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転生

14 奇襲攻撃

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 森中から、魔法のか掛け声や悲鳴に、時々歓声が響き渡りながら木々の間でコダマしている。
「タロー!周りは私に任せて!タローは正面から向かってくる奴らを蹴散らしてしまい、警戒縄張りを突破して!」
「サニー!助太刀します!」
と、教官妖精の声が後ろから響いた。

 妖精たちの作戦は、軍隊魔蜂の群れが戦闘態勢を整える前に、数では優位にある妖精たちが、軍隊魔蜂の巣を襲う奇襲攻撃方法である。

 鹿島は、レーザー銃を森の中で使えない事で、神剣を振りかざしながら、
「水刃!」
と、茂った深緑の葉っぱや枝木の影から、次々と飛来してくる軍隊魔蜂の群れに向かって神剣を突き出し、剣先から水魔法によるガラスみたいな感じの半月形容圧縮水刃を飛ばし続けた。

「軍隊魔蜂の住処を発見!」
と、鹿島の肩で立っているサニーが叫んだ。

 幹と枝葉に隠れている軍隊魔蜂の住処を、鹿島は確認した。
幹と枝木を土台にした軍隊魔蜂の住処は巨大で、三間(約九メートル)の二階建て住宅ほどもあった。

 魔蜂の住処を守るように、一回り大きな真っ黒い軍隊魔蜂が取り囲んでいる。
「タロー!竜巻刃!」

 五十メートル先にある軍隊魔蜂の住処に向かって、鹿島は上段から神剣を振り降ろし、
「風刃竜巻!」
と叫び、剣先からかまいたち竜巻を飛ばした。

 同時に、一回り大きな真っ黒い軍隊魔蜂も、鹿島達の方へ向かってきた。

 小さな竜巻は急速で飛び出し、徐々に大きくなっていった。
風刃竜巻は周りの枝木を巻き添えにしながら、向かってくる軍隊魔蜂と共に切り飛ばすと、竜巻の通った跡に深緑のドーム道を形成した。

 軍隊魔蜂の住処は巨大になった竜巻に飲み込まれ、枝木諸共渦巻きだした。

 竜巻が赤く染まっていく様子を鹿島が眺めていると、竜巻が消えた跡にえぐれた地表に赤色の水溜りができた。

「手伝いなさい!」と、サニーが怒鳴き声で、鹿島はまだ戦闘中であったと自覚した。

 サニーと五人の教官妖精達は六匹の軍隊魔蜂の足攻撃を避けながら、可愛らしい剣を振り回していた。

 サニーの相手が一回り大きいので、
「サニー!そいつがボスか?」
「女王魔蜂を守る、親衛隊伴侶の一匹よ!」
妖精たちの持っている可愛らしい剣には、切断強化付与がなされているようで、ひ弱な力で斬る威力は軍隊魔蜂の堅い外殻と足爪を切断していた。

「タロー!見てないで!手伝え!ただし、こやつの翅を傷つけないようにしろ!」
 鹿島は「翅を傷つけない」との理由を問うことなく、劣勢気味のサニーに夢中の軍隊魔蜂に、サニーを飛び越えて上段から神剣で頭を殴るように叩切り、翅を傷つけない為に身の真ん中から左右対称に二つに切り裂いた。

 鹿島とサニーは、剣だけで戦っている「火の精霊魔法。」妖精の元へ向かうと、軍隊魔蜂は頭部に多くの傷を負いながらも、それでもフラフラと飛翔しながら懸命に抵抗する様に、残った二本の長い足で連続突き攻撃している。
「魔蜂野郎は、もう弱っているのに、何をいたぶっているの?さっさと倒しなさい!」
「私も、翅が欲しい~。」
「タロー!手伝ってやりなさい。」

鹿島は難なく軍隊魔蜂の頭を二つに切り分けると、となりの「凍てつく精霊魔法。」で軍隊魔蜂の足を何カ所か凍らせ、戦っている妖精のそばに行き、
「優勢に戦っているのに、何で倒さないの?」
「私も、奴の、無傷の翅を残したい。」
「俺が倒していいか?」
「翅は無傷で残して~。」
「了解した。」と言って左右対称に二つに切り裂いた。

 鹿島が他の軍隊魔蜂二匹を相手に戦っていると、サニーと火の精霊魔法妖精が加勢しだし、二匹共に頭から身二つに叩き切っていった。
 
「軍隊魔蜂の翅を傷つけることなく、絶命させたタローはえらい!」
と言いながら、サニーと五人の教官妖精は絶命した四枚の翅を持っている軍隊魔蜂の背中に降り立ち、一メートルほどの一際大きな上部翅根元に剣を差し込んで、絶命した軍隊魔蜂の翅を切り取った。
サニーは一際大きな軍隊魔蜂から、一メートルを軽く超える上部翅の根元をほじくっていた。

「その翅をどうするの?」
「私たちの翅は柔らかいので、丈夫で固い軍隊魔蜂の翅と取り換えるの。」
「交換できるの?」
「治癒の精霊魔法があるでしょう。次の巣では、何とかして女王魔蜂の翅を手に入れて、鎮守様にプレゼントしたいわ。」
「鎮守様へ?」
「だって、身体はゴーレムでしょう?」
「ゴーレムだと、可能なの?」
「鎮守様なら、ゴーレムを作り替える事は、可能だと思う、、、わ。」
サニーは、確証はないが、ゴーレムを造れたのだから、改造は可能だと思ったようである。

 森の中から勝ちどき歓声が響き、幹の間を白衣の妖精が飛び回り始めた。

 赤色の池は既に地面に浸透してしまったのか、白色肉塊と肉片がこびりついた黒色外殻の間に、真っ赤なルビーが残っていた。

「女王魔蜂は、魔石持ちだったのだ!」
と、サニーは鹿島の肩から赤色の池跡地に飛び降りた。
「お~。ファンタジー小説の魔石?」
「タローは魔石を知っていると?」
「いろんな使い方があるのでしょう。」
「そうよ。どんな使い方を希望します。」
「サニーにプレゼントするよ。」
「やった!」

 五人の教官妖精は、二枚の翅を抱きしめながら羨ましそうにサニーを見つめていた。

 魔蜂の住処跡に多くの精霊見習い妖精が集まりだしてきて、サニーと五人の教官妖精が抱えている軍隊魔蜂の翅に気づき、
「軍隊魔蜂の翅を傷つけることなく、倒したの?」
「そうよ。タローと協力して倒したわ。おまけに魔石も手に入れたわ。」
「魔石持ちがいたの?」
「おそらく、女王魔蜂が魔石持ちだったかも?」
「誰も女王魔蜂と戦ったことがなかったので、女王魔蜂が魔石持ちとは気づかなかったのね。」
と言って、サニーは赤い魔石をかざした。
「魔石持ちだと、何かあるのかい?」
「魔石持ちは魔術を使えるのよ。魔術を行える女王魔蜂と、面と向かって戦ったら、翅は無理かも。」
と、サニーは顔を曇らせた。

「花園で、休憩しましょう。」
とサニーは、鹿島の肩に乗ると、五人の教官妖精も飛翔しながら、鹿島にまとわり付いていた。

 花園に着いたサニーと五人の妖精の周りに、白衣姿の妖精たちが集まりだした。

 白衣姿の妖精たちが移植治癒した翅を着けたサニーと五人の妖精達が立ち上がると、背中の翅を八の字には広げているが、翅先部分が地面についていた。
「チョット、大きかったわ。」
と、サニーは満面笑顔で鹿島を見つめ上げた。

 五人の妖精が勢い良く飛び上がると、サニーもその後を追っていった。

 鹿島がサニーと五人の妖精たちの飛翔する動きをとらえきれなくなると、称賛の声が花園中に響いた。

 みんなが空を見上げてサニーと五人の妖精たちを探していると、
「全員集合!」
と、サニーの声が響いた。

 サニーと五人の妖精たちはいつの間にか花園に降り立っていて、
ダンボール箱を開き始めていた。
「これから、再度次の軍隊魔蜂の巣を奇襲するので、チョコレートを配ります。口に含みながら、奮励努力して、軍隊魔蜂が体制を整える前に、巣を滅する。」
「お~~。」
花園中に雄叫びの歓声が響き渡った。

 
「サニ~、最初は、魔法種類で隊を組んでいたが、何で今度は、小グループなのだ?」
「あ~。みんな、翅を確保したいのだ!やばいかも?」
と、サニーは鹿島の肩に乗って、翅ばたかせた翅に光を反射させながら、森の中へ入って行く兵隊人形妖精達を眺めていた。

 鹿島は背中に聞きなれない高い翅音を感じて振り返ると、飛翔している五人の妖精たちは、にこやか顔で鹿島を見つめていた。

 鹿島達グループは幹や枝の間から飛来してくる軍隊魔蜂を、互いに連携しながら、軍隊魔蜂をみじん切りにして地面に落下させて巣をめざした。
「タロー!止まれ!」
「どうした!」
「なんかまわりが、、、静かすぎる。」
と、肩で立ち上がっているサニーは、周りの様子をうかがい始めた。
「あれ~?そう言えば、だれも戦ってはいないな~。」
「後方では戦っているが、静かな戦い方だ?」
「何で疑問符?」
「後退!」
「何で?」
軍隊魔蜂をみじん切りし終えた、五人の妖精たちが問いかけた。
「このまま進むと、軍隊魔蜂に取り囲まれてしまう。」
「そうなると厄介だ!」
「後退しよう。」
「タロー!早く後退!」
「前の方から軍隊魔蜂の増援がきだしたが?」
「逃げるぞ!」
サニーと五人の妖精たちは鹿島の肩部の防具を掴むと、一斉に元来た方向へ飛んでいった。

 森を抜けて花園上空に着くと、軍隊魔蜂の増援部隊から押し出された兵隊人形妖精達も花園に集まりだした。

「タロー!光魔道具。」
「しかし、森を焼き払うかも?」
「奴らが一斉に現れたら、そんな余裕はない!」

 鹿島はレーザー光線が森に向かわないよう、軍隊魔蜂は急降下で攻撃してくるので、慎重に角度位置に注意しながら、軍隊魔蜂を丸焦げにしていった。

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