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7章 組織の暗躍
116.デート②《スー編》
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スーは店内をあっちに行ったりこっちに行ったり理想の服を探し回った。
いくつか候補はあるようで、手には数着の洋服を抱えている。
「ラウト様、決まらない……」
スーは選んできた服を並べて見た後に、俺にそう言って来た。
「少し思ったんだけど、スーは服をプレゼントしたいの?」
「どういう意味?」
スーは俺の質問に首を傾げる。
「例えば、同じ装備を三着買って、みんなでお揃いにするのはどうかな。組織で三人は幹部的な存在だし、目立って良いんじゃない?」
「……それ良いかも!」
少し考える仕草をしてから、そう言う。
少し頬が緩んでるから、みんなでお揃いの装備を着るところを想像したのだろう。
俺もお揃いの装備をつけた三人を想像して、クスッと笑みを漏らした。
そうと決まるとスーは、手に持っていた服を戻し足早で店を出た。
服屋を出た俺とスーは防具屋を目指す。
防具屋は街外れにあるため少し遠いが、二人にとっては何の苦でもない。
防具屋に着くと、すぐに店に入る。
「いらっしゃい!」
「軽くて動きやすい防具はある?」
声をかけてきた店主にスーが尋ねる。
「嬢ちゃんが使うのか!」
少し意外そうに店主は答えた。
「それならプレートアーマーが良いと思うぞ。背丈に関係なく使えるからな」
確かに、プレートアーマーは関節などを守る防具なので、背丈はあまり関係ない。
「見てみたい」
「よし来た!すぐ持ってくるから、待っててくれ」
店主はそう言うと店の奥に入っていった。
俺は店内を歩き回って、並べられた防具を眺める。
店主の腕が良いのか、どれも使い勝手の良さそうな物ばかりだ。
そんな事を考えていると、店主が戻ってきた。
「ほいよ、嬢ちゃん。それがうちにあるプレートアーマーでは一番良いやつだ。そこらの魔物の攻撃なら傷もつかないはずだ」
店主はスーではなく、俺を見ながら言う。
スーの保護者だと思われているのかも知れない。
正しい感性だが、スーに対しては余計なお世話ではある。
そんな中、スーはプレートアーマーを持ち上げて真剣に見定めていた。
「デザインは良いけど、少し重い……。これだと動きが若干制限される」
「……驚いたなぁ」
店主はスーが防具の特性を一瞬で見抜いた事に目を見開く。
「確かに、そのアーマーは丈夫にしてる分、少し重い。それでも素人に見抜ける差ではないと思ったんだが」
普通の女の子に差異を見抜くのは無理でも、そこらの冒険者よりもよっぽど戦闘の経験を積んでいるスーに、見分けられない筈もないのだ。
「接近戦はしない。軽さ特化のアーマーが欲しい」
「嬢ちゃんを舐めてたぜ。分かった。今度はこの店で一番軽いアーマーを持ってくる」
そう言って店主は再び店の奥に入っていった。
「すまんな、二度も待たせて」
店主は戻ってくると、そう言ってスーに持ってきたアーマーを渡した。
スーは受け取ると再び、真剣にチェックした。
「……これは良いかも」
「お眼鏡にかなったみたいだな」
店主も満足げにスーの反応を見つめた。
スーは実際に装備してみたりして、確認する。
「うん、これにする」
スーは大きく頷くと俺に視線を向けてそう告げた。
「凄く似合ってるよ。きっとヒアやエラにも似合うよ」
「うん」
スーは嬉しそうに口元を緩ませた。
スーは防具を外して、店主に向き直る。
「これと同じデザインのアーマーが三つ欲しい」
「三つもか!?」
店主は耳を疑う。
「結構な値段だが、本当に三ついるのか?」
「うん、三つ」
「そうか……金貨四十二枚だな」
店主は躊躇いがちに値段を告げた。
確かに高額だった。
しかし、スーには俺があげている使用人としての給料があるため、かなりの貯金がある。
少し懐は痛むだろうが払えない額ではない。
高額になるのは予想していたから、俺も店に来る前、スーに装備の代金を少し負担しようかと提案したが、自分のお金で買いたいと断られた。
「これでぴったりある」
スーは金貨が入った袋を取り出して店主に渡す。
「ッ!そんな大金……」
店主はスーが金貨を大量に持っていた事に驚きを隠せない。
貴族のご令嬢なのかも、と思う事で何とか冷静さを取り戻すと、言葉を続ける。
「今は完成品が三つもないから、五日後くらいに取りに来てくれるか?その時までには仕上げとく」
「分かった」
そうして俺たちは防具屋を後にした。
店を出ると、日がもうすぐ落ちようとしていた。
できる事はあと一つくらいだろう。
何をするかは聞くまでもない。
スーの方を見ると短剣を取り出していた。
やる気は満々のようだ。
さて、お手並み拝見と行こうか。
いくつか候補はあるようで、手には数着の洋服を抱えている。
「ラウト様、決まらない……」
スーは選んできた服を並べて見た後に、俺にそう言って来た。
「少し思ったんだけど、スーは服をプレゼントしたいの?」
「どういう意味?」
スーは俺の質問に首を傾げる。
「例えば、同じ装備を三着買って、みんなでお揃いにするのはどうかな。組織で三人は幹部的な存在だし、目立って良いんじゃない?」
「……それ良いかも!」
少し考える仕草をしてから、そう言う。
少し頬が緩んでるから、みんなでお揃いの装備を着るところを想像したのだろう。
俺もお揃いの装備をつけた三人を想像して、クスッと笑みを漏らした。
そうと決まるとスーは、手に持っていた服を戻し足早で店を出た。
服屋を出た俺とスーは防具屋を目指す。
防具屋は街外れにあるため少し遠いが、二人にとっては何の苦でもない。
防具屋に着くと、すぐに店に入る。
「いらっしゃい!」
「軽くて動きやすい防具はある?」
声をかけてきた店主にスーが尋ねる。
「嬢ちゃんが使うのか!」
少し意外そうに店主は答えた。
「それならプレートアーマーが良いと思うぞ。背丈に関係なく使えるからな」
確かに、プレートアーマーは関節などを守る防具なので、背丈はあまり関係ない。
「見てみたい」
「よし来た!すぐ持ってくるから、待っててくれ」
店主はそう言うと店の奥に入っていった。
俺は店内を歩き回って、並べられた防具を眺める。
店主の腕が良いのか、どれも使い勝手の良さそうな物ばかりだ。
そんな事を考えていると、店主が戻ってきた。
「ほいよ、嬢ちゃん。それがうちにあるプレートアーマーでは一番良いやつだ。そこらの魔物の攻撃なら傷もつかないはずだ」
店主はスーではなく、俺を見ながら言う。
スーの保護者だと思われているのかも知れない。
正しい感性だが、スーに対しては余計なお世話ではある。
そんな中、スーはプレートアーマーを持ち上げて真剣に見定めていた。
「デザインは良いけど、少し重い……。これだと動きが若干制限される」
「……驚いたなぁ」
店主はスーが防具の特性を一瞬で見抜いた事に目を見開く。
「確かに、そのアーマーは丈夫にしてる分、少し重い。それでも素人に見抜ける差ではないと思ったんだが」
普通の女の子に差異を見抜くのは無理でも、そこらの冒険者よりもよっぽど戦闘の経験を積んでいるスーに、見分けられない筈もないのだ。
「接近戦はしない。軽さ特化のアーマーが欲しい」
「嬢ちゃんを舐めてたぜ。分かった。今度はこの店で一番軽いアーマーを持ってくる」
そう言って店主は再び店の奥に入っていった。
「すまんな、二度も待たせて」
店主は戻ってくると、そう言ってスーに持ってきたアーマーを渡した。
スーは受け取ると再び、真剣にチェックした。
「……これは良いかも」
「お眼鏡にかなったみたいだな」
店主も満足げにスーの反応を見つめた。
スーは実際に装備してみたりして、確認する。
「うん、これにする」
スーは大きく頷くと俺に視線を向けてそう告げた。
「凄く似合ってるよ。きっとヒアやエラにも似合うよ」
「うん」
スーは嬉しそうに口元を緩ませた。
スーは防具を外して、店主に向き直る。
「これと同じデザインのアーマーが三つ欲しい」
「三つもか!?」
店主は耳を疑う。
「結構な値段だが、本当に三ついるのか?」
「うん、三つ」
「そうか……金貨四十二枚だな」
店主は躊躇いがちに値段を告げた。
確かに高額だった。
しかし、スーには俺があげている使用人としての給料があるため、かなりの貯金がある。
少し懐は痛むだろうが払えない額ではない。
高額になるのは予想していたから、俺も店に来る前、スーに装備の代金を少し負担しようかと提案したが、自分のお金で買いたいと断られた。
「これでぴったりある」
スーは金貨が入った袋を取り出して店主に渡す。
「ッ!そんな大金……」
店主はスーが金貨を大量に持っていた事に驚きを隠せない。
貴族のご令嬢なのかも、と思う事で何とか冷静さを取り戻すと、言葉を続ける。
「今は完成品が三つもないから、五日後くらいに取りに来てくれるか?その時までには仕上げとく」
「分かった」
そうして俺たちは防具屋を後にした。
店を出ると、日がもうすぐ落ちようとしていた。
できる事はあと一つくらいだろう。
何をするかは聞くまでもない。
スーの方を見ると短剣を取り出していた。
やる気は満々のようだ。
さて、お手並み拝見と行こうか。
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