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6章 ゲドラ獣王国編
100.帰らせてくれぇ!!
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リゴールに案内されて来たのは訓練場だった。
「これからの勝負は魔法のみの模擬戦。推薦書で貴様が魔法を使えるのは知っている。無理とは言わせないのだよ」
「そうですか」
俺はリゴールの言葉を意識も漫ろに聞き流す。
リゴールの企み。
それはこの訓練場に入った瞬間に気づいた。
この訓練場には特殊な結界が張られていた。
それは魔力の流れを乱す類いの結界で、この結界の中では魔力を操作するのが難しい。
普通はこんな中で魔法を発動しようとしても魔力が分散してしまうか、下手をすれば暴発して自爆するのがオチだろう。
そう、あくまで普通であれば。
「貴様も気づいただろう」
「何がですか?」
俺はあえて惚けてみせる。
リゴールは俺の返答を聞くと、本当に気づいてないと思っているのか、嘲笑を浮かべて蔑視してくる。
「まぁ分からないのならそれで良い。おい、お前!開始の合図をしろ」
リゴールは受付嬢に命令する。
受付嬢は心配そうな顔つきで俺を見てきた。
俺が頷くと意を決したように手を上に振り上げ、開始の合図と共に振り下ろした。
「模擬戦・・・開始!!」
開始と同時にリゴールが魔法の発動した。
おそらく結界の中でも魔力操作できるように練習したのだろう。
魔力を乱される事なく魔法を行使している。
「これを防いで見せるのだよ!!」
嗜虐的な顔でそう言った。
リゴールが放って来たのはファイヤーボール。
最も基本的な魔法だ。
この結界の中では、訓練したリゴールでも複雑な操作を必要とする魔法は難しいのだろう。
ただ威力は大した事ないが、生身の人間が当たれば大火傷を負う。
魔法を使えない相手には十分な攻撃手段だろう。
それに対して俺は同じ魔法、同じ威力で相殺してみせた。
「なんだと!?」
リゴールの顔が驚愕に染まる。
「・・・何をした?」
状況が理解できていないのか、俺に説明を求めてくる。
説明してやる義理はないが、大したことない話だ。種明かしとも呼べないものだ。
「見ての通りですよ。あなたと同じ魔法で相殺した、それだけの事です」
「そんな事は聞いていない。どうやって魔法を使ったのだ」
「それもあなたと同じですよ。魔力を乱される度に修正して魔法を放っただけ」
「私が何ヶ月もかけて習得した技術を貴様ごときが一瞬でやったとでも言うのか!?」
「そう言う事ですよ」
「ッ!」
明らかにリゴールの表情が歪む。
さらに俺はリゴールに今の状況を教えてやる。
「さて、ここからは純粋な魔法の腕前勝負ですよ。自信はお有りですか?」
俺はそう言いながら魔力の一部を解放する。
リゴールが持つ全魔力よりも遥かに膨大な魔力が訓練場を満たす。
圧倒的な魔力量。
それは威圧となってリゴールに襲い掛かる。
そんな状況でもリゴールは諦めない。
「ファイヤーレイ!!」
リゴールはファイヤーボールが通じない事を知っているので、より威力が強い魔法に切り替えた。
この結界の中でもそこそこ複雑な魔法を放てる腕前は相当なものだろう。
高飛車な態度になるのも肯ける。
だが、相手が悪かったな。
こっちは死と隣り合わせのダンジョンで3年も過ごしたんだ。
この程度の結界で魔力を乱される俺ではない。
先ほどと同様に同じ魔法で相殺して、同時に別の魔法を準備する。
それは以前に穂花達にもみせた超火力魔法のインフェルノ。
今回は結界のせいで注ぎ込んだ魔力はあの時以上だ。
巨大な黒い炎の球体が俺の頭上に形成されていく。
リゴールは規格外で絶対的なその魔法を前に足が体を支える事すら出来ず、膝から崩れ落ちた。
片や最上級の魔法を構え、生殺与奪の権すら握っているラウト。
片や抵抗の意思さえ見せず、両膝をついたリゴール。
既に勝敗は明らかであった。
俺は受付嬢を見る。
目が合うと受付嬢は慌てて判定を下す。
「勝者・・・ラウトさん!!」
俺はインフェルノを空中で霧散させる。
「いつから結界に気づいていた」
最初の威勢は何処へやら、すっかり大人しい口調でリゴールは尋ねてきた。
「訓練場に入った時に気づきましたよ」
「わざと気づかないフリをしたか」
「まあ、仕掛けがそれだけか確信はなかったので」
「完敗なのだよ」
これで試験も終わりだろう。
そう言えば穂花達は宿を取れただろうか。
しかしその認識は甘かった。
「ラウト、3つ目の試験だ。君には冒険者トーナメントに出てもらう」
俺は耳を疑った。
まだ試験がある事にも驚きだが、冒険者トーナメントと言う単語が出てくるとは思わなかった。
「冒険者トーナメント?どうしてです?」
「これはギルドマスターの指示だ。私が決めた訳ではない」
ギルドマスターは本部のギルド長のことだったはずだ。
俺とは面識はない。
そんな指示を出す理由がわからなかった。
「ギルドマスターは冒険者トーナメントを盛り上げるのが目的だと言っていたのだよ。君はとんでもない魔法を使えるからエンターテインメントに最適なのだろうな」
「盛り上げ役になれと言うことですか?」
「そうだ、別に優勝はしなくて良い。何なら一回戦負けでも構わないのだよ。それで不合格にしたりはしない。その代わり誰も見たことのない魔法でも披露してほしい」
「そうですか」
それならやっても良いかと思う。
俺はそれを引き受ける事にした。
リゴールは結界の解除やら何やらでどこかに消えていった。
その後、受付嬢と共に訓練場を出て受付に戻ってきた。
「ラウトさん強いんですね。その年でSランクの試験を受けているだけでもビックリなのにあんな魔法まで・・・」
「強くないと生きて行けませんからね」
冗談めかして答える。
「凄いと思いますよ!」
そんな会話をしていると、未だに途切れない冒険者トーナメント参加登録受付の列が視界に入ってきて、とてつもなく嫌な予感がした。
「あの・・・トーナメントのエントリーって・・・」
「それはあの列に並んでください」
受付嬢は列の最後尾を指差してそう言った。
俺は視界が色を失っていくのを感じた。
ーーー帰らせてくれぇ!!
俺の心の声は虚しく頭の中に反響した。
「これからの勝負は魔法のみの模擬戦。推薦書で貴様が魔法を使えるのは知っている。無理とは言わせないのだよ」
「そうですか」
俺はリゴールの言葉を意識も漫ろに聞き流す。
リゴールの企み。
それはこの訓練場に入った瞬間に気づいた。
この訓練場には特殊な結界が張られていた。
それは魔力の流れを乱す類いの結界で、この結界の中では魔力を操作するのが難しい。
普通はこんな中で魔法を発動しようとしても魔力が分散してしまうか、下手をすれば暴発して自爆するのがオチだろう。
そう、あくまで普通であれば。
「貴様も気づいただろう」
「何がですか?」
俺はあえて惚けてみせる。
リゴールは俺の返答を聞くと、本当に気づいてないと思っているのか、嘲笑を浮かべて蔑視してくる。
「まぁ分からないのならそれで良い。おい、お前!開始の合図をしろ」
リゴールは受付嬢に命令する。
受付嬢は心配そうな顔つきで俺を見てきた。
俺が頷くと意を決したように手を上に振り上げ、開始の合図と共に振り下ろした。
「模擬戦・・・開始!!」
開始と同時にリゴールが魔法の発動した。
おそらく結界の中でも魔力操作できるように練習したのだろう。
魔力を乱される事なく魔法を行使している。
「これを防いで見せるのだよ!!」
嗜虐的な顔でそう言った。
リゴールが放って来たのはファイヤーボール。
最も基本的な魔法だ。
この結界の中では、訓練したリゴールでも複雑な操作を必要とする魔法は難しいのだろう。
ただ威力は大した事ないが、生身の人間が当たれば大火傷を負う。
魔法を使えない相手には十分な攻撃手段だろう。
それに対して俺は同じ魔法、同じ威力で相殺してみせた。
「なんだと!?」
リゴールの顔が驚愕に染まる。
「・・・何をした?」
状況が理解できていないのか、俺に説明を求めてくる。
説明してやる義理はないが、大したことない話だ。種明かしとも呼べないものだ。
「見ての通りですよ。あなたと同じ魔法で相殺した、それだけの事です」
「そんな事は聞いていない。どうやって魔法を使ったのだ」
「それもあなたと同じですよ。魔力を乱される度に修正して魔法を放っただけ」
「私が何ヶ月もかけて習得した技術を貴様ごときが一瞬でやったとでも言うのか!?」
「そう言う事ですよ」
「ッ!」
明らかにリゴールの表情が歪む。
さらに俺はリゴールに今の状況を教えてやる。
「さて、ここからは純粋な魔法の腕前勝負ですよ。自信はお有りですか?」
俺はそう言いながら魔力の一部を解放する。
リゴールが持つ全魔力よりも遥かに膨大な魔力が訓練場を満たす。
圧倒的な魔力量。
それは威圧となってリゴールに襲い掛かる。
そんな状況でもリゴールは諦めない。
「ファイヤーレイ!!」
リゴールはファイヤーボールが通じない事を知っているので、より威力が強い魔法に切り替えた。
この結界の中でもそこそこ複雑な魔法を放てる腕前は相当なものだろう。
高飛車な態度になるのも肯ける。
だが、相手が悪かったな。
こっちは死と隣り合わせのダンジョンで3年も過ごしたんだ。
この程度の結界で魔力を乱される俺ではない。
先ほどと同様に同じ魔法で相殺して、同時に別の魔法を準備する。
それは以前に穂花達にもみせた超火力魔法のインフェルノ。
今回は結界のせいで注ぎ込んだ魔力はあの時以上だ。
巨大な黒い炎の球体が俺の頭上に形成されていく。
リゴールは規格外で絶対的なその魔法を前に足が体を支える事すら出来ず、膝から崩れ落ちた。
片や最上級の魔法を構え、生殺与奪の権すら握っているラウト。
片や抵抗の意思さえ見せず、両膝をついたリゴール。
既に勝敗は明らかであった。
俺は受付嬢を見る。
目が合うと受付嬢は慌てて判定を下す。
「勝者・・・ラウトさん!!」
俺はインフェルノを空中で霧散させる。
「いつから結界に気づいていた」
最初の威勢は何処へやら、すっかり大人しい口調でリゴールは尋ねてきた。
「訓練場に入った時に気づきましたよ」
「わざと気づかないフリをしたか」
「まあ、仕掛けがそれだけか確信はなかったので」
「完敗なのだよ」
これで試験も終わりだろう。
そう言えば穂花達は宿を取れただろうか。
しかしその認識は甘かった。
「ラウト、3つ目の試験だ。君には冒険者トーナメントに出てもらう」
俺は耳を疑った。
まだ試験がある事にも驚きだが、冒険者トーナメントと言う単語が出てくるとは思わなかった。
「冒険者トーナメント?どうしてです?」
「これはギルドマスターの指示だ。私が決めた訳ではない」
ギルドマスターは本部のギルド長のことだったはずだ。
俺とは面識はない。
そんな指示を出す理由がわからなかった。
「ギルドマスターは冒険者トーナメントを盛り上げるのが目的だと言っていたのだよ。君はとんでもない魔法を使えるからエンターテインメントに最適なのだろうな」
「盛り上げ役になれと言うことですか?」
「そうだ、別に優勝はしなくて良い。何なら一回戦負けでも構わないのだよ。それで不合格にしたりはしない。その代わり誰も見たことのない魔法でも披露してほしい」
「そうですか」
それならやっても良いかと思う。
俺はそれを引き受ける事にした。
リゴールは結界の解除やら何やらでどこかに消えていった。
その後、受付嬢と共に訓練場を出て受付に戻ってきた。
「ラウトさん強いんですね。その年でSランクの試験を受けているだけでもビックリなのにあんな魔法まで・・・」
「強くないと生きて行けませんからね」
冗談めかして答える。
「凄いと思いますよ!」
そんな会話をしていると、未だに途切れない冒険者トーナメント参加登録受付の列が視界に入ってきて、とてつもなく嫌な予感がした。
「あの・・・トーナメントのエントリーって・・・」
「それはあの列に並んでください」
受付嬢は列の最後尾を指差してそう言った。
俺は視界が色を失っていくのを感じた。
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俺の心の声は虚しく頭の中に反響した。
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