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3章 ルルの故郷と恋〜主人公無双が止まらない〜

40.さて、殲滅作業の開幕だよ?

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ーー森が殺気立つ


その言葉は文章としては間違っているのかもしれない。
しかし、今の状況を言葉にすると、この表現になった。

俺の魔法が森に響いた直後に、目では見えない森中の魔物がこちらに殺気を向けたのだ。

それはまさに森が俺たちに牙を剥いたように感じた。


「魔物が集まってきます」


ルルが若干震えた声で囁いた。

それは俺にも感じることが出来た。
姿は見えないが、大地を揺らすような行進が始まった。
嫌な気配がどんどんと近づいてきた。


「懐かしいな・・・」


俺はダンジョンにいた頃を思い出して呟いた。
この気配、ダンジョンの化け物とは気配の濃度はかなり低いが、それでも明確な悪意に満ちた負のオーラは間違いなくダンジョンのモンスターと同質のものだ。


「えっ?」


俺の言葉が聞こえなかったのか、理解できなかったのかは分からないが、ルルが聞き返してきた。
俺は「なんでもないよ」と答え、魔物が蠢く森に視線を走らせた。


「ルル、バリアは張るけど、この数の魔物だから囲まれると厄介だよ。出来る限り動き回って、出会った端から魔物を殺す感じで行こう」


そう俺は方針を決めた。


「わかりました!!」


「じゃあ行くよ、ついて来て」


「はい!!」


ルルは元気に返事をする。
この数の魔物を前に気負った様子はない。
それは自信か、慢心か、それとも他の何かか、それは判断がつかないが、裏目に出ないと良いのだが・・・


俺は一抹の不安を抱きつつ小山を駆け下りた。


小山の麓まで駆け下りると、最初の魔物とエンカウントした。

それはケルベロスという、三つの頭を持つ犬の魔物だ。
この魔物は俊敏で持久力もあるため、早くたどり着いたのだろう。


「一旦無視して先に進むよ」


「はい」


俺はルルに声をかけて90度進路を変更した。
戦わないのには理由がある。

魔物は俺たちが降りた麓を中心に半円状に集結している。
なので、俺はその外周を描くように魔力を放出しながら移動する。

魔力を放出するのは広範囲の魔法を使うためだ。
移動した所に魔力を染み込ませて、後で魔法を発動させる、いわば時限魔法だ。


俺たちは15分くらいかけて、半円の外周を回り終えた。


「じゃあ、魔法を使うから下がってて」


俺はルルに声をかけて、魔法の準備にかかる。

まずは、集まった魔物が逃げないように、土の壁で半円状に囲む。
次に、そこに大量の泥水を流し込む。
それで魔物は身動きが取れなくなる。
それを狩って回れば終了という流れだ。

最後に土の壁を取り払えば、木々に多少の被害があるかもしれないが、大きな嵐が来た程度の被害で済むだろう。


というわけで、まずは土の壁だ。
俺は土魔法の呪文の『アースウォール』と唱える。

すると、地面が盛り上がり、5メートルほどの土の壁となった。
それはどんどんと左右に伸びていき、やがて半円状の土壁が魔物の群れを囲った。

俺とルルは土壁に登り、囲まれた森を見渡した。

あちこちから魔物の遠吠えや威嚇する音が聞こえて来た。


「突然、壁が現れて困ってるみたいですね」


ルルは思ったことを口にした。


「そうだね。まあでも、これからもっと困ってもらうんだけどね」


と俺はおどけたようにそう返して笑った。


「ラウトさんって、たまに怖くなりますよね」


ルルは俺の言葉に、何を感じたのかそんなことを言った。


「そう?」


「だって、すごく悪そうな顔してましたよ?」


俺はそう言われて驚いた。
笑っていたつもりなんだが、そんな表情に見えたのだろうか。

ただ、魔物の大群を前にワクワクしているのも事実だ。
そんな気持ちが顔の表情にも現れたのかもしれない。


「悪そうかはともかく、楽しみではあるよ。それより準備はいい?」


「はい!」


「さて、殲滅作業の開幕だよ?『クリエイトウォーター』」


俺はそう宣言すると、大量の水を土壁の囲いの中に流し込んだ。

そして、その水は濁流となって魔物達に襲い掛かった。
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