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二章 やっと始まるラウトの旅

13.仕返しの始まり

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この世界の宿は、夜遅くに来る冒険者のために一日中ずっと開いている所が多い。
俺たちが入ったこの『いやし亭』も、そのうちの1つだ。


「いらっしゃい。へぇ、今日は珍しくお前さんたちが友達を連れてるじゃないかい」


「女将さん、こんばんは。そうなんです。4人なんですけど、空いてますか?」


対応してくれた女将さんは、男勝おとこまさりな感じの口調で温かみのある人だった。
女将さんは穂花たちをよく知っているらしく、穂花も親しげに返した。


「4人部屋かい?それとも2人部屋を2つでも取れるけど」


「どうする?」


穂花は俺たちを振り返って、意見をあおいできた。

男子と女子を分けるか、ということだろう。
だが、こういうのは女の子が決めるべきであろう。
俺はそう思い、判断は穂花とルルにゆだねることにした。

穂花の視線もどちらかというとルルの方を向いているので、穂花もルルの意見が聞きたいのだろう。
チラッと俺の方を見るのはどういう意味なのか不明だが、あまり深く考えなくていいだろう。


「任せるよ」


「俺もどっちでもいいぜ」


「私も任せます」


俺と暎斗に続くようにルルもそう言った。


(いやいや、ダメだろ任せちゃ。女の子としての自覚はないのか?)


暎斗と穂花も同じような感想を抱いたのか、困った笑みを浮かべていた。


「はぁ・・・じゃあ2人部屋を2つでお願いします」


穂花もルルが意見をしてくれないから、呆れてしまったようだ。
それにしても、最後は俺の方を見て、ため息を吐いていたように見えたのは気のせいだろうか。


「そうかい。じゃあ2階の奥の部屋を使いな」


「ありがとうございます」


鍵を受け取って俺たちは言われた部屋に向かった。
料金は後払いらしい。

俺と暎斗は部屋に入ってすぐに、倒れ込むように床に横になった。

疲れた。
ダンジョンにいた時とはまた別の疲れがある。
身体と精神の両方からけずられる感じ、どこか懐かしく思える。


「疲れたー。体いてすぐ寝ようぜ」


暎斗が床にしたまま、声をあげる。

そこで俺は少し疑問に思う。
体を拭くのはどうしてだろう。
この世界には魔法がある。汚れを落とすのだって魔法でも可能だ。

『リフレッシュ』という魔法で、体の汚れや服についたどろや血などのシミまで全て落とせる。
これは、ダンジョンで見つけたモンスターが使っていた魔法だ。
いつ見ても真っ白な姿のモンスターがいたので、どういう原理か知りたくて鑑定で調べたら、そんな魔法を使っていた。
その魔法は、使おうとすれば誰でも使える便利魔法らしかった。
この魔法のおかげで、清潔感せいけつかんを保てたので、ダンジョン生活の中で、何気に一番助けられた魔法かもしれない。


だから、それを何故使わないのかと暎斗に聞いてみた。


「魔法で綺麗にしないの?『リフレッシュ』って魔法があるでしょ?」


「ラウトは知らないのか?魔法っていうのは属性ってのがあって、『リフレッシュ』は聖属性。人は基本的に1つの属性しか扱えないんだ。たまに数属性を使える奴がいるけど。俺は風属性を使ってるから、聖属性は使えない」


「そうなのか?俺は火も出せるし、水も出せるし、リフレッシュも使えるけど・・・」


「はぁ~!?それは反則だろ!!」


暎斗は語尾を強めて批判する。

それは俺に言われても困る。

それにしても、この世界の魔法は応用がきき過ぎると思っていたが、どうやらそれができるのは俺だけのようだ。
流石に制約があるわけか。


「で、リフレッシュを暎斗にも掛けてあげようか?」


「頼むぜ。にしても、羨ましいぞ。俺と穂花はリフレッシュを使えないから、長期のクエストは受けれなかったからなぁ」


「これからは俺がいるから気にしなくて済むね」


俺は暎斗と自分に『リフレッシュ』を掛けながら答えた。


「ああ、そうだな。それより、疲れたから寝ようぜ」


「そうだな。俺もすぐ寝るから先寝てていいよ。俺はちょっと行く所があるから」


そう、俺は行かなければならない場所がある。
この宿に着いた時くらいから、探知魔法が途轍とてつもない気配の反応をキャッチしている。

その気配は覚えがある。


「なんだ?トイレにでも行くのか?」


「ああ、そんなとこ。じゃあ、おやすみ」


眠そうに目をこすりながら聞いてきた暎斗に適当な返事をして、部屋を出た。




そうして、出て行ったラウトは翌朝の日の出前まで部屋に戻って来ることはなかった。
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