守り人たちへ

蝶々

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日記 1

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 私たちの世界は二つに別れた。災厄は災厄を呼びあい、大切な者たちを根こそぎ奪って行った。今の私たちに残されたのは恐怖と絶望だけ。紡がれた思い出さえ今は海の底。
 立ち上がりたい。けれど、前を見ようと空を見れば絶望がある。あの憎い都市が堂々とそびえている。

 心の傷がいえないまま。私たちは、ただ呆然と日常を過ごす。その間にも『変化』は止まらない。現実に心が追い付かない。奪われた者を思い、嘆き、落胆し……それでも明日はやってくる。時間は過ぎていく。悲劇を過去に流すように。

 でもその憎い都市に今、私はいる。

『守り人』として。

 私は空都の守り人。その使命を持って。この目覚めた都市を。いや、目覚めていくであろう都市を見ている。

 過去の私に伝えたい。あなたはこの先たくさんの苦難に出会うんだって。でも、それと同時に愛しい出逢いもあるんだと。それが、やがて絶望する『私』の希望の光になるのなら。

 私の言葉を、この日記に残す。過去には届かないけれど。未来の思い出くらいにはなるだろう。

 
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