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6章 ゲドラ獣王国編

96.獣王国に行こう

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屋敷へ戻り、状況説明のためみんなに集まってもらった。


「という訳で、Sランクの試験を受ける事になりました」


「ラウト、ギルド本部に行くのか?」


「うん、試験は本部でって言われたよ」


「確か本部があるのって、なあ穂花」


「うん。ゲドラ獣王国だね」


「そうなの!?」


衝撃の事実。
ギルドの本部ってこの国にないのか。

(まあ転移で行けばどこにあろうと関係ないか)

そんな風に考えていると、穂花がある提案をする。


「ねぇ、みんなで行こうよ」


「みんなで?」


「うん、最近はハルくんもルルもクエストばっかりで大変そうだから、休息も兼ねてのんびり行こうよ」


「それ良いかもな。確か海を渡るからついでに海水浴とかもしようぜ」


穂花の提案に暎斗も同調した。
確かにこの世界に来てから一度も休息らしい休息を取っていない。
みんなで旅行。良いかもな。


「私も賛成です!行きましょう、海!!私、海は初めてです!!」


ルルも乗り気だ。
けど手に持ってる長靴は必要ないぞ。
水溜りに入るんじゃないんだから。

ルルみたいな勘違いをする人がいっぱいいるから長靴が釣りでハズレみたいなイメージになったのか?
長靴なんて釣れた事ないけどなぁ。


「じゃあみんなで行くか」


「「「オォーー!!」」」


海までは馬車で移動して、船で獣王国に行く事になるので、準備はほとんど必要ない。
ただ、水着は持っていないので、みんなで水着を買いに出掛けた。


次の日、馬車の発着所に集まった4人。
久しぶりに武器も持たずに街の外に出る。

護衛として馬車に乗ればタダになるが、気が休まらないので、通常料金を払い客として乗りこんだ。

馬車は6人乗りだが、他に客はいないのか貸切だった。


「出発しやすぜ」


御者の声が掛かると同時に馬車が発進する。

大きく開いた窓からだんだんと遠くなる街が見えた。

俺は馬車に揺られて景色を楽しむ。
ゆっくりと窓の左から右へと流れていく景色は見ていて飽きない。
色とりどりの植物や小動物は視界に入るだけで楽しいし、渓谷や大河、遠くそびえる山々は自然の雄大さを感じさせる。

たまに馬車が止まって護衛の冒険者が魔物を討伐するのも、見ているだけなら意外と面白かった。

そして昼頃に、最初の中継地点の街に到着した。
この街は温泉が有名なところだ。
しかし、残念ながら昼食を食べてすぐ出発なので、温泉はまた今度だ。

午後も同じように馬車を進めて、夕方に2つ目の中継地点に着いた。
今日はここに一泊する。

ここはガドラス王国の端に位置する街で、海まではもう後少しだ。

安めの宿に部屋を2つとった。
今回も男女は別々だ。


「疲れたなぁ」


部屋に入るなり暎斗が言う。
一日中、馬車に座っていたため逆に疲れたらしい。
暎斗は肩を回して凝り固まった体をほぐしている。


「でも暎斗は慣れてるでしょ?ずっと冒険者やってたんだし」


「いや、俺は毎回、護衛も引き受けてたから客として乗ったのは初めてだ」


「なら良い事教えてあげるよ。身体強化をしてると血行が良くなって楽だよ」


「先に言えよ!」


「知ってると思ってたんだよ。穂花はやってたし」


「マジかよ」


俺はずっと身体強化を使っていたので苦痛はなかった。

と、そこに女将さんが部屋の扉越しに声をかけてきた。


「夕食をお持ちしました」


「どうぞ」


俺が返答すると女将さんが入ってきた。


「獣王国に行かれるんですか?」


「はい」


「と言うことはトーナメントに出場なさるのですよね?」


「トーナメントですか?」


「違いましたか。いえ、もうすぐ獣王国で冒険者たちが集う大会があるんですよ。最近はそれに参加する冒険者がよくこの宿に泊まるので、皆さんもそうかと思いまして」


「そんな物があるんですね。俺たちは観光みたいな感じなんです」


実際に獣王国に用があるのは俺だけなので、他の3人は観光みたいなものだ。


「もし、時間があれば冒険者トーナメントを見るのもオススメですよ。一流の冒険者同士の戦いは面白いので。まあ夫からの受け売りですが」


女将さんはそう言って食事を置くと部屋を出て行った。


「冒険者トーナメントか。俺は試験で見れるか分からないけど、暎斗たちは暇だったら行ってみれば」


「そうだな。対人戦は中々見られるもんじゃないし」


そう言いながら食事に口をつける。
俺たちは運ばれてきた夕食を食べた後、部屋のシャワーを浴びて眠りについた。
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