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二章 やっと始まるラウトの旅
17.クエスト終わりの帰り道
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街に帰ってくるまでの間、ずっと沈んだ雰囲気だった3人だったが、俺が真剣に謝罪をした甲斐あって、街に入る頃には元のテンションに戻ってくれた。
イタズラになると、加減を間違えてしまうのは姉譲りなのだが、昔からの悪い癖だ。
今後は気をつけようと心に誓うのだった。
「ラウト、結局のところ、突撃鳥の捕獲は失敗ってこと?」
恐怖から立ち直った穂花が、思い出したように聞いて来た。
そういえば、俺が3人の知らない所で突撃鳥を確保していた事を、伝えて忘れていた。
「いや、実はもう捕まえてあるよ」
俺はアイテムボックスから出した突撃鳥を見せる。
今は魔法で眠らせてるので、おとなしい。
「いつの間に!?」
穂花は目を見開いて驚いた。
暎斗も「嘘だろ」とでも言いたげな目で、俺が持っている突撃鳥を見ていた。
「すごいです!!」
ルルだけは、不思議に思うことなく素直に喜んでいた。
(ん?違うな。ルルの目が獲物を狙う目になっている。さては、食べようとしてるな?)
やらんぞ?
俺は突撃鳥を出していると危ないと思い、アイテムボックスにしまった。
それをみたルルが、獲物を逃して気を落とした猫みたいになった。
本当に表情がコロコロ変わって面白い。
「じゃあ、クエストは達成だね」
「そうだね。そっちも薬草は集まった?」
穂花と暎斗とは途中から別行動だったため、成果は知らない。
「うん、予想以上に集まったから、追加報酬も期待できそう!」
「それは良かったね」
穂花が鞄から、採って来たばかりの薬草を取り出して、嬉しそうに報告してきた。
その様子が幼い子供のようで、つい頭をポンポンと撫でてしまった。
すると、穂花は急にしおらしくなって、顔を俯けてしまった。
「ん?どうした?」
俺はどうかしたのかと心配になって聞いてみた。
「な、なんでもない!はやくギルド行こ!」
俺が聞くと、すぐに顔を上げて捲し立てた。
その顔はかなり赤くなっていた。
(なるほど、恥ずかしかったのか。悪いことしたなぁ)
俺は申し訳なくなって、足早に歩いて行ってしまった穂花に心の中で謝った。
「もう、なんであんなこと急に・・・」
穂花は誰にも聞こえないような声で呟いた。
その様子を誰かが見れば、そこにある感情が、羞恥心だけじゃないことは、すぐにわかってしまっただろうが、幸か不幸か、それを見た者はいなかった。
「待てよ、穂花!」
暎斗が呼び止めるように穂花を追い、それに続いて俺とルルも穂花を追った。
ギルドに入ると、人がいつにも増して多かった。
時間が夕方近いので、クエストを終えた冒険者たちが集まっているのだろう。
「人が多いですねー」
ルルが背伸びして辺りを見ながら言う。
ルルの言う通り、人が多くて受付にも長い列ができている。
「この列に並ぶのは、骨が折れるね。訓練場でも見てみる?」
ルルの呟きを聞いた穂花がそう提案する。
訓練場とはギルドの地下にある、冒険者が訓練するための広場だ。
「訓練場ですか?」
ルルはその存在を知らないらしく、穂花が訓練場について説明していた。
「なるほど、行ってみたいです!ラウトさんの実力を見せて欲しいです!」
穂花の説明を聞くと、ルルはすごく乗り気になった。
(でも、人前で見せられるものには限りがあるんだよなぁ)
「訓練場はこの時間、使ってる奴はいないと思うぞ。だから貸し切り状態って感じだろ」
俺が少し困っているのを察してくれたのか、暎斗が付け足すように言った。
俺はその言葉に後押しされて訓練場へ向かうことにした。
(まあ、人がいたら見せられるものだけ見せればいいか)
「じゃあ、行ってみるか」
「はい、行きましょう!行きましょう!」
俺はルルに引っ張られるようにして、訓練場に入った。
暎斗の言う通り、訓練場には人影がなかった。
一仕事終えて訓練場にくる冒険者は、少ないということだろう。
冒険者は怪我などで活動休止することも珍しくないのだが、そのような冒険者は活動休止と言っても、ただ休んだりしているわけではない。
訓練をするのだ。
しかし活動中の冒険者がいる訓練場では、怪我をした冒険者も安心して訓練し辛いため、このギルドには、活動休止している冒険者専用の訓練場もある。
だから、そういった冒険者がこの訓練場に来ないため、夕方はほぼ貸し切りなのだろう。
「本当に貸し切りですね!使い放題です!」
ルルは嬉しそうに言った。
これなら人の目を気にせずできて良い。
「模擬戦しようぜ!!」
暎斗もやる気らしく、そう言い出した。
(模擬戦か・・・確かに面白そうだ)
「誰と誰がやる?」
俺はそう聞くが、答えはほぼ一通りだろう。
肉弾戦を好むルルとは、剣士である暎斗がうってつけだ。
俺はなんでもできるが、どちらかと言えば魔法がメインなので、穂花の出番だ。
みんなも同じ意見らしく、結局その組み合わせに決まった。
まず、先にやるのはルルと暎斗の近接戦闘ペアだ。
ルールは簡単、どちらかが有効打となり得る攻撃を当てた時点で決着だ。
2人には防御魔法を展開しているので、万が一にも怪我をする心配はない。
2人は10メートルくらい離れて戦闘体勢に入った。
ルルは拳を、暎斗は剣を、それぞれ正面に構える。
「準備はいいね?じゃあ、始め!!」
俺の掛け声を合図に模擬戦は開始された。
イタズラになると、加減を間違えてしまうのは姉譲りなのだが、昔からの悪い癖だ。
今後は気をつけようと心に誓うのだった。
「ラウト、結局のところ、突撃鳥の捕獲は失敗ってこと?」
恐怖から立ち直った穂花が、思い出したように聞いて来た。
そういえば、俺が3人の知らない所で突撃鳥を確保していた事を、伝えて忘れていた。
「いや、実はもう捕まえてあるよ」
俺はアイテムボックスから出した突撃鳥を見せる。
今は魔法で眠らせてるので、おとなしい。
「いつの間に!?」
穂花は目を見開いて驚いた。
暎斗も「嘘だろ」とでも言いたげな目で、俺が持っている突撃鳥を見ていた。
「すごいです!!」
ルルだけは、不思議に思うことなく素直に喜んでいた。
(ん?違うな。ルルの目が獲物を狙う目になっている。さては、食べようとしてるな?)
やらんぞ?
俺は突撃鳥を出していると危ないと思い、アイテムボックスにしまった。
それをみたルルが、獲物を逃して気を落とした猫みたいになった。
本当に表情がコロコロ変わって面白い。
「じゃあ、クエストは達成だね」
「そうだね。そっちも薬草は集まった?」
穂花と暎斗とは途中から別行動だったため、成果は知らない。
「うん、予想以上に集まったから、追加報酬も期待できそう!」
「それは良かったね」
穂花が鞄から、採って来たばかりの薬草を取り出して、嬉しそうに報告してきた。
その様子が幼い子供のようで、つい頭をポンポンと撫でてしまった。
すると、穂花は急にしおらしくなって、顔を俯けてしまった。
「ん?どうした?」
俺はどうかしたのかと心配になって聞いてみた。
「な、なんでもない!はやくギルド行こ!」
俺が聞くと、すぐに顔を上げて捲し立てた。
その顔はかなり赤くなっていた。
(なるほど、恥ずかしかったのか。悪いことしたなぁ)
俺は申し訳なくなって、足早に歩いて行ってしまった穂花に心の中で謝った。
「もう、なんであんなこと急に・・・」
穂花は誰にも聞こえないような声で呟いた。
その様子を誰かが見れば、そこにある感情が、羞恥心だけじゃないことは、すぐにわかってしまっただろうが、幸か不幸か、それを見た者はいなかった。
「待てよ、穂花!」
暎斗が呼び止めるように穂花を追い、それに続いて俺とルルも穂花を追った。
ギルドに入ると、人がいつにも増して多かった。
時間が夕方近いので、クエストを終えた冒険者たちが集まっているのだろう。
「人が多いですねー」
ルルが背伸びして辺りを見ながら言う。
ルルの言う通り、人が多くて受付にも長い列ができている。
「この列に並ぶのは、骨が折れるね。訓練場でも見てみる?」
ルルの呟きを聞いた穂花がそう提案する。
訓練場とはギルドの地下にある、冒険者が訓練するための広場だ。
「訓練場ですか?」
ルルはその存在を知らないらしく、穂花が訓練場について説明していた。
「なるほど、行ってみたいです!ラウトさんの実力を見せて欲しいです!」
穂花の説明を聞くと、ルルはすごく乗り気になった。
(でも、人前で見せられるものには限りがあるんだよなぁ)
「訓練場はこの時間、使ってる奴はいないと思うぞ。だから貸し切り状態って感じだろ」
俺が少し困っているのを察してくれたのか、暎斗が付け足すように言った。
俺はその言葉に後押しされて訓練場へ向かうことにした。
(まあ、人がいたら見せられるものだけ見せればいいか)
「じゃあ、行ってみるか」
「はい、行きましょう!行きましょう!」
俺はルルに引っ張られるようにして、訓練場に入った。
暎斗の言う通り、訓練場には人影がなかった。
一仕事終えて訓練場にくる冒険者は、少ないということだろう。
冒険者は怪我などで活動休止することも珍しくないのだが、そのような冒険者は活動休止と言っても、ただ休んだりしているわけではない。
訓練をするのだ。
しかし活動中の冒険者がいる訓練場では、怪我をした冒険者も安心して訓練し辛いため、このギルドには、活動休止している冒険者専用の訓練場もある。
だから、そういった冒険者がこの訓練場に来ないため、夕方はほぼ貸し切りなのだろう。
「本当に貸し切りですね!使い放題です!」
ルルは嬉しそうに言った。
これなら人の目を気にせずできて良い。
「模擬戦しようぜ!!」
暎斗もやる気らしく、そう言い出した。
(模擬戦か・・・確かに面白そうだ)
「誰と誰がやる?」
俺はそう聞くが、答えはほぼ一通りだろう。
肉弾戦を好むルルとは、剣士である暎斗がうってつけだ。
俺はなんでもできるが、どちらかと言えば魔法がメインなので、穂花の出番だ。
みんなも同じ意見らしく、結局その組み合わせに決まった。
まず、先にやるのはルルと暎斗の近接戦闘ペアだ。
ルールは簡単、どちらかが有効打となり得る攻撃を当てた時点で決着だ。
2人には防御魔法を展開しているので、万が一にも怪我をする心配はない。
2人は10メートルくらい離れて戦闘体勢に入った。
ルルは拳を、暎斗は剣を、それぞれ正面に構える。
「準備はいいね?じゃあ、始め!!」
俺の掛け声を合図に模擬戦は開始された。
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