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憤怒3
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弟妹たちが中学になると、私は社会人になり仕事にあけくれた。弟妹たちにかかる費用はどんどん膨れ上がっていった。学費を両親が出してくれても……それ以外のもので費用は増していく。途方もなく忙しい日々だった。
『愛している』けれど、それを伝える時間さえ私にはない。……そのせいか……弟妹は私と距離をおくようになっていった。
弟はクールで表情を表に出さない子になった。
妹たちはわがままで人懐っこい、愛嬌のある子に育った。
だから私も……よけいに世話をやいた。離れて欲しくなかった。ずっととは言わないから、そばにいてほしかった。でも、その度に冷たく突き放された。
私は弟妹たちに厳しくあるようにもした。社会人になって世間の厳しさを知ったから。私のように苦労しないように、少しずつ言葉にして伝え続けた。その中にはきっと、うざさも嫌なことも……呆れることもあっただろう。強く注意したことも、怒ったことも多々ある。これはあなたたちのためなんだと。本当は怒声よりも『愛』をささやきたいのだと。
いつかは分かってくれるものだと信じるしかなかった。それ以上の余裕が私にはなかったから……
けれど現実は厳しいもので、私が厳しくすればするほど、弟妹たちは離れて行った。時には反抗し……私に怒声を浴びせ、哀れむような……呆れたような……そんな目を向けることも増えていった。
その日々を重ねたせいか……いつの日か私は弟妹たちに『怒り』さえ覚えるようになってしまった。
私からすれば、何でそこまで距離をおかれるのか、哀れみを向けられなければいけないのか。呆れられるのか。分からないのだ。
弟妹たちの面倒をみたのは私だ。生活費を稼ぐのも私、家事も私。弟妹たちに不自由をさせた覚えはない。
第一、弟妹たちは今だに母親面してくる『家政婦』にお小遣いをもらい、好きな服やら何やら買っているではないか。毎日、ぎりぎりでお金のやりくりをしている私の横で。化粧品のひとつもろくに買えない私の横で。
社会人になったことで、学校に行かない私の学費の金は打ち切られ、生活費さえ自分で稼げと打ち切られた。弟妹の生活費も『家政婦』が今だに握る。
生活費が両親から来ていると思っている弟妹は、私の苦労が分からない。
その何も知らない『顔』に『言葉』に何度、怒りに震え……作り笑いをしたことだろう。
それでも私は頑張った。悔し涙が流れても、手が荒れて……ハンドクリームが濡れなくても。私の苦労を簡単に壊す『服や物』が家に並んでいても。それを古いからと売ろうとする妹の姿を見ても。私に呆れた目しか向けない弟と対面しても。
頑張って頑張って……生きてきたのだ。
やがて、弟妹は高校を卒業した。
正直これで開放されると私は勘違いしてた。面倒を見るのは高校までだと…そう思ってたから。少なくとも私の中ではそれが普通だった。
普通だった…
でも、地獄はここからだった。
弟妹が大学を受験したのだ。大学の費用は高校なんかと比べ物にならないくらい莫大で、学費も打ち切られた私が稼げる金額ではないのは確か。それくらいになれば…例え大学に入るとしても自分でバイトでもして少しは自立すると思っていた。だけど…それは夢だと気付かされる。
大学の合格証と授業料諸々流れるように差し出されるまでは。
「お姉ちゃんーこれよろしく」
「あ、私もー」
今までと変わらないこの言葉。だけど…今までのどんな言葉よりも重く私の体がきしんだ。座ってられるのがやっとだ。ここが沼だとしたら私はもう沈んて頭すら見えないだろう。
どこかで…何かが切れる音がした。
『愛している』けれど、それを伝える時間さえ私にはない。……そのせいか……弟妹は私と距離をおくようになっていった。
弟はクールで表情を表に出さない子になった。
妹たちはわがままで人懐っこい、愛嬌のある子に育った。
だから私も……よけいに世話をやいた。離れて欲しくなかった。ずっととは言わないから、そばにいてほしかった。でも、その度に冷たく突き放された。
私は弟妹たちに厳しくあるようにもした。社会人になって世間の厳しさを知ったから。私のように苦労しないように、少しずつ言葉にして伝え続けた。その中にはきっと、うざさも嫌なことも……呆れることもあっただろう。強く注意したことも、怒ったことも多々ある。これはあなたたちのためなんだと。本当は怒声よりも『愛』をささやきたいのだと。
いつかは分かってくれるものだと信じるしかなかった。それ以上の余裕が私にはなかったから……
けれど現実は厳しいもので、私が厳しくすればするほど、弟妹たちは離れて行った。時には反抗し……私に怒声を浴びせ、哀れむような……呆れたような……そんな目を向けることも増えていった。
その日々を重ねたせいか……いつの日か私は弟妹たちに『怒り』さえ覚えるようになってしまった。
私からすれば、何でそこまで距離をおかれるのか、哀れみを向けられなければいけないのか。呆れられるのか。分からないのだ。
弟妹たちの面倒をみたのは私だ。生活費を稼ぐのも私、家事も私。弟妹たちに不自由をさせた覚えはない。
第一、弟妹たちは今だに母親面してくる『家政婦』にお小遣いをもらい、好きな服やら何やら買っているではないか。毎日、ぎりぎりでお金のやりくりをしている私の横で。化粧品のひとつもろくに買えない私の横で。
社会人になったことで、学校に行かない私の学費の金は打ち切られ、生活費さえ自分で稼げと打ち切られた。弟妹の生活費も『家政婦』が今だに握る。
生活費が両親から来ていると思っている弟妹は、私の苦労が分からない。
その何も知らない『顔』に『言葉』に何度、怒りに震え……作り笑いをしたことだろう。
それでも私は頑張った。悔し涙が流れても、手が荒れて……ハンドクリームが濡れなくても。私の苦労を簡単に壊す『服や物』が家に並んでいても。それを古いからと売ろうとする妹の姿を見ても。私に呆れた目しか向けない弟と対面しても。
頑張って頑張って……生きてきたのだ。
やがて、弟妹は高校を卒業した。
正直これで開放されると私は勘違いしてた。面倒を見るのは高校までだと…そう思ってたから。少なくとも私の中ではそれが普通だった。
普通だった…
でも、地獄はここからだった。
弟妹が大学を受験したのだ。大学の費用は高校なんかと比べ物にならないくらい莫大で、学費も打ち切られた私が稼げる金額ではないのは確か。それくらいになれば…例え大学に入るとしても自分でバイトでもして少しは自立すると思っていた。だけど…それは夢だと気付かされる。
大学の合格証と授業料諸々流れるように差し出されるまでは。
「お姉ちゃんーこれよろしく」
「あ、私もー」
今までと変わらないこの言葉。だけど…今までのどんな言葉よりも重く私の体がきしんだ。座ってられるのがやっとだ。ここが沼だとしたら私はもう沈んて頭すら見えないだろう。
どこかで…何かが切れる音がした。
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