを雇う気はないの?」
「他人に、プライバシーを覗かれたくない。」
「へ~ぇ。プライバシーね~。」
と、サニーはドヤ顔で鹿島を見つめた。
「叔父上様。待ちかねたぞ!」
と、豪華な馬車が屋敷門を過ぎると、屋敷内から甲冑姿の娘が馬車に向かってきた。
鹿島は鎮守様の容姿には微々落ちるがとの想いで、スタイル抜群で非常に魅力的な鎧姿の娘が真っ赤な髪をなびかせている姿に魅入った。
ホルヘ公爵は馬車から降りると、丁寧にヒカリ王女の手を取り降りるのを手伝った。
ホルヘ公爵はヒカリ王女がキチンと着地したのを確認すると、鎧姿の娘に向き直った。
「イザベラ王女様、いかがなさいました。」
「親父様や、愚弟が話にならん。叔父上様に政務に復帰していただこうと、お願いに来ました。で、そちらの麗しき女性は、誰?」
「初めまして、イザベラ王女。私は、ヒカリ.オハラと申します。よろしく従姉妹殿。」
と、ヒカリ王女は貴婦人の挨拶式に、スカートの裾を摘まんで腰を下した。
イザベラ王女は一瞬理解しがたいことが起きたときの状態であったが、
「あ、初めまして、従姉妹殿。」
と言って、手を差しだしたが、珍しいものを観察するように見つめていた。
ホルヘ公爵は固まっているイザベラ王女に声がけした。
「イザベラ王女様ともあろう人が、緊張するなど、どうなされた?」
「いや、まさか、オハラ王族が先に訪問するなど、、、とは?」
「オハラ王国から何かを期待したのなら、それは無駄だ。ヒカリ王女様は、我が国と鎮守聖国使節の仲立ちで訪問してきたのだ。」
「我が国と鎮守聖国との仲立ちで訪問してきた?何の為に?」
「友好条約のためです。」
「わざわざ、オハラ王国の向こう側から、護衛騎士団無しで?」
「護衛は、最強の剣士と最強の魔法使いです。二人は万の軍団でも殲滅します。」
「それは、私に対する挑戦か?」
「まさか、イザベラ王女に挑戦などしないです。」
「だが、最強の剣士をうたうのであれば、私もビクトリー王国では最強だ。」
サニーは舌なめずりすると、
「だと、タロー!私、この娘が気に入ったわ。お相手なさい。」
と、サニーはイザベラ王女と鹿島をけしかけた。
「相手はまだ小娘だ!無理だろう。」
「小娘だと!」
と怒り狂ったイザベラ王女は、背中に背負った大剣を抜いて鹿島に切りかかった。
イザベラ王女は大剣を軽々と振り回して、鹿島を庭の中央に追い詰めだした。
「タロー!遊んでないで、きちんと相手をしなさい。」
「そうだな。顔に似合わないバカ力の突進猛者だし、相手してやるか。」
と言って、鹿島は腰から鞘のまま抜いた。
鹿島は鞘と鍔をしっかり固定し終えると、正眼に構えた。
鹿島が準備終えたのを確認したイザベラ王女、
「バカ力の突進猛者だと!馬鹿にするな!」
と言って、鋭い剣技を得意げに披露しだした。
「少しは鍛錬しているようだな。」
と鹿島は言いながらも、鞘を合わせることなく大剣の刃を避け続けた。
「どうしたものかな?まさか殴ったり蹴ったりなど、できないし。」
「治療は任せなさい!」
とサニーが叫んだが、
「そういう問題ではないだろう!俺の心情だろう。」
「本当の剣の極意を、伝授しなさい!」
とサニーが叫んだ。
「あいつ、何を考えているのだ。」
鹿島は仕方なしに鞘を合わせ、振りかぶってくる大剣を斜め下に落ちるように受け流すと、大剣の刃先は鹿島の足元の小石を二つに割った。
イザベラ王女はすぐに大剣を鹿島に向けて下からすくい上げたが、鹿島も上る大剣の勢いをさらに加速させようと弾いた。
イザベラ王女は弾かれた大剣を離すまいと、上段に振りかぶったまま後ろによろけた。
サニーは服の模様翅を広げると、イザベラ王女の方へ飛翔していった。
イザベラ王女はよろけながら、翅を広げたサニーに見入って固まった。
「あなた何者?」
「私は、大精霊サニーです。イザベラに提案があります。聞きたい?」
「どの様な?」
「あなたに私が憑依して、タローを打ち負かす。」
「大精霊サニー様が、憑依するなら、勝てると?」
「試してみます?」
「可能なら是非にお願いします。このままでは手も足も出ない。せめて一太刀でも返したい。」
「一太刀を返したい。と、やっぱりあなたが気に入ったわ。」
と言って、サニーはイザベラ王女をすり抜けるように消えた。
「タロー!手加減しないわよ!」
「うっそだろう!何で今度はサニーなの!」
「風圧!」
とイザベラ王女が叫ぶと同時に、空気圧力と大剣を突き出してきた。
鹿島は鋭い突きを避けようと大剣を弾いたが、空気圧力を避けることができず、後ろの大木の幹にぶち当たった。
『今よ!』とイザベラ王女は身体からの声を感じた。
鹿島は起き上がると、大剣が目前に迫ってきたのに気づいた。
鹿島は大剣を避けきれないと判断すると鞘で受けつつ、
「風刃!」大剣の鍔近くを目掛けて片手手刀で振り抜いた。
「あ、なに?」
イザベラ王女の振り下ろした大剣の刃部分は、鍔先から空中に飛んでいった。
イザベラ王女は柄を握りしめたまま、切り込んだ勢いを制することが出来ずに鹿島にぶつかった。
鹿島はイザベラ王女を怪我させないようにと、ぶっつかる勢いを和らげるクッション代わりに胸で受け止めた。
イザベラ王女は鹿島の腕に抱かれているのに気づくとすぐに飛びのき、
「無礼者!手打ちにしてやる!」
と叫び、刃のない柄を掲げると、再び身体からの声を感じた。
『イザベラ、落ち着きなさい。ここからが本番よ。ヒカリ王女の剣を取り上げて、再度挑戦よ。』
イザベラ王女は、ヒカリ王女の腰につるした剣から目を移すことなく突進して行き、
「従姉妹殿。親戚のよしみの縁だ!借りる!」
と言って、ヒカリ王女の腰につるした剣を引き抜くと、鞘を残して持ち去った。
黒い尾刃剣は、怒り狂ったイザベラ王女の感情に反応したのか青く輝きだした。
鹿島は青く輝き迫る尾刃剣を危険だと判断すると、すぐにその場方飛び退いた。
青く輝く尾刃剣は、鹿島が背にしていた一メートル大木の幹を切断した。
「な、な、なんなのだ、この剣は!」
と切り倒したイザベラ王女は、倒れた幹の横にある切り株に驚いた眼で見入った。
『ほら!いきなさい!』
との声でイザベラ王女は我に返って鹿島に向かっていった。
鹿島もようやっと腹を決めた様子で、静かに神剣を抜き中段に構え、イザベラ王女に剣先を向けた。
イザベラ王女が上段から振り下ろした剣を又もや下方に弾くと、イザベラ王女の首に一筋の血が流れた。
イザベラ王女がやはり下から切り上げると、鹿島は鉄板鎧の胴部分だけを切り裂いた。
イザベラ王女は尾刃剣を振り回しながら鹿島に切りかかるが、両手を守る鎧がすべて剥ぎ取れていた。
『むやみに突っ込まないで、タローと同じ様に剣先を流しなさい!』
と身体の声が怒鳴った。
イザベラ王女は、正眼に構えたタローを真似る様に、両手で尾刃剣の柄を握りしめてやはり正眼に構えた。
イザベラ王女は首に一筋の血が流れた前後を思い出しながら、尾刃剣を走らせる剣筋を頭に描いた。
描いた剣先が向かうのは鹿島の首である。
イザベラ王女は掛け声と共に、鹿島の剣を打ち落とすように剣を合わせた反動で鹿島の首に向かった。
しかしながら、首に向かって尾刃剣を払ったが、鹿島の体はすでに横向きで一メートル斜め先にいた。
イザベラ王女は鹿島の動き方を思い出していた。
「足を持ち上げないで、滑らせていた。」
とぽつりとつぶやくと、同じ様に足先だけを地面につけたまま滑らせた。
イザベラ王女は足を持ち上げることなく、足先だけを地面につけたまま滑らせる動作をまねて再び鹿島に切り込んだ。
イザベラ王女は、正眼に構えたタローに滑らせる反復を繰り返しながら、何度も挑み続けた甲斐があり、鹿島が首に向かって来る尾刃剣を避けようと体を横にずらしたのを見切った。
イザベラ王女の尾刃剣先は、微かであるが鹿島の首の皮に傷をつけて一筋の血を流した。
鹿島は首から流れ出た血を指で確認すると、
「やられたな。」
と言って、神剣を鞘に納めると、イザベラ王女は精魂尽きた様子で座り込んだ。
「回復薬を飲みなさい。」
「え、もしかして、妖精の製造した回復薬ですか?」
「ま、妖精は手伝うだけで、製造は薬師精霊よ。」
「貴重では?」
「この国ではそうかもしれないが、鎮守聖国の薬屋には、棚にいっぱい並んでいるわ。」
「是非に輸入したい。」
「その交渉に私たちが来ました。」
「護衛でなくて、大使だと?」
「ヒカリちゃんの護衛兼大使よ。」
「ヒカリちゃんて、それほど親しいのですか?」
「イザベラもちゃん呼びされたい?」
「是非に、出来れば、配下扱いしていただければ、光栄です。」
「では特別に家族扱いするわ。」
「光栄です。」
「フフフフ。」
とサニーは含み笑いをしだした。
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